平成25年12月11日
東京都福祉保健局健康安全部環境保健衛生課 御中
特定非営利活動法人地球生物会議(ALIVE)
「東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方について(答申素案)」
への意見
日頃からの動物愛護行政へのご尽力に感謝いたします。東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方についての答申素案に対して、以下、意見を提出いたします。
【該当箇所@】
@第4法改正に伴う新たな検討課題
1多頭飼育の適正化(2)多頭飼育者の届出 22頁
「都、区市町村が把握している多数の動物の飼養に起因して問題が生じている事例では、10頭未満の事例が約2割ある」
「2頭以上を届出の対象とした場合には、猫では、一世帯当たりの平均飼養頭数は約2頭であり(飼育実態調査)、極めて多くの飼い主が届出の対象となり、適正に飼養している飼い主への過剰な規制となりかねない。」
A第5東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
3取り組むべき課題と施策の方向性 (1)動物の適正飼養の啓発と徹底 30頁
「こうした問題事例への対応を行う体制が構築されることで、多頭飼育に起因する動物への虐待のおそれのある事態や周辺生活環境が損なわれる事態を早期に探知して対応することも可能になると考えられる。」
【意見内容@】
@(2)全体について、届出制を条例で規定する検討がなされるべきであるという旨に修正すべきです。
A<>内のように修正すべきです。
「こうした問題事例への対応を行う体制<の構築にあわせて、多頭飼育届出制が設けられることで>、多頭飼育に起因する動物への虐待のおそれのある事態や周辺生活環境が損なわれる事態を早期に探知して対応することも可能になると考えられる。」
【理由@】
答申素案において、過剰な規制となりかねない、頭数の問題ではない、社会的な誤解を生じるおそれがある、今現在の枠内でも対応できている等の理由により東京都にて多頭飼育の届出制が必要ではないと結論付けました。
しかしながら、全国の自治体では犬や猫等の多頭飼育の崩壊が起こり、特に猫の室内多頭飼育においては飼い主の死亡や失踪等で初めて判明するケースもあり、取り返しのつかない事態になってからボランティアの団体や個人、行政がその対応を迫られている事態が続いています。東京都でも答申素案23頁図9「問題となった多頭飼育事例の動物数」によると、確かに約2割が10頭未満ではありますが、問題事例の8割以上が10頭以上飼育に該当しており、届出制が問題解決の一つの手段として有効であることを裏付ける結果となっています。さらに、約8割の事例において問題となるのは10頭以上飼育している場合であり、猫の平均飼養頭数である「約2頭」は届出制を否定する根拠には成り得ないことは明白で、こうしたミスリードを誘うものは削除すべきです。また、多頭飼育において適切な管理を少しでも怠ることは、周囲への迷惑行為や生活環境への悪影響、動物虐待につながることとなり、実態を把握する手段のない地方公共団体においては、常に後手に回る対策しか取れません。
多頭飼育届出制はこうした受動的にしか動けない体制を一新し、多頭飼育にかかる諸問題に対して行政が率先して能動的な対策を講じ、動物の福祉を確保することで、多頭飼育に起因する人や生活環境、動物による迷惑等の問題を防止することにつながるものです。さらに、答申素案29頁に取り組むべき課題に記載された「不妊去勢手術の実施などの適切な繁殖制限による飼養頭数のコントロールについての普及啓発」を行っていくならば、当該飼い主の適正飼養数を超えた多頭飼育を抑止する効力のある多頭飼育届出制は必須の措置です。また、災害等の緊急事態発生時において、多頭飼育の所在地及び犬猫の頭数を明確に把握できているならば、犬猫の救護についても的確で効率的な対策を行うことができると考えられます。
以上のことから、多頭飼育に対して届出制度を設けることは過剰な規制ではなく、ボランティアや行政の負担を軽減し、人の生活環境や動物の健康・安全を確保する必要な規制であり、もって人と動物が共生する社会へ近づけることができると考えられます。
【該当箇所A】
・第4法改正に伴う新たな検討課題
3災害発生時の動物救護体制の充実強化 24頁
・第5 東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
3取り組むべき課題と施策の方向性(4)災害対策をはじめとする危機管理への的確な対応 36頁
【意見内容A】
@検討の対象にペット以外の、実験動物飼養施設や畜産動物飼養施設を加えるべきです。
