■最新号の巻頭言

ALIVE　No.120　2017.10.01

　今回の会報は特に法律や条例と言った「定め」と動物たちの置かれている状況、その実態、その関係性に視点を置いてみていただきたい。移動展示販売業のレポートでは、「法があっても遵守されなければ意味がない」その実例と、市民側が改善を求める際に法が実行力、改善の強制力になる例を。また茨城県の報告は条例が制定されることの意義、実際に運用された際の効果や課題などを明らかにしている。要は、まず法、条例といった規則・規制があるのが前提、それに市民運動側が関わり、その適切な運用をフォローする。双方がうまく回った時に動物たちの環境改善は大きな成果を上げる。市民運動にはこの視点が重要だろう。
　ところで、９月１４日国際自然保護連合が絶滅の恐れがあるレッドリスト２０１７年度版を発表した。世界中の動植物８万６９６７種を調査しその中の２万５０６２種を危惧種に指定している。昨年は２万３９２８種だったので１１３４種が新たに追加されたことになる。現在は生物の大量絶滅期、種の多様性はかつてない速さで進行している。動物の関わり合いについて人間はもっと真摯な態度で取り組まなければならない。取返しがつかなくなる前に。

北村孝至（ALIVE代表）

ALIVE　No.119　2017.04.01

　茨城県牛久市において、ＡＬＩＶＥ茨城の地域代表である堀江尚子さんらグループが「トラバサミ使用禁止」を成し遂げた。地元の牛久市議会に「トラバサミワナの使用等制限（禁止）ならびに回収に関する請願」を提出し、全会一致で採尺されたのだ。
　トラバサミの被害にあう動物たちに心を痛めて続けてこられた活動が、鳥獣保護法の壁も超えて大きな成果をあげた。動物たちの置かれた環境を改善したい、救いたいという願いが、私たち一般市民の選択や行動により実現するのだということを見事に証明してくださった。
　活動を進めていく中では、目の前の現実にくじけそうになる瞬間が必ずある。それでも、諦めずに進んでいくことでしかその現実を変えることはできない。堀江さんらの地道で継続的な活動の賜物である今回の成果は、市民活動として高く評価されるべきであると同時に、全国の会員の皆様の日頃からの熱意あるご活動にも大きな希望と勇気を与えてくださったのではないだろうか。
　この素晴らしい手本と前例をもって、全国各地でトラバサミ全面禁止の波が広がっていくことを期待したい。

北村孝至（ALIVE代表）

ALIVE　No.118　2016.10.01

　野上前代表が当時の文部省小学校課を訪れ、小学校の動物飼育に関する要望を行ったのは平成18年だった。その後には、元大阪支部代表が教育委員会に質問状の送付を行っている。過去を遡ると、当会は長年に渡り、小学校等での不適切な動物飼育の事例が後を絶たない問題をとりあげ、新聞等のメディアを通して社会に発信してきた。
　平成18年から「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」には、学校、福祉施設等における飼養及び保管が含まれるようになったが、教育現場で遵守されているとは言い難い状況だという。本誌にて詳しく報告をしている通り、昨今の動物飼育のあり方を変えるには様々な障壁があり、これまでの改訂の経緯を踏まえたうえで現行の学習指導要領と解説書を読み解く、という作業が不可欠なのだとわかる。
　今回の学習指導要領等の改訂では、自然環境や生命を尊重し、科学的に探究する態度、規範意識を育むことなど、本来の学習目的に近づけるためにも当会からも要望を行っている。
　幼稚園や小学校などの初等教育における環境や経験が子どもに与える影響はとても大きく、裏を返すと逆効果となるリスクもはらんでいる。今回の学習指導要領等の改訂にあたり、学校における動物飼育をめぐる問題について改めて深く考えていただきたい。

北村孝至（ALIVE代表）

ALIVE　No.117　2016.04.01

　オオタカは国内希少動植物種に指定されているが、環境省はその解除を行う予定である。
　東京電力福一原発事故後、日本各地で再生可能エネルギーの建設計画が目白押しとなっている。例えば秋田県は１０００基の風車を建てるとしているし、福島でも阿武隈風力として２００基、沿岸部風力として１５０基の計画が進められている。自然エネルギーといえば聞こえは良いが、本誌で小林桂子さんが太陽光の問題点を指摘してくださっているように環境負荷は極めて高い。特に風力発電は建設地を開発するだけでなく搬入路でも大規模な環境破壊を行い、さらに建設後は低周波によって多くの生物が姿を消すという。こうした建設に対して地域住民からは反対運動が起るのだが、その際、推進派としてはオオタカのような指定希少種が生息していれば建設計画に支障が出るということだろう。
　自然エネルギーの推進と騒ぐ前に、私たちはエネルギーを大量に浪費する社会を見直すべきではないか。貴重な野生動植物の生息環境を奪ってまでこれ以上のエネルギーが必要なのだろうか。華美で贅沢な生活は満たされない心の裏返しにすぎない。人間にとっても動物にとっても幸福な生き方とはどういうことかをもっと考えていきたい。

