ALIVE News 2011.5 記 野上ふさ子
動物愛護(保護)管理法は、1973年に議員立法で制定され、同じく議員立法で1999年、2005年の改正が行われました。1999年、2005年の改正で、施行後5年をめどに見直しをすることが定められています。そこで、法律はどのような仕組みで改正に至るのかを簡単にご紹介します。
■議員立法とは
日本では、国会で制定される法律の制定や改正は、内閣提出(閣法)と議員発議(議員立法) の二つの方法で行われます。
議員立法は、衆議院の発議であれば衆議院議員20名以上(予算を伴う場合には50人以上)、 参議院では、参議院議員10名(予算を伴う場合は20人以上)の賛同が必要とされています。
(国会法56条)
議員立法は、有権者の陳情など民意の直接的反映をもとにして立案されることが多いようです。縦割りの官僚制度の弊害等で、新たな制度の新設が進展しない場合などに、「政治主導」で取組むというケースもあります。
法案の趣旨や内容の検討のために、各党では、党内にプロジェクトチームやワーキングチームなどを設け、業界や関係団体のヒアリングなどを通じて意見を集約し、関係省庁等による利害の調整を行いながら、法案の方向性を固めて行きます。
議員立法は、慣例的に、法案を審議する委員会の全会一致で行われることになっています。そのため、各政党間の提案内容の刷り合わせ作業、根回し、取り引きなどが行われ、紆余曲折を経て、
最終的に超党派の議員立法として成立します。
選挙で直接選ばれた国会議員が制定するため、すでに民意は組み上げられているとみなし、 その立法の過程が公開されることが少なく、さらに事前に与野党の調整が行われているため国会での審議もほとんど行われません。
そのため、議員立法は、国民の声がじかに比較的に速やかに反映されやすい利点がある反面、法律の立案・制定過程が不透明であるという難点もあるとされています。
日本の議員立法は、法律全体の中では1割もありません。(ちなみに、アメリカではすべての法案は基本的に議員立法で作られます。)
■閣法とは
日本では、法案の大部分は行政府の長である内閣が立案し、国会で審議し、多数決で成立させるという方式になっています。
議院内閣制という制度であるため、選挙で多数の支持を受けた政党(与党)が内閣を構成するため、必然的に国会では政府提案の法案が多数決で成立するということになります。
(事前協議によって全会一致で成立する法案もあります)
しかし、野党の側は、その法案のどこが問題か等を調べて、国会の審議の場で追及したりしますし、議事録にも残るので、この点に限っては透明性が確保されています。しかし、会期内の成立となると、どんなに議論を闘わせても、その意見が法案に盛り込まれる余地はなく、最終的には多数決で決まってしまいます。
ただし、もし、審議が紛糾して法案の採決が会期末までにできなかった場合には廃案となり、次の会期までに修正協議等が行われて再提出ということもありえます。
閣法の法案は、内閣法制局が法律そのもの及び他の関係法令との整合性等について厳重に審査するため、時間がかかる上に、条文化にあたって「とがった部分」は削られてしまうので、なかなか画期的な法律にはならないとされています。
(議員立法の場合は、衆議院法制局、参議院法制局が条文化の作業を行います)
■諮問機関:審議会とは
多くの場合、閣法の制定過程では、行政府(関係省庁)が課題の立案を行い、大臣はそれを政府外の委員からなる審議会に諮問し、その答申を受けて法案作成に反映されるという仕組みとなっています。
審議会は、その法律に関わる利害関係者(業界、学会、団体など)や有識者などで構成され、審議の結果を所轄の大臣に提言するという形です。
審議会は、国民の各界各層からの声を反映させる制度であるはずですが、現実には行政府の意向に沿う委員が選任されることや、単なる肩書きだけの人選であったり、利害関係の調停を何よりも優先するという傾向があります。また、まったくその分野に知識も経験もないような人が委員になっていることもあり、どういう基準で委員が選ばれるのかも不明です。
委員の選任の不透明さが問題視されるようになったせいか、近年では委員を公募することもあります。
⇒例:獣医事審議会委員の公募について
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/tikusui/100629.html
「応募される方は、以下のテーマの中から1つを選択し、意見・提言等を1,200字以内にまとめ、住所、氏名、生年月日、性別、職歴、電話番号を記入の上、写真を貼付した履歴書を添付し、下記の宛先に提出してください。」
ほとんどの場合、審議会は公開で行われ、議事録も公開されます。しかし、場合によっては非公開のものもあり、議事録も要旨のみであったり発言者名が伏せられることもあり、審議過程が不明瞭なケースもあります。
審議会がその分野の具体的課題について対応できない場合には、小委員会、検討会、作業部会(ワーキングチーム)といった子委員会を設けて、そこで審議し、その結果を親委員会に戻していくといった手続きも取られることがあります。
■検討小委員会とは
2010年6月に開かれた中央環境審議会動物愛護部会で出された環境省の資料は、このように述べています。
「動物愛護管理法の見直しについて 平成22年6月16日 環境省動物愛護管理室
1.経緯
(1)動物愛護管理法(昭和48年法律第105号)は、議員立法で制定され、その後平成11年、17年の2回の改正も議員立法で行われている。
(2)平成17年改正法の附則第9条において、「政府は、この法律の施行後5年を目途として、新法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされている。これに基づけば、平成18年6月の改正法施行5年後に当たる平成23年度を目途として施行状況の検討を行い、その後必要があれば平成24年の通常国会において法改正を行うことになる。
(略)
3.今後のスケジュール等
○ 課題として取り上げるべき事項が多岐にわたっていることから、中央環境審議会動物愛護部会のもとに小委員会を設置し、議論を行うのが望ましいと考える。
これを受けて、2010年8月に、動物愛護管理のあり方検討小委員会が設置され、 法改正の課題についての検討が始まりました。
今回の動物愛護法見直しの検討課題として出されているテーマは、これまで社会的に大きな問題となっているものや動物愛護団体等が長年要望してきたことが多く含まれ、動物愛護の政策立案を後押している力は、何よりも一般の世論であることがわかります。
鳥獣保護法の検討会と比較すると、鳥獣関係の委員会では、学識経験者と狩猟団体、農作物被害に関係する業界団体などで構成され、一般市民の声がほとんど反映されないのとは、大きな違いが見られます。
■パブリックコメントとは
法律は選挙で選ばれた国会議員が立法化するのですが、法律の施行のための政省令、施行規則などは所轄の行政機関が法令の範囲内で裁量で定めるものです。議会を経ないで制定されるものであるため、民主主義の見地から、事前に広く国民の意見を公募してその内容を反映させようとするものです。
ほとんどの場合、パブリックコメントは、政省令の案が固まった段階で行われるため、どんなに意見が寄せられても単に「聞き置く」程度に扱われることが多く、意見を出す側が徒労感を味わうこともまれではありません。
一方、他国では、合意形成が難しい法令の場合は、パブコメ後も何回も委員会を開催するなどして各々の反対意見をすり合わせ、できるだけ意見を集約し最大公約数になるように努めると言われます。
パブコメには数が多ければいいだろうと、同じ文面の意見が何千通も寄せられることもありますが、それは単に同一業界、同一団体の利害に関する1つの意見であって、数の多少で決まるものでもないとされています。
日本のパブリックコメントの制度は、平成17年6月の行政手続法改正により法制化されたばかりで、まだ充分に機能、定着しているとは言いがたいものですが、政策立案の過程に国民参加が確保されたことの意味は大きいということができます。
⇒パブリックコメント制度(意見公募手続制度)について
http://www.e-gov.go.jp/help/about_pb.html