特定鳥獣保護管理計画
技術マニュアル( ニホンザル)に対する意見
2009年12月18日
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室 御中
「特定鳥獣保護管理計画技術マニュアル(ニホンザル)」案に対する意見
地球生物会議 ALIVE
<本編全体に関する意見>
本マニュアルは全体的に「個体数調整」「管理」「コントロール」の主張が強く打ち出されており、ニホンザルの生息地保全や農作物被害防除およびサルとの共存を図る観点は極めて弱い。
そもそもニホンザルは狩猟動物ではなく、資源利用すべき動物種でもない。その捕獲は原則として農作物被害等に対する対策としてのみ許されるのであり、計画においては基本的に被害防除の方法を中心に位置付けることを明記するべきである。
本マニュアルでは、サルは単なる管理の対象としてしか認識されておらず、個体群のコントロール(捕獲)に対する異常なまでの偏りが見受けられる。特定のイデオロギーではないかとまで疑われるほどで、国の指針としての公平性が問われる。
よって発行を環境省ではなく、本マニュアルの作成を委託した自然環境研究センターに変えるべきである。
また、執筆責任者の氏名も記されていないのは無責任であるので、氏名、所属を公表するべきである
<該当箇所>「改訂にあたって」 ページなし
「この技術マニュアルには「マニュアル」という表題がつけられているが,むしろ「指針(ガイドライン)」であり,あくまで基本的な考え方や計画の組み立て方を示したものである。」
<意見>
表題を指針に変更するべきである。
<理由>
表題と中味が異なるのであれば、不当表示になるので表題を変えるか、あるいは内容を具体的で技術的なマニュアルに変更するべきである。また、ニホンザルの保護管理は地域的、文化的、倫理的に多様な考えがあり、国がこれを一まとめにするのは困難である。本マニュアルは、これを作成した自然環境研究センターの執筆者の責任として発行するべきである。
<該当箇所>P.1 9行目〜
「もちろん環境の改変も減少の要因だと考えられるが,拡大造林により針葉樹人工林率が急速に高まった1950年代から1980年代にかけては分布域が拡大に転じていることから,やはり捕獲がもっとも大きな減少要因であったものと推定される。」
<意見>
「拡大造林により針葉樹人工林率が急速に高まった1950年代から1980年代にかけては、生息域が減少、分断されたことにより、里山の方へ押し出され拡散してきた。これは現象的には分布域の拡大のように見なされるが、それによって人との軋轢が生じ、捕獲圧を高めたことが、個体数を減少させるもっとも大きな要因となったものと推定される。」と修文する。
<理由>
この記述だと、拡大造林により葉樹人工林率が急速に高まっても、分布域が拡大するといった誤解を生じさせる。
<該当箇所>P.4,10行目
「しかし,森林環境が総体として悪化したと考えられている状況の下でも,ニホンザル個体群は大幅に増加していることに注意する必要がある。」
<修文>
この一文以下を削除する。
<理由>
拡大造林政策が始まる以前の自然植生の森林内に生息していた当時の情報が不足しており、ニホンザルの生息調査の制度も精度もない状態では、「ニホンザル個体群は大幅に増加している」と断言できる根拠はない。
<該当箇所>P.6、下から1行目
「全体として,本格的な個体群コントロールが必要な状況に直面しながらも,捕獲に関する目標と捕獲の位置づけが明確になされていないことが多い」
<意見>
この一文を削除する。
<理由>
不可能なことを要求しても意味がない。
<該当箇所>P.7
「目標の具体性の欠如」の項目「群れの分布域を当面現状のままにするのかそれとも縮小させるのか,群れ数とその配置,個体数をどうするか,群れの出現する集落数やその集落への出現頻度をどの程度減らすのか」
<意見>
この部分を削除し、この項目を以下の理由によって全面的に書き直す。
<理由>
