昨年12月に成立した「鳥獣被害防止特措法」は、この2月21日に施行される予定で、それに先立ち、法律で定められている農林水産大臣による「基本指針」について、パブリックコメントが今日から始まりました。
期限:2008年1月17日~1月31日(わずか2週間)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?
CLASSNAME=Pcm1010&BID=550000726&OBJCD=100550&GROUP=
ALIVEでは、以下の意見書を提出しました。
平成20(2008)年1月23日
鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための施策を実施するための基本的な指針についての意見
地球生物会議 ALIVE 代表 野上ふさ子
<該当箇所>P.7~P.8
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
3 実施体制の整備
<意見・理由>
(1)被害対策防止協議会の推進について
・被害防止計画を策定するに当たっては、被害対策防止対策協議会を設置して、検討を必要とすることを明記してください。誰が、どのような手続きを経て計画を立案したのかを明らかにしておく必要があります。
・被害防止対策協議会は、市町村、農林漁業団体、猟友会、都道府県の普及指導機関等の関係機関で構成するにとどまらず、積極的に地域住民の参加を促すものとしてください。地域社会においては、よそ者が来て勝手なことをしていると思われると住民の理解や協力が進みません。地域ぐるみの取り組みをするためには、住民参加が不可欠です。
(2)鳥獣被害対策実施隊の構成について
・被害対策実施隊員には、野生鳥獣の生態等及び現地の地理等に詳しい知識と経験を有する者を必ず含めるものとしてください。職員等が隊員になる場合は片手間となり、野鳥獣の生態に無理解で、なおかつ地理不案内な者では、とうてい対策に効果は望めません。
(3)対象鳥獣捕獲員について
イ 銃猟による捕獲等の従事者については、銃猟免許を有し、過去3年間に連続して出猟経験がある者としてください。狩猟登録を連続して行っていても実際に出猟していない者も多く、2007年12月に起こった長崎県の猟銃による殺人犯のような者を排除できる仕組みとするためには、少なくとも連続して出猟経験があることを条件にする必要があります。
ロ わなによる捕獲に従事する隊員においても、同様にわな免許を有し、最低でも3年以上の実施経験を必要とするべきです。安易で不適切なわなの架設は人身事故や錯誤捕獲を引き起こし、住民の怒りや反発を受けることになります。
<該当箇所>P.9
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
4 鳥獣の捕獲等
<意見・理由>
(1)市町村職員や農林漁業団体の職員等による捕獲体制の構築「特にイノシシについては箱わなが効果的である」とありますが、ツキノワグマの生息地では錯誤捕獲や混獲が多発していることが問題となっています。わなについては、錯誤捕獲・混獲防止を避ける方法の記載や、錯誤捕獲の報告義務を明記することが必要です。
<該当箇所>P.11
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
5 侵入防止柵の設置等による被害防止
<意見・理由>
(1)効果的な進入防止柵の設置
「進入防止柵の設置後の管理が不十分である」ことが指摘されていますが、確かに従来から多大な費用と労力を投じながら効果が得られないという批判を受けてきました。草刈り等、電気柵の放電防止策や、対象鳥獣の習性、地形や気候、季節等の多様な条件に適した効果的な柵の設置と管理の方法を、きめこまくマニュアルとしていく必要があります。
(2)追い払い活動の推進
ニホンザルについては「追い払い」の他に「追い上げ」を加えてください。農地に居着いたサルを漫然と追い払っても、また隣接する農地に移動してしまうおそれがあります。サルの本来の生息地や生息可能な地域を明らかにして、そこに「追い上げる」という目的を定める必要があります。
