ニホンザルの違法捕獲と違法実験譲渡に法的対処を
ALIVE 2002年2月6日
今年(2002年)の2月2日に、滋賀県の愛東町が、野生ニホンザルを虚偽の「学術捕獲」の名目で捕獲し、国立滋賀医科大学に実験用に違法譲渡していたことが報じられました。それによると、以下のような違法、不正行為があったと判断されます。
●愛東町の違法行為
1、県の捕獲許可がないのに、勝手に捕獲したこと。
2、サルの生態調査(学術捕獲)と偽って、有害駆除を行ったこと。
3、生態調査と偽って、動物実験用に捕獲したこと。
(学術捕獲は、野生鳥獣の保護管理を目的とする研究に限定されている)
自治体自らが法律違反を実行していたわけで、処罰(実刑付き)の対象となります。
●滋賀医大の不正行為
滋賀医大は、県内の市町村から多数のニホンザルの駆除個体を受け入れていますが、市町村との馴れ合いで違法にサルを飼養していました。今回に限ると、
1、サルの飼養許可書が添付されていない(違法捕獲)ことを知りながら、愛東町からサルを受け取ったこと。
2、愛東町からの違法捕獲だったので返還してほしいという要望を断り、そのまま数ヶ月も勝手に飼養していたこと。
が問題とされています。滋賀医大に限らず、他の研究機関でも同様であったことが報道されています(2000年12月24日 朝日新聞など)。実験研究機関がいかに野生動物の保護や法律に無知・無関心であるかの現れです。
●滋賀県の問題
滋賀県では、来年度から特定鳥獣(ニホンザル)の保護管理計画の策定を予定しています。しかし、市町村の現場がこのようにずさんである以上、この計画の有効性が疑われます。
滋賀県は、すでに銃によるサルの捕獲許可を市町村に降ろしており、平成13年の4月1日からは捕獲個体の飼養許可も市町村におろしています。さらに今年の4月1日からはさらに、檻によるサルの捕獲(生け捕り)の許可権限まで市町村におろす予定です。
これでは科学的データに基づく保護管理計画の実行もおぼつきません。県は、直ちに以下の事項に着手すべきです。
1、銃および檻によるサルの捕獲および飼養の許可権限を県に引き上げる。
2、市町村は県の特定鳥獣保護管理計画に基づいて、被害対策を実施する。
3、実験動物用にサルの捕獲が行われるなどの不正行為を禁止すること。
(報道の概要)
ニホンザル違法捕獲、滋賀県愛東町が医大に譲渡
滋賀県愛東町が野生のニホンザル一匹を許可なく捕獲、また生息範囲を調査するという目的で県が捕獲を許可したさるを、実験用として滋賀医大の付属動物実験施設に(大津市)に違法に譲渡していたことが分かった。滋賀県は同町に対し、医大にサルを返却させ、自然に帰すよう指導した。
県自然保護課は、昨年七月から九カ月間、十匹に限って捕獲を許可した。ところが愛東町は許可申請前の六月四日から今年一月にかけて、おりなどで計十一匹を捕獲。このうち四匹と違法捕獲の一匹を合わせた五匹を滋賀医大に持ち込み、譲渡した。の際、実験中に飼育するのに必要な市町村交付の許可証も、交付していなかった。
滋賀医大によると、サルは飼養の許可証が添付されてなかったため、実験には使わなかった。二匹は病死したが、三匹は今も生きている。今月二十五日になって、町から「サルを引き取らせてほしい」と連絡があった。大学が断ったところ、町から後日、サルを安楽死させてほしい旨の依頼があった、という。五匹のうち二匹は捕獲時のけがで既に死んでいるという。県は、町が目的や捕獲数、期間を逸脱したことを重視し「学術目的の捕獲としながら、愛東町が有害駆除のように扱ったのは、学術捕獲への誤解を生みかねず、残念だ」と話している。
愛東町の福永順治産業振興課長は、県の指摘を受け、「三頭のサルを山に返す方向で検討している」と言っている。