A実験動物について、取り組むべき課題に実験動物飼養施設への定期的な立ち入り調査を含めるべきです。
B畜産動物においては、関連部署と情報の共有をすべきです。
【理由A】
@災害時の検討の対象となる動物は、当該答申素案や東京都の推進計画等の中では主として家庭動物や特定動物となっています。しかしながら、東日本大震災では多くの産業動物や学校飼養動物が混乱の中に取り残され、餓死といった悲惨な最期を遂げました。さらに危機管理を考えるならば、有害な病原体に汚染された動物や遺伝子組換え動物の逸走が起こりえる実験動物飼養施設についても注意を払うべきであり、こうした全ての動物における検討が為されない限り、十分かつ的確な災害対応にはなり得ません。
東日本大震災を踏まえた上で災害対策を講じるならば、産業動物や学校飼養動物、実験動物等の家庭動物以外の動物を含んだ議論がなされることを求めます。
A動物実験施設では公衆衛生上重大な問題のある、細菌・ウイルス感染実験や遺伝子組み換え実験、放射線や放射性物質を使用した実験がたくさん行われています。大規模災害時にこれらの拡散を防ぐためには、施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが不可欠ですが、国の調査ではこのどちらも把握されていません。全国の中でも実験動物飼養施設が多いと考えられる東京都は、万一の場合に備えて、普段から施設の所在や飼養保管状況を把握するため、兵庫県や静岡県の例に倣い、実験動物飼養施設への定期的な立ち入り調査を行うべきです。(詳細は意見内容Eの理由を参照のこと)
B産業動物について、東日本大震災では産業動物への対応を所管する官庁が環境省なのか、あるいは農水省なのかという混乱が生じ、対応の遅れが発生しました。さらに、動物愛護管理法の改正時の附帯決議の第十に「被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。」や、基本指針にも産業動物の適正な取扱いの推進として講ずべき施策に「ウ 災害時における産業動物の取扱いについても、情報共有を図りつつ、関係省庁が協力して検討すること。」という規定が盛り込まれました。
迅速かつ適切な対応が求められる災害時において、混乱を避け、上記付帯決議や基本指針に沿った対応を行うためには、あらかじめ動物愛護行政も産業動物飼養施設について把握する必要があり、動物愛護管理部署において管轄内の全農家リスト、少なくとも各飼養頭羽数データを共有しておくべきです。
【該当箇所B】
第4法改正に伴う新たな検討課題
3犬及び猫の引取り 25頁
「今後も都条例等の規定及び運用を徹底していくことで、改正法の趣旨である飼い主に対する飼養動物の終生飼養を促すことによる引取数のより一層の減少を目指していくことが望まれる。」
【意見内容B】
<>内を追加すべきです。
「今後も都条例等の規定及び運用を徹底していくことで、改正法の趣旨である飼い主に対する飼養動物の終生飼養を促すことによる引取数のより一層の減少を目指していくことが望まれる。 <また、警察機関と連携して、引取りが拒否された後の犬猫に対するフォロー体制も検討する必要がある。>」
【理由B】
東京都では動物愛護管理法第35条に先行して、都の動物愛護条例や事務取扱要領に基づいて、やむを得ない理由以外の引取りを行っていません。安易な引取りを行わないことで引取り数を減らしていくことは殺処分の減少に繋がりますが、それと同時に引取りが拒否された後のフォロー体制をしっかりと築かなければ、動物の収容数は下向いていきません。
行政に持ち込んでも引取り拒否され、仕方ないからその帰路に犬や猫を遺棄する、あるいは殺すという事案が発生することは十分に考えられ、結局所有者不明の犬猫として行政に引き取られるか、あるいはそこまでたどり着かずに死亡してしまいます。動物を遺棄することや動物を正当な理由なく殺すことは紛う事なき犯罪ですが、動物遺棄虐待事件に対する警察の対応は千差万別であるという現状があります。こうした犯罪の発生を防ぎ、警察や地方公共団体、動物愛護団体等に過分な負担がかかることを防ぎ円滑な連携が行われるよう、事例別対応マニュアル等の作成といった引取り拒否後を含めた総合的な体制の検討を行うべきです。
【該当箇所C】
@3動物愛護管理推進計画における各施策の取り組み状況
3地域の特性を踏まえた取組の推進(5)小中学校等の教育現場での動物愛護管理の普及啓発活動への支援(施策15)16頁
「学校教育における動物愛護等の普及において、学校で飼養している動物を活用している事例もあり、その場合、動物の取扱いが適正に行われる必要がある。現在、都における学校飼養動物に関する事業については、東京都獣医師会との連携により、教職員等を対象とした動物の適正飼養に関する研修や、動物由来感染症に関する講習会が実施されており、日々の飼養管理、感染症予防、動物の疾病及び死亡等への対応などが周知されている。」
