会報27号でお知らせしてきたように、6月に「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」が「改正」されました。その後直ちに環境庁は「野生鳥獣保護管理検討会」を作り、改正野生鳥獣法の施行にあたってのガイドライン等を定める作業に取り組んでいます。
これまでも会報で取り上げてきましたが、私たちが今回の「改正」で最も問題としているのは、主に以下の3点です。
- 特定鳥獣保護管理計画による生息地の保全無き個体数の削減
- 「地方分権」の名の元に行われる有害駆除の安易な促進
- 狩猟の規制緩和による過剰捕獲
●野生動物の保護管理とは
「特定鳥獣保護管理計画」(以下、特定計画と言う)とは簡単に言うと、次のような制度です。
(1)都道府県は、著しく増加(あるいは減少)した鳥獣を特定動物に指定することができる。
(2)都道府県では、特定計画で定められた動物については、捕獲規制を緩和でき、さらに狩猟期間も延長できる。
(1)では、「著しく減少した種」もふくめていますが、(2)を見ると捕獲・狩猟の規制を緩和しているので、実際のところは「著しく増加」した種に対して狩猟・駆除の促進を行うことが目的であるのは明白です。「著しく増加している種」の代表とされているのがシカ、エゾシカです。
環境庁が特定計画のモデルとした北海道の「道東エゾシカ保護管理計画」が昨年度から実施されましたが(グラフを見ればわかるように)、この計画の実施によって一気に狩猟・駆除数が上昇し、この1年間で8万5000頭ものエゾシカが殺されました。シカは本来開けた草地を好む動物で、特に北海道では森林伐採や牧草地の拡大によって可食地が広がったことが、増加の理由とされています。
しかし、自然の生態系の復元がなされない限り、過剰捕獲ははやがて絶滅への道となってしまいます。今後、各自治体が条例で特定計画を定める際、それに積極的な意見参加をしていきましょう。
●市町村での有害駆除
野生動物の生存にとってもっと危ういことは、有害駆除の許可権限が、都道府県知事から市町村長に移ることです。野生動物の大半は農山村地域に接して暮らしており、それに故に農林業被害を起こすとして目の敵にされ勝ちです。市町村単位では野生動物の生息域や個体群についての実態調査はたいへん難しく、長期的保護計画よりは目先の駆除の声に押されてしまいます。安易な駆除が行われないように監視していくことが、これまで以上に重要になってきます。
●全国、禁猟制へ!
今や日本の野生哺乳類の3分の1が絶滅に瀕しています。その一方で、狩猟の規制を緩和するというのは理にかないません。趣味でやっているハンターに有害駆除の仕事を委ねるというのも変な話です。現在、日本では原則どこでも狩猟可能でその中に鳥獣保護区が島のように点在しています。人家近くやハイキングコースでの発砲は迷惑・危険この上もありません。全国を原則禁猟とするよう、声を高めていきましょう。
地球生物会議(ALIVE)