平成21(2009)年3月2日
福岡市動物愛護管理推進実施計画案に対する意見
地球生物会議(ALIVE)
以下の通り、福岡市動物愛護管理推進実施計画案についての意見をお送りいたします。
第2章 動物行政の現状と課題
1 現 状
(2) 犬猫の収容状況(P.3)
福岡市では、犬猫の収容の態様を以下のように定義しています。
<犬>
・捕獲:けい留されていない犬を,動物管理センターの職員が捕まえ収容すること
・回収:市民等が捕まえた,又は,保護した犬を,動物管理センターの職員が出向いて収容すること
・引取り:飼い主が飼えなくなった犬を,動物管理センターにおいて引き取ること
<猫>
・回収:市民等が保護した飼い主不明の猫を,動物管理センター職員が出向いて収容すること
・引取り:飼い主が飼えなくなった猫又は飼い主不明の猫を,動物管理センターにおいて引き取ること
動物愛護法犬第三十五条では、犬及びねこの引取りを以下のように定義しています。
1項:都道府県等その他政令で定める市は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。
2項:前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
しかし、福岡市の集計では、この区分が明確ではありません。
犬については、第三者が所有者不明の犬を持ち込んだ場合の区分がありませんし、猫については、第三者が所有者不明の猫を持ち込んだ場合、引取りの中に含めています。
当会が実施している動物行政アンケート調査での福岡市の回答は、所有者からの引き取りは221匹、所有者不明の引き取りは2524匹であり、その差は10倍以上もあります。
飼い主がいる犬猫の引き取りに際しては、その理由を聞くことで啓発普及の指導も可能です。
また所有者不明の場合は、遺棄防止の対策などの必要があり、取るべき対策も異なります。
実態の把握がなされなければ対策も困難ですので、ここは明確にしていただきたいと思います。
また、多くの自治体で、福岡市のように職員が出向いて所有者不明の犬猫を引き取る回収を行っていません。県単位で行政区が広い自治体でも定時定点回収を廃止・削減する方向にあります。福岡市においては、このような回収は速やかに廃止することを決定していただきたいと思います。
第6章 目 標 (P.16)
10年間で犬猫の引取り頭数を半減する数値目標についても、上記の理由で、回収と引き取りだけでの区分だけではなく、所有者からの引取りと所有者不明の引き取りに分けて目標を設定してください。具体的な施策(P.37)でも述べているように、回収を廃止する方向であるのなら、なおのこと、この表現は矛盾します。
殺処分頭数の半減目標については、当会が実施してきた動物行政アンケート調査で過去10年間の推移を見ると、犬については殺処分数は3分の1以上も減少しています。今後、愛護推進計画の実行により今まで以上に飼育放棄は減少すると考えられますので、数値目標は100頭以下でも達成可能と考えられます。
第7章 具体的施策
1 動物愛護業務
(1) 譲渡事業の充実 (P.19)
譲渡の際の事前審査や、譲渡後のフォローを行うことが明記されていてよいと思います。
また、譲渡対象の犬猫に動物愛護センターで不妊去勢手術を実施することは、確実な繁殖防止と啓発普及の観点からも効果があると考えられ、高く評価いたします。
(10) 動物愛護を目的とした寄付の受入れ (P.26)
行政に寄付をする場合、現状では使途を問わない一般寄付として処理されるため、「動物愛護を目的とした寄付の受け入れ体制の整備」を行うことはよいと思います。その場合、目的と計画の内容および予算の概算を示し、目標額を設定する必要があると考えられます。特に一般から寄付を募る場合は明確な目的がないと寄付は集まらないと予想されます。
2 動物管理業務
(3) 鑑札と注射済票装着の徹底 (P.29)
「鑑札と注射済票のデザインを公募し、装着しやすい形状に変更する」ことは、装着率の向上に寄与すると考えられます。同時に、犬猫が迷子になったときに、行政を介さずとも、その場で飼い主のもとへ連絡できるように、「迷子札」」の装着の普及もあわせて広報していただきたい。
(4) 飼うことができなくなった犬猫の安易な引取り防止 (P.30)
引き取りの際に、飼育できなくなった理由の聞き取りまたは書式への記入を求め、原因を分析して対策を講じる措置が必要です。
(5)収容動物返還率向上(P.30)
「収容期間を延長」し、ホームページでの情報内容を充実させるとともに、掲載期間も延長する、ことはよいと思います。ホームページには毎日常に最新情報が反映されるように努めていただきたい。
