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日本のクマ牧場の実態調査レポート及び改善への提言

調査報告:WSPA(世界動物保護協会)
調査協力:ALIVE(地球生物会議)

2001年12月、東京で開かれた「クマ問題を考えるシンポジウム」で
発表されたWSPAのレポート要約


日本のクマ牧場の調査

序論

 日本には野生のクマが生息しているが、その数は近年減少傾向にある。これは、生息地である森林が組織的に破壊され、杉などの植林が進められているためである。現在、野生のヒグマ(学術名Usus arctos yesoensis)は2000頭以下、ツキノワグマ(学術名Selenarctos thibetanus japonicus)は約8000〜10000万頭と推定されている。狩猟と「害獣」駆除を合わせると、年間約2000頭が合法的に殺されている。

 ツキノワグマは世界的に絶滅のおそれがあり、ワシントン条約のI類にリストされ、国際的な商取引は禁止されている。

 日本では、1958年に最初のクマ牧場が北海道の登別にオープンした。以来、日本ではクマを見物客に見せることが盛んとなり、現在、1000頭以上のクマが9つのクマ牧場で飼育されている。

 「牧場」といっても実体はコンクリート製の牢獄に類するもので、中世ヨーロッパの闘熊場に似ている。数百頭にも上るクマを飼育しているクマ牧場もある。すべての牧場でクマは劣悪な環境で飼育されており、肉体的、精神的ストレスにさらされている。

 こうしたクマ牧場を娯楽目的に訪ねる観光客のほとんどは日本人だが最近は中国人や韓国人の団体旅行客も多く見受けられる。

 北海道には5つのクマ牧場があり(登別、昭和新山、定山渓、留辺蘂、上川)、主に、北海道だけに生息するヒグマを飼育している。本州には3つのクマ牧場(阿仁、八幡平、奥飛騨)があり、九州には阿蘇に世界最大の飼育数を誇るクマ牧場があり。阿仁、奥飛騨、阿蘇のクマ牧場は、本州に生息するツキノワグマを主に飼育している。

 これらのクマ牧場は大衆娯楽のためにだけ設計されており、飼育されているクマの福祉は配慮されてない。1991年にWSPAは、クマへの残酷な取り扱いと、熊胆(ゆうたん)の違法取引の報告を受け、これらのクマ牧場を調査した。

 この調査によって、クマ牧場が雄雌を一緒にし、過密状態の中で飼育していることが判明した。居場所、食べ物、交尾の相手をめぐる争いは頻繁で、重傷につながることも多く、死ぬクマも多数いた。クマの餌はホテルの食事の食べ残しなど不適切な物であり、中には焼き鳥用の尖った串なども含まれていて、食べたクマが怪我をしたり、死ぬこともあった。登別のクマ牧場では、近くにある野生動物用の屠殺場でクマを殺して胆を売っていることが判明した。同牧場はこの違法行為の中止と、また雄雌を分けて飼育することを余儀なくされた。また、クマの夜間用の穴を拡張した。

 1991年の調査以来、WSPA と日本の動物福祉団体ALIVEは日本のすべてのクマ牧場の劣悪な環境をますます憂慮するようになり、1997年5月にはさらに詳細な調査を実施し、最近では2001年の春にも調査を実施した。

 われわれのクマ牧場に対する主な関心事は以下のような事項である。

・ 施設に動物の福祉を考慮した環境的配慮がないこと

・ 雨風除けの覆い、人目を避けるための場所がないこと

・飼育状況が過密状態にあること

・ 囲いの中で雄と雌を一緒にしていること

・ クマが攻撃的だったり、常同行動を繰り返したりすること

・ 怪我の治療や獣医による介護がなされていないこと

・ 餌の種類(残飯処理)と給餌の時間(日中を空腹にさせておく)の問題

・ クマ製品(毛皮、肉、脂肪、胆嚢など)の販売

・ 来園客を楽しませるために子グマを「ふれあい」に使うこと

・ 娯楽のためのサーカス芸をさせること

・ 子グマを繁殖させたあとの「余剰動物」化

・ クマの習性、生態や保全など一般への教育資料がないこと

・野生のクマの保全に対する無理解・無知の増幅

調査の概要

[飼育環境] 

