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2012年2月1日

環境大臣　細野豪志　様
所轄：自然環境局野生生物課

●要望１
　違法輸入の防止体制を強化すべきである。
　目的を偽った違法輸入や、違法な個体登録を阻止するために、書類審査に加えて専門委員会を設け、現地調査や実物確認、追跡調査などの監視を行うとともに、個体識別措置及びトレーサビリティの確保を義務づけるべきである。

●要望２
　密輸された生きた個体の取り扱いについての保護の規定を設けるべきである。
　税関で摘発され任意放棄された生きた個体については、これを保護収容する施設を設け、原産国に返還する場合には返還費用を密輸犯に負担させるべきである。また、没収規定も併せて設けるべきである。

●要望３
　犯罪の抑止のために罰則を大幅に引き上げるべきである。
　犯人が動物取扱業者であった場合には、動物愛護管理法と連携し、無期限ないし一定期間の営業停止措置を定めるべきである。

【理由】

●要望１について　 関連条文：法律第20条、21条

1) 輸入申請をチェックする専門委員会の設置

　CITES附属書Iの国際希少野生動植物種は、学術研究の名目でのみ輸入が可能であるが、実際には多くの動物園等で研究とは言い難い単なる展示や娯楽に供されている(2005年、チンパンジーの興行が学術研究に該当しないとして環境省が動物園に注意した例がある)。また、動物園の名前を偽って、密輸するペットシヨツプや動物取扱業者がいる。

　これに対して、現状のような書類審査のみではまったく対処できない。野生生物に関する専門委員会を設置し、申請を事前および事後にチェックする体制を作るべきである。申請においては、事前にヒアリングや現地調査を行い、学術研究を行うことが可能かどうか、飼育に適した条件を整備しているか否かの判断を行うべきである。また、事後においても問題が指摘された場合は専門員が立入調査できるようにするべきである。

2) 個体識別措置とそのデータベース化

　商業目的で繁殖させた個体等の占有者は、環境省に個体登録を行うことによって、それを合法的に売買することができるが、虚偽の中請、あるいは個体登録票の使い回し、さらには偽造といった事件が発生している。

マイクロチップ等の装着等による個体識別措置を義務付けるべきである。それとともに、譲渡し等によって登録票が使い回しされたり偽装されることを防ぐために、登録情報をデータベース化し、追跡調査ができるようにするべきである。

●要望２について　関連条文：法律第16条

1) 保護収容施設について

　毎年、税関で密輸が発覚し、任意放棄されるほ乳類、鳥類、爬虫類の生きた個体は数千にのぼるが、これを保護収容する施設がなく、また原産地に返還された例もない。
　
　 密輸動物は、不法に取り扱われ、長時間、給餌給水も不十分のままアンダーグラウンドの輸送で持ち込まれるため、身体的なストレスや損傷を受けているうえに、感染症の罹患のおそれもあり、空しく死ぬケースが多い。獣医学的なケアがなされる保護施設が必要である。ＣＩＴＥＳの条文には動物虐待の防止と適切な輸送及び施設の設置等の動物福祉規定があり、条約の遵守の観点から、国の責任によって生きた個体を保護する施設を設ける責務がある。

2) 原産国返還または飼育、及びその費用負担について

　条文(第16条)に規定はあるものの、生きた個体の返送規定が適用された例がない。密輸の場合は原産国や原産地が不明の場合が多く、あるいは生息地の原状回復が困難であるために返送できないとされるが、それ以前の問題として、法の執行当局に当初から返送の意思がまったくないことが問題である。絶減を防ぐという観点から、国がその生物の生息地情報等を収集し、相手国機関との情報交換を行い、可能な限り返還を促すようにするべきである。

　 また、押収された動物や任意放棄された動物は、国が一時保護シェルターを設けるか指定動物園等に委託して、適切なケアを施し、原産国(地域)または適切な飼育施設に収容されるまでの期間、リハビリを行うべきである。それにかかる費用は密輸の実行犯に負担させるものとし、返還が不可能な場合はその個体の終生飼育にかかる費用を仝額負担させるべきである。
さらに、没収の規定を設け、所有権をはく奪するべきである。

●要望３について　関連条文：法律第58条

　野生生物の密輸は、武器、麻薬と並ぶ三大犯罪の一つであり、世界警察機構は環境犯罪として各国に対策の強化を呼びかけている。しかし、現行法では、最高で懲役1年、罰金100万円であり、密輸から得られる大きな利益に比して罰則が弱く、再犯を繰り返す者もいる。犯罪の抑止効果をあげるためにも、罰則、特に罰金の大幅引き上げが必要である。

　 なお、環境省所轄の「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」では、3年以下の懲役、300万円以下の罰金、ならびに法人に対する罰則は最高1億円となっている。本法においても同程度の引き上げを行うべきである。

　 また、動物取扱業者の営業停止措置を有する動物愛護管理法と連携して、業者施設の立入調査等は地元自治体の動物行政の協力を得ること、及び、違法行為に対しては本法においても最大無期限の営業停止措置を定めるべきである。

　 希少野生動植物の密輪は、その種が生息する地域の生態系や生物多様性をも破壊していることに他ならず、国際社会に対する責任として違法行為に厳しく対処するべきである。