(6) 猫問題対策の実施 (P.31)
地域猫ガイドラインに沿った事業については、センターで不妊去勢手術を行うことは、大きな効果が期待されます。
(7) 動物取扱業者の監視指導 (P.32)
福岡市では動物取扱業者の登録簿がホームページに掲載されていますが、消費者への情報提供という観点から少なくとも、取扱い動物の種類と数も公表していただきたい。ちなみに、静岡県では、取扱い動物の種類と数も公表しており、繁殖販売業者を選ぶ際の目安となっています。
動物取扱業者登録簿の閲覧
http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-510/seiei/tourokuboeturan.html
https://www2.pref.shizuoka.jp/all/file_download1040.nsf/pages/97B3903CE858CD3249257380003F3CBE
(8) 特定動物飼育者の監視指導 (P.33)
九州大学では実験用に特定動物ニホンザルを飼育していますが、そのケージは極めて狭く、脳神経系の長期にわたる実験であるにもかかわらず、居住の快適性はまったく配慮されていません。国際的にも、霊長類のように高度な社会性と精神性を有する動物については、環境エンリッチメントや精神的苦痛を緩和する措置を設けることが法制的に定められています。実験用の特定動物の飼養保管施設は、行政が実際に立ち入り指導をすることができる対象です。単なる「逸走防止」の観点のみならず、動物愛護法第41条の規定に基き、実験施設における3Rの実施状況の確認や実験動物の飼養保管基準の遵守に関する指導も実施してください。
(9) 大型犬飼育施設の監視指導 (P.34)
大型犬の飼養実態把握および立ち入りなどの定期的な監視指導は、ぜひとも行っていただきたい。また、大型犬の中でも闘犬種については、人や他の動物に対する危険度が高いため、特定動物に近い形での登録制とすることをご検討ください。
(10) 多頭飼育者の監視指導 (P.34)
多頭飼育についても、実態把握を行うともに、一人当たりの飼育可能な頭数を定め、他自治体が実施しているように届け出制としていただきたい。また、繁殖業者の場合は数十頭から数百頭を飼育していることがまれではなく、多頭飼育者という視点も実態把握と監視を行い、多頭飼育の崩壊を防止するために、常に速やかな改善指導を行ってください。
(11) 実験動物飼育施設の監視指導 (P.35)
実験動物施設及び実験動物の保管・繁殖・販売施設の所在の確認と、飼養する動物の種類や数を把握し、定期的立ち入りによって実験動物基準の遵守および3Rの実施について監視指導を進めていただきたい。
(12) 産業動物施設の監視指導 (P.35)
畜産部署の協力を得て、畜産施設の実態把握と立ち入りを行うことで、畜産動物も愛護動物であり法によって保護されていることを、関係者に周知徹底をはかってください。
(15) 犬猫の殺処分方法の検討 (P.37)
ガス室での殺処分は動物に苦痛を与えるばかりでなく、今後、殺処分数が減少していくことに伴い、コスト高ともなっていきます。麻酔薬の注射あるいは吸入麻酔を用いるなど、苦痛を与えない方法への速やかな転換を進めてください。
第9章 動物愛護管理センター(仮称)の整備
2 動物愛護管理センター(仮称)の組織体制 (P.40)
(1) 民間の活用(P.41)
動物関係団体との協働や委託を進めることはたいへん重要です。特に譲渡活動については民間の人々のほうがはるかに熟知していることも多く、事前審査や譲渡後のフォローなどはじゅうぶん委託が可能です。また、センター収容中の動物の世話や運動などについても同様です。
それぞれ得意分野の役割分担として、ペットショップなど動物取扱業者のチェックや、地元の学校や保育園での啓発普及活動も推進するべきと考えられます。
そのため、動物愛護推進員を設置すること、および推進員にも実地研修を行い能力の向上をはかっていく仕組みが必要と考えます。
3 動物愛護センター(仮称)の人材育成 (P.42)
実際にセンターで獣医師が病気の治療や不妊去勢手術の技術を習得し実施できるようになることは、センターが処分施設から保護施設(シェルター)に転換する大きな要素となりますので、ぜひとも推進していただきたい。
動物愛護業務員については、採用してからの教育も必要ですが、採用に際しても適性の有無や経験等を考慮しての中途採用や、動物愛護団体からも採用するといった柔軟性が必要と考えます。
以上