平成２６年５月２６日
千葉県健康福祉部衛生指導課
公衆衛生獣医班　御中

特定非営利活動法人地球生物会議（ALIVE）

千葉県動物愛護管理条例（仮称）骨子案に対する意見

【関係項目名】
�U.県・県民・飼い主などの責務

【意見内容】
市町村の責務として、県の動物愛護管理施策に協力し、かつ、県と情報共有を図り、連携していくことを条例で規定すべきです。

【理由】
　動物愛護管理施策の展開において、地域住民に対してより効果的に啓蒙活動を行っていくためには、市町村の協力が欠かせず、県が行う普及啓発を市町村の実態に合わせて適切に運用していくよう、条例で市町村の責務を定め、その役割を明確にすべきです。
　仮に県と市町村の間で情報の共有がなければ、県全体として一貫性・一体性を持った施策を展開できなくなってしまう恐れがあります。また、特定動物において逸走が発生したときには、危機管理の観点から何より正確な情報がいち早く住民に周知されることが必要であり、情報の共有が重要であることから、条例で規定すべきです。

【関係項目名】
�V.県が推進する施策　2.被災動物の救護体制の整備

【意見内容】
被災動物の救護体制の整備にあたって、産業動物や実験動物等、ペット以外の動物についても言及すべきです。

【理由】
　東日本大震災では多くの産業動物や学校飼育動物が混乱の中に取り残され、餓死といった凄惨な最期を遂げました。さらに、災害時の危機管理を考えるならば、有害な病原体に汚染された動物や遺伝子組換え動物の逸走が起こりえる実験動物飼養施設についても着目すべきであり、人の身体・財産等への危害防止の観点から、災害時の特定動物対応についても十分な対策を講じることが必要です。
　今後、千葉県や関東地域で発生すると予測される大規模地震や台風・大雨等に的確・迅速に対応し、危機管理や動物保護を行っていくためには、産業動物や実験動物等、ペット以外の動物の救護体制構築も必要であり、条文に明記すべきです。

【関係項目名】
�V.県が推進する施策　4.収容動物を減少させる取組等　2頁

【意見内容】
収容期間延長について規定すべきです。

【理由】
　殺処分を可能な限り行わないようにするために、所有者への返還や譲渡等を推進していくことは是非行うべきです。こうした取り組みに加えて、収容動物の生存機会拡大のために、犬の拘留期間や収容日数を延長することを条例で規定すべきです。

【関係項目名】
�V.県が推進する施策　4.収容動物を減少させる取組等
（1）危害防止に支障のない範囲で収容数を減少させる取組　2頁

【意見内容】
飼い主等のいない猫についての対策を条例に盛り込むべきです。

【理由】
　千葉県は猫の収容数が多く（平成24年度全国ワースト6位）、猫の収容数の大多数を占めるのは所有者不明の猫が産んだ子猫であることから、収容動物を減少させていくためには、地域猫活動（TNR活動含む）の推進・支援を条例で定めるべきです。条例で地域猫活動の推進・支援を規定することによって一般市民の理解を得やすくなり、より効果的な活動に繋がり、収容数が減少していくことと考えます。

【関係項目名】
�W.動物による危害等の防止　7.多頭飼養の届出

【意見内容】
 多頭飼育届出制は是非設けるべきです。ただし、地域猫については、多頭飼育の届出制から除外することを同時に求めます。

【理由】
　全国の自治体で、犬や猫等の多頭飼育の崩壊が起こり、ボランティアの団体や個人、行政がその対応に追われる事態が続いています。犬の場合、鳴き声等で多頭飼育の事実を周囲の住民が把握することが多い一方、室内飼養の猫の場合は分かりにくいケースがあり、飼い主の死亡や失踪等で初めて判明することもあります。また、多頭飼育が崩壊する現場では、犬の狂犬病予防接種や登録を怠っていたり、また犬猫共に、繁殖制限や健康管理等が為されていなかったりする場合が非常に多いことも明らかになっています。
　多頭飼育の届出制を定めることにより、飼い主の適正飼養数を超えた多頭飼育を抑止し、多頭飼育崩壊を予防する効果が期待できます。さらに、犬については全頭登録、全頭の狂犬病予防接種を促し、犬猫共に、繁殖制限（不妊去勢手術の実施）や適正飼養の指導をすることがよりスムーズになると考えられ、人の生活環境と同時に動物の安全や健康が担保されることとなります。
　また、震災等の災害時に、多頭飼育の所在地や犬猫の頭数が明確である場合、犬猫の救護についても的確で効率的な対策を行うことができると考えられます。このように、あらかじめ届出制度を設けておくことによって、ボランティアや行政（市町村含む）の負担も軽減され、また連携して多数の犬猫の安否確認や救護を手伝うことも可能になると思われます。これらのことから、多頭飼育届出制は条例で是非定めるべきです。
　なお、地域猫については、多頭飼育の届出制の趣旨・目的からは外れるものとし、除外すべきです。また、本制度を創設後においては実効性を担保するためにも、違反者に積極的に過料を課していくような運用体制を求めます。

