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 HOME > 畜産動物 > 畜産農家で働いて(7) 私たちの目には見えない牛の苦しみ
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【ALIVE 連載】 畜産農家で働いて(7)

私たちの目には見えない牛の苦しみ 

牧野みどり


 
私は小さい頃から牛乳が大好きで、よく飲みよく育った。

 牛乳パックには草原で草を食む牛の姿が描かれており、安心・安全、何の疑いを持つこともなく飲んでいた。学校でも家庭でも、健康のために飲みなさいと当たり前のようにすすめられていたし。

 しかしながらその牛乳を提供してくれている牛の体が農薬と抗生物質漬けだったとは、恥ずかしながらこの業界に入るまで知らず、何も知らない恐さというものを痛感した。

不自然に「改良」された牛の体

 改良に改良を重ねられた今の乳牛の体は、乳がたくさん出るようにつくられており、ピーク時には一日に50キロもの乳を出す。100年前に比べれば、その乳量は5倍以上にもなっている。

 今でこそこのような牛が当たり前だが、野生だったらどうなのだろう。本によれば「全く自然の状態で自分の子牛だけを育てるためには、年間に百キロも泌乳すれば十分であろう」と書かれていた。年間に百キロ、今では2日でこの量を出してしまう。今の牛は年間で一万キロの乳量を出すくらいまで改良されているのだ。乳牛の改良と穀物の多給で、牛はもう乳を出す動物というより乳の出ちゃう動物にされたと言った方が合っているようだ。

穀物をエサにすることの問題

 牛は本来草食動物。草を食べ反芻し、4つの胃の働きで消化し栄養分を吸収する。人間が生きていくための人間の体のしくみ、牛が生きていくための牛の体のしくみ。しくみに違いはあるものの、この体の中の働きにはただただ感心するばかりである。

 その草食動物の牛に穀物を与えると牛はどうなるのだろう。

 牛は穀物を好んでよく食べる。草と穀物どっちを食べる?となったら、穀物の方をひたすら食べてしまうほどだ。でも本当にひたすら穀物だけを食べてしまうと牛は死んでしまう。牛には草などの粗飼料が必要不可欠なのだ。

 近代酪農では、穀物と粗飼料を一気に混ぜ合わせたものを混ぜエサとして与えるのが一般的になってきた。草を断裁して牛が消化しやすい長さにし、栄養バランスや乳質アップなどを考え、飼料の種類や量を徹底的に計算し配合している。混ぜ合わせるときも、水分調節や、草の繊維質を損なわないような混ぜ方にするなど、畜主は神経をとがらせエサ作りを行う。

 穀物を与えるということはそのくらい牛の体をデリケートにさせるものなのだ。こうして牛は穀物を摂取し乳に変換して人間に提供している。

穀物の大量給与の問題

 穀物は草よりも安価で手に入りやすく、そのうえ乳量も増やしてくれるため、どうしても穀物多給型になってしまう。その穀物多給が、牛にどんな悪影響を及ぼし牛の体を痛めつけているかわかっているはずなのに、一時的な乳量の増加は穀物多給への道のりを畜主に歩ませてしまうようだ。

 牛は穀物を多量に摂取すると、さまざまな内臓疾患におかされる。草を食べて健康に育つ牛には起こりえない病気が多発する。投薬治療や手術など、牛の治療もさまざまで、こうして牛には大量の抗生物質が投与され、抗生物質漬けの体になっていく。発病する牛もいれば、発病すれすれ、限界ぎりぎりの状態でなんとか踏みとどまって高泌乳を実現している牛もいる。このように牛の体をだましだまし使っているようにしか思えない穀物多給の近代酪農は、家畜の福祉という観点からはほど遠い距離に位置している。

(以前、北海道の臨床獣医師・岡井健さんが、ALIVEの会報に「家畜の疾病から見た日本の畜産」というテーマで連載されていた。さまざまな問題点、そして家畜が発症する病気についても詳しく書かれているので是非読んでいただきたい。会報No.64、65)

低い飼料自給率

 そしてさらに問題なのが、飼料の自給率がとことん低い都市酪農だ。飼料の大半は購入飼料だ。都市酪農だけではない。あの広大な土地をもつ北海道でさえ自給率は60パーセントにも満たないようだ。草も穀物も海外で生産されたものが海を越え、この日本に届けられる。その飼料は保管や防カビなどの目的で農薬が散布されている。これを牛が食べるのだから牛が農薬漬けになるのも無理はない。目に見える牛の苦痛と目に見えない牛の苦痛。私たちが普段の生活では決して味わうことのない苦しみを、牛は生涯にわたって受け続ける。

処理できない家畜排泄物

 本来の酪農のあるべき姿は、草地があって、その広さに見合った頭数が飼われ、その草地に糞尿が還元されてさらに草を育てる。そんな循環が農業を健全に末永く保つのではないのか。飼料を輸入に頼るということは糞尿を還元する自分の土地がないということだ。循環どころか糞尿は行き場のない廃棄物扱いで邪魔者にされるようになってしまった。還るべき場所がない糞尿は蓄積されるばかりで行き詰まりを見せる。

 その姿はまるで日本の酪農の未来そのもののようだ。糞尿問題、環境問題が叫ばれるようになると、国は糞尿施設をつくれという。処理の限界を超えているのに無理な話だ。根本的な見直しではなく、その場しのぎの政策はさらに悪循環をもたらすのではないだろうか。 


終わり

◆畜産農家で働いて(1) 家畜の悲鳴を聞いてください
◆畜産農家で働いて(2) 子牛…だけど、家畜
◆畜産農家で働いて(3) 牛舎も猛暑、牛も夏バテ…
◆畜産農家で働いて(4) トラックに積まれた牛の行方

◆畜産農家で働いて(5) 牛たちの最後・と畜場
◆畜産農家で働いて(6) 太陽も青い草も知らない牛
◆畜産農家で働いて(7) 私たちの目には見えない牛の苦しみ

 

 


 
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