北村孝至（ALIVE代表）

ALIVE　No.116　2015.10.01

　「日本奥地紀行」をご存知だろうか。英国人女性イザベラ・バード氏が１８７８年に東北から北海道にかけて旅し、日本人の生活や文化、風景を描写していく旅行記なのだが、外国人の目に映る当時の日本の様子が克明に描かれていて興味深い。現代とは別世界で、わずか百数十年ばかりでの激変ぶりには驚くばかりだ。
　旅の行く先々で馬を乗り換えることになるため馬の記述も多くあるが、扱いにくい当時の馬たちに対して、東北では日本人が怒ったり、叩いたり、鞭を当てたり、まして虐待するようなことを目にしない。犬は人間の家族の様であり痩せてはいてもみな穏やかである。肉食は全般的に嫌われており、バード氏は鶏を手に入れるのに苦労し、時には食べるのではなく卵を取るためと嘘もつく。
　動物たちを大々的に利用する社会構造は現代では当たり前となっているが、実は近年急速に構築されたものである。私は、近い将来必ず行き過ぎた科学は再考されると思っているのだが、金儲け優先で動物をモノとしかみなさずに商業利用する現在の動物の取り扱いは、最も愚かな行為として断罪されるのではないだろうか。
　私たち日本人のＤＮＡに刻まれた生命観、動物に対する倫理観は取り戻せるのだろうか―？

北村孝至（ALIVE代表）

ALIVE　No.115　2015.07.01

　生物の大量絶滅は過去５回起こっており、現在は第６回目が進行中であるという。その速さは過去５回に比べると１千〜１万倍なのだそうだ。
　反公害闘争を貫き、住民運動について多くの著作・指針を残した松下竜一氏は『暗黒の思想を』の中で、「誰かの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのであれば、その文化生活をこそ問い直さねばならない」と記した。これを当会流に言い換えるとすれば、「やみくもな自然界からの収奪を許容することで成り立つ文化生活であれば、その文化生活をこそ問い直さねばならない」とでもなるのだろうか。
　欲望に歯止めをかけず目先の利益や娯楽のために生態系や野生動物の生息環境を破壊し、収奪の限りを尽くす商業利用、その行きつく先、帰結は言うまでもない。確かに人間は多くの生き物の犠牲の上に生きている。しかしそれは決して、際限のない生き物たちからの収奪、あるいは避けることが可能な、必要のない犠牲を強いることの免罪符になってはならないはずだ。
　今号でも、絶滅が危惧されているカメの密輸出未遂事件、国際的にも取引きが規制されている猛禽類・フクロウのパチンコ店での展示など、人間の欲望に翻弄され、犠牲になっている動物たちの現状を報告している。当会ができるのは僅かなことかもしれない。しかし、依然としてやらなければならないことは山積みだ。

北村孝至（ALIVE共同代表）

ALIVE　No.114　2015.04.01

　「地球上に生息する生き物の80％は寄生生物である」といった一文を見て少し考えたことがある。例えば、家庭で飼われる犬や猫は人間の与える食物で生命を維持しているのだが、これをもって犬、猫は人間に寄生する種であるといえるのか？この問いに、「寄生だ」との声もあるのだろうが、家族の一員とみなしている多くの人々は、「揺るぎない信頼と純粋な愛情を返し、癒しと安らぎを与えてくれる犬や猫とはまさに共生関係にあり、寄生ではない」と答えるのではないか。実際に人間にとって犬や猫は特別な存在であり、要はそれに気付くか否かであって、寄生かそうでないかの判断は人間側の意識によって決まるともいえる。
　この見方を野生動物や畜産動物にも広めてみよう。クマは発見次第殺さなければならない害獣か、それとも同じ地球上の生態系を維持する掛替えのない存在か？牛や豚は単なる食べ物か、あるいは感情豊かな動物であり人間が福祉を考えなければならない対象か？実は、動物たちの位置づけは私たち人間側の意識の問題である。動物との関わり合いで問われているのは、まさに私たち人間の意識、認識なのである。
　駆除一辺倒の外来種、犬猫の殺処分など、今回の会報も私たち人間の意識に訴える問題満載である。是非ともに考えてもらいたい。

北村孝至（ALIVE共同代表）

ALIVE　No.113　2015.01.01

　長年障害児教育に携わってこられた松井和子先生が「私の出会ったこどもたち」を出版された。描かれる子どもたちの情景は障害に対する私たちの先入観（あるいは偏見？）を一変させる力があり、また現実を踏まえた障害児教育あり方、支援の問題点への訴えは強い説得力を持ち必読の一冊である。
　ただ、一点気に掛かったのは障害児の大幅な増加の指摘で、その原因として松井先生は高度経済成長期以降の公害、環境汚染、日々の生活に浸透する化学物質、加えて核開発に関わる放射能汚染などを考察されている。
　当会は人間と動物の関係を主テーマに様々な問題点を挙げ、解決を図っていくことを目的にしているが、その基本には現代科学への問いかけがなければならない。現代の人間が持つ生命感・倫理に対する反省を促し、科学の在り方を抜本的に変えない限りこの先自然も私たち人間の健康も損なわれていくばかりだろう。
　とはいえ、現実には目の前の小さな改善をやっていくしかないのだが、そうした中にあって今回のＮＤＮ・岡田代表の記事は私たちに勇気を与えてくれるものとなっている。充実した活動は多くの成果をあげており高く評価されるべきで、市民運動の手本となる。
　この他、今回も動物実験、畜産の福祉や動物園問題など取り上げている。千葉県で条例が制定されたといった明るい話題もある。２０１５年はこうした話題をさらに増やしていきたい。

