動物取扱業に対する規制強化を求める要望
悪質動物業者を営業停止に
300頭以上もの犬を多頭飼育している軽井沢の繁殖業者の事件
ALIVE NEWS 2006.3.21
全国各地で悪質な動物取扱業者による動物虐待事件があとを絶ちません。
今回もまた、長野県の軽井沢町で300頭以上もの犬を飼育している繁殖業者が、薬事法違反で検挙されたことから、悲惨な多頭飼育の実態が明らかになりました。TVで放映されたところ、「かわいそうな犬たちを引き取りたい」という善意の声が保健所に多数寄せられているとのことです。
しかし、この業者は、ぼろぼろになった犬のみは保健所に引き取らせ里親探しをしてもらって、繁殖に使える犬は手元において、営業を続けています。
営利目的の業者の不法行為を、行政が税金で助けたり、ボランティアの善意で救ってやることは、いいことでしょうか。
いみじくも、悪質業者たちは、「かわいそうだということになれば、動物愛護の人たちがみんな引き取ってくれるから大助かりだ」と言っているそうです。
そして業者本人は何ら処罰されることもなく、営業停止にさせられることもなく、同じようなことを繰り返しているのです。
6月1日の改正動物愛護法の施行を前に、各地で悪質な繁殖業者たちが犬の飼育放棄をする事例が続出するおそれがあります。その意味で、行政も今、きちんと対処していただきたく、長野県に以下の要望書を送付しました。
長野県知事へのメールのサイト
http://www.pref.nagano.jp/hisyo/governor/govinfo.htm#3
平成18(2006)年3月17日
長野県知事 田中康夫 様
動物取扱業に対する規制強化を求める要望
日頃の動物愛護の啓発普及及び動物行政の改善に向けてのご努力に敬意を表します。
さて、このほど、県内軽井沢町のペンションで犬の繁殖業者(以下Yという)による各種違法行為及び近隣への迷惑行為が発生し、メディア等でも大きく報じられているところです。
問題の概略は、
1)300頭もの犬の飼育に伴う頻繁に発生する鳴き声、騒音による迷惑行為
2)300頭もの犬の過密飼育に伴う飼料の残滓、糞尿その他の汚物の放置による臭気及び不衛生状態による迷惑行為
3)飼育怠慢ないしは飼育の不可能性から起こる犬の逸走、感染症のまん延とその放置及び衰弱死(動物虐待、動物愛護法違反)
4)犬の登録、狂犬病の予防注射の未実施(狂犬病予防法違反)
5)動物用医薬品の無許可販売(薬事法違反)
このような不法行為に近隣の住民は長期間迷惑を被り、行政当局に対して度々苦情を申し立ててきましたが、当局は適切な対処を怠り、犬の飼育頭数は増えるばかりでついに限界を迎えるに至りました。あまりが飼育頭数が多いがために適切な飼育管理が不可能となり、パルボやかいせんなど感染性の病気が蔓延し、これまでも病死、衰弱死した犬が相当数いると見られます。
これに対して、今回、所轄の佐久保健所では、Yに対して飼育頭数を減らすように指導し自ら犬の一部を引き取り、これを一般へ譲渡することとしています。しかし、Yは、依然として繁殖業をやめる意思がなく、繁殖力のある犬は手元におき、病気のひどい犬のみを保健所および動物愛護関係者等に引き渡しています。
つまりは、この業者の業務怠慢及び不法行為に対して、行政が税金を使って手助けし、動物愛護関係者がボランティア奉仕していることに他なりません。
このような対処法だけでは、無責任な悪質飼育に対する何の解決にもならないばかりか、逆に、いざとなれば行政や愛護関係者が動物を引き取ってくれるということで、かえって悪質業者の手助けをして助長させることになってしまいます。
今回の事例は、県内でもこれまで何度となく起こっており、また全国的にも頻発している事例でもあります。このような事態を根絶させたいと強く願う世論を受けて、2005年に動物愛護法が議員立法で改正され、動物取扱業の規制が強化されました。これにより、本年の6月1日に改正動物愛護法が施行され、基準に適合しない悪質な業者に対しては登録の拒否や登録の取り消しの措置が可能となります。
私たちは、この法律が有効に運用されることを期待し、行政当局が直ちに以下の対処を為されるように求めるものです。
<要望事項>
1、県行政は、当該業者Yに対して、直ちに以下の措置を行っていただきたい。
(1)動物愛護法第15条(周辺の生活環境の保全に係る措置)に基づく勧告、命令を行うこと
(2)飼育頭数を動物愛護法の基準に基づき客観的に見て飼育管理が可能な適正数に制限するよう要求すること
(3)適切な給餌給水、日常的に自由な動作が行えるスペースの確保、疾病・傷病に対する治療その他、動物愛護法の基準を遵守するように要求すること
(4)動物愛護法違反(過度の飼育怠慢による虐待)、狂犬病予防違反に対しては告発を行うこと
(5)上記(1)~(3)に関して遵守する旨の誓約書を提出させ、これが遵守されない場合は犬の引取という形態での業者への援助を行わないこと
(6)上記誓約書が遵守されない場合は、本年6月1日から施行される改正動物愛護法において、動物取扱業の登録を拒否すること
2、県当局は、保健所が引き取った犬について、以下の措置をとっていただきたい。
(1)信頼のおける動物愛護団体等と提携して、新しい飼い主への譲渡を行うこと。
その際、
(a)事前に疾病、感染症疾患等に対する治療を行うこと
(b)近親交配や過繁殖による遺伝的疾患のおそれについての情報提供を行うこと
(c)地元保健所の加重負担とならないよう全県的に譲渡等に取り組むこと
(2)譲渡の際には、以下を実施すること
(a)マイクロチップ等個体識別措置を施すこと
(b)譲受希望者に対して身分証明書の提示により身元を確認すること
(c)譲受希望者に対して不妊去勢手術の実施および終生飼育の確約書を提出させること
(d)譲受け人には、家庭動物の飼養及び保管の基準の遵守義務があることを知らしめること
3、動物愛法の実効性のある運用及び県条例の制定に取り組んでいただきたい
(1)動物取扱業の登録の受付に当たっては、全施設の立ち入り調査を実施し、現場の確認に基づいて、登録の受理または拒否を行うこと
(2)動物虐待の防止および近隣への迷惑防止等の観点から飼育頭数に制限を課す条例の制定に取り組むこと
上記の各要望事項に関して、速やかに県としてのご回答をいただきたくお願い申し上げます。