
野鳥密猟用の おとしかご |

野鳥密猟用のかすみあみ |
6月8日、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の改正が成立しました。当会では野生生物保護法制定をめざす全国ネットワークに加盟し、この間の法改正活動に関わってきました。今回の改正7項目のうち、野鳥の密猟・違法飼養と、トラバサミ・ククリワナについてご紹介します。
●輸入鳥獣に標識を付ける
今回の改正で、海外から輸入される鳥獣に脚環などの標識を付けることが義務付けられることになりますが、その背景には、国内での野鳥の密猟・違法飼養の摘発の増加があります。
鳥獣保護法では、日本に生息する野生の鳥獣は原則として捕獲・飼養が禁止されています。捕獲が許されるのは、(1)狩猟(狩猟鳥獣を狩猟期間内にのみ)、(2)有害捕獲(農作物被害が発生した場合で行政の許可を得たときのみ)、(3)学術研究用(鳥獣の保護管理に関する研究のみ)、そして(4)愛玩飼養(メジロ、ホオジロのみ)といった目的がある場合です。実は、この(4)の愛玩飼養制度が密猟・違法飼養の温床となっているのです。
●愛玩飼養制度
愛玩飼養制度というのは、野に出て美しい野鳥の鳴き声を聞くことのできないお年寄りや体の不自由な人に対して、1世帯1羽に限り飼養を認めるというもので、福祉政策の一つでもあると説明されています。しかし、本当の実態は福祉ではなく、「鳴き合わせ会」という競技のために捕獲され売買されているのです。「鳴き合わせ」とは優雅な趣味のようにも思えますが、小鳥を思うように鳴かせるために、まだひなのうちに捕獲し、教材を聞かせて訓練するもので、野の自然の鳴き声ではないとのことです。また、鳴き声の格付けで小鳥に高い値段が付くので、暴力団の資金源にもなっているとも言われています。
この鳴き合わせ会に使う小鳥は日本産でなければ声が美しくないということで、日本の山野ではメジロやウグイスの密猟・密売が絶えません。5月30日には、愛知県で開催された鳴き合わせ会が警視庁に摘発され、ウグイス、ホオジロ、ノジコなど28羽が押収されたと報じられています。(2ページ参照)
●密猟の温床
ここでさらに問題なのは、この密猟した小鳥を海外から輸入されたものだと称し、偽の証明書を付けて飼養あるいは売買していることです。
たいへんおかしなことに、日本の野鳥は捕獲してはならないのに、海外の同種の野鳥はいくらでも輸入ができます。そのせいで、輸入鳥は、輸入証明書を入手すると同時に殺してしまい、その証明書を国産の密猟した鳥に付けて、あたかも合法であるかのように偽装するということが横行するのです。
この輸入証明書は、日本鳥獣商組合連合会というペットショップの組合が発行していますが、個体毎に付けられるものでもなく、使い回しされていることも問題となっています。
●違法飼養の摘発
野鳥の密猟や違法飼養は、全国各地で摘発されています。特に警視庁が環境犯罪の一つとして捜査に力を注ぎ、平成16年度には東京都だけで122件もが摘発され、700羽以上の野鳥が保護され、リハビリの後に自然に返されました。
ちなみに、東京都では、鳥獣保護員(非常勤の嘱託職員)の全員が公募で採用されています。きちんとした研修を受けたのち、ペットショップ調査に携わり野鳥の密売を摘発するといった、感嘆すべき活動を行っています。
●法律改正で標識の義務化
このように野鳥の密猟や違法飼養があまりにも多いために、環境省は重い腰を上げてようやく今回の法改正に至りました。これにより海外から輸入される鳥獣のすべて(環境省令で定める種)に脚環などの標識の装着が義務付けられることになり、標識のない野鳥が飼育されていたら違法となります。
とはいえ、あの小さな小鳥の脚につける標識を誰が見分けることができるでしょうか。国産の小鳥にニセの標識を付けて外国産と言い逃れる者が出て来ないでしょうか。
また、標識を付ける際の小鳥に与えるストレスはないのでしょうか。標識を付ける費用、労力、時間、鳥に与える負担等を考えると、それだけのコストをかける見返りはあるのだろうかと思います。
いっそのこと、愛玩飼養という制度を廃止すれば、このような煩雑な手続きはすべていらなくなり、公費の節減にも寄与します。現在、野鳥の愛玩飼養は、メジロとホオジロのみ許可されていますが、実際には26都道府県がすでに愛玩飼養自体をを禁止しています。これを拡大して全国レベルで禁止しても支障はないでしょう。「野の鳥は野で楽しむ」という野鳥愛護の精神に立ち、山野の野生の鳥を捕獲して飼育するという悪習を廃絶させていくべき時が来ています。