北村孝至（ALIVE共同代表）

ALIVE　No.112　2014.10.1

　アフリカゾウの密猟がまた増加傾向にあると報道があった。高価で取引される象牙、それが各地で起こる紛争の資金源になっているという。一部の人間たちの象牙の置物が欲しいという欲望、それは単に像を虐殺し生態系を破壊するにとどまらず、武器に姿を代えて人の殺し合いへとつながっている。実は、動物に対する人間の身勝手な欲望や思慮を欠いた接し方は、動物たちを苦しめるだけではなく、人間社会に悲劇をもたらすことが多い。

　深刻な食害が問題となっている鹿の増加は天敵のオオカミを絶滅させてしまった帰結であるし、中山間地のイノシシはイノブタとなり多産系となって農業被害を拡大させている。同様に農業被害だけでなく民家にも侵入し屋根裏の住民となっているハクビシンは外来生物を安易に放獣してしまったためであり、今私たちはそのツケを払わされているということに他ならない。

　人間の不幸を軽減する、そのためにも動物や自然に対する接し方をあらゆる面で見つめなおし、転換することが求められている。

　今回の会報も多岐に渡る動物問題を取り上げている。動物虐待といった社会の病理の現状とその対処、対行政活動として千葉県条例制定の要望、また西山ゆうこ先生のセミナーを報告し、先進国の現状を指針として示した。この他、とらばさみ、畜産動物の福祉、海外事業等にも触れた。当会活動にご理解とご支援をお願いしたい。

北村孝至（ALIVE共同代表）

ALIVE　No.111　2014.7.1

　人間と関わる動物たちの置かれた状況を調べ不適切な飼育があれば是正させる、あるいは、貴重な野生種の生息地を保全し生物の多様性を保持しようといった主張は多くの方の理解、賛同を得ることができます。 

　しかし、こうした支持を受けた主張が受け入れられて、現在の日本社会がよりよい方向に改善されているのかといえば、必ずしも答えはイエスではありません。 

　それは、一度社会の構造や組織が出来上がり動き出してしまうと、その流れの方向を変えたりさらには止めたりするのが極めて難しくなるからです。腐敗した利権構造が批判の的になることはよくありますが、一向に改善される兆しが見えないことは端的な例でしょう。 

　市民運動が効率的に成果を上げるために、効果的な活動方針を常に検討していくことが求められます。

　今回の号では、動物実験は単に医療現場に限るものではなく、多岐の分野に渡って私たちの生活に深く浸透していることが示されています。それは、私たち市民、消費者の選択が多くの動物たちの置かれた環境の改善を実現できるということです。それが一つの社会の変革につながる布石になることを期待しています。これからも当会は人間にも動物にも優しい社会の実現に向けて活動します。ご支援のほどお願い申し上げます。

北村孝至（ALIVE共同代表）

ALIVE　No.110　2014.4.1

　ｉＰＳ細胞等の科学研究にスポットライトが当たる中、生命倫理を求める声は風前の灯となってしまっている印象を受けておられる方も多いのではないかと思います。

　そういった難しい状況の中で私たちの動物福祉の向上を求める活動には、いつも現実と理想の狭間で悩みつつも、少しでも動物福祉改善につながる現実的な選択肢を提示していく必要があると考えて活動をさせていただいていることは前々号でお伝えした通りです。

　しかし、その際に基軸においていることは、私たちの活動は会員・寄付者の皆様の信託に応えるものなのかどうかという観点です。当然ながら当会の活動は会員・寄付者の皆様からのご支援により成立しているものです。 皆様から信託されている内容を確認させていただく機会として日々の事務局等へのご連絡とは別に、５月に予定している交流会（ご参加が難しい方は遠慮なくメール等でご意見お寄せください）があります。

　一方、皆様に当会の活動状況をチェックいただく機会として会報やＨＰ・AA-news等での活動報告があります。これまでは特に後者の取り組みが会報に集中していましたが、今後は会報以外の方法で皆様に報告させていただく機会を増やしてまいりたいと考えています。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.109　2014.1.1

　改正動愛法が施行された直後にも関わらず凄惨な動物虐待事件が相次ぎました。改正動愛法の施行の報道は限定的で一般の人々の元に広く行き渡るほどではなかったという印象です。

　そんな中で相次いだ動物虐待事件はペット問題に対して、充実度が増したと評価されていた改正動愛法の施行を嘲笑うかのように発生してしまいました。短期的には改正動愛法を警察および一般の人々に周知することが重要と考えております。

　また、中長期的には実験動物、畜産動物の福祉向上に資する実行性のある法改正運動として一般常識に働きかける活動が必須と考えております。これまで動愛法の改正の中で無視されてきました実験動物や畜産動物に係る法規制化はＡＬＩＶＥにとって最も重要な活動テーマと考え、その為の調査・研究活動を実施中です。

　改正動愛法施行後の今、周知徹底のための活動や改正法のペット問題に対する不十分な点を今後より充実させていくために、一般常識に働きかける運動は会員の皆様による日々の活動が大きな力となります。パネル展やチラシ配り、等の目立った活動だけではなく、例えば日々クルマやカバンにリーフレットやチラシを常備しつつ、「今だ！」という時にそれらをご活用いただくことが考えられます。この「今だ！」は知人と動物の話題になった時や自然食レストラン等のチラシを置いてくれそうな所を見つけた時、政治家が駅頭にいた時などが考えられます。

　必要なリーフレット、チラシは会員の皆様には無料で送付させていただきますので、ご希望がありましたら事務局まで遠慮なくお申し付け下さい。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.108　2013.10.1

