地球生物会議ALIVE 長野県の春グマ駆除計画に反対意見

　2006年、日本全国で5000頭あまりのクマが捕殺駆除されました。
生息数の半数から３分の１程度が殺されたことになります。当然のことながら、今年は狩猟を全面禁止とするべきでしょう。さらに、いずれ被害を起こす可能性あるとの見込みで行なわれる予察駆除や春グマ駆除は、行政が許可すべきではありません。
ところが、今回、長野県が春グマ駆除は被害を押える効果があるかもしれないという仮説のもとに、春グマ駆除計画を立てていることが報道されました。
ＡＬＩＶＥも加盟している野生生物保護法制定をめざす全国ネットワークでは、これに対する反対意見書を長野県に送付しました。（意見書の全文は、ホームページに掲載の予定です。）

毎年50頭以上の春グマ駆除を実施しているのは秋田県、山形県、新潟県の３県ですが、この３県は昨年に推定生息数の半分以上を越える数を捕殺しました。現在秋田県は春グマ駆除を中止しており、新潟県では昨年12月に、全市町村に自粛要請を出しました（新潟県では、推定生息数７００頭のうち５００頭を捕殺）。山形県では、未定です。

県の春の熊捕殺に反対の要望書　猟師の既得権益に
信濃毎日新聞　2007年1月13日（土）
http://www.shinmai.co.jp/news/20070113/KT070112FTI090019000022.htm

　自然保護団体などでつくる「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク」（事務局・東京）は１２日、県が調査研究のために検討している、伝統的な春熊猟に倣った春のツキノワグマの捕殺を実施しないよう求める要望書を提出した。
　要望書は「被害の発生がない時期と場所に山奥で駆除する行為で、猟期外の狩猟に等しく違法性が高い」などと指摘。ネットワークに加盟する「地球生物会議」の野上ふさ子代表は「春の駆除は、高価な熊の胆（くまのい）を取引する猟師の既得権益になっている。全国的に禁止する流れの中で長野県が行うのはおかしい」と反対している。
　猟期以外に行う熊の捕殺は、人身・農林業被害が起きたことを受け自治体が許可する有害捕殺が原則。ただ、熊の生息数が増えて被害が出ないように事前に頭数を調整する目的で、冬眠から覚めた熊を集団で追い込んで仕留める春の捕殺を認める県もある。長野県は現在、下水内郡栄村で認めている。
　本年度、県内では熊の出没が相次ぎ、死者２人が出るなど深刻な人身被害が発生。一方で、熊の捕殺も昨年１１月末で５４９頭に上り、県が定める年間の上限捕殺頭数の１５０頭を大きく上回った。このため、県は同１２月、人里への出没抑制につながるか調査する目的で春の熊駆除を他地域でも行う提案を県の熊専門部会にしている。
1月13日（土）の県内ニュース

春グマ猟反対の申し入れ…長野県に対し、保護団体
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20070112-OHT1T00189.htm

　野生保護団体でつくる「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク」は１２日、長野県に対し、狩猟期が終わった後に調査研究の名目で計画しているツキノワグマ猟をやめるよう求める要望書を提出した。
　狩猟期後の春グマ猟は人的被害を事前に抑制するためだけに許可制で認められている。同県では原則禁止だが、昨年１２月末開かれた県特定鳥獣保護管理計画検討委員会で「春グマ猟による被害抑制の効果を検証する」「クマに人の怖さを教え込む」などの目的で、場所や捕獲数を制限し一部解禁案が
提出された。
　これに対し、保護団体が「何の被害も起こしていない個体を無差別に駆除するもので、被害軽減には結び付かない」などと反発している。
　同県によると、昨年４月―１１月で約５５０頭を有害駆除している。推定生息数は１３００―２５００頭。
（2007年1月12日21時00分スポーツ報知）

研究調査狙い「春熊猟」を　県が熊専門部会に提案
http://www.shinmai.co.jp/news/20061226/KT061225FTI090015000022.htm
信濃毎日新聞　2006年12月26日（火）

　県は２５日、長野市でツキノワグマの専門家らでつくる県の熊専門部会（林秀剛部会長）を開き、従来、保護のために原則禁止している「春熊猟」を調査研究のために実施する提案をした。今年、熊が集落などに出没し甚大な被害が出たことを踏まえ、春熊猟が出没を抑制する効果があるかどうか調べる。
　春熊猟は全国的には禁止の流れで、出席者からは慎重意見が出た。
環境保護や動物愛護の団体からの強い反発も予想されるが、県は、効果が実証できれば、熊との住み分けを図る一つの方法として制度化することも視野に入れている。
　専門部会は２００７年度から５年間の熊の保護と個体数調整の目標などを定める「特定鳥獣保護管理計画」に猟実施を盛り込むか検討する。
　本年度は県内で死者２人を含む計１６件の人身事故が発生。一方、熊の捕殺も過去最多の５４９頭（１１月末現在）に上り、人と熊のあつれきが深まった。こうした事態を受けて、県は「熊に人の恐ろしさを教える効果がある春熊猟は、熊との境界線をつくる方法の一つとして再評価する」（森林整備課）と一部を認める姿勢に転じた。
　提案によると、春熊猟を認めるのは、鳥獣保護法が認めている猟期（１１月１５日－翌年２月１５日）に豪雪などの理由で熊猟ができない地域で、熊の被害が多いところ。期間は熊が冬眠から覚めるとされる
おおむね４月１０日－５月１０日とし、事前に専門部会が実施場所や頭数を決める。市町村が推薦した狩猟者に限定する。
　この日の部会では「熊が人を恐れないのは、狩猟が足りないため。狩猟を進めるべきだ」との意見の一方で、「悪さをした個体を捕殺する有害駆除の考え方に反する」との慎重論もあった。
12月26日（火）の県内ニュース