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 HOME > 畜産動物 > 畜産農家で働いて(6) 太陽も青い草も知らない牛
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【ALIVE 連載】 畜産農家で働いて(6)

太陽も青い草も知らない牛

牧野みどり



  牛の上には空ではなく屋根がある
  足元には土ではなくマットがある
  目の前には草ではなく穀物がある
  近代酪農には牛の自由はなく人間の
  エゴがある

 農業がまるで工業のように成り立っている今の畜産。その不自然さが生み出すものは、利益であり人間の豊かな暮らしのはずであった。

 しかしながら現実はどうもそうはいってないようだ。輸入飼料、設備投資、堆肥処理などにより経費はかさむ一方。牛の病気や事故の多発で治療ばかりに時間とお金を費やし、機械が故障すれば修理や交換。多頭数の管理も今やコンピュータの時代だが、生き物相手だから結局そういうわけにもいかない。

 そういった問題に年中振り回され、心のゆとりもなく不満ばかりがつのり、乳価が安い政府が悪いと責任をおしつける。その中で一番振り回されているのが結局牛なのだ。

 今回はそんな自由を奪われた牛たちの現状についてお話しようと思う。

 今はつなぎ飼いの牛舎よりも、牛がある程度自由に動き回れるフリーストールという形の牛舎が主流になってはきているが、まだまだつなぎ飼いの牛舎も多く存在する。

 そんな牛の一生を軽く紹介したい。まず生まれ落ちてすぐに母親と引き離され、小さな枠の中で人口哺育によって育てられる。もうその時点で首にヒモを通してその辺りの柱に結び付けておく場合も多い。そのような場合は子牛がヒモに絡まったりして思うように動けなかったり、無理な体勢になってしまったり。人間が気付くまで何時間もそのまま、なんてことになる。

 大きくなり動きが活発になり、力も強くなると、親牛と同じように牛舎にしっかりつながれるようになる。

 そこからもう一生つなぎっぱなしという自家育成の場合もあれば、前にお話したように育成牧場に預ける場合もある。

 時期がきて人工授精を施され妊娠。出産だってつながれたまま行われる。そして乳がでるようになり、搾乳生活が始まる。その最初の出産から4カ月程たつと再び人工授精が施される。

 妊娠しながらもお乳をだすのだ。そして出産する2、3カ月前に搾乳をやめる。この期間を乾乳期間といい、次の出産に備える。その間もつながれたまま。

 一年に一回ペースの出産は、牛にはかなりの負担となり牛の体をぼろぼろにする。しかしそのペースで出産させることが経営を安定させる手段とされている。

 若いうちに出来るだけ搾り、2~3回出産させたら廃用。次の牛、次の牛……。(しかし実際は、こうすることで経営が安定してうまくいっているという話を聞いたことがない)

 こうして牛の寿命は人間の勝手な利益主義のもとでどんどん短くなっていく。 牛が一生を過ごすそのスペースというと、一畳分ほどのゴムマットが敷かれているだけだ。

 首を両柱にヒモでつながれ、振り向くこともままならないつなぎ方のところもある。自分のした糞尿でゴムマットはぐちゃぐちゃになり、体は汚れ、寝起きするときも滑って転んだり。足を怪我して傷口が膿んで腫れあがり、見るも無残なでこぼこの足になる。

 本来ならば草の上を歩くことで自然に削れる蹄も、つながれた牛は伸びっぱなしで、「削蹄師」という蹄を削る専門の方(いわゆる「爪きりやさん」)にお金を払って削ってもらう。年に2回は行うべきと言われているが、畜主によっては経費削減のため廃用にするまで削蹄しないという人もいる。体を支えるはずの蹄が伸びきっていると、踏ん張ることもできないし、寝起きさえ苦痛を伴うものになってしまう。

 つながれた牛にとって寝起きが唯一の運動なのに…。

 このように、つながれた牛は一生を牛舎の中で過ごす。皮肉にも、太陽を浴び歩くことができたのは、と畜場に運ばれるためのトラックに乗り込むその一瞬だった、ということにもなり得る。

 ただ畜主の人みんながみんな非情な人間だと思わないでほしい。つないで飼っていることに違いはないが、その中で牛のストレスをいかに減らせるか、工夫に工夫を重ねている人もいるし、牛舎の外のわずかなスペースを運動場にして昼間は牛を解放する牧場も多い。

 確かに人間のエゴを優先させているのがつなぎ飼いであるので、このような形があってはならない環境にしていかなくてはならないのだが。

 今、主流となってきているフリーストールの牛舎も、フリー(自由)という名称にまどわされるが、つなぎ飼いとの違いはつながれていないということくらい。ただ50頭以上飼うのであれば、つなぎ飼いの牛舎よりも効率的に作業ができるのがメリットなのかもしれない。しかし自由に動き回れるといっても、限られた囲いの中にたくさんの牛がいるわけで、自由とはほど遠い。

 ついこの間、私は北海道にある牧場に少し研修に行ってきた。その牧場は自然と牛と人とを見事に調和させた酪農を実践しているところで、時代の流れにいろいろな批判を浴びながらも、自分と自然と牛の力を信じて一貫して循環型酪農を築いてきたそうだ。時代遅れだと近所の人にも農協にも農林水産省にも見放されたそんな牧場も、今では世界からも認められるほどの素晴らしい牧場になった。

「自然と牛が全てを教えてくれる、私たちはそれに気付き的確にとらえる感性を養っていれば、お金なんかかけなくたって自然とこんな牧場になっていくんだよ。」と牧場のご主人は微笑みながら言ってくれた。

 現実にこのような牧場がある。お金をかけて立派な設備を作って高泌乳の牛を飼っていなくたって、きちんと消費者の声に応え生活している牧場がある。

 近代酪農と言われているやり方に未来はみえない。酪農家の皆さんも、現状はわかるが、今に振り回されるのではなく、もっと未来をすえて畜産というものを考えていかなければならない。

第7回にへつづく
◆畜産農家で働いて(7) 私たちの目には見えない牛の苦しみ

 


 
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