群れの分布域や個体数の数は、農作物被害の発生とは直結しない。目標の具体性は、群れの分布域ではなく、被害の減少、軽減を目標にするべきである。群れの分布域を縮小させることしか記されていないが、地域によっては回復させる必要がある場合もある。
<該当箇所>P8、下から4行目
「コントロールという課題に取り組むことなしに適切な特定計画の策定と実施は困難であり,多くの場合,柵や追い払いのみでサルの被害問題を解決することは現実的に困難であり,このような防除と共に群れ数や個体数の調整を含む個体群管理なしに展望は開けない。」
<意見>
この一文を削除すべきである。
<理由>
このような意見は、特定のイデオロギーのもとに書かれており、国の指針としてふさわしくない。
<該当箇所>P.10、2行目
「このような状況を踏まえると,一律15kmという基準ではなく,地域毎にそれぞれの状況を勘案して,管理単位を階層的に設定することが現実的であろう。」
<意見>
「このような状況を踏まえ,15kmという基準は、地域個体群の絶滅を防ぐための安全係数とみなし,地域毎にそれぞれの状況を勘案して,管理単位を階層的に設定することが現実的であろう。」と修文する。
<理由>
15kmの根拠は、孤立した地域個体群の絶滅を防ぐために出されたものであって、前マニュアルで記された本来の意義をないがしろにしてはならない。
<該当箇所>P.11、1行目
「現行マニュアルの個体群規模に関する基準は,主に集団遺伝学的な幾つかの仮定に基づいた一般論であり,ニホンザルにおける具体的な検討に基づいたものではない」
<意見>
この部分を削除すべきである。
<理由>
地域個体群を絶滅させないために、本目安「最低限20群または約1,000頭,250km2 以上の連続した分布域の確保」が書かれたものである。事実認識の過ちである。
<該当箇所>P.14、9行目
「各々の地域の状況を踏まえながら,将来どこに,少なくともいくつの群れを,どの程度の群れサイズで残すのかを,まず計画策定主体である都府県が明確にする必要がある。」
<意見>
この箇所を削除する
<理由>
人間の側の経済的、社会的変化や環境要因の変化と条件によって、サルとの共存のあり方は変化する。この記述では、あたかも人間にとって都合のよい群れとサイズのみを残してあとはすべて駆除するとしており、あまりに独善的な主張であって到底容認できない。
<該当箇所>P.16、6行目
C 計画策定と実施体制のポイント 「特定計画の実質的な検討を進めるためには,これに加えて,計画策定と合意形成,事業実施,モニタリング,科学的評価を行う場等が必要である。」
<意見>
「特定計画の実質的な検討を進めるためには,これに加えて,計画策定と自然保護団体や市民の参加による合意形成,事業実施,モニタリング,科学的評価を行う場等が必要である。」と修文する。
<理由>
野生動物は国民共有の財産であり、地域住民や捕獲推進者のみの合意で計画を立てるのは不公正である。
<該当箇所>P.16、22行目
「○ ニホンザル個体群の管理を論議する科学委員会やワーキンググループの専門家には,ニホンザルの専門家だけではなく,個体群管理や個体群生態学について経験を積んでいる他の哺乳類等の専門家などを加えることが,論議を整理し検討を進める上で有効である。」
<意見>以下に修文する。
「○ ニホンザル個体群の保護管理を論議する科学委員会やワーキンググループの専門家には,ニホンザルの専門家だけではなく,保全生態学および他の哺乳類等の専門家などを加えることや、自然保護団体や地域住民、一般市民の参加を求めていくことが,論議を整理し検討を進める上で有効である。」
<理由>
ニホンザルとの共存をはかるためには「個体群管理や個体群生態学」といった分野の哺乳類の専門家とは異なる立場、見解の人々を入れていくことが必須である。「個体群管理や個体群生態学」の専門家はサルの捕殺のみに熱心であり、かえって一般納税者の理解が得られなくなる。
<該当箇所>P18、1行目
「(サル調整区域)特定の群れの個体数削減や全群捕獲などにより,被害地域の拡大阻止をおこなうこともあり得る。」
