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野生動物の密輸・密売の防止に向けての要望
2005年8月25日
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の実効性の強化及び同法の改正を求める要望書
８月18日の報道で、絶滅の恐れがある東南アジア原産のワニ（ガビアルモドキ）の売買に関して、種の保存法違反で関係者３名が警視庁に逮捕されたとの報道がなされました。それによると、静岡のペット卸販売会社経と草津熱帯圏という動物園（日本動物園水族館協会加盟）が結託して、国内で初めてこのワニの繁殖に成功したとの同園の繁殖記録をもとに、偽りの申請書類を作成し、不正登録を行なったと報じられています。また、この業者は、マダガスカル原産のホウシャガメについても、自家繁殖させたと偽り登録票を不正に入手していた疑いがあるとされています。
種の保存法は施行後12年を経ていますが、このような違法事件が跡を絶ちません。その理由は、同法が実効性に乏しく、希少生物を保護するという本来の目的を果たしていないことにあります。
よって、近い将来、以下のように種の保存法を改正すること、そこに至る前にも早急に施行規則を改正し、このような違法登録の防止を図ることを、強く要望いたします。
要望１：密輸や違法登録の防止体制を強化すること
目的を偽った違法輸入や、違法な個体登録を阻止するために、書類審査に加えて専門家委員会を設け、現地調査や実物確認などの監視を行うとともに、個体識別措置の義務づけを課すべきである。
要望２：密輸された生きた個体の取り扱いについての保護の規定を設けること
税関で摘発され任意放棄された生きた個体については、これを保護収容する施設を設け、原産国に返還する場合には返還費用を密輸犯に負担させるべきである。
要望３：犯罪の抑止のために罰則を大幅に引き上げること
理由は別紙の通り。
地球生物会議（ALIVE)
代表 野上ふさ子
【別紙】
国際希少種の密輸入等の防止及び個体の取り扱いに関する要望事項
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要望１：違法輸入の防止体制を強化すること
目的を偽った違法輸入や、違法な個体登録を阻止するために、書類審査に加えて専門家委員会を設け、現地調査や実物確認などの監視を行うとともに、個体識別措置の義務づけを課するべきである。
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理由：
１）輸入申請をチェックする専門家委員会の設置
CITES附属書ｌの国際希少野生動植物種は、学術研究の名目でのみ輸入が可能であるが、実際には多くの動物園等で研究とは言い難い単なる展示や娯楽に供している
（2005年、チンパンジーのショーが学術研究に該当しないとして環境省が動物園に勧告したと報じられている）。また、動物園の名前を偽って、密輸するペットショップや動物取扱業者がいる。
これに対して、現状のような書類審査のみでは対処できない。野生生物に関する専門家委員会を設置し、申請を事前にチェックする体制を作るとともに、事前にヒアリングや現地調査を行い、学術研究を行うことが可能かどうか、及び飼育に適した条件を整備しているか否かの判断を行うべきである。
２）個体識別措置とそのデータベース化
商業目的で繁殖させた個体等の占有者は、環境省に個体登録を行うことによって、それを合法的に売買することができるが、虚偽の申請、あるいは個体登録票の使い回し、さらには偽造といった事件が発生している。
マイクロチップ等の装着等による個体識別措置を義務付けるべきである。それとともに、譲渡し等によって登録票が使い回しされたり偽装されることを防ぐために、登録情報をデータベース化し、追跡調査ができるようにするべきである。
| 要望２：密輸された生きた個体の取り扱いについての保護の規定を設けること
税関で摘発され任意放棄された生きた個体については、これを保護収容する施設を設け、原産国に返還する場合には返還費用を密輸犯に負担させるべきである。
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理由：
１）保護収容施設について
毎年、税関で密輸が発覚し、任意放棄されるほ乳類、鳥類、爬虫類の生きた個体は数千にのぼるが、これを保護収容する施設がなく、また原産地に返還された例もない。密輸動物は、不法に取り扱われ、長時間、給餌給水も不十分のままアンダーグラウンドの輸送で持ち込まれるため、身体的なストレスや損傷を受けている上に、感染症の罹患のおそれもあり、空しく死ぬケースが多い。獣医学的なケアがなされる保護施設が必要である。
CITESの条文には動物虐待の防止と適切な輸送及び施設の設置等の動物福祉規定があり、条約の遵守の観点から、国の責任で生きた個体を保護する施設を設ける責務がある。
２）原産国返還または飼育、及びその費用負担について
条文（第16条）に規定はあるものの、生きた個体の返送規定が適用された例がない。
密輸の場合は原産国や原産地が不明の場合が多く、あるいは生息地の原状回復が困難であるために返送できないとされるが、それ以前の問題として、法の執行当局に当初から返送の意思がまったくないことが問題である。絶滅を防ぐという観点から、国がその生物の生息地情報等を収集し、相手国機関との情報交換を行い、可能な限り返還を促すようにするべきである。
またそれを可能ならしめるために、押収された動物や任意放棄された動物は、国が一時保護シェルターを設けて、適切なケアを施し、原産国(地域）または適切な飼育施設に収容されるまでの期間、リハビリを行うべきである。それにかかる費用は密輸の実行犯に負担させるものとし、返還が不可能な場合はその個体の終生飼育にかかる費用を全額負担させるべきである。
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要望３：犯罪の抑止のために罰則を大幅に引き上げること
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野生生物の密輸は、武器、麻薬と並ぶ三大犯罪の一つであり、世界警察機構は環境犯罪として各国に対策の強化を呼びかけている。しかし、現行法では、最大が懲役１年、罰金100万であり、密輸から得られる大きな利益に比して罰則が弱く、再犯を繰り返す者もいる。犯罪の抑止効果をあげるためにも、罰則、特に罰金の大幅引き上げが必要である。
なお、環境省所轄の新法「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」では、三年以下の懲役、300万円以下の罰金、ならびに法人に対する罰則は最高１億円となっている。本法においても同程度の引き上げを行うべきである。
希少野生動植物の密輸は、その種が生息する地域の生態系や生物多様性をも破壊していることに他ならず、国際社会に対する責任として違法行為に厳しく対処するべきである。
添付資料
（省略）
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