　　当会の活動は創立時からの動物福祉向上の理念に立脚し、野上前代表の時から何ら変わっておりません。そんな中、新たに出てくる案件に対し、当会がどのような活動方針にしたらよいかを決める際に理想と現実との狭間で議論を行う場合があります。結局は当会創立の理念を大事にしつつ、現実的に少しでも動物福祉向上に結びつくと思われる選択肢に落着しています。議論の際、参加しているメンバーは何れも理想と現実の乖離の間を行き来しつつ、一旦、立ち止まって「現実的に動物福祉向上に結びつくことは何か？」を自らに問いかけて決めているものと推察致します。

　理想のみを主張することができれば、その主張は単純明白で一瞬勢いのあるものになるとは思いますが、仮に現実とかけ離れた主張をしてしまっては一般社会に受け入れられず、現実に動物が救われないことになりかねないと懸念します。

　理想は掲げつつも、その理想に至る過程においては現実的な提言を行い、一般社会に受け入れ可能な選択肢を提示してこそ、少しでも救われる動物を増やしていくことができ、理想に着実に近づけることのできる道であると考えます。この場合、提言をした瞬間の勢いは鈍くなるかもしれませんが、丹念に現実的且つ前向きな提言を行っていくことで、当会の主張に耳を傾けてくださる方が増えていって下さることを期待しています。

　一方で、専門的内容でも、一般市民にわかりやすい表現に努めなければならないと自戒しています。象徴的な例として会報を読みやすく・分かりやすく改善することがひつようであると考えています。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.107　2013.7.1

　新体制への実質的な移行を遂げてから１年が経とうとしています。振り返ればこの１年間、事務局スタッフも会の運営業務に精一杯に取り組み、責任ある対外活動を行える人の範囲を広げて参りました。また、当会の活動に参加していただける方を増やす試みとして認定地域活動スタッフの募集を行うとともに、活動推進―全会員アンケートによりボランティア登録をお願いするなど、組織の団結と活性化を図ることに主眼を置いて参りました。事務局スタッフの増員のみならず、両者を組織化していくことで動物福祉向上に向けた取り組みに関わっていただける方が増え、組織として力を発揮することのできる体制が整ってきたものと考えておりますが、これも会員の皆様のご理解・ご支援のおかげと心より感謝しております。

　 そんな中、当会報がお手元に届く頃には参議院選挙公示を目の前にしていることと存じます。当会では法改正運動はじめ様々な提言を行政や国会に行っておりますが、その際に欠かせないのが心ある国会議員との連携です。会員の皆様におかれましては、ぜひこの機会に地元選挙区や関わりのある比例代表候補者と接点をお持ちいただき、当会の活動理念に理解を示して下さる方がおられましたら事務局までお知らせ頂ければ幸いです。 　

　地元選挙区に動物福祉問題に関心がある議員がいない場合は、環境問題等に取り組まれている候補者の方も理解を示してくださる可能性があります。もし駅頭演説をされていたら歩み寄り、握手の際に当会リーフレットとともに会員の皆様の連絡先を記したメモや名刺などをお渡しいただくことで選挙後のコンタクトもスムーズになり、お話を聞いて頂ける機会につながるものと期待しております。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.106　2013.4.1

　ｉＰＳ細胞については皆様ご存知のことと思います。ｉＰＳ細胞は一見するとヒトの組織が培養され、その組織を用いてテストを行えば、動物実験は必要なくなるのではないかという淡い期待が膨らみます。しかし、果たして現実はどうでしょうか？最近のマスコミ等を通じて報じられるｉＰＳ細胞研究に係わる研究内容の殆どは、ヒトで臨床研究する段階に行くための動物実験がどの程度進んでいるかを紹介するものや、今後予算が重点配分されることを期待して、実験動物生産業者がｉＰＳ細胞研究用の実験動物生産に力を入れ始めたという内容のものばかりで、臨床研究については、つい先日、理研が世界初の臨床申請をしたばかりです（この臨床申請前にも夥しい数の実験動物が犠牲になっているようです）。一方で、動物実験代替法を開発して犠牲になる実験動物数を減らすための研究は残念ながら聞きません。

　もともと、生命機械論に立脚したｉＰＳ細胞研究は、生命倫理の問題はもちろんのこと、「安全性の証明」と称した動物実験を際限なく利用するという問題をはらんでいます。

　ｉＰＳ細胞を例に取り上げましたが、科学者は市民に対して、その研究の有用性を市民に分かるように説明する義務があります。但し、現状においてそのような研究者はわずかであり、我々市民が科学の検証を行う必要性もあります。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.105　2012.12.25

　野上前代表の急逝に驚かれた方もいらっしゃるいことと存じます。しかし、野上前代表はこのような事態に備え、初夏頃より二つの方針をもって我々現執行部に対し指示を出しておりました。各分野に精通したスペシャリストが仲良く運営・活動していくこと及びＡＬＩＶＥ基金創立（詳しくは30・31ページ参照）により活動を幅広く、活発にすることです。

　前者については、それぞれに得意分野を発揮しながら、これらをうまく繋げていきたいと考えています。今までの個人プレー中心からチームプレー中心の運営・活動に変わりましたので、様々なお問い合わせに対する対応等で時間を要してしまうことがあると思いますが、反対に、幅の広い、組織力を生かした運営・活動が行えるようになってきたと感じております。必ずや、動物問題の解決に向けて、その成果を発揮していくことができると考えております。

