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【ALIVE 連載】 畜産農家で働いて(4)
牧野みどり
皆さんは時々、国道や高速道路を走行中に、牛を乗せたトラックを目にすることがあるのではないだろうか。 あの牛はどこからどこへ行くのだろう。 きっとそんな疑問が頭をよぎると思う。 どこからどこへ・、そしてどんなふうに・。長距離なのか、立ちっぱなしなのか、水は飲めるのか、考えたら気になって仕方がない。 ●牛を運ぶ人々:家畜商 牛を運ぶのは、家畜商という家畜を売買できる資格を持った人たちで、畜主ではない。私は以前、北海道で酪農研修していた頃、家畜商の方に質問してみたことがある。 「この牛たちはどうしてこんなにトラックいっぱいに積み込まれるのですか?」の問いに、「運転中のゆれやブレーキで、牛が転倒しないようにあえて隙間をつくらないんだ。」と答えた。 「 でもこの牛たちはここから遠くへ運ばれるんですよね?ずっと立ちっぱなしで疲れないのでしょうか。」 「そりゃあ牛はいつも寝てる動物だから立ちっぱなしは疲れるさ。だから長距離で移動する場合は、牛の胴体にベルトを通して、上から吊るすようなかたちにしておくんだ。足の力が抜けても支えられるようにね。」 「じゃあ水は?水はどうやって飲んでるんですか。」 「水はね、僕なんかはガソリンスタンドで飲ませたりするんだよ。契約しておいてね、そこで水をもらえるようにしてあるのさ。」 私はこのことを聞いて、その時は単純にホッとしてしまった。 ●牛の一時預かり:育成牧場 しかし、そもそもどうして牛が長距離、移動する必要があるのか。 それにはいくつか理由がある。 一つは、生後6ヶ月の牛が、一時的に育成牧場へ預けられるためだ。育成牧場とは、生後6ヶ月の牛を、出産する数ヶ月前までの間管理しますよ、という育成専門の牧場のことである。○○高原観光牧場と名のつく所は育成牧場である場合が多い。あの広大な土地に放牧されて、幸せそうに草を食んでいる姿はなんとも微笑ましい。 しかしあの牛たちは、もともと全国の牧場から一時的に預けられている状態の牛で、期限がくればまた、もとの牧場へ帰ってゆく。関東の牛が、北海道の育成牧場まで預けられるケースも多い。 お金を払ってわざわざ育成牧場に預けるのは、搾乳牛になった時に耐えられるだけの丈夫な体につくりあげておくためだ。草を目一杯食べることによって消化機能をスムーズにしたり、大きく健康な心肺機能をつくったり、繋ぎ飼いになっても耐えられる足腰にしておいたり・・。 育成牧場でのんびり自由に健康的に過ごした後には、繋ぎっぱなしの過酷な労働が待っているというわけだ。 それでも自分の生まれた所へ帰れるのだから、まだいいのかな・・・。 ●牛のせり:家畜市場 もう一つの長距離輸送は、牛のお引っ越しだ。畜主に、売ると判断された牛は、家畜商によって家畜市場まで運ばれそこでせりにかけられる。 せり落とされた牛は再びトラックに積まれ、せり落とした主の所まで運ばれる。その主の牧場がそこから近ければ牛の引越しは一日で終わるが、例えば北海道の牛を関東や関西、九州の人が買えば、その引越しは2日、時にはそれ以上になる。 そんな長い間の移動は人間でも辛いのに、一日のほとんどが食べるか寝るかの牛には想像を超える辛さだと思う。しかし、移動中の辛さもさることながら、移動後の生活もまた、牛にとっては辛い・・。 環境の変化や餌の変化は、牛には大変なストレスになる。他の牛からのイジメにも合うのだ。 繋ぎで飼われている場合は隣の牛との争いになるが、お互いつながれていて自由に身動きはできないから、睨み合ったり頭突きをしたりしてどちらが強いかを見せ付ける。 フリーストールの牛舎(つながれる事なく、全頭が大きな枠の中で自由に歩き回れる牛舎)では、もろにいじめに合う。この群れの中に入ってくるなと、リーダー格の気の強い牛が攻撃してくる。エサ場に近づけないように突いてきたり、隅っこに追いやったり。数日の間、新入りの牛はこの中で耐え続けなければならない。そのうち、仲間入りを認めてもらってるという事なのだろうか、その群れの中に順応している。 それでも、環境に慣れるまでには相当の時間と体力を要すると思う。 ●牛が殺される場所:と畜場 肉になるために殺される運命の牛もまた、トラックで運ばれる。牛が肉になる場所「と畜場」へと運ばれるのだ。 肉になるのは、黒毛の牛だけではない。乳牛として今まで乳を搾られてきたホルスタインも、最後には肉として処分される。このことは意外に知らない人が多く、友達に言った時もびっくり驚いて、「かわいそうだね、搾られてあげくの果てには肉として殺されちゃうんだ。それじゃあ一生を人間に捧げてるんだね・。」と言っていた。まさにその通りである。 搾乳牛としての能力が低下したと畜主に判断されたら、もうその牛は酪農家にとっては用無しの存在で、廃用牛として処分されることになる。 乳量が低下した、繁殖率が悪い、乳質が悪いなどの理由で、別に年老いた牛ばかりが廃用牛になるわけではない。 今の工業的な大規模農場では、牛は3回ほどお産したらもう廃用牛となる。健全な飼いかたをしていればその2倍以上生きられるのに、短い間に牛を酷使する今の酪農スタイルが、牛の体をぼろぼろにしているのだ。
第5回にへつづく ◆畜産農家で働いて(5) 牛たちの最後・と畜場
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