●まず実態を知ろう
動物の愛護管理法では、ペットショップや動物園などの動物取扱業は届け出制になっていますが、実験動物施設と畜産施設のみは届け出制から除外されています。
そのために、動物実験と畜産における動物は、動物愛護法の対象ではないと思いこんでいる人がいますが、決してそうではありません。単に、届け出から除外されているということであって、畜産施設や実験施設においても、動物を虐待したり遺棄すれば、罰則が科せられます。現に、これまでも牛の遺棄や、養鶏場でニワトリに水や餌を与えず大量に餓死させた事件などで動物愛護法が適用されています。
残念ながら、これらの施設はあまりに外部の人の目に触れることが少なく、そのために飼育の実態が知られていないために、一般の人々の関心が向けられないというところに大きな問題があります。
●驚くべき飼育実態
畜産動物は経済効率追求のために、最少のスペースで最大の数を飼育するという「法則」に従い、超過密状態で、ほとんど身動きもできない状態におかれます。そのせいで、動物たちは心身の健康を損ない、病気に対する抵抗力がたいへん弱い状態になっています。
4月に鳥インフルエンザの発生で、養鶏場の社長が家畜伝染病予防法による通報義務を怠ったために逮捕されました。2月のインフルエンザ発生当初、この社長は「(自社の養鶏場では)死亡率は0.5%くらい、毎日1000羽くらいが死んでいるので、特に問題とは思わなかった」と述べていました。この養鶏場は20〜25万羽を飼育していたそうなので、毎日1000羽の死亡はどうということのない数字だったようです。
特に注目すべきは、同社長が「強制換羽」中だったので死亡率が高いと思っていたということです。強制換羽とは、鶏の産卵率が落ちてくると、鶏に餌と水を与えるのを中止し、数日から十数日絶食状態にさせることです。その間に弱い鳥は死亡しますが、生き残った鳥は羽を抜け替わらせてまた産卵を始めるようになります。経済性の追求のために行われるとは言っても、給餌給水を断って衰弱させ死なせてしまう行為は、動物虐待に相当します。
また、免疫力の落ちた状態の鶏たちには、インフルエンザであろうがその他の病気であろうが、ひとたび感染すればあっという間に広がってしまいます。
鳥インフルエンザはアジアの国々では人間にも感染し死者が出ています。何年か前に大騒ぎになったO・157も、突然変異で強毒性を獲得した病原菌ですが、これも畜産施設が発生源とされています。アジア各国で猛威を振るったSARSは野生動物を食肉として取り扱っている市場から拡散したとされています。
畜産動物の過密・多頭飼育施設は、周辺環境の安全に大きな悪影響を与えています。鳥インフルエンザの発生により、都道府県では急遽鳥の飼育実態を調査しました。このような事態になる前にやはり、畜産施設を届け出制として実態を把握しておくとともに、動物の健康と福祉の観点から家畜衛生保健所とも協力して立ち入りや改善指導ができるようにするべきです。
●実験施設の危険性
実験動物の施設も、同じように環境を脅かすおそれの高い施設です。実験施設では、さまざまな危険な化学薬品や放射性物質を取り扱っています。さらに、病原性ウイルスや遺伝子組み替え実験などは日常的に行われています。万一それらが屋外に拡散した場合には、取り返しのつかない事態になりかねません。
どこの実験施設で、どのような動物が飼育されておりどのような実験が行われているか誰も知らないというのは、ある意味でたいへん恐ろしい状態です。動物の健康と福祉の観点からのみならず、住民や環境の安全のためにも、動物実験施設は最低限でも届出制にするべきです。
届け出制は、法規制ではなく、単なる実態把握の手段でしかありません。しかし未だに畜産や実験にいかなる実態把握の仕組みもない現状を、一歩でも変えていくために、そして闇の中の動物たちの世界に少しでも外部からの光が届くようにしてくために、必要な第一歩です。