当会は、人間と動物が自然環境の中で調和して暮らせるよりよい文化環境を作り出すことを目指している市民団体です。
このほど、新潟市民のいこいの場である白山公園のニホンザル36頭が、増えすぎたとの理由で、愛知県犬山市の日本モンキーセンターに譲渡されたと報道されました。この件に関して、私共は以下の事項を要望致します。
1.この間の経緯
市は、昭和49年にモンキーセンターから５頭のニホンザルを導入しましたが、放置していたところ31頭にまで数が増えたとの理由で、平成３年にその中の10頭を、愛知県犬山市の日本モンキーセンターに引き渡しました。
その後も繁殖制限についての手段を何ら講じることがなかったため、頭数が36頭にまで増えてしまいました。そこで市は本年４月にこの36頭のサルをすべて再びモンキーセンターに引き渡しました。しかも、この時点でサルの飼育を止めるという措置は検討することさえなく、また新たに５頭のニホンザルをもらい受けました。この５頭のサルのうちメスの１頭は４月下旬に死亡しました。
この24年間、市は飼育サルの個体識別を行ったことも、出産や死亡記録を取ったこともなく、ただ近親交配で増えるにまかせていただけでした。
2.モンキーセンターから実験へ
日本モンキーセンターは、日本動物園水族館協会加盟の動物園ですが、動物実験用にサルを提供することも事業の一つとしています。
当会が同センターの小寺園長に電話で確認したところ、市が平成３年に同センターに引き渡したサルは動物実験に出しており、今回の36頭についても、いずれ実験用に提供する可能性はあるとのことでした。
動物の終生愛情飼育を義務づけられている動物園が、数が増えたからと、心身に多大の苦痛を与える動物実験に引き渡すことは、モラルに反するばかりでなく、動物園に寄せる信頼を裏切る行為です。
しかも、市の飼育サルが、モンキーセンターを経由して秘かに動物実験用に回されてしまう恐れについて、私共が市に問い合わせたところ、その件については何も把握していないとの回答でした。サルたちを安易に引き渡したことは、たいへん無責任な行為と言わざるを得ません。市は、直ちに同センターに対してサルの終生飼養を要請して下さるよう、要望致します。
3.市の管理責任を問う
白山公園のサルの檻は非常に狭く、これまでも過密な状態であることは誰が見ても明らかでした。それにもかかわらず市は適切な飼育管理や繁殖制限を何ら行わず、２度にわたり増えすぎたからとモンキーセンターに引き渡してしまいました。
このことは、動物の保護及び管理に関する法律に基づいて、市民に動物に対する適切な飼育管理や繁殖制限、終生愛情飼養を啓発普及すべき行政の立場として、無責任極まりない行為です。
一日中人が入れる公園内であるにもかかわらず、夜間寝室の外にいるサルも見受けられるなど、安全面での配慮も見受けられません。動物の安全や健康、飼育管理に関する担当責任者もおらず、心ない人が棒で突いたり菓子袋を投げ入れたりしても、これを止める術もない状態です。
檻自体もたいへん狭く、遊び場も隠れ場所もない状態です。行政自らが、このような悪しき飼育状態を直ちに改善しない限り、市民に動物飼育のモラルの向上を呼びかけられるはずがありません。止まり木を増やし、隠れる場所を設置するなど、動物の居住環境を改善し、動物の福祉に配慮した施設に作り変えていただくよう、強く要望致します。
4.公園での飼育を止めること
そもそも、本来は野生で生きるべきニホンザルを、公園の飾りものとして飼うこと自体、もう止めるべきです。野生動物を檻に閉じこめその仕草を笑いものにすることは、野生動物の尊厳を踏みにじるもので、教育上も好ましくありません。
ニホンザルは、絶滅危惧種として国際版レッドデータブックに記載されている動物であり、私達日本人にはその野生の生態を学んだり住処の森を守るために努力をしていくことが課せられています。公園のサルが置かれている状態は、見せ物以外の何ものでもなく、哀れみをさそいこそすれ、動物の愛護や保護に関する意識を高める効果は何もありません。
今いる４頭については、これ以上数が増えないように繁殖制限を行い、寿命がきたらその限りとして、今後は公園でのサルの飼育そのものを廃止するよう要望致します。
以上の事項に関し、市としてのご見解を伺いたく、５月末日までに、文書でご回答下さるようお願い致します。
５月１１日付けで、当会は新潟市白山公園のサル36頭が愛知県犬山のモンキーセンターに引き渡され、動物実験用に提供される恐れがあること、従って、貴市として同センターに実験用に使用しないように要請してほしい旨を要望いたしました。その後、モンキーセンターの対応で実験提供はほぼ確定していることが報道されましたので、以下の事項を追加いたします。どうかご検討下さるようお願い致します。
1.白山公園のサルの実験提供に反対する
市は、「実験に供給されるとすれば一考の余地がある」とコメントしています。おそらく市は、動物園と名乗る同モンキーセンターがサルを終生飼育することと信じていたのでしょうから、事前の調査不足というべきです。
動物実験は、故意に動物に精神的肉体的苦痛を与えることであり、どんな大義名分があろうとも、動物虐待行為であることには間違いありません。日本には、動物実験を規制するいかなる法律もなく、一度、実験室の中に送られてしまえば、サルたちの生死はまったく外部からはわからなくなります。サルの実験をはじめとする動物実験そのものが、研究者の論文生産や単なる知的好奇心を満たすためだけの甚だ無益で残酷なものが多く、市が動物実験施設や実験内容までチェックできない以上、サルの実験提供を許すべきではありません。
2.サルを引き取り新たな環境教育の場所作りを
同センターの小寺所長が、サルの実験用供給を止めるわけにはいかない」と述べたことが報道されました。しかし、「動物の保護及び管理に関する法律」及び同法に基づく「展示動物の飼養及び保管に関する基準」では、動物を終生愛情を持って飼養するように求めています。同センターが、サルを繁殖させ実験用に提供していることは、前記基準に反しており、動物園の為すべきことではありません。
同センターが新潟市のサルを実験提供するとしている以上、市はもう一度サルを引き取るべきです。そしてこの機会に、市の敷地内で広いスペースのある場所を探し、サルの放飼場を設置して再飼養していただきたく、要望いたします。
その場合、従来のように牢獄の中の動物を見せ物にするようなやり方ではなく、ニホンザルが本来住む環境を取り入れ、かつ動物福祉に配慮した施設とし、子供達の環境教育に役立てることができるような場所にしていくことが望まれます。
3.繁殖制限と終生飼養の責任を
４月下旬に市の緑地公園課に電話で問い合わせた際、新たに引き取った５頭のサルについては、モンキーセンターの助言により埋め込み式のピルによる避妊措置を取ることを検討しているとのお話でした。ところが、５月12日付けの新聞では、小寺氏は「繁殖制限はかえってサルに残酷だ」とコメントしており、話が矛盾しています。動物園における繁殖制限は一般的に行われており、増えすぎたからと処分する方が、はるかに残酷です。市は、法律や基準に基づいて、飼育下の動物の繁殖制限を行う責務があることを、再度、ご確認下さい。
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