 囲いの中にいるクマに刺激的な環境を与えようという試みが何もなされていない。木登り用の枠や岩場などが揃った牧場も2、3あるが、来園客の見世物用に設計されていて、クマの生活環境を改善するためのものではない。

 クマ牧場の囲いは、すべてコンクリート製の小さな独房のような設計である。囲いの中には、クマが穴を掘れるような地面はなく、草木は生えておらず、あるのはコンクリートの床と岩だけである。最悪の施設では、クマは狭い檻に閉じ込められたままだ。

 囲いの大抵は何もないコンクリート製の傾斜床になっていて、ホースで水を強力に噴出させて掃除できるよう設計されている。ホースは、激しい闘いをするクマを引き離すのにも使われている。

 クマは人目を避けることができず、攻撃的なクマから逃れることもできない。そのため、クマの間で居場所、食べ物、また場合によって交尾の相手をめぐる争いが頻繁に起こる。過密状態の囲いの中でクマには明らかにストレスが見られ、攻撃的になったり、異常な行動パターンを見せるようになっている。

 異常行動はさまざまに現出している。クマは、何度も何度も同じところをぐるぐる回ったり、頭を振ったりひねったり、同じ場所を何度も叩いたりしている。クマの多くは無気力状態で、引きこもったり、不活発になったりもしている。これは、狭い囲いに閉じこめられたストレスからくる異常行動の一つと言える。

 クマの頭数が多すぎるため、孤立した小さな檻に余ったクマを押し込めている奥飛騨牧場のようなところもあり、登別や阿蘇のように夜間用の穴の中でクマを飼育しているところもある。

 夜間用の穴蔵(寝室)も問題の一つだ。クマは食物でおびき寄せられ、夜間は地下の穴蔵に戻されるが、こうした穴蔵は過密状態にあるため激しい闘いが起こったりするが、逃げ場所もない。

[教育資料]

 登別クマ牧場の博物館は来園者用の教育プログラムのある唯一の施設だが、囲いの中にいるクマを観察する時に読めるような資料はない。

 他のクマ牧場では、クマの生態や、行動、保護の必要性の情報提供はまったく何もない。牧場は明らかに見世物で、公教育の努力はなされていない。

 クマ牧場を訪れる人が得るのは、クマは攻撃的で危険な動物であるが、愉快なところもあるという印象である。

 クマ牧場でクマ肉の缶詰、脂、毛皮、胆が売られているため、来園者はクマが尊敬の対象ではなく、見世物や製品としてだけ価値のある存在だという意識を強めることになる。

[繁殖]

 クマ牧場のほとんどでクマを繁殖させている。新しく生まれた子グマは、来園者が触れることができる可愛らしい「おもちゃ」として見世物に加えられている。

 クマ牧場のほとんどで、雄と雌が過密状態の囲いの中で一緒に飼われている。このため、見境のない繁殖が起こったり、雌をめぐって雄が激しく争ったりする。共同の囲いの中では新生児が殺されることもある。

 こうした牧場で生まれた子グマは、生後数ヶ月で母グマから引き離され、見世物用として来園者用の「ふれあい」施設に移される(阿仁、阿蘇、奥飛騨、昭和新山)。芸を仕込まれる子グマもいる(登別、奥飛騨、阿蘇)。

 野生の子グマは普通、2〜3年を母グマと過ごす中で生活の術を学んでいく。母グマは常に子グマの面倒をみている。しかし、わずか数ヶ月で母グマから引き離された子グマは、不自然な環境下におかれ、ストレスに苛まれ、異常行動を見せるようになる。

 子グマの多くは囲いの中、ストレスの中で、慰めを求めて、自分の手をしゃぶったり、仲間の手や耳をしゃぶったりする。阿蘇クマ牧場のガラス窓の檻で飼育されていた生後間もない子グマは悲嘆のあまりか、叫び声を上げながら自分の手を激しく噛んでいた。

 過去5年間の調査によると、来園者から隠された奥飛騨クマ牧場の囲いの中では、子グマたちが40もの小さな檻に閉じ込められていた。子グマがなぜこんな劣悪な状態でしく隔離されているのか理由は不明だが、売買されているのかもしれない。

[サーカスの見世物]

