鹿児島県知事へ要望書を送付
10月下旬、当会の調査により、鹿児島県南大隅町で野生ニホンザルが大量に捕獲され、実験用に販売している業者に譲渡されていたことが明らかになりました。
当会では、11月1日付けで鹿児島県知事宛の要望書を送り、この捕獲は違法・不適切な手続きで行われたものである以上、現状回復をすべきであり、サルは南大隅町に戻して、専門家の指導のもと、健康状態や感染症のチェック等を行い、必要であればリハビリも行い、生態系をかく乱せず、かつ農作物被害が発生しないような地域を選定して放獣することを求めています。野生のサルを飼育することは選択肢の中にはありません。
平成18（2006）年11月1日
鹿児島県知事 伊藤祐一郎 様
当会は動物の保護にかかわる全国規模の市民団体です。
先頃、当会の調査により鹿児島県南大隅町で捕獲された野生ニホンザル90頭が熊本県内の捕獲業者のもとへ譲渡されたことが判明しました。
野生ニホンザルは、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律により、飼養には行政の飼養登録（許可）が必要です。また飼養を目的とした捕獲は許可されません。
さらに飼育ニホンザルは、動物愛護法による特定動物（危険動物）に指定されており、都道府県の動物愛護管理の所轄による飼養許可が必要です。
10月30日に鹿児島県が南大隅町に出向いて聞き取りをしたところでは、同町はH17年度に150頭、H18年度には220頭の有害捕獲の許可を出し、H17年度に銃で射殺したのが4頭で、その数字のみを許可捕獲の実績として県に報告。実際は大型捕獲檻で餌付けして直近の10月までに111頭も捕獲していながら県には何の報告もなされていませんでした。しかも捕獲したサルは熊本県の捕獲業者K氏に譲渡し、同氏が熊本県に90頭の飼養登録を行ったというものです。
鳥獣保護法に基づき、捕獲申請を行う際に捕獲目的及び捕獲後の個体の処置を記載しなければなりませんが、同町が出した捕獲許可証には捕獲後の処置は「埋設」と記されていました。また、捕獲従事者は町役場の職員であり狩猟免許は所持していなかったとのことです。
以上の経緯をふまえ、県では鳥獣保護法違反に対する厳重処分、市町村への法律の遵守の周知徹底、県によるニホンザルの保護管理計画の策定、および原状回復の措置をただちになされるよう強く要望いたします。
１，鳥獣保護法違反に対する厳重処分を求める
以下の点で鳥獣保護法違反に該当しますので、速やかに厳重処分をされるように求めます。
１）南大隅町自らの許可捕獲において111頭も捕獲しながら県に報告を行わず捕獲実績がないかのごとく装っていた。
２）町が捕獲申請を自らに出した際、捕獲後の処置を「埋設」として自らに許可を出していながら、実際は自らに飼養許可を出した上、直ちに県外の捕獲業者に譲渡していた。
３）わなによる捕獲従事者に網・わな免許を所持していない役場の職員が従事していた。
２，県内市町村に対する法律の周知徹底を求める
平成13年に許可捕獲の権限が県から市町村に委譲されたとのことですが、そのことにより県が市町村における捕獲の実態を把握できなくなっていることは大きな問題です。生息地状況の調査等がおこなわれない中で200～300頭もの捕獲許可を出すことは妥当とは言えません。また、鳥獣保護法では違法捕獲は最も重い罪であり（懲役1年、罰金100万円）、町の行政当局が法律に無知であることは許されないと考えます。
県では、県内の市町村で同様の事態が起こっていないかどうか直ちに調査をするとともに、再発の防止のために法律の周知徹底をはかっていただきたく要望いたします。
３，特定鳥獣保護管理計画の策定を求める
大隅半島の最南端に生息するニホンザルは孤立した地域個体群であると推定されますが、今回もしも350頭ものサルの全群捕獲が実行されてしまえば、この地域で絶滅する可能性もあると考えられます。県は速やかに、大隅半島および県内全域に生息するサルの実態調査に取り組み、それに基づいて特定鳥獣保護管理計画を策定していただくよう要望いたします。特定計画では生息地の保護管理、被害防除、個体数調整の３つの柱で実施されることから、ニホンザルの生態に詳しい専門家に調査や助言を依頼するとともに森林整備課、自然保護課との連携のもと、関係部局の協力により農作物被害等に対する被害防除の取り組みの支援や助言を行っていただきたく、要望いたします。
４，原状回復を求める
今回の捕獲は不法であり手続き上の過ちによって行われたことは明白です。その場合は直ちに原状回復がなされるべきであり、そのために県は熊本県に対して同県が出している90頭の飼養登録の取り消しを求め、速やかに現状回復の措置を取られるよう、要望いたします。
具体的には、サルが南大隅町に戻されたきた段階でサルの専門家の指導・助言のもと、健康調査、個体識別等を行うこと、および農作物被害の発生するおそれのない地域を選定し放獣可能な場所に放獣すること、が必要です。
万一原状回復がなされないならば、このようなずさんな手続きが前例となり違法・不法行為をしてもよいといった風潮がまんえんする事態となりかねません。速やかに県は町に対してサルを取り戻し、上記のような適切な方法で処置するように指示していただくことを強く要望いたします。
以上の件に関して、可及的速やかにご回答いただきたくお願い申し上げます。
※新聞記事を添付（2000年の類似事例他）
＜参考リンク＞
南大隅町 駆除サル、業者に譲渡－100匹以上、殺処分せず／県、回収指導を検討
南日本新聞 2006.11.6
捕獲サル100匹超、処分せず業者に－鹿児島・南大隅町、申請守らず
京都新聞 2006.11.6
ALIVEの紹介 