絶滅の危機にある
ボルネオゾウの輸入に問題あり
2003年の10月、ゾウの保護に係わる国際的NGOより、マレーシアのボルネオ島サバ州の野生のアジアゾウが日本の動物園に送られる予定だとの知らせを受けました。当会ALIVEでは、現地の動物保護団体と連絡を取り合いながら情報を収集し、以下の要望書を各関係機関に送付しました。
2003年10月6日
経済産業大臣 中川昭一 様
(経済産業省貿易審査課)
環境大臣 小池百合子 様
(環境省自然環境局野生生物課)
ボルネオ産野生ゾウの輸入許可に関する要望書
このほど、ゾウの保護に係わる国際的NGOより、マレーシアのボルネオ島サバ州の野生のアジアゾウが日本の動物園に送られる予定だとの知らせを受けました。このゾウの輸出入はCITESに抵触している可能性がありますので、国として調査の上、輸入の承認をしないように要望いたします。
1,ゾウの輸入は種の存続をおびやかす
アジアゾウはCITES付属書I類の動物で、その輸出入には非常に厳しい条件が付されています。同条約第3条2項aによれば、輸出は決してその種の生存を脅かすものであってはならないとされています。
一方、最近の研究によるとボルネオのゾウは他のアジアゾウとは隔離されて独自の進化をした遺伝子的に異なる亜種であるという説が有力です(記事を添付)。それによれば、18世紀にボルネオへ導入されたゾウであるという以前の仮説とは反対に、ボルネオのゾウはボルネオ島固有の動物であり、少なくとも18,000 年をかけて独自に進化してきたということが遺伝学的な調査によって明らかになったとされています。
現在ボルネオのゾウは1,000 頭から 2,500 頭しか生息が確認されておらず、生息域も非常に限定、細分化されており、ボルネオ島北東部の5%にすぎないこと、さらに遺伝子多様性 も非常に低く孤立した地域個体群であるとされています。
さらに、ボルネオのゾウの生息地は伐採や森林のプランテーションへの転換などのために急速に減少しているばかりか、ゾウの殺戮や野生ゾウの捕獲といった脅威にもさらされており、その急速な絶滅が危惧されています。従って、このゾウの輸出は、孤立した亜種として種の存続を脅かすおそれがあります。
2,日本にはゾウを飼育できる適切な施設がない
同条約第3条3項bにおいて、輸入国の科学当局は動物の収容および世話できる適切な施設であるかどうかを判断しなければならないとしています。しかし、日本には、動物園法が存在せず、動物園を指導監督する公的組織もありません。ちなみに日本動物園水族館協会は「業界の親睦団体である」と自ら主張し指導監督機関ではないことを明言しています。そのような事情から、日本ではとうてい学術研究などなしえない劣悪施設でも動物園と名乗り、密輸に荷担したりする事件も発生しています。動物園の施設基準も遵守義務がないために、動物の習性や生態に配慮した適切な施設などは日本にはほとんど存在しないといっても言い過ぎではありません。
当会は、長年の間、ズーチェックという活動を続けていますが、ほとんどのゾウたちが心身のストレス度の発現とみなされる「常同行動」を呈しています(別途ビデオを送付)。70〜80年の寿命を持つゾウに対して適切な飼育環境が提供されているとはとうてい言い難く、事実、多くのゾウが早死にしています。
3,「非商業目的」とはまやかし
同条約第3条3項cにおいて、I類の動物は主として商業目的ではない限りにおいて、輸入は許可されるとしています。日本では動物園における繁殖を「学術研究」と称してI類種の輸入を許可しています。今回の輸入も動物園における繁殖研究という名目で申請されると思われますが、これが真に学術研究に値するか否か管理当局は十分に審査する必要があります。
現在日本ではアジアゾウは70頭ほど飼育されていますが、どこの動物園でも1頭たりとも繁殖例がありません。ゾウは母系の家族で暮らす社会性に富んだ動物であり、単に雌雄を飼育しさえすれば繁殖するというものではないからです。
また、雄のゾウは繁殖期の制御が困難かつ危険であるために、ほとんど飼育されておりません。日本の動物園の現状では、今後とも将来にわたってアジアゾウの繁殖に適した条件は存在しえないのです。それにもかかわらず、繁殖目的(学術研究)の名で輸入申請することはまやかし以外の何ものでもないと考えます。
4,種の保全とは無関係
CITESの決議(Resolution Conf.5.10 Annex,paragraph e)には、「飼育下における繁殖に関しては、基本的に(繁殖を試みられる動物の)輸入はその種の回復を目指したプログラムの一環でなければならない」と記載されてい ます。
しかし、現在、日本の動物園で飼育されているゾウのうち、ボルネオのゾウと見なされるゾウは1頭の雌しかおらず(推定1998年生まれ)、繁殖期を迎えるのは今後十数年後という状態です。その間は展示目的に使用されるわけですから、主目的は商業目的の飼育であり、この点においてもCITESに抵触することになります。
そもそもアジアゾウの保全はその生息地でなされるべきであり、1,2頭を連れてきて動物園で飼育する行為自体、種の保全とは何の関係もありません。また仮に万が一飼育下で繁殖したとしても、ゾウの地域個体群から切り離された1頭の子どものゾウが将来的にその種の保全に関与することもほとんど考えられません。野生動物の研究者たちはボルネオのゾウに関しては 生息地での保全が必要であり、その遺伝子の独自性から他のアジアゾウとは別枠で管理されるべきであ ると主張しています。
以上の理由から、当会は、ボルネオの野生ゾウの輸入について、これを日本政府が許可しないように要請いたします。
地球生物会議
GOOD NEWS!
10月30日、環境省によりボルネオゾウの輸入許可は認可されなかった旨、確認されました。