ハンターは、どんな勉強をして、どのような過程を経てハンターになるのか？
素朴な疑問を解決するために、今年の狩猟免許にチャレンジしてみました。
狩猟免許は年一回、各都道府県ごとに行われ、狩猟期に合わせて９月に試験があり、試験一週間前に猟友会の主催する『狩猟免許講習会』が開かれ、講習会の講師は各県猟友会の幹部クラスの人で、試験の実技の試験官も兼ねています。
狩猟免許の管轄は、各都道府県自然環境課（or林務課）。猟銃の所持許可は警察の公安委員会とそれぞれ違っている。この二ヶ所の対比がおもしろいところです。ハンターが減少している近年、ハンター増加の悲願を持った猟友会の主催する講習会は、「何が何でも受かって貰わなくては」という気合いに満ちておりまして、
講師の話は、試験に出る問題の傾向から対策など、ちゃんと聞いていれば試験には絶対合格できるという保証付きなのです。聞く側も、ビデオを撮ったりする人もいてかなり真剣。
一方、警察が主催する銃所持の講習会は逆に「あまり鉄砲を持つ人が増えて欲しくない」という感じで、何だか寒々としています。こちらは講師の話を聞いていても直後の試験に合格するのは難しい。
講習会で気になった言葉をいくつかあげてみますと。
講師の第一声は、「皆さんが試験に受かりたいと思ったら、今の気持ちと反対のことを考えて下さい。」
…ええー？…なぜ？なぜ？
「皆さんは、たくさん獲物を獲りたいと考えているでしょう。しかし、その気持ちを出しすぎると試験には受かりません。試験をするほうは、保護を第一に考えて問題を出してきます。獲りたい気持ちばっかりだと、回答を間違えます。」
…ふむふむなるほど。ここに集まっている人たちは、獲物をいかにたくさん獲るかということに重点を置いています。自分がここにいる違和感をひしひしと感じました。
狩猟獣の判別では「コガモ（狩猟鳥）はアメリカコガモ（非狩猟鳥）と見分けがつきません。獲った場合、おおっぴらに見せびらかさないほうが無難ですねぇ」ときました。
…皆大笑いしていたが、この言葉は本音でしょう。誤認して撃ってしまうケースはかなり多いそうで。 誤認するというよりも判別が出来ないというのが現状のようですから、アメリカコガモ（非狩猟鳥）は現実には狩猟鳥に入ってしまっている事です。これでは判別の正確な講習とはいえないですね。判別のはっきりしないものは撃たないと言う認識から見ればコガモは非狩猟鳥とするべきです。
距離の目測実技では「約３５ｍ、約５０ｍ、約３００ｍだけ覚えて下さい」
…うーん、でもどう見てもあの距離は３５ｍも無い。
「いいんです。それが正解だから暗記してくだい」
…むむむ。
「ここでは、とりあえず試験に出ると思われる箇所しかやりません。あとは、皆さんがご自分で勉強してください」
…ではハンターの資格取得にはこのような内容の、たった２日間の講習だけ（それも単なる試験対策）で、３年後の免許更新のための講習会までは、これといった勉強をする機会は無いということ。
これは恐ろしいことです。心あれば、ハンターとして山に入り、自然に接して自然から多くの事を学び取り自ずと自然を敬い大切にするようになるのでしょうが、残念ながら多くのハンターはどこかでその道を誤っているのが現状のように思えます。
講習全般に感じたことは、あくまでも試験に受かる為の講習であるということ。
野生の生き物たちの悲惨な現状や生息地破壊や棲息環境保全等のことは、まったく触れていません。
私が気がかりだった「有害鳥獣駆除」については、言葉の説明だけで終わってしまいました。
講習を無事終了し、試験に受かって狩猟免許ももらいましたけれど、有害駆除とハンターとの関係については何をどう考えたらいいのかまったくわからず終いでした。
「ご自分で勉強してください」といわれましたが、講習の教材には何も出ておりませんので勉強しようがないのです。 現実には皆さんこの状態で有害駆除に従事しているわけです。
また、講習会の講師や試験官を各県猟友会の人が担当する事にも疑問を感じました。講習会の中に、一時間でもＮＧＯの講師の話などあれば良いと思います。
講習内容は、はっきり言って私には難しく試験勉強は苦痛でした。好きで好きで猟をやりたくて勉強する訳では無かったからです。それでも、法律による厳しい規律があり、ハンターはその狭められた範囲での狩猟しか許されていないことを知りました。ハンターたちは、これだけの厳しいルールの中で、よくもまぁやっているものだと思います（きちんと守っている人は少ないでしょうが）。
さて、流れに乗って甲（ワナ）乙（散弾銃）の二種の狩猟免許を取りましたが、これを自然環境や野生鳥獣の保全にどう機能させて行くか今後の課題となりました。
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