岐阜県知事 梶原 拓 様
担当:健康福祉環境部環境局自然環境森林課
農林水産局農業指導課
鳥獣保護行政に関する要望書
当会は、すべての生きものが生存できる環境の保護のために活動する全国規模の市民団体です。貴県における鳥獣保護業務に関して、以下の要望をいたします。ぜひ、ご検討下さるようお願い申し上げます。
記
1.市町村における有害駆除の実態把握を
当会は、8月に「ニホンザルの有害駆除に関する全国アンケート調査を実施しましたが、貴県のご回答では、平成11年度に558頭をも駆除しています。
駆除の方法や駆除後の処理については、貴県では、鳥獣の駆除許可権限を市町村に降ろしているため、把握していないとのご回答でした。
このことは、鳥獣保護法にもとづく野生鳥獣の保護繁殖事業を進める上で有効な施策を、県では示すことができないということを意味しています。
現に、毎年、駆除数が増大する一方であることは、いくら殺しても効果がないということの証明に他なりません。野生ニホンザルの出産は通例2〜3年に1頭であり、しかも幼児の死亡率が高いことを考えると、個体数が急激に増大しているという証拠はありません。このまま、保護対策を取らずに駆除を続けて行くならば、地域によっては絶滅させてしまうことになるでしょう。
これまで惰性的に続けられている駆除にどれだけの有効性があるのか、実態が把握されていなければ、対策を取ることも困難です。速やかに、各市町村における有害駆除の実態調査をされるよう要望いたします。
2.サル、クマには特別の保護を
岐阜県では平成10年度にツキノワグマを狩猟で46頭、有害駆除で20頭もを捕獲しています。この数は、際だって多い数であり、このような捕獲圧が、九州、四国、中国地域に続いて、中部日本におけるツキノワグマの絶滅につながるおそれがあります。
また、狩猟・駆除個体の商業利用も盛んに行われており、利益目的の捕獲も行われていることが懸念されます。
野生鳥獣の生息地の多くは都道府県境、市町村境の中山間地域にあります。それ故に、駆除申請の審査と許可を一市町村が単独で行うことは、野生鳥獣の地域個体群を壊滅させる恐れがあります。気が付いたときは手遅れという過ちを繰り返すべきではありません。
サル、クマのように大型で生息域の広い野生鳥獣については、捕獲の許可権限を知事に戻すこと、ならびに予算をとって生息調査を行うべきことを、強く要望いたします。
3.税金を殺す方ではなく生かすほうへ使うこと
貴県では、サルの駆除のために県として1頭当たり5000円の報奨金を出し、これに市町村の報奨金が加わり、1頭当たり数万円の報奨金が支払われています。平成11年度の県の助成金額は279万円にも達し、市町村負担の分を加えれば1000万円以上になるはずです。殺すことにはこれほど多額の税金が投入され、その一方で被害を防ぐための防除対策費は微々たるものにすぎません。
この殺す方に使用されている多額の税金を、被害の防除対策のために有効に転換させていくことを、強く要望いたします。
日本は生物多様性条約を批准し、野生動物との共存や生物多様性の維持を国の基本方針としています。野生鳥獣は国民の共有財産であり、その保護については国と自治体に責任があります。有害駆除は、税金を投入した公共的事業であるのですから、その手続きは公明正大なものでなければなりません。駆除の申請の際に、駆除個体の処分方法を明記させること、駆除に地元住民や自然保護団体などの第三者を立ち会わせること、駆除事業に関する情報をすべて公開することを、強く要望いたします。
人と野生動物との共存をはかり、生物の多様性を維持するために、貴県においても未来に明るさのある生命尊重・環境保護重視の施策を積極的に取り入れて下さるよう、要望いたします。