　更に、この組織力を高めていくために、多くの方の力を結集していきたいと思い、今回の会報には「活動推進―全会員アンケート」を同封させていただきました。
野上前代表が一人で担っていた役割を分担且つ専門性をアップすることにより、力強い活動のできる組織作りをしていきます。共同代表制移行に伴う合議制のため、時間を要することもありますが、多くの人財が関わることで活動の視野を広げることができる体制になってきたと感じております。

情野康洋（ALIVE共同代表兼事務局長）

ALIVE　No.104　2012.10.1

現在当会は以下のような大きな2つの課題を抱えています。

　１つは運営体制の強化という課題です。これまで当会は野上代表のもと、多岐に渡る動物問題の解決に向け多くの活動を行い、大きな成果をあげてまいりました。会の社会的評価も高まりましたが、常に懸案事項であったのは、次の時代の活動を担うリーダーの育成です。このたび代表が休養生活に入ることとなったため、急きょこれが最重要課題となり、この間、代表の意見をもとに理事会の中で討議を重ね、会の運営及び事務局体制の強化を図ることといたしました。

　今回、新たに情野康洋理事を選任するとともに事務局長にも就任することで、組織としての運営体制の強化を図りました（30ページ参照）。情野理事はこの分野に長けており、わずかな間にも運営にかかる諸規定の整備、地域代表との連携強化など具体的な施策を打ち出し、実行に移し始めております。今後ともＮＰＯ法人としての会の充実と発展に向けて努力してまいりますので、会員の皆様には新しい体制づくりにどうかご理解、ご賛同いただきたくお願い申し上げます。

　2つ目は動物愛護法の改正が実現したことにより、会の活動の重みがさらに増したことです。動物実験や畜産問題については見送られましたが、当会が長らく要望してきた改善点の多くが盛り込まれました。これをいかに活用し活動を強化していくか、当会の取り組みが問われています。会員の皆様には今後も引き続き会をご支援賜りますと共に、活動にご参加下さいますようお願い申し上げます。

北村孝至（ALIVE副代表）

法律がなければ、動物は守れない　ALIVE　No.103　2012.7.1

動物愛護管理法の改正：15年の歩み

◆動物保護法制の強化を求めて

　私は長年の間、自然保護や動物保護に関わる様々な市民活動を行ってきました。そのきっかけは１９８０年代の半ば頃、エコロジー運動を通じて、海外では動物実験の残虐性や家畜の過密飼育などが大きな政治的課題となっていることを知ったことからでした。同じ頃、国内では、犬猫の大量殺処分や動物実験への払い下げなどが行われていることを知り、これらをめぐる問題に取り組むこととなりました。

　犬猫の殺処分や動物実験は、個人としての動物保護や愛護活動の範囲を超えていて、まずは行政や研究機関に働きかけなければなりません。その中で痛感したことは、日本には動物を守るための法制度がほとんど何も存在しないこと、従って動物を守るには、まずは動物を守る法制度を構築していくことから始めなければならない、ということでした。

　 これ以来、約25年間、動物保護法制の強化を求める活動に取組み、日本で唯一の動物保護法である「動物愛護管理法」の３回におよぶ改正に中心的に関わってきました。１９９０年代には、法改正を求める署名運動を展開しましたが、短期間で約40万名もの署名が寄せられ、潜在的に広く動物を守る法律を求める世論があることを実感し、勇気づけられました。

◆第１回の法改正

　 １９９７年頃から各地で動物虐待事件が続出しましたが、これらについて、なんら法的な対処ができない現状に対する憤りの世論が起こりました。また、犬の繁殖業者が多数の犬を餓死させたり、ペットショップが希少動物を密輸したりしていても、動物取扱業には何の規制もなく、行政が実態さえ把握できていない状態であることが問題として認識されるようになってきました。そこで、私たちは、動物虐待の事例集を作成したり、犬猫の引取りや殺処分方法の実態を知らせるビデオを作成するなどして、法改正の必要性を広く訴えました。動物取扱業については、まずは実態把握できる制度を求めて、メディアや国会議員に情報を提供し、法改正の必要性を訴えました。そのような活動の成果があって、とうとう１９９９年に法律制定以来26年ぶりとなる第１回の法改正を実現させることができました。

　動物虐待罪の罰則の引き上げや動物取扱業者の届出制などが実現しましたが、なおもあまりに不十分であったため、施行５年後に見直しをするとの附則が付けられました。

◆第２回の法改正

　法改正後もなお、悪質な動物取扱業者の事件が相次ぎ、依然として規制の強化が必要でした。そこで、２０００年の改正法施行を受けて、悪質な動物取扱業者の調査を開始し、ビデオで撮影した映像を公開するなどして、その実態を広く知らせてきました。

　 このような調査をふまえて再度法改正運動に取組み、２００５年の第２回目の法改正が実現しました。第２回改正では、動物取扱業は登録制となり、業の取消もできるようになるなど、肥大化するペット産業に対する一定の規制が設けられました。しかし、運用基準に具体性が乏しく、依然として実効性に乏しいものでした。

　 一方、地方分権の推進の中で自治体間の格差を解消するべく、国が動物愛護管理基本指針を作り、それに基づいて都道府県が計画を立てるという制度ができたことで、自治体行政が改善される仕組みができました。犬猫の殺処分数半減計画などが盛り込まれ、動物行政が変わりつつあります。

