今年(1999年)9月に、大分市高崎山の自然動物園が、近隣のサルを有害獣駆除を名目に捕獲し、密かに動物実験に回していたことをお知らせしました。園側は、サルを捕獲したあと、高崎山にまた放したと県に虚偽の報告をしていたのですが、9月11日付けの新聞報道によると、その上無許可で捕獲していたことも明らかになりました。
高崎山のサルは国の天然記念物でありながら、これほどずさんな行為が長年行われてきたことは驚くばかりです。しかも九月二九日、高崎山管理委員会はなんと今年度サルを捕獲したら七〇頭までを大分医科大学に実験譲渡し、その他は高崎山に放すという、無責任きわまりない許し難い方針を出しました。
野生動物の餌付け禁止を
一般に、人は野生動物に対して一定の距離と節度を保つべきとされています。かわいいからとか、かわいそうだからと食べ物を与えるべきではありません。野生動物が人の食べ物に依存するようになれば、自然界で自ら食べ物を探すという習性を失い本来の野生の能力が損なわれてしまいます。そればかりか、野生動物には餌付けの作物と農作物の区別がつかないので、「有害獣」として駆除されてしまうことになりかねません。
ところが、高崎山や長野県の地獄谷のような「野猿公園」では、餌付けによってサルを呼び寄せ、それを観光客に見せることで利益を得ています。その結果、個体数は増え続け、近隣の農作物を食べ荒らすことになります。一九五三年に餌付けされた当時の高崎山のサルの数は約二二〇匹だったと言います。それが一九九五年には何と二一二八匹にも増えてしまいました。
餌付けは、野生ニホンザルの習性や生態を狂わせるばかりか、農作物への依存を高め、結果的に彼らを死に追いやる行為となっています。
観光と実験に同時利用
京都大学の霊長類研究所は、野生霊長類の研究で知られています。この研究者達は餌付けを利用してサルを身近に引きつけ、観察して研究を行い、論文を書いてきましたが、また彼らは、餌付けで増えすぎたサルを動物実験に送り込むことに協力してきました(日本モンキーセンターがその受け皿となって、捕獲されたサルの各地の実験施設に送り込む役割を果たしてきた)。そして今や京大の霊長類研究所自身が巨大な実験用霊長類の供給施設になろうとしています。
一方の手で野生サルに餌を与えて増やし続け、他方の手で彼らを捕獲して実験室に送り込む。これが日本の主流の霊長類学者たちがやってきたことなのです。
「高崎山では山から脱走するサルを片端から捕獲、狭い小屋に閉じこめ、大学病院などに渡している。六三年から二〇〇匹近くを提供した。霊長類学者は『動物愛護の精神もない観光行政だ』と批判、中止を迫っている」(一九七四年一二月五日付朝日新聞夕刊)
餌付けして増やしては実験室に送り込むという愚行。それに加えて農作物を食べるという習性をサル社会に広げさせてしまった過失。これに荷担してきた著名な霊長類研究者たちは、責任を取るべきです。
実験研究者達の欲望
一方、実験研究者達もまた、有害駆除したサルがただ同然でいくらでも入手できることに目を付け、臆面もなくサルを要求してきました。人間に最も近いという理由で、霊長類を拘束機にしばり付け、拷問的苦痛を与える研究、しかもそれらは決して一般の人々の目にふれることのない密室の中で密かに行われているぞっとするような光景です。
大分医科大学は、毎年高崎山のサルを実験用にもらい受けているばかりか、それを他の大学に横流ししていたようです。さらに悪質なことに、同大学は、サルの飼養許可を得ておらず、違法にサルを取得し譲渡していたのです(鳥獣保護法違反)。
行政による違法行為
大分県では、1995年から有害駆除の許可権限を市町村に降ろしています。その結果、高崎山のサルの駆除は、大分市(観光課)が駆除の許可申請を行い、同時に市(耕地林業課)が許可を行うことになっています。
1996年11月まで、大分市は許可無く駆除を行ってきました(鳥獣保護法違反)。
その後許可を得て捕獲したサルを大分医科大学に実験用に提供していながら、県には「高崎山に放した」と虚偽の報告を行っていました(鳥獣保護法違反)。
この例で分かるように、天然記念物のサルに対してさえ、有害駆除の名の元にやりたい放題の違法行為がまかり通るのが、日本の現実です。
今年(1999年)6月に「改正」された鳥獣保護法で、有害駆除の許可権限が市町村に降ろされるおそれが強くなっています。中でもこの大分市の例のように、駆除の申請と許可権者が同じ組織であることが、大問題なのです。被害の実態調査や被害額の評価を行ったり、駆除後の効果を調査するなどが行われることはまったくありません。「改正」鳥獣保護法によってますます有害駆除が、人の目の届かないところで拡大していくことがたいへん懸念されます。
私たちにできること
- 地元の都道府県に対して、駆除の許可権限を市町村に降ろさないように要求しましょう。
- 有害鳥獣駆除に監視制度(市民の立ち会い)を求めましょう。
- 鳥獣外被害者への被害補償、および野生動物保護政策を進めるために、もっと予算を取ることを求めましょう。
- 日頃から狩猟や有害駆除に関する情報を集め、できれば実際に現地に行ってみましょう。
- 議員や地元新聞社などに手紙を書きましょう。
霊長類の実験を廃止へ
- 毎年、数千もの野生ニホンザルを実験で消費している動物実験が、どれほど私たちの社会の幸福に寄与しているというのでしょうか。国が脳科学研究の分野の研究に莫大な予算を付けているために、「人間の身代わり」としての実験用霊長類の需要は増える一方です。私たちは、納税者として、また有権者として、税金の使い方の公開を求め。その内容についてもっと監視の目を光らせなければなりません。
1 野生霊長類を動物実験使用に反対
- ニホンザルを含めた野生動物は国民の共有財産である。仮に「有害駆除」される場合があっても、捕獲個体を実験者や動物業者など、一部の人々の利益のために供するべきではない。
2 絶滅危惧種の実験使用は許されない
- ニホンザルは、餌付けされて増えているかのように見えるが、各地で生息地の分断や消滅によって生存があやぶまれている。実験用の供給のために保護がないがしろにされている。
3 霊長類には人間なみの福祉を
- ニホンザルを含む霊長類は、人間に最も近い種であり、人間と同じように精神的・肉体的苦痛を受ける生き物である。霊長類の実験は人体実験にも等しく、人の心に強い衝撃と嫌悪の念をいだかせるものである。
4 動物実験の情報公開を
- 日本は先進国の中で唯一、動物実験に対してはいかなる法規制もない国であり、密室の中で動物にどんな残虐行為を行っても許される国である。サルを実験に使用している研究機関は実験の全てを国民に公開すべきである。
このほとんどすべてが大分医科大学に実験用に提供されたと推定される