A第5東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
3取り組むべき課題と施策の方向性(1)動物の適正飼養の啓発と徹底 31頁
「なお、動物教室等の実施にあたっては、取り扱う動物のストレスを考慮し、施設の機能を活用したプログラムや教材等の作成、動物愛護推進員等との連携推進等、効果的な普及啓発の実施方法についてさらに検討を進めていく必要がある。」
【意見内容C】
@<>内のように修正するべきです。
「学校教育における動物愛護等の普及において、学校で飼養している動物を活用している事例もあり、その場合、動物の取扱いが適正に行われる必要がある。現在、都における学校飼養動物に関する事業については、東京都獣医師会との連携により、教職員等を対象とした動物の適正飼養に関する研修や、動物由来感染症に関する講習会が実施されて<はいるが、日々の飼養管理、感染症予防、動物の疾病及び死亡等への対応などが周知されているとはいえない状況も散見される。>」
A<>内を追加するべきです。
「なお、動物教室等の実施にあたっては、取り扱う動物<種及び個体ごとの適性、>ストレスを考慮し、施設の機能を活用したプログラムや教材等の作成、動物愛護推進員等との連携推進等、効果的な普及啓発の実施方法についてさらに検討を進めていく必要がある。」
【理由C】
学校教育における動物愛護等の普及であるとして、学校で飼養している動物を活用している事例もありますが、それらの多くは複数の獣医師等が学校を訪問して不特定多数の児童にうさぎやモルモット、鶏等を抱かせるといった行為に主眼が置かれており、教職員等を対象とした動物の適正飼養に関する研修等においても「触れ合い」のレクチャーが優先され、飼養講習は生かすために最低限必要な事しか伝えられていないという指摘もあることから、事業のあり方そのものに疑問がもたれています。
具体例を挙げると、平成23年度に東京都内小学校で行われた「動物ふれあい教室」事業の実施要項には、「区市町村立小学校の主に第1学年及び第2学年の児童を対象とし、児童が飼育動物とふれあう体験を通して、動物の生態や正しい飼い方等を学ぶ」等の記載がありますが、大人でも容易ではないうさぎ等の適正飼養(生理生態、行動ニーズ等含む)をその年頃の子どもに理解させることが可能であるかは発達段階を踏まえると疑問であり、実際にそれらの知識習得の場になってないとの指摘が寄せられています。
また、その実施にあたって事業委託先の獣医師会が作成したとされる指導計画書には、「動物に対する親しみをわかせ、動物に興味を持たせる」とあり、当日のタイムスケジュールによると「動物の話」は8分のみで、他の時間は動物を抱いたり触れ合わせたりすることに充てられています。こうしたことから、「動物の生態や正しい飼い方を学ぶ」とする目的が達成されているとは考えにくく、さらに学校側の準備項目として、「学校の動物を、15分前にはダンボール等に入れて会場に持参してください」等の記載もあることから、突然の環境変化、対不特定多数の触れ合いに供される動物が受けるストレスへの配慮が欠如している状況も考えられます。
学校飼育動物が必要以上に苦しまぬよう獣医師会指導を受けることに問題はありませんが、事業継続のために動物の導入が推奨されるといった本末転倒な事態も発生しており、注意が必要です。学校で動物を飼養している限り、特殊な場合を除いては、暑さ、寒さの改善は現実的に困難であり、日々の飼養管理が適切ではない学校が散見される現状もさることながら、病気を患った動物の通院加療及び介護等を担っているのは主に保護者や地域支援者であることから、「適正飼養」「終生飼養」とも矛盾しており、これらの実態を無視して、学校飼育動物の活用を動物愛護等の普及に関連付けるのは問題があります。
なお、獣医師や動物愛護推進員にあっても、動物福祉を前提とした動物介在活動の実践者(施設評価、適性動物、個体ごとの適性を見極められる人材)は多くはないといわれていること等に鑑み、生きた動物を利用するのではなく、現在発生している喫緊の課題、特に行政収容される動物をなくしていくために優先されるべき項目(終生飼育、所有者の明示、繁殖制限、猫の室内飼育等)に主眼を置き、良質な啓発教材の収集とそれらを活用した効果的な普及啓発の実施方法について検討すべきです。
当会が行った行政調査によると、110の自治体のうち、動物介在活動等の知識習得者がいるとする自治体はわずか7であり、その中には「触れ合い」に適しているとはいえない動物種を選定している自治体も含まれることから、動物福祉を前提とした適切な動物介在活動が行われているのはごくわずかと考えられ、動物愛護管理行政等が動物を用いた動物愛護教育を行うのは時期尚早と言わざるを得ません。