　 この２回の法改正によって、動物愛護法の存在は次第に社会に周知されるようになり、犬猫等のペットに関する社会的関心はかつてないほどに広がってきました。

◆第３回の法改正

　 第３回目の改正に向けては、これまで先送りにされてきた悪質業者に対するさらなる規制強化や実験動物施設の実態把握などが課題となりました。２０１０年に環境省は法改正に向けての検討会を設置し、私はその委員の一人となり、議題に関しての調査、情報の収集等に努め、積極的な提言を行いました。

　 この改正で最も意見が対立したのが動物実験問題です。いかなる法規制も存在しない動物実験について、せめて実態把握をすべきという穏当な意見にさえ、医学、製薬業界が強く反対し、またも見送りになろうとしています。動物の遺棄による生態系への悪影響の問題も議論されましたが、これも見送られました。

　 この３回の改正運動に関わってきた当事者として言えることは、この間、犬猫等のペットの保護については大きな前進が見られましたが、実験動物や畜産動物については、日本社会はまだ依然として無知、無関心のままだ、ということです。

　動物愛護法の改正は、私たち市民団体の活動、そして大きな世論の後押しなくして実現しなかったといっても過言ではありません。また、法改正により、動物をめぐる日本社会の意識も大きな変化を遂げてきました。動物という問題を通じてですが、私たちは行政や政治とどう関わるか、日常においても私たち一人一人が何をすることで社会を変えていくことができるか、といったことを、多くの皆さんに考えていっていただきたいと思います。

動物「愛護」から「福祉」へ　ALIVE　No.102　2012.4.1

脱・「動物虐待国・日本」

　1973年に日本で初めて動物保護管理法が制定されたきっかけの一つは、実験動物たちの取扱いがあまりにひどく国際的に批難を受けたからでした。保健所から払い下げられた何万頭もの犬たちが、さまざまな実験に使われ、世話もされず放置されている惨状が普通の光景だったからです。急きょ、英国女王の来日を前に「動物虐待国・日本」の汚名を払拭し、文明国の仲間入りをするという目的で、この法律が制定されたのでした。
　しかし、事情は100年前のイギリスも同様で、19世紀にまずは家畜と実験動物の保護を目的に動物保護法が制定されました。アメリカではペットの犬が盗まれて実験室に売られていたことから、連邦動物福祉法が制定されました。
　人間が利用する動物の中でも、実験動物が受ける苦痛は最も大きいものがあります。それゆえに動物保護法の中で、最重要課題として実験動物の保護と福祉をはかることは、人として当然の責務であるはずです。 このことが理解されない日本は、未だ歴史の暗黒時代のようです。

2012年は動物愛護法改正の年　ALIVE　No.101　　2012.1.1

今年は「脱」の年

　昨年は、東日本大震災、福島第一原発の事故と、未曾有の大災害が起こり、多くの人や生きものたちが犠牲となりました。とりわけ原発事故は、まさに人災であり、その被害対策はこれから数十年にも及ぶことを考えると本当に胸が痛みます。改めて、新年は「脱原発」の年にしていかなければなりません。
　今、「脱」をめざすのは、原発だけではありません。原発を生みだした科学技術やそれに基づく経済の仕組み、非人間的な社会構造そのものからも、抜け出していく必要があるように思えます。また、私たちの生活も振り返り、食べもの、健康、医療、福祉といった暮らしの中でも、人や生きものにやさしい社会のあり方に作り変えていく必要があるでしょう。
　では、それをどのように変え、どのような社会が向かうのがよいのでしょうか。おそらくそれは、自然界や生態系の仕組みに適い、人のみならず生きとし生けるものそれぞれが幸せに生きていけるような、生物多様性を基本とした社会ではないかと思われます。
　私たちはそのような社会の実現に向けて、これからも志を同じくする皆様と共に歩んでまいりたいと存じます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

動物達にも、生きる幸せを　ALIVE　No.100　　2011.10.1

皆様へのお知らせ

■ALIVEとAVA-netの合併
　当会、地球生物会議（ALIVE）は、1996年１月に動物問題全般について取り組む団体として発足しました。当会は、動物や環境を取り巻く様々な問題をまずは一般に広く知らせていくことを趣旨として、同年６月に定期刊行物『ＡＬＩＶＥ』誌の創刊号を発行しました。
　2010年にはNPO法人となり、さらに本2011年に設立15周年を迎え、会誌は100号を発行するに至りました。
　もともと当会は、姉妹団体である動物実験廃止・全国ネットワーク（AVA-net）と協働で活動してきました。AVA-netは本年で設立25周年に至り、会誌『AVA-net News』は150号となり、一つの区切りを迎えました。これを機に、AVA-netはNPO法人地球生物会議に合併することを決定いたしました。
　この間両会では、様々な動物問題に取り組み、一定の成果を上げ、社会的にも認知されるようになりました。活動にご賛同いただき、ご参加、ご支援くださった皆様に心から感謝申し上げます。合併後も、動物実験を含む動物問題全般について、変わらぬ活動を行ってまいりますので、引き続きご参加、ご支援くださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

災害対策と市民参加　ALIVE　No.99　　2011.7.1

　本年3月１１日の大震災と原発事故という未曾有の大災害で、人も動物も計り知れない苦痛を受けました。とりわけ原発からの避難地域では、数知れぬペットや家畜が取り残されました。残された動物を救うための方策も打ち出されず空しく時間が過ぎていく中で、ただちに取るべき対策を取りることができた自治体は、実は日頃から前向きに改善に取り組んでいた自治体でした。
　 災害はいつも不意にやってきます。「備えあれば憂いなし」と言われます。だからといって、いつ起こるかわからない災害に備えて常に非常事態の体制で構えているのでは、いたずらに時間と労力を消耗させてしまいます。最も効果的な災害対策は、実は「日頃の活動がものを言う」のです。日頃から行政と地域住民の連携があり、市民参加が生きていてこそ、非常事態においては物事の解決能力が発揮されるのだと思います。

