 |
海外の動物保護法 5 「畜産動物の福祉に関する欧州協定と主なEU法」
|
この資料集の発行にあたって
過去50年間、日本では牛、豚、鶏の食肉や乳・卵などの動物性食品の消費量はうなぎのぼりに増大しています。それに反比例するかのように、これらの動物たちは人々の目先から姿を消し、その飼育の実態はほとんど一般に知られることがなくなってきました。そして、この数年、牛のBSE、鶏のインフルエンザ、豚の口蹄疫などの病気がにわかにメディア等で大きく報じられるようになり、多くの人々が畜産の現状に漠然とした不安を抱くようになってきています。
なぜこのように次から次へと畜産動物の病気が発生するのでしょうか。その理由は判明しています。それは、動物たちが大量生産、大量消費という経済効率最優先の社会に投げ込まれたために、信じがたいほどの過密状態で飼育され、肉骨粉などの不自然な餌を与えられ、動物が本来的に必要とする行動の自由を奪われてきたことなどの結果なのです。
近代的な集約畜産を極限にまで開発してきた西洋諸国では、同時にその弊害にも気が付き、動物の飼育方法の改善を、法律を通して促してきました。家畜の健康と福祉の向上は、人間の食糧の安全性や環境の保全と切り離せないものであることが次第に認識されるようになり世論の支持も高くなっています。
こうした環境の変化を背景に、学問として家畜の福祉に関する研究奨励され、大きな成果をあげるとともに、EUではさらに動物福祉を実践する有機農業への直接支払いなどの社会政策も行われてきました。そのような流れの中で、EUでは1970年代から家畜の福祉に関する法令が次々と制定され、時代の変化に合わせて常に見直し作業が行われています。
本資料集は、世界で最も先をいくEUの家畜福祉法の最新版を翻訳したものです。ALIVEでは、1999年にALIVE資料集1(EU編)でEUの動物保護法の概略を紹介しましたが、本資料集ではその中で特に畜産動物に関する法律を取りまとめました。頻繁に改正、修正が行われていますので、現時点の最新版として改めて翻訳しています。
この資料が日本でもようやく緒についたばかりの畜産動物の福祉の向上のための参考になれば、たいへん幸いです。
2004年8月1日
地球生物会議 ALIVE
代表 野上ふさ子
畜産動物の福祉に関する欧州協定と主なEU法
<目次>
・この資料集の発行にあたって
・畜産動物の福祉に関する欧州協定と主なEU法の一覧
・動物の保護および福祉に関する議定書-欧州共同体を設立する条約(EU)
◆家畜全般
・農業目的で飼育される動物の保護のための欧州協定-欧州評議会(CoE)
・農業目的で飼育される動物の保護のための理事会指令-欧州共同体(EU)
◆家畜別の飼養基準
・採卵鶏の保護のための最低基準を定める理事会指令-欧州共同体(EU)
・豚の保護のための最低基準を定める理事会指令-欧州共同体(EU)
・子牛の保護のための最低基準を定める理事会指令-欧州共同体(EU)
◆輸送
・国際輸送における動物の保護のための欧州協定-欧州評議会(CoE)
・輸送中の動物の保護ならびに指令90/425/EECおよび91/496/EECの修正に関する理事会指令-欧州共同体(EU)
・指令91/628/EEC付属書に述べる休憩地および行程計画書を修正する共同体基準に関する理事会規則-欧州共同体(EU)
・8時間を超える家畜輸送に用いられる道路車両に適用される追加保護基準に関する理事会規則-欧州共同体(EU)
◆と殺
・屠殺される動物の保護のための欧州協定-欧州評議会(CoE)
・動物の屠殺に関する閣僚理事会から加盟国への勧告-欧州評議会(CoE)
・屠殺または殺処分時における動物の保護に関する理事会指令-欧州共同体(EU)
■付録
・世界貿易機関(WTO)農業委員会特別会合/動物福祉と農業貿易に関するEU提案
・国際獣疫事務局(OIE)/動物福祉のための指針原則 ・指針の科学的根拠
・コーデックス食品規格委員会/有機生産食品の生産、加工、表示および販売に関する指針(抜粋)
・世界農業機関(FAO)/畜産動物の人道的取扱い、輸送、屠殺の指針(概要)
・絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(福祉条項の抜粋)
・世界獣医学協会(WVA)/方針および行動の手引(福祉関連の項目の一部を抜粋)
|