【該当箇所D】
@第5 東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
1 人と動物との共生社会の実現に向けて 3段落目 25頁
「共生社会として目指すべき姿とは、動物愛護管理の推進が地域コミュニティの活性化を促し、それを基盤として更に動物愛護管理につながる発展の連鎖を生み出す社会であり、そのためには、動物が地域の一員として広く認識されることが必要である。地域の一員としての動物とは、飼い主をはじめとする動物に関わる全ての人々の地域の一員としての自覚と行動によって育まれ定着していくものである。言うならば、個人と地域社会の成熟の上に、はじめて動物は地域の一員となるのである。」
A第5 東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
1 人と動物との共生社会の実現に向けて 3段落目 25頁-26頁
「東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方は、都条例、現行推進計画をはじめとするこれまでの施策の成果を踏まえ、「人と動物との調和のとれた共生社会の実現」を目指した様々な施策の方向性を継承しつつ、発展させていくことが効率的かつ効果的であると考える。そのためにも、動物愛護管理の推進が効果的に行われるような体制を構築することが重要である。」
【意見内容D】
@<>内を追加すべきです。
「共生社会として目指すべき姿とは、<全ての動物の生活の質(QOL)が保障され、>動物愛護管理の推進が地域コミュニティの活性化を促し、それを基盤としてさらに動物愛護管理につながる発展の連鎖を生み出す社会であり、そのためには、動物が地域の一員として広く認識されることが必要である。」
A<>内を追加すべきです。
「東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方は、都条例、現行推進計画をはじめとするこれまでの施策の成果を踏まえ、「人と動物との調和のとれた共生社会の実現」を目指した様々な施策の方向性を継承しつつ、<今後は客観的な動物福祉に依拠し、>発展させていくことが効率的かつ効果的であると考える。そのためにも、動物愛護管理の推進が効果的に行われるような体制を構築することが重要である。」
【理由D】
動物愛護管理法には日本が目指すべき方向として「人と動物の共生」が掲げられており、東京都においては以前より動物愛護条例や推進計画で、人と動物との調和のとれた「共生社会」の実現を目標としています。しかしながら、個人の主観に依った動物愛護では、その方法が千差万別であるために人間同士の衝突が起きたり、時には飼い殺しのような状態が発生する蓋然性が高く、いつまで経っても動物を「家族の一員から地域の一員へ」と昇格させることはできません。
「動物好きの人が自分の好きな動物だけと共生する社会」ではなく、「全ての人が全ての動物と共生する社会」を目指すならば、主観の上にしか成り立たない動物愛護ではなく、客観的・科学的なデータの下で人の占有下にある動物の幸福を考えた動物福祉の概念に基礎づけられるべきであり、こうした価値観の転換を行うためにも追記がなされるべきです。
【該当箇所E】
・第3動物愛護管理推進計画における各施策の取り組み状況
2事業者の社会責任の徹底(5)産業動物及び実験動物の適正な取扱いへの対応(施策10)16-17頁
「畜産業者等に対して、家畜防疫等の観点から関係部局と連携し、許可施設である畜舎等における動物の取扱いや施設の管理について監視指導が行われている。また、実験動物施設については、基本指針において「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」に基づく自主管理を基本として実験動物を取扱うこととなっている。実験動物が適正に取り扱われるよう「3Rの原則」(代替法の活用:Replacement、使用数の削減:Reduction、苦痛の軽減:Refinement)等を普及啓発していくため、東京都は、平成20年度に中型のサル等の特定動物の飼養許可を有する大学、病院、研究機関などを中心に、実験動物の飼養状況について、アンケート調査を実施した。 調査の結果、都内の実験動物施設では、基準等に基づき、マニュアル等の文書により継続的かつ安定的な自主管理が適正に行われていることが明らかとなっている。 実験動物施設における実験動物の飼養状況の把握については、国による定期的な調査が行われていることから、今後は東京都による定期的な調査による実態把握の必要性は低いと考えられた。」
