2007年度中に全国の都道府県が策定する動物愛護管理推進計画。
動物愛護法の運用の強化のために、最低限、盛り込むべき事項を提案します。
2006年10月31日に、環境省は「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に 推進するための基本的な指針」(以下、「基本指針」)を公表しました。
「この基本指針は、動物の愛護及び管理に関する行政の基本的方向性及び中長期的な目標を明確 化し、計画的かつ統一的な施策の遂行等を目的としており、今後、都道府県では基
本指針に即し、地域の実情に応じて『動物愛護管理推進計画』を策定する」とされて います(環境省HPより)。
今年度、全国の都道府県がこの「動物愛護管理推進計画」を策定するにあたり、検 討会等が設けられるはずですが、多くの都道府県民から支持と理解を得るために
は、そこでの議論を公開し、随時一般からの意見を募集して多様な意見が反映され る仕組みとしていくことが重要と考えられます。動物愛護に関心をもつ人々の多
様な意見が寄せられること、そしてそれらが施策に反映されることにより、行政 の施策に対する理解や協力が促進されていくからです。
当会では、推進計画に以下の事項が盛り込まれるように提案しています。
推進計画に盛り込むべき事項
1.動物取扱業について
2005年の動物愛護法改正は、99年改正時の積み残しの課題であった動物取扱業の規制強化が最大のポイントでした。この改正により、動物取扱業者は登録制となり、
基準の違反に対して指導・勧告・命令が行われても改善されない場合は、登録の取 り消しも可能となりました。
しかし、改正法が施行されて1年以上になるにもかかわらず(従来の届出業者の登録猶予期間は07年5月31日まで)、依然として未登録営業が見受けられます。
さらに問題なのは、ペットの販売広告に登録の表示がほとんどなされていないという実態です。動物行政は悪質業者に足もとをすくわれていると言っても過言ではありません。悪質業者の登録状況の点検、改善指導の強化を、計画の中に明記する必要があります。
悪質・違法な業者に対しては強い姿勢で臨むことが、業界の改善と質の向上を促します。動物取扱業に関する規制の強化は、同時に消費者(飼い主)の意識の向上とあいまって進むものです。動物行政は、広く一般の人々になぜ動物取扱業にこのような規制がかけられるに到ったかを啓発普及する必要があります。
2.多頭飼育について
一般に、多頭飼育者の大多数は繁殖業者や販売業者などの動物取扱業者です。
これらの施設では飼育できる頭数の限界を越えており、狭い檻に閉じこめたまま、糞尿の掃除もままならず、騒音や悪臭で近隣に迷惑をかけている例がしばしば見られます。個人、動物取扱業者を問わず、犬猫等を多頭飼育することにより悪臭、騒音、不衛生等の周辺環境に多大な迷惑を及ぼす行為に対して、行政は改善指導を行い、業者の場合は登録の抹消を行うように強い姿勢で臨むべきです。
3.犬の登録・注射について
犬の登録および注射はすべての犬の飼い主に課せられており、犬の販売繁殖業者、大学研究機関においても例外ではありません。悪質な業者や動物実験施設では、犬の登録・注射をしていない例が多く見られます。都道府県は市町村に依頼して犬の登録注射の励行をはかり、とりわけ多頭飼育の業者に対しては情報を収集して登録注射の義務違反は摘発するといった姿勢で臨むべきでしょう。
4.捕獲犬の保護について
全国の自治体が、狂犬病予防法にならって犬の飼育に関する条例を定めています(飼い犬取締条例など)。のら犬や迷子になって捕獲された犬は2日間の公示ののちに、3日目に処分されるというのが通例ですが、このほど厚生労働省は自治体の裁量で犬の公示日数を延長してもよいこと、また処分とは殺処分だけをさすものではなく、動物愛護法の趣旨によって、できるだけ飼い主への返還をはかるとともに、公示終了後は一般譲渡に委ねることも可能であるという見解を示しています(本誌3ページ参照)。推進計画の中で、このことを明記し、可能な限り殺処分を減少させることを努力目標とすべきです。
5.動物の収容施設の改善に向けて
全国的に犬の収容数が減少し、行政の施設のスペースに余裕ができてきています。このことから、処分予定日を延長して、その間に一般譲渡をすすめる自治体も見られます。その場合に重要なことは、パルボやジステンパーなどのまん延をふせぐために施設を消毒することです。地域や季節によっては、冷暖房や換気、運動スペース等、施設の快適性も向上させる必要があります。