<意見>
この箇所を削除する。
<理由>
調整地域は、サルとの共存を図る地域とするべきである。仮に「特定の群れの個体数削減や全群捕獲」をしたとしても、その空白地帯に他の群れが入り込んでくるため、効果はない。
<該当箇所>
「上記の考え方は,小規模な群れ集団や孤立群の全てについて捕獲を行うべきでないということを意味しているのでは無い。隔離された群れ集団や孤立群は全国のどこにでも存在する。」
<意見>
これを削除する。
<理由>
隔離された群れ集団や孤立群は全国のどこにでも存在するからといって、その地域の
小規模な群れ集団や孤立群を捕獲してもよいという理由にはならない。暴論である。その地域のサルはその地域における生物多様性の構成要素である。
<該当箇所>P19、下から1行目
「本マニュアルではこの点を修正し,個体群コントロールをニホンザルの特定計画の重要な柱の1つとして明確に位置づけ,その適切な実行を進めるための記載に改めた。」
<意見>
P.19の「個体群管理」の項目を全文削除する。
<理由>
従来の場当たり的な捕獲が効を奏さないとして、個体群コントロールの手法で群れ捕獲を進めようというものだが、個体を捕獲する方針から、群れごと捕獲する方針へ変えるのみであり、まず捕獲ありきという点では変わりはない。中山間地の過疎化、高齢化、耕作放棄地の増加、温暖化といった社会的、環境的変化を組み込んだ、正に順応的保護管理の手法をとらない限り、サルの殺戮は留まることを知らない。実行不可能な計画を立てること自体が無意味である。
<該当箇所>P.24、下から4行目
「平成15年の鳥獣保護法施行規則の改正により,捕獲許可申請書には捕獲個体の捕獲後の処理についての記載が義務づけられたところであり,捕獲許可の審査に当たっては,捕獲個体が有効利用される場合を含め,捕獲後の処置が適正なものであることを確認する。
」
<意見>
「捕獲個体が有効利用される場合を含め」の部分を削除する。
<理由>
ニホンザルは非狩猟鳥獣であり、捕獲は本来被害対策としてやむを得ない場合に限り実施されるものである。有効利用の可能性を示唆することが、利用目的の捕獲を誘発し違法行為を引き起こしてきた経緯がある。あえてここに記述する必要は無い。
<該当箇所>P45、7行目
「ニホンザルを学術研究目的で捕獲することは,どうしても野生ザルを利用しなければ研究の目的を達成できないと判断される場合を除き認められないこと」
<意見>
「ニホンザルを学術研究目的で捕獲することは,鳥獣保護法の目的に合致するものであって、どうしても野生ザルを利用しなければ研究の目的を達成できないと判断される場合を除き認められないこと」と修文する。
<理由>
「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」に基く学術研究目的であることをわかるように記述するべきである。
<該当箇所>P45、10行目
「安楽死の手法について合意形成が必要な場合は,県の獣医関係部局や獣医師会などと連携し,現場で実施可能な方法を検討する。」
<意見>
「安楽殺の手法については,県の獣医関係部局や獣医師会などと連携し,現場で実施可能な方法を検討する。」と修文する。
<意見>
サルが自ら死を選ぶのでない以上、安楽「殺」とすべきである。また、「合意形成が必要な場合にのみ、検討する」のではなく、原則としていかなる場合でも獣医師による麻酔薬投与とすることを明記するべきである。
<該当箇所>P45、13行目
「したがって特別の目的や理由がある場合を除き,原則として捕獲個体の放獣は行わない。」
<意見>
「人なれを阻止するための学習放獣、傷病獣の一時保護等の特別の目的や理由がある場合を除き,捕獲個体の放獣は行わない。」と修文する。
<理由>
人慣れを防ぐために捕獲個体に威嚇行為等を行って放獣することは、学習能力の高いサルには有効であり、学習放獣について明記するべきである。また傷病鳥獣の保護と放獣は鳥獣保護事業の一つであることも忘れてはならない。
以 上