・第5 東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方
3取り組むべき課題と施策の方向性(2)事業者等による動物の適正な取扱いの推進 33頁
「産業動物及び実験動物については、「5つの自由」や「3Rの原則」等の動物福祉に配慮した適正な取扱いと利用の観点から、事業者等の自主管理により「産業動物の飼養及び保管に関する基準」や「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」が適正に遵守されるよう、関係省庁等国の動きに配慮しつつ、必要に応じて、関係部局や関係団体と連携した普及啓発等を行っていくことが求められる。」
【意見内容E】
@実験動物について
(1)第3動物愛護管理推進計画における各施策の取り組み状況
2事業者の社会責任の徹底(5)産業動物及び実験動物の適正な取扱いへの対応(施策10)16-17頁
<>内の部分を削除すべきです。
「また、実験動物施設については、基本指針において「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」に基づく自主管理を基本として実験動物を取扱うこととなっている。実験動物が適正に取り扱われるよう「3Rの原則」(代替法の活用:Replacement、使用数の削減:Reduction、苦痛の軽減:Refinement)等を普及啓発していくため、東京都は、平成20年度に中型のサル等の特定動物の飼養許可を有する大学、病院、研究機関などを中心に、実験動物の飼養状況について、アンケート調査を実施した。<調査の結果、都内の実験動物施設では、基準等に基づき、マニュアル等の文書により継続的かつ安定的な自主管理が適正に行われていることが明らかとなっている。
実験動物施設における実験動物の飼養状況の把握については、国による定期的な調査が行われていることから、今後は東京都による定期的な調査による実態把握の必要性は低いと考えられた。>」
(2)条例で届出制を定めて実験動物飼養施設の立ち入り調査を行っている兵庫県や、条例による規定がなくても動物実験施設の立ち入り調査を行っている静岡県に倣って、災害時対策や公衆衛生、動物福祉の観点から、実験動物飼養施設への定期的な立ち入り調査を行うことを取り組むべき課題として記載すべきです。
A産業動物について災害対策や適正飼養の普及啓発を有効に行っていくためにも、関連部署と情報の共有を図り、動物愛護担当部署においても産業動物飼養施設の所在や各飼養頭羽数データを把握することを、さらにアニマルウェルフェア指針の普及啓発と、そのモニタリングを、今後取り組むべき課題として明記すべきです。
【理由E】
@実験動物について
「中型のサル等の特定動物の飼養許可を有する大学、病院、研究機関などを中心に・・・アンケート調査を実施した・・・結果、都内の実験動物施設では、基準等に基づき、マニュアル等の文書により継続的かつ安定的な自主管理が適正に行われていることが明らかとなっている。」とのことですが、例えば文科省のアンケート調査によれば、動物実験を行っている大学だけでも、都内に50以上の大学があり、中には医学部を持たないような中小の私立大学が多くあります。これらの中にはマウスやラットが中心で、サル等の特定動物は飼養していない大学が多くあると思われます。一部の特定動物を飼養している機関で自主管理が適正に行われているからといって、全ての機関で自主管理が適正に行われているとは限りません。
また、「実験動物の飼養状況の把握については、国による定期的な調査が行われている」とのことですが、これは全くの間違いです。国による定期的な調査は環境省と文科省が行っているアンケート調査ですが、これらの内容は、動物実験実施の有無、指針や委員会の設置の有無、購入・飼養した動物種等にとどまるものであり、施設の所在や状況はおろか飼養動物数さえも把握されていません。
従って「東京都による定期的な調査による実態把握の必要性は低い」との結論は誤りです。
むしろ事実は全く逆で、国がほとんど実態を把握していないからこそ、全国でも実験動物飼養施設が多いと考えられる東京都が積極的に実態把握を行うべきです。
以下に具体的な理由を示します。
(1)災害時対策
一昨年の東日本大震災でも、大きな事故は報告されていないものの、ラックの転倒やケージの落下、ライフラインの停止等で多くの実験動物が死亡し、また施設内での逸走も起こっています。今後、同様な災害が東京や関東地域で起こった場合、災害対策をきちんとしていない施設等から大きな事故が起こらないとも限りません。そのような場合に備えて、普段から実験動物飼養施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが重要と考えます。