日本には、諸外国で見られる民間団体によるシェルターがほとんどありません。行政の収容施設には、今後はシェルター機能が付与されることが期待されます。そのためには、収容動物の世話や一般譲渡などに民間の愛護団体・グループなどが関わることが必要となるでしょう。
6.災害時の危機管理について
日本では毎年のように各地で予期せぬ自然災害が起こっています。動物問題においても、一度災害が起こってからではしばしば手遅れになります。災害時の危機管理として行うべきことは、動物を多頭飼育している施設の確認です。
とりわけ毒物、劇物、放射線、感染症ウイルスや遺伝子組み換え生物などさまざまな危険なものを扱っている動物実験施設などが損壊した場合は、人や環境への被害ははかり知れないものがあります。
動物取扱業者のみならず、産業動物や実験動物の施設をふだんから把握しておく必要があります。
7.動物実験施設の実態把握及び3Rの促進
動物愛護法では、動物実験施設は登録から除外されていますが、兵庫県が条例で実験施設の届出制を定めているように、自治体独自に規定を定めることが可能です。実験施設や実験動物繁殖施設を抱える地域では、危機管理の観点からこれを届出制とすべきです。
また、地域防災計画の中に、実験施設の所在確認や災害時の対策についての事項を書き込むべきでしょう。改正動物愛護法で新たに動物実験の福祉の3R原則が導入されたことにより、その促進を促すためにもその対象となる実験施設の所在の確認が必要です。
8.畜産(産業)動物について
現在、日本全国で一年間に、約450万頭のウシ、約1600万匹のブタ、約9億羽のニワトリがと殺されています。これらの人間の食用にされる動物たちも、飼育動物として動物愛護法の対象となる愛護動物です。動物愛護の理念は、ペット以上に人間の犠牲とされているこれらの動物たちにも及ぼされなければなりませんし、その飼育方法は動物の生理、習性、生態に基づき科学的な見地による動物福祉が配慮される必要があります。
とりわけ畜産動物施設については、鳥インフルエンザなど人と動物の共通感染症が発生する可能性があり、動物愛護行政は関連部署と連携して、日頃からその所在地、動物の種類、頭数等について実態把握をしておく必要があります。また、産業動物であっても虐待を受けることのないように、畜産農家・企業等に動物愛護法及び愛護条例の周知徹底をはかるべきです。
9.人と動物の感染症対策について
動物を多頭飼育している施設では恒常的に感染症のまん延という危機にさらされています。鳥インフルエンザ、サルモネラ菌など、人へも感染する感染症も多く、危機管理の観点から行政はこれらの施設の所在の確認および関係部局との連携体制を日頃から構築しておく必要があります。
家畜の伝染病については法律が定められていますが、ジステンパー、パルボといった犬や猫などの家庭動物間で起こる感染症については、法律がありません。少なくとも対策のためのガイドラインやマニュアルを制定する必要があります。
10.特定動物について
特定動物(危険動物)は、全国レベルで飼育が許可制となり、個体識別措置が義務付けられています。これは特定動物が遺棄されたり逸走した場合に、速やかに飼い主を突き止め責任を負わせるための措置です。しかし、他の自治体へ動物を移動させた場合、照会が困難であるという問題があります。
各都道府県においては、特定動物には1個体ごとに個体登録証を付け、動物がどこに移動しようとも個体登録証が付いてまわる、いわば動物の戸籍謄本制度を採用することが必要です。これにより、遺棄・逸走の防止をはかることが可能になります。
11.外来動物について
アライグマやイグアナ(グリーンアノール)など、遺棄されたペット動物がその地域に定着して繁殖し増大すると、外来生物として生態系に悪影響を及ぼすことになりかねません。野生由来の動物のペット飼育に関しては別途記述が必要です。
野生からの捕獲は生息地でも絶滅を招くおそれがあること、繁殖個体であっても、その本来の生理、習性、生態が不明の場合が多く、本来は飼育に適していないことから、原則として飼育しないように啓発普及を進めるべきです。
12.動物愛護管理行政の方向
これまで犬猫の処分にのみ重点をおいてきた動物行政は、犬猫の殺処分の減少に伴い、人員や予算が削減されてきています。一方、動物行政には、新たに動物取扱業に対する監視や指導という非常に大きな任務が課せられています。
今後、動物愛護行政の充実のために予算と人員を確保していくためには、動物取扱業の規制強化への取り組み、さらには実験動物、産業動物を含めた多頭飼育等に起因するさ
まざまな動物福祉上の問題、感染症や衛生管理の分野に正面から取り組んでいくことが不可欠です。
以上