【関係項目名】
�W.その他　4頁

【意見内容】
�@　実験動物飼養施設を届出制とし、定期的な立入調査を行うことを定めるべきです。届出の対象や届出事項、「実験動物」は理由に記載の通りに定義すべきです。

�A　環境省告示の実験動物飼養保管基準等を参考にして、実験動物の所有者等の遵守事項を定め、違反が認められる場合には、知事が必要な措置命令を行うことができるように規定すべきです。

【理由�@　�A】　
　現在、動物実験施設や実験動物生産・販売業者は動物愛護管理法での登録制の対象から外れています。そのため、これらの施設の所在や飼養保管状況が不明となっており、個々の施設の自主管理に任されています。しかしながら以下のような観点から、これらの施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが必要であり、不適切な飼養があった場合に対処できるためにも、最低限の遵守事項を定め、違反時には必要な措置命令を行えるように条例で定めるべきです。

�@災害時対策
　一昨年の東日本大震災では、大きな事故は報告されていないものの、ラックの転倒やケージの落下、ライフラインの停止等で多くの実験動物が死亡し、また施設内での逸走も起こっています。今後、同様な災害が千葉県や関東地域で起こった場合、災害対策をきちんとしていない施設等から大きな事故が起こらないとも限りません。そのような場合に備えて、普段から実験動物飼養施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが重要と考えます。去年改正された動物愛護管理法では、動物愛護管理推進計画に定める事項に、「災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項」が追加されました。実験動物が例外であるとはされておらず、実験動物の災害時対策のためには施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが不可欠です。また、環境省告示の実験動物飼養保管基準では、（実験動物の）「管理者は、関係行政機関との連携の下、地域防災計画等との整合を図りつつ、地震、火災等の緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するもの」とされており、各施設の防災計画がきちんと作成されているか、準備がされているかを確認する必要もあります。現在、千葉県の地域防災計画及び愛護管理推進計画では実験動物について触れられていませんが、実験動物飼養施設の災害時対策についてこれらの計画に含め、そのための手段として実験動物飼養施設の届出制を活用すべきです。

�A公衆衛生
　動物実験施設では細菌・ウイルス感染実験や遺伝子組み換え実験、放射線や放射性物質を使用した実験がたくさん行われています。特に大学医学部では遺伝子組み換え動物を使用した実験が全体の半数近くにも上ります。これらは厚労省や文科省の法律で規制されていますが、実際には動物実験施設のカルタヘナ法違反が後を絶たず、現場の意識が十分であるとは言えません。千葉県内でも過去に少なくとも3施設のカルタヘナ法違反が判明しています。前項で述べたような災害等でひとたびこれらの拡散が生じれば、取り返しのつかない事態に陥る危険性があります。そのようなことを未然に防ぐためにも、普段から施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことは有効であると考えます。
　また、静岡県に対する開示請求から、動物実験施設で狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射がされてないケースが多々あることがうかがえます。動物実験施設も狂犬病予防法の例外ではなく、このような施設に適切な指導が行えることも届出制のメリットになると考えます。

�B動物福祉
　環境省告示の実験動物飼養保管基準では、施設の構造や飼養及び保管の方法についての基準を設けています。また、実験実施者及び飼養者への教育訓練、委員会の設置や指針の策定等も義務付けています。これらが適切に行われているかどうかを定期的に調査票や立ち入り調査時の目視や聞き取りで確認しておくことは動物福祉上意義があることと考えます。
　2004年に東京理科大学の生命科学研究所及び薬学部（共に千葉県野田市）で安全管理上（カルタヘナ法違反）及び動物福祉上（過密飼育、共食い、乱繁殖等）の問題が飼育業者の内部告発で判明し、国会やメディアでもとり上げられ話題になりました。内部告発を行った業者はその後、本件が原因で業務解約に追い込まれたと聞いていますが、もしこのとき千葉県による届出制と立ち入り調査が行われていれば、このような問題を未然に防ぐとまではいかなくとも、県が間に入り適切な指導を行うことにより、業者が業務解約に追い込まれることはなかったかもしれません。このような心ある人たちの相談の受け皿としても届出制は必要と考えます。