また、犬による追い払い・ 追い上げには高い効果があることが知られていますが、狂犬病予防法や地方自治体の犬に関する条例等との関係を明記しないと住民に誤解を招くことになります。さらに、追い払いについては有効な訓練法の開発が必要であり、その普及もあわせて進めることを明記してください。
<該当箇所>P.12
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
6 捕獲鳥獣の適正な処理
<意見・理由>
捕獲個体の利用については、地域個体群の絶滅のおそれのない狩猟鳥獣であるイノシシ、シカに限定することを明記してください。クマは地域的に絶滅のおそれがある種であり、国際的にもその資源利用が絶滅の要因の一つとされています。熊胆の商取引が野生のクマの密猟や密輸を引き起こしていること、高価に取引される熊胆の採取を目的として意図的にわなで混獲されるなど、捕獲個体の利用によって絶滅が危惧されるため、クマに関しては利用を禁止するべきです。また、ニホンザルについては、目的を偽って捕獲し、実験用に譲渡販売することがたびたび行われており、その度メディアで大きく報じられるなど、社会的批判を受けています。日本は動物実験に法規制の存在しない唯一の先進国であり、野生ニホンザルの利用が再びブラックマーケットを形成しないように、捕獲の段階での利用禁止を明記するべきです。
<該当箇所>P.13
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
7 国、地方公共団体等の連携及び協力
<意見・理由>
都道府県において、市町村計画を協議する際は、必ず農林部門と環境部門との合同協議を行うこものとしてください。従来、鳥獣の捕獲と被害防除の部署が異なる場合が多く、それぞれが独自に対策をとるために総合的な保護管理が困難でした。関係部署の連携は大いに進めていただき、被害防除、生息地管理、個体数調整の3つをまとめた鳥獣の総合的保護管理を実現していただきたいと思います。
<該当箇所>P.16
一 被害防止施策の実施に関する基本的な事項
10 特定鳥獣保護管理計画の作成又は変更
<意見・理由>
市町村計画を広域的に策定するにあたり、都道府県レベルでの特定計画がない場合には、速やかに特定計画が策定されるようにしてください。広域的計画は、本来ならば都道府県が実施するべきことであり、市町村計画と同時に計画策定を行う必要があります。
<該当箇所>P.17
二 被害防止計画に関する事項
<意見・理由>
計画策定の手続きの透明性を確保するために、以下の事項を明記してください。
・都道府県は、広域的な被害が発生し複数の市町村による共同計画が必要な場合には、可及的速やかに特定鳥獣保護管理計画を策定するようにつとめること。
・被害防止計画の策定に当たり、当該地域の社会的経済的要因や鳥獣の生態等に詳しい専門家、地域住民、自然保護NGO等の意見を聞くこと。
・被害防止計画の策定にあたり、どの部署がどのような経過を経て策定したか、議事録を公開する等、意志決定過程を明らかにすること。
<該当箇所>P.20
二 被害防止計画に関する事項
3 被害防止計画に定める事項
(4)対象鳥獣の捕獲等に関する事項
<意見・理由>
・対象鳥獣の捕獲体制
「捕獲許可は、原則として被害防除対策等によっても被害が防止できないと認められるときに行うものとする」(鳥獣保護事業、基本指針、事業計画記載事項)ことを明記してください。これは、やみくもな駆除は、労多くして効を奏さず、場合によっては被害を拡散させるおそれもあること、および地域住民の安全性の確保の観点によるものです。
また、対象鳥獣以外の鳥獣の有害駆除をあわせて実施する場合には、対象鳥獣捕獲隊員と有害鳥獣捕獲隊とが混同されないように、従事者の標識を身体につけ、区別を明確にすることとしてください。
<意見・理由>P.21
同項
・対象鳥獣の捕獲計画
本項の捕獲計画については、必要記載事項を明記した書式を作成し、そこに以下の事項を記載し、鳥獣保護事業計画との整合性を確保するものとしてください。
・狩猟との関係について:対象鳥獣の捕獲計画は、狩猟による捕獲と重複しないようにすること、捕獲数は、狩猟による捕獲数を含めて計画を立てること。
・捕獲期間の設定:期間は、猟期を除外し、原則として被害が生じている時期のうち、最も効果的に捕獲が実施でき、地域の実情に応じた捕獲を無理なく完遂するために必要かつ適切な期間とすること。