大災害と動物救援対策　ALIVE　No.98　　2011.5.1

　2011年3月11日に発生した未曾有の巨大地震・津波によって多くの人命が失われました。人が飼育している動物たちも巻き添えとなり、家畜、ペット、展示動物、実験動物、学校飼育動物等の死亡数は数百万匹に及ぶと推定されます。それに加えて福島原発による放射能汚染が発生し、数十万の人々が避難していますが、多くの場合ペット以外の動物は連れて逃げることが困難で、現地に放置され衰弱、餓死を待つのみとなっています。
　とりわけ災害にもろいのは大規模集中飼育施設です。電気や水道が止まれば、このような施設の動物たちの命は風前の灯火となります。日本では地震、津波の他にも噴火、集中豪雨、感染症といった大災害が各地で発生し、そのたびに幾多の飼育動物が犠牲となっています。最大の動物救援対策は、そもそも最初からこのような大規模多頭飼育をしないことだ、と言うに尽きます。
　生物の多様性は、地球の歴史上繰り返し発生する大きな自然変動に対応するために、形成されてきた一面があります。様々な種が、環境に応じて分散し多様化することで災害を乗り切ってきたのです。今後は生物多様性に学ぶ飼育方法を考えなければならないでしょう。
　

生物多様性と適正飼養　ALIVE　No.96

　動物愛護法は、飼育動物の適正飼養を定めているもので、基本的に人間の管理下にある動物が対象です。そのため、生物多様性とは関係ないのでは？と考えられるかもしれません。しかし、私は大きな関連性があると考えています。
　その一つは、家畜の飼育数の増大のために、森林伐採や農地開発が行われ、それによって野生生物の生息地が奪われ、種を絶滅に追い立てているということです。そしてその家畜は、限られた単一品種のみで、遺伝的多様性が著しく乏しく、それ故に感染症のまんえんの土壌となっているということです。
　もう一つは、密猟・密売を含む野生動物の商取引によって、その地域の種の絶滅が引き起こされること、また世界のさまざまな地域の野生動物が輸入されることで、遺棄や逸走が起こり、生態系への悪影響をもたらすことです。同時に、動物に付着する感染性の病原体も拡散するおそれがあります。
　さらに、遺伝子組み換え動物の生産と利用の拡大は、生物多様性に対する大きな脅威となります。
　これらのことが、生物多様性の保全のためには動物の適正飼養が必要だという理由です。

地球の生き物会議とは　ALIVE　No.95

　国連生物多様性締約国会議は、「地球生き物会議」と呼ばれています。当会「地球生物会議」の名称はこれをまねしたものではなく、それよりずっと前にさかのぼります。
　かつて高度経済成長によって急激に日本中の山や川や海が破壊されていた当時、高知県の自然保護団体の会長さんが、今こそ「地球生物会議」を開かなければならない、地球の生き物たちの立場になって考える会議を開かなければ、自然の生態系は破滅してしまうということを書かれていたのです。当時、エコロジーの雑誌を発行していた私は、まったくその通りと考えて、１９８７年に「地球生物会議」という特集号を作りました。その中で、実験動物や畜産動物、農薬散布で駆除される昆虫などの視点から、人間中心の社会に異議を申し立てました。現在の活動はその延長上にあるということもできます。

動物にも生存の権利を ALIVE　No.94

　人類に最も近縁の種は霊長類であり、チンパンジー、ゴリラなどの大型類人猿は人類と遺伝子も98％が共通していて、ほとんど「きょうだい」のように近い関係にあります。しかし、現在地球上のすべての地域で霊長類に絶滅のおそれが差し迫っています。
　このような状態を引き起こす原因の一つには、人間のみが権利の主体であり、人間以外の動物・生物などは一括して「物」として扱うという法制度があると考えられます。大型類人猿のように人類の近縁種であっても、法制度上は「物」扱いです。彼らには自分で自分を守るいかなる権利も認められず、売買されたり実験に使われたり殺されたりしています。これはあまりに不合理、理不尽だと思われます。次の時代には?少なくとも動物に基本的生存権を認めることが必要ではなでしょうか。

生物多様性とライフスタイル　ALIVE　No.93

　きれいな空気や水、それに安全な食べ物がなければ、私たちは生存することができません。このような「自然の恵み」は、地球に原初の生命体が発生して以来、数十億年の歳月が作り上げてきた地球の生物で構成される生態系が作り出しているものです。
生物多様性の危機が叫ばれる現在、私たちには、このような自然界の仕組みや生物多様性について知り　それを破壊することのないように賢く利用していくための知恵が求められています。
　とりわけ、毎日口にする食べ物について、その由来を確かめ、農薬や食品添加物について知ることや、水や空気（CO２排出を含む）の保全についても考え、動物の犠牲を伴わない命にもやさしいライフスタイルを選択していきたいものです。