　上記�@から�Bまでの理由により、条例において実験動物飼養施設に対して、届出制を設けるべきです。また、兵庫県の愛護管理条例（第14条の2及び第34条2項）のような実験動物の所有者等の遵守事項を定め、違反が認められる場合には、知事が必要な措置命令を行うことができるように規定すべきです。
　さらに、届出制の検討にあたっては、用語等を右記のように定義すべきです。まず、届出の対象は、実験動物を飼養し、又は保管しようとする者（動物実験施設や実験動物生産・販売業者が想定される）と定義すべきです。そして、兵庫県の愛護管理条例施行規則の規定にならい、届出事項を「氏名及び住所、実験動物の種類及び数、施設の所在地及び設置場所、施設の構造及び規模、定款又は寄附行為の写し、施設の設置場所付近の見取図、施設の構造及び規模を示す図面」とすべきです。「実験動物」の定義は、環境省告示の実験動物飼養保管基準にならい、「教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供するため、施設で飼養又は保管をしている哺(ほ)乳類、鳥類又は爬(は)虫類に属する動物をいう。」と定義すべきです。

※参考事例：兵庫県、静岡県の例
●兵庫県では平成5年（1993年）から実験動物飼養施設（動物実験施設及び実験動物生産・販売業者含む）に対する届出制を運用しており、県内69機関（平成24年度末時点）に対し、届出受理時や届出変更受理時等に立ち入り調査を行っている。（別添資料）

●静岡県では昭和62年（1987年）頃から主に動物実験施設（46施設：平成24年度末時点）に対する調査票の回収、立ち入り調査を年に1回行っている。（別添資料）

【関係項目名】
�W.その他　4頁

【意見内容】
�@　大きさ及び闘争本能等に鑑み、人に危害を加えるおそれのある以下の犬について、「特定犬」として条例の中で指定すべきです。

●指定犬種：土佐犬、秋田犬、紀州犬、ピットブルテリア、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、ロットワイラー、ドーベルマン、ジャーマンシェパード、ドゴ・アルヘンティーノ、ウルフドッグ（オオカミと犬の交雑種）、及びその雑種。

●上記犬種等の他、体高・体長が一定のcmを超える犬。

�A　特定犬の飼い主は、特定犬の逸走防止や、特定犬が人の生命・身体及びその財産（人の飼う犬や猫等を含む）に危害を与えないように努めるようにすること、特定犬を飼養している旨が周囲に分かるように、特定犬のステッカー（標識）を掲示すること条例で規定すべきです。

【理由�@　�A】
　犬による咬傷事故は、毎年全国で起きていますが、犬によっては人の生命・身体に大きな危害を及ぼす事態になっています。個体差も考慮されますが、土佐犬やピットブルのような闘犬種の場合には、どんなに馴致された個体であっても、スイッチが入った時には飼い主でも制御不能になることも多く報告されています。
　千葉県においては、東京都のような闘犬禁止条例がなく、闘犬場が常設されていることもあり、土佐犬の飼養者（闘犬愛好者）が少なくありません。また、ピットブルテリアやドゴ・アルヘンティーノのブリーダーも八街市や旭市等におり、犬とイノシシを闘わせるような内部イベントを行う等、明らかに犬の闘争本能を刺激するような訓練を行っています。土佐犬については、近年、ピットブルとの交雑種を闘犬に用いるケースもあり、犬種指定だけでなく、「及びその雑種」とすることも必要です。ウルフドッグ（特定動物であるオオカミと犬の交雑種）については、群馬県の多頭飼育で問題になりましたが、狂犬病の予防接種や移動時に、野生動物の専門家による麻酔銃での保定に至った事例があります。
　国内では、茨城県や滋賀県において「特定犬」指定制度が運用されており、千葉県においても決して不可能な制度ではありません。飼い主の責務を強化し、住民の安心・安全を守るためにも、特定犬の指定制度は有用であるので、条例で規定すべきです。

【関係項目名】
�W.その他　4頁

【意見内容】
動物愛護管理施策の展開にあたって、関係部署・関係機関との連携を図っていくことを条例で明記すべきです。

【理由】
　今回の千葉県動物愛護管理条例の対象となるのは、動物愛護管理法第44条第4項に規定された愛護動物であり、多分野にわたる動物愛護管理施策を効率的に進めていくためには、動物愛護管理担当部局と他の関連部署や関係機関と連携を行うことが必要であり、条例中に明記することを求めます。

【関係項目名】
�W.その他　4頁

 【意見内容】
条例の目的に「生物多様性の保全を図る」を盛り込むべきです。

【理由】
　現在千葉県では、アライグマ、アカゲザル、キョン、カミツキガメ他特定外来生物種による生態系被害・農作物被害・生活被害が深刻化し、それぞれの防除計画や対策に県も市町村も追われている状態です。しかしながら、これらの問題の原因は、個人や動物取扱業者が意図的に遺棄したり、非意図的に逸走させた個体であるということに着目すべきであり、今後特定外来生物に指定されている種以外の種でも、今後同じような被害をもたらすことが示唆されています。国際空港である成田空港があるために輸入動物を扱う業者が多い千葉県内において、これ以上の輸入由来の外来生物による被害を防止すること、また、在来生物の多様性を保持・保護することを目的として、動物愛護管理条例の中にも生物多様性の保全を明記することは必要です。

以上