地球生物会議ALIVE

　8月27日の東京新聞によると、猿の餌付けをした観光で知られる高崎山自然動物園が、有害鳥獣として捕獲した猿を、動物実験用に大分医大に譲り渡していたことが報じられました。県に対しては「高崎山に離した」と虚偽の報告を行っていたということです。同医大への譲渡はかなり以前から始まっていた可能性もあります。

　　当会は、1997年１１月１５日の朝日新聞の報道で、“国立大学動物実験施設協議会が日本各地の野猿公園の野生ニホンザルを動物実験用に使用したいとの意向を示し、これを受ける形で大分市では天然記念物指定の高崎山の野生ザルを、「頭数過剰」の理由で実験にまわすことを検討している”とのことを知り、高崎山の猿を実験に使用しないよう、各関係方面へ働きかけていました。

　8月28日、当会は大分市市長と同高崎山管理委員会に対して、以下の要望書を送りました。

　当会では、1997年11月22日付で、「高崎山のニホンザル実験使用に反対する要望書」をお送りいたしました。それにもかかわらず、今回、貴市の高崎山自然動物公園から外に出たニホンザルがこの４年間で500頭もが捕獲され実験用に提供されたとの報道に、強い憤りを覚えます。以下の事項の通り、今後は実験提供という悪習を根絶されるよう、ここに強く要望いたします。

　高崎山のサルはかつて天然記念物に指定して保護することによって絶滅を免れた動物です。その後、市当局は観光用に餌付して頭数を増やし、日本中に「愛らしい、かわいい」サルに会えるとのキャッチフレーズで観光客を呼び寄せてきました。そして今度は増えすぎたからと、区域外で有害駆除によって捕獲し、残酷で苦痛に満ちた動物実験に提供しているのは偽善も甚だしく、高崎山のサルを愛する人々や観光客に対する裏切りというべきです。

　野生鳥獣は日本国民共有の財産であり、貴市のようにこれを観光用に餌付けしたり、実験用に提供する行為は、野生生物保護の理念にもとる行為であり、環境教育や生命尊重の理念にも反します。ニホンザルは国際自然保護連合の『レッドデータブック』（1996年度版）で絶滅危惧種に指定されており、国際的には日本唯一の霊長類としてたいへん貴重な動物です。このような動物種を動物実験に使用することは、国内外の野生動物保護の世論を踏みにじるものです。

　高崎山のサルの会場頭数の問題は、今後、餌付けを減少させることで出生数を減少させるなど、より自然な方法で時間をかけて取り組むべきです。一時的に自然群とは別に隔離し、市民参加による適切な管理計画のもとに繁殖制限を行うべきであり、また、どうしても処分が止むを得ないというのであれば、同じく市民の同意を得た上で安楽死の措置を取るべきではないでしょうか。

　高崎山の天然記念物指定区域ではサルの捕獲ができないため、当局はサルを意図的に近隣市町に追い出し、これを「有害駆除」の名の元に捕獲しています。貴市は、近隣自治体と協力してサルの生息地の保護と生態調査、および被害防除策を実施するなど、保護管理計画を策定すべきです。

　貴市当局では捕獲したサルを大分医科大学などに実験用に提供していますが、同大学ではさらに他の大学・研究機関に横流しているものと見られます。貴市はこれまで大分医大に提供したサル（過去４年間で500頭）に関して、その追跡調査を行い。情報公開すべき責任があります。
　
　人間に最も感覚が近い霊長類は痛みや苦しみの感覚を有し、実験によって激しい苦痛を受けています。しかし、日本では、研究者が密室の中で動物に対してどのような残虐行為を行おうと、その事実が明るみに出され処罰されることもありません。貴市では、この機会に、大分医科大学に対してサルを使ったすべての実験データの提示を求め、それを市民に公開していただきたく存じます。

以上

　宛先：〒870-0046 　大分市荷揚町2-31
　大分市役所　大分市長　木下敬之助様

　〒870-0046　　同
　高崎山管理委員会御中

高崎山のサルの

実験提供に反対する意見書(2)

高崎山のニホンザルに関する要望書