去年改正された動物愛護管理法では、動物愛護管理推進計画に定める事項に、「災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項」が追加されました。実験動物が例外であるとはされておらず、実験動物の災害時対策のためには施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが不可欠です。
また、環境省告示の実験動物飼養保管基準では、(実験動物の)「管理者は、関係行政機関との連携の下、地域防災計画等との整合を図りつつ、地震、火災等の緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するもの」とされており、各施設の防災計画がきちんと作成されているか、準備がされているかを確認する必要もあります。
(2)公衆衛生
動物実験施設では細菌・ウイルス感染実験や遺伝子組み換え実験、放射線や放射性物質を使用した実験がたくさん行われています。特に大学医学部では遺伝子組み換え動物を使用した実験が全体の半数近くにも上ります(2013年ALIVE調査より)。これらは厚労省や文科省の法律で規制されていますが、実際には動物実験施設のカルタヘナ法違反が後を絶たず、現場の意識が十分であるとは言えません。東京都内でも過去に少なくとも日本大学、国立国際医療センター、第一三共株式会社、国立病院機構東京医療センター、日本化薬株式会社医薬研究所、協和発酵キリン株式会社東京リサーチパークでカルタヘナ法違反が判明しています(文科省サイトの報道資料より)。前述のような災害等でひとたびこれらの拡散が生じれば、取り返しのつかない事態に陥る危険性があります。そのようなことを未然に防ぐためにも、普段から施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことは有効であると考えます。
また、静岡県に対する開示請求から、動物実験施設で狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射がされてないケースが多々あることがうかがえます。動物実験施設も狂犬病予防法の例外ではなく、このような施設に適切な指導が行えることも立ち入り調査のメリットになると考えます。
(3)動物福祉
環境省告示の実験動物飼養保管基準では、施設の構造や飼養及び保管の方法についての基準を設けています。また、実験実施者及び飼養者への教育訓練、委員会の設置や指針の策定等も義務付けています。これらが適切に行われているかどうかを定期的に調査票や立ち入り調査時の目視や聞き取りで確認しておくことは動物福祉上の意義があることと考えます。
※参考事例:兵庫県、静岡県の例
・ 兵庫県では平成5年(1993年)から実験動物飼養施設(動物実験施設及び実験動物生産・販売業者含む)に対する届出制を運用しており、県内69機関(平成24年度末時点)に対し、届出受理時や届出変更受理時等に立ち入り調査を行っている。
・ 静岡県では昭和62年(1987年)頃から主に動物実験施設(46施設:平成24年度末時点)に対する調査票の回収、立ち入り調査を年に1回行っている。
A産業動物について
当会の調査では、畜産動物施設の所在を把握している自治体(動物愛護担当)は全体の21%に留まっています。該当箇所Aの部分でも記載しましたが、災害対策においては動物愛護担当部署も産業動物飼養施設を把握する必要が大いにあります。
さらにこれに加えて、基本指針には「 (7) 産業動物の適正な取扱いの推進 A講ずべき施策 ア 国は、国際的な動向も踏まえながら、動物の愛護及び管理に配慮した産業動物の飼養等の在り方を検討し、産業動物の飼養及び保管に関する基準に反映すること。 イ 産業動物の性格に応じた動物の愛護及び管理の必要性に関する普及啓発を推進すること。」という記載があり、農水省「アニマルウェルフェア指針」の普及啓発を行う上でも、現在の産業動物の飼養環境の実態を把握する必要があります。また、普及啓発が有効になされているか各農家の飼養環境等の定期的なアンケート調査を実施し、普及啓発がどれだけ影響したのか、してないのかをモニタリングし、効果検証をする必要があります。
日本における産業動物を取り巻く環境は毎年変化しており、非常事態における対策や普及啓発の実態を調査する上でも、地方公共団体が主体となって畜産動物の最新の実態について把握する必要があり、そのために動物愛護担当部署と畜産動物関連部署との情報共有について記載すべきです。
以上
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