2010年生物多様性年の行動　ALIVE　No.92

　今年２０１０年は、国連が定める国際生物多様性年です。そして５月22日は、国際生物多様性の日として各国が記念の行事を行います。この10月には名古屋で生物多様性条約締約国会議ＣＯＰ10が開催され、世界中から数千人の参加者が集まります。このように今こそ、世界が生物多様性の重要性を認識し、国として、地域として、そして私たち一人ひとりとして、何をなすべきかを考える時がきています。
　地球には多種多様な生物が生きていて、互いに食物連鎖や相互依存などの複雑な関わりあいを持ちながら共に生きています。このような生物多様性の考えは、この地球は人間だけが好き勝手に生きて、他の生物を思うがままに支配してもよいといった人間中心の思考に、大きな反省をせまるものです。地球生物会議は、地球の生きものたちの会議という意味で、まさに生物多様性を考えるのにふさわしい名前だと言うこともできるでしょう。これからも当会の活躍の場がさらに広がり深化していくことを願っています。　　　

家畜福祉の推進へ　ALIVE　No.91

　家畜は、その肉や乳、卵、毛などを利用するために人間が飼育している動物です。日本では、毎年約9億羽の鶏、1600万頭の豚、120万頭の牛の命が、食肉のために奪われています。このほかに、国内の食肉生産量の約２倍が輸入されているので、実際に日本人が毎年消費している畜産動物の数は約20億匹という数字になります。アメリカや中国で消費される動物の数は日本の数倍から数十倍に達し、全世界規模で見ればまさに天文学的な数値の畜産動物が人間のために犠牲にされているということになります。
　その家畜の飼育方法は経済効率至上主義に支配され、畜産動物は生きること自体が苦しみであるような状態におかれています。命を短く断たれる動物であるからこそ、せめて生きている時は少しでも苦痛のないようにと願うのは、人として当然の心情です。家畜への思いやりは、人間性回復の第一歩だとさえ思えます。

野生生物の種の絶滅を防ぐ　ALIVE　No.90

　先日、神奈川県の小学生が１億2000万年前のカエルの化石を発見したというニュースがありました。カエルは悠久の太古から地球にふりかかるさまざまな環境変動にも耐えて生き延びてきた生き物です。ところが、2009年に国際自然保護連合が発表した絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト「レッドデータブック」の最新版によれば、地球上でもっとも絶滅の脅威にさらされている種の一つなのです。日本でも世界でも、実に両生類の約30％以上が絶滅のおそれがあるとされています。
　種の絶滅のスピードは加速しており、とどまるとことを知らないかのようです。すべての生物種は、地球の生命の歴史の産物です。その種を絶滅させてしまうことは、人類が地球の生命に対して犯す最大の犯罪ということができるのではないでしょうか。

動物への理解教育を　ALIVE　No.89

　動物に対する一般の人々の声は「かわいい」と「かわいそう」に大別されるようです。
ペットショップのガラスの箱に一日中閉じこめられている子犬を見て、「かわいい」と言う人もいれば、「かわいそう」と思う人もいます。
　よく考えると、「かわいい」は、対象に関心や興味を引き起こされることを意味し、動物に関心を寄せることにつながります。他方、「かわいそう」は、対象の苦痛や悲境を思いやる同情や共感を示す表現です。この感性があるからこそ、動物を救ってやりたいという気持ちにもなるでしょう。
　どちらも大切な感性ですが、一方、物事をこの二語だけですませてしまっていいのかという疑問も感じます。これに加えて大切なことは、動物が何を求め、何を必要としているのか、本来の姿において正しく理解することではないでしょうか。動物福祉は動物への正しい理解の上に成り立つものだと思います。

「ペット」の受難　ALIVE　No.88

　犬や猫などのペットの繁殖販売業者は、これまで、より多くの営利を得るために犬や猫の大量生産・大量消費を進めてきました。牛や豚、鶏などの家畜と同様、限られたスペースで多頭・過密飼育を行うため、不健康・不衛生になり、病気が広がり、結局のところ品質の低下や値崩れが起こり、大量廃棄処分をしなければならなくなるといった側面が現れることになります。家畜の場合は政府が補助金を出して畜産農家を支えていますが、ペット産業にはそのような仕組みはなく、たちまち倒産、飼育放棄となってしまいます。
　その後始末をさせられるのは、保健所などの行政であり、あるいは動物愛護団体です。現在の乱脈なペットの生産・流通の仕組みを変えない限り、いつまでたってもペットの受難は終わることがないでしょう。

　※「ペット」は愛玩動物という意味で、人間が愛し玩（もてあそ）ぶ対象の動物です。この意味合いを嫌って、海外ではコンパニオンアニマル（伴侶動物）という言葉が定着していますが、日本では家族の一員という意味をこめて「家庭動物」とも呼称されています。

国境を越える動物福祉活動 ALIVE　No.87

　韓国の犬肉食、日本における鯨肉食など、国際的に非難されている事柄について、しばしば「食文化」だと弁護されることがあります。百歩譲ってそうだとしても、その食用にされる動物が殺されるときに甚だしい苦痛を受けているとしたら、それを極力避けようとすることは、人間の責務でしょう。
　韓国の犬や日本沿岸の鯨類は、殺されるときに苦痛を感じない、などとは絶対に言えません。韓国における食用犬は、苦痛を長引かせた方が肉が美味しくなるという迷信によって、死に至るまで甚だしい苦痛が与えられ、それを知った人は肉食反対主義になるとまで言われています。日本でもモリを突き刺したイルカを生きたままトラックで引き摺り、長時間のたうち回らせるなど、ひどいことをやっています。
　いずれにせよ、動物の苦痛に国境がないことだけは明らかです。従って、動物の苦痛を取り除くことを求める活動にも国境はないのです。

（野上ふさ子）