・捕獲数の上限:地域個体群の保全のために、計画期間内で捕獲可能な数の上限を設けること。
・わなの架設個数の上限:わなの架設個数は、一日に見回りできる個数に限定すること。
・わなを架設した場合は、必ず最低でも1日に1回以上の見回りを行うこと。
・誤って対象鳥獣以外の鳥獣が捕獲された場合は、速やかに放鳥獣すること。
・錯誤捕獲された鳥獣についても、種(可能であれば性別、子供・大人の別)、捕獲地点、捕獲状況等について記録をしておくこと。
<意見・理由>P.21
同項
・許可権限委任事項
都道府県知事は、許可権限委任に同意しない場合として、当該地域に鳥獣の広域的な保護の必要性や、希少性があり、個体数が著しく減少している種が生息していること等を、事前に明らかにしておくこととしてください。この措置は、特にクマやサルについて必要です。
都道府県は、市町村計画において許可権限委任事項がある場合には、審議会など専門家の意見を聞くとともに、公聴会で一般からも意見を聴取することとしてください。
<該当箇所>P.22
(6)被害防止施策の実施体制に関する事項
・被害対策実施隊に関する事項
<意見・理由>
被害対策実施隊を設置する場合には、隊員の要件について明記してください。例えば、隊員になると狩猟税の減免がなされたりライフル銃の所持が容易になることから、これを得たいがために入隊する者が現れないとも限りません。法律を遵守し、実地の経験が豊富で、地域においても信望のある人物を選任するようにしてください。また、密猟や違法捕獲を行い、罪に問われた者は隊員となることができないことを明記してください。
さらに、隊員の中には、野生鳥獣の生態等及び現地の地理等に詳しい知識と経験を有する者が必ず含まれていなければならないこととしてください。
これらは、適切で効果的な捕獲及び地域住民の安全性の確保のために必要な条件です。
<該当箇所>P.24
(7)捕獲した対象鳥獣の処理に関する事項
<意見・理由>
捕獲した鳥獣に起因する感染症等が発生しないように取り扱い上の注意や衛生上の対策、及び万一発生した場合の連絡体制等を明記してください。狩猟における利用から発生した発病等は個人責任ですが、市町村の許可による肉利用の場合は、事故が発生した場合は自治体の責任が問われます。
捕獲した個体の学術研究に利用はあくまで、鳥獣の保護管理に資する研究に限定されていることを明記し、商業利用や実験利用への流用は認められないことを明記してください。
捕獲した個体を殺処分する場合は、可能な限り速やかに苦痛のない方法を取ることを明記してください。捕獲の現場では、しばしば餓死、撲殺、溺死といった非人道的な殺処分が行われており、一般に捕獲が嫌悪感を抱かれる理由の一つとなっています。特にわなによる捕獲の場合は、銃による「留めさし」ができないため、捕獲檻に放置するという例が見られます。獣医師等に依頼し、安楽殺処置をする必要性についても明記してください。
<該当箇所>P.24
4 被害防止計画の実施状況の報告
<意見・理由>
捕獲に関する正確な報告は、鳥獣の保護管理の施策を立てる際に最も重要なデータですが、従来は、これがきちんと行われておらず、統計に正しく反映されていなかったきらいがあります。市町村計画においてはもちろんのこと、計画がない場合でも、捕獲数の速やかで正確な報告は、ぜひとも奨励していただきたいと思います。
<該当箇所>P.25
三 国民の理解と関心の増進
<意見・理由>
野生鳥獣は国民の共有財産であり、その保護管理については公共的な事業として位置づけられ公費が投入されることになりました。納税者や消費者がその費用が正当であるかどうかを判断するためにも、常に情報公開を行い、広く関心をもつ人々の参加と協力を促していくべきであると考えます。
野生鳥獣は、農林水産業に悪影響を及ぼすばかりの存在ではなく、生態系を構成する一員としてその存在自体にかけがえのない価値があります。野生鳥獣は、自然の中に出かけ野山などを散策する多くの人々にとって楽しみや喜びの対象であり、花鳥風月を愛でる日本の伝統的、文化的財産でもあります。
このような背景から、鳥獣被害対策においては、安易な駆除のみに頼ることなく、常に総合的な観点で被害防除対策を中心に取り組むべきことを、本指針の原則として明記していただきたいと思います。
以上