地球生物会議ALIVE 象牙の密輸事件に厳しい処置を！

　当会は、すべての生命が地球に共存できる環境を求めて活動する全国規模の市民団体です。
　日本は世界最大の野生生物消費大国であり、野生動物の消費が国内外の種を絶滅においやる要因であることから、当会では環境と動物を守る賢い消費者として選択することの提案を、活動の一つとしています。

　さる４月、埼玉県で象牙２７本、５００キログラムもの大量密輸事件が摘発され、関税法違反等で関係者が逮捕されるという事件が起こり、社会に大きな衝撃を与えました。
　しかも、本件犯行は、絶滅のおそれのある野生生物の取引を規制するワシントン条約の締約国会議の開催を目前に実行され、会議中に発覚して摘発されました。象牙は、違法取引の根絶と野生生物の保護を求める同条約のシンボルマークでもあり、象牙取引の規制が大きな議題となっていたこの会議に挑戦するかのような本件犯行は、まさに国際世論に冷水を浴びせるに等しい行為でした。

　さらに驚くべきことは、本件の犯人らが象牙の業界団体の幹部であり、かつこの団体はオブザーバーとして同会議に出席していたという事実です。このことは日本の象牙の業界団体は象牙の取引規制を守る意図はまったくないということを、国内外の世論に表明したというべきでしょう。

　もし、今回、この密輸事件の徹底解明と厳しい処罰がなされなければ、日本政府の信用性そのものが国際社会で失墜するでしょう。政府が定めた合法的な規制さえも台無しにするこのような密輸事件は、これを最後に根絶させなければなりません。
　ついては、この件に関し、当会は関係各方面に以下の要望をいたします。ぜひご検討下さるようお願い申し上げます。

　警察、検察は、野生生物の違法取引を環境犯罪の一つとして認識し、徹底捜査を行うとともに、厳重処罰を求める姿勢を国内外に示していただきたい。

　象牙業界自体が組織的・計画的に関わっている疑いがあり、事件の背景や全容の徹底的解明とともに、業界の組織実態の解明もあわせて行っていただきたい。

　今回の密輸の舞台となったシンガポールでは、象牙のみならずべっ甲等多くの野生生物（製品）の違法取引が行われていることが明らかにされている。国際的密輸組織の存在が疑われるので、国際的協力体制のもとに、密輸ルートについて徹底的に追跡していただきたい。

　昨年５月に発覚したオランウータン等の密輸事件の前例に鑑み、税関は積み荷に対するより一層の検査と監視体制の強化を行っていただきたい。

要望書の送付先：

　浦和地方検察庁、埼玉県警察本部長、武南警察署長、東京税関監視部、神戸税関監視部　

不当な略式起訴

　当会及び国内外の野生動物保護団体が、関係当局に要望書を送付したにもかかわらず、５月16日、浦和地検はこの事件を略式起訴で片づけてしまいました。立件は、税関の許可がない物品を国内で運搬した事実についてのみであり（関税法１１２条）、しかも検察官は正式裁判を求めず、略式起訴手続によって罰金30万円が科されたにとどまりました。

　当会では、野生生物保全論研究会と連名で、５月23日付けで、以下のような「逮捕された象牙業者と象牙業界に対する徹底した捜査の継続を求める要望書」を再送付しました。

本件では大規模な国際的密輸取引が疑われ、犯人は象牙業界の関係者である。いま象牙業者や象牙業界に対する捜査を打ち切るべきではない。
関税法１１２条の罰則では３年以下の懲役が規定されている。にもかかわらず、あえて罰金を選択し、しかも正式裁判を求めず略式起訴手続としたのは不当である。
本件はワシントン条約関連の税関行政に対する重大な違反行為であり、かつ日本政府の野生生物保全行政に対して、日本国民と国際社会の大きな不信をもたらした。それに比すれば、検察庁の処分はあまりに軽すぎる。

　以上の点に鑑み、以下の点を強く要望する。

［要望事項］

　逮捕された象牙業者の本件密輸そのものへの関与と同種余罪に関する捜査を再開し、事実を徹底糾明すること。

　日本の象牙業界の本件に対する関与の有無を徹底糾明すること。

　捜査の結果、逮捕された象牙業者らの密輸への関与について立件が可能になった場合は、事案の重大性を十分考慮し、厳しい処分を求めていくこと。