１９９７年、和歌山県太地町でシャチ（オルカ）の群れ10頭が湾に追い込まれ、そのうち５頭が捕獲されて、各地の水族館に売られていきました。当会では、この件に抗議する要望書を関係各機関に送付しました（ＡＬＩＶＥ　No.10）。

　野生のシャチは家族や仲間と群れをつくって生きる社会性の動物です。シャチは捕獲によって、その社会性を破壊さればかりでなく捕獲時のストレスや狭い水族館での飼育ストレスにより大半が死亡してしまいます。97年以前にも、太地町立くじらの博物館で飼育した７頭のシャチのうち６頭が死んでいます。97年に捕獲された５頭も相次いで死亡し、現在生き残っているのは２頭のみです。

　ところが、それから10年を経て、またもや太地町がシャチの群れを捕獲する計画を立てていることが明らかになりました。昨年12月の太地町議会の議事録によると、三軒一高太地町長はこう発言しています。　「我々はシャチを家族で飼いたい、捕獲して研究したい、そういう思いを持つことがなぜ悪いんだろうか。どういう誹謗、中傷、非難があろうとも、私はそれを必ずやり遂げたいと願っております」

　野生のシャチはワシントン条約で捕獲や輸出入が規制されており、学術研究目的でのみ捕獲が認められています。動物園や水族館における学術研究とは「繁殖」の研究を意味するのですが、家族も仲間も殺されてしまった動物に?狭いプールの中で繁殖を強いるのは、余りに不自然ではないでしょうか。

　当時、その生き残りの１頭（クー）は、03年に名古屋港水族館に繁殖研究の目的で５年契約で貸出されましたが、今年でその期限が切れます。そこで太地町は新たな「学術研究」の名のもとに、再度水産庁からシャチ捕獲の許可を引き出し、来年はじめを目処に シャチの捕獲実現をめざしている、とのことです。
※クー（メス）は、2008年9月19日、名古屋港水族館で死亡しました。これで1997年に太地町で捕獲され水族館に売られた5頭のシャチはすべて死亡したことになります。（付記：2008.9.24）

　 シャチの貸出がお金になることから、経営の苦しい「くじらの博物館」の財源として、シャチの捕獲・貸出計画が立てられていると見受けられます。しかも今回は、中国を含む他の水族館への貸出なども検討しているようです。シャチ捕獲の実体は「財源確保のため」であれば、明らかに国際条約の趣旨に違反します。

▼参考「シャチ」のホームページより
　http://www.sha-chi.jp/

【シャチ捕獲に反対意見の送付先】

▼三軒 一高 太地町長　太地町役場
　E-mail: taiji@town.taiji.wakayama.jp
　Fax: 0735 59 2801
▼赤城徳彦　農林水産大臣　
　意見募集フォーム
　http://www.voice.maff.go.jp/maff-i
▼白須敏朗 水産庁長官
　http://www.jfa.maff.go.jp/