 登別、奥飛騨、阿蘇の3牧場は来園者を楽しませるためにクマのサーカス公演を毎日行っている。子供の服を着せられた子グマは、奇妙な芸を演じさせられる。後ろ足で舞台を歩き回ったり、輪を飛び越えたり、自転車に乗ったり、ボールで釣り合いを取ったり。これはクマを貶めるだけでなく、クマに何が必要なのかについて来園者の感覚を鈍らせるものとなる。これは否定的な教育体験であり、人にクマの本当の姿について教えるものは何もない。

 こうした曲芸用の子グマは2、3年使われたあと、成獣になると人に服従しなくなり、管理不可能となる。芸を仕込むのに繰り返し痛みを与えられ続けた子グマは、ストレスに苛まれる。

 ちなみに、人々が動物の福祉について深く考えるようになった西洋では、サーカスの芸に動物を利用することは不人気になっている。

[食事]

 クマ牧場のクマには日中餌が与えられないため、来園者に物乞いするようになる。牧場はみなクマに食べ物を与えることを来園者に奨励していて、空腹のクマに投げ与えられるよう来園者にビスケットなどを販売している牧場も多い。

 これはクマに物乞いさせたり、食物をめぐって闘わせたりするためで、これがクマ牧場の主な出し物になっている。クマ牧場の管理者は、そのほとんどが、クマの物乞いや闘いこそ人々が求めているもので、クマを空腹状態に置いて来園者が投げ与えた食べ物をめぐって闘わせる必要があると考えているようだ。囲いを過密状態にするのはクマに攻撃的な行動を取らせるためだと認める牧場さえあった。

 一日の主な餌は普通、来園者が大方帰った午後遅く与えられる。餌はホテルやレストランの残飯から、腐りかけたパンの切れ端、腐った菓子やりんごなどの果物、家畜用の餌などさまざまで、阿蘇ではクマに鶏を与えている。

 

[獣医による介護]

 クマの診療をする常駐の獣医がいるのは、登別、阿仁、阿蘇のみで、他の牧場は必要時に地元の獣医に連絡するとのことである。

 すべての牧場で、獣医の救急措置が必要なほどの大怪我をしているクマを目にする。常駐の獣医がいる牧場にもこうしたクマがいるが、獣医がけがや病気のクマを隔離してケアできる構造にはなっていない。

[クマの胆]

 日本ではクマの胆(い)は民間薬として高価に取り引きされている。そのため、被害の実態がないにもかかわらず、害獣駆除の名で過剰捕獲されることがしばしば起こっている。クマの胆を公然と販売している八幡平を除けば、胆を売っていると認めるクマ牧場はない。日本動物園水族館協会加盟の動物園では、クマの胆の売買を認めていない。しかし韓国や中国からの来園者はしばしば牧場に対してクマの胆を求め、高い値段を提示する。秘密の売買が存在しているのかもしれない。地元の猟師が仕留めた野生のクマの胆が売られている場所もある。

 クマ牧場の中にはクマ肉の缶詰を土産物屋で売っているところもあるが、教育的配慮に欠けている。クマ牧場の経営者がいかにクマに敬意を払っていないかの表れである。

結論と勧告

[結論]

 日本のクマ牧場は、商業目的のためにクマを虐待飼育している。クマは見世物目的で飼育されているのみで、来園者に対してクマの生息地、行動、生物学的特徴、保護などを啓発普及させる試みはなされていない。この見世物施設は、クマという素晴らしい野生動物の価値を貶めるばかりではなく、クマに対して不自然で誤った知識を与えている。クマへの敬意と感嘆の念を抱かせる代わりに、クマは愚かで危険な野獣であるという印象を人々に与え、また一方では子グマのショーなどによって娯楽対象とみなしている。

 狩猟と害獣駆除、森林伐採による生息地の破壊のため野生のクマの数は急減しているが、クマの保全活動はうまくいっていない。

 不幸なことに、日本人は一般的にクマを恐れている。クマの生息地のそばに住む村人や農民の多くは、クマは見つけ次第、殺すべきだと考えている。

 このためクマ牧場は、この獰猛な動物に対する人間の優位性を示し、クマに食べ物の物乞いをさせようという意図で運営されている。しかし同時に、人は獰猛な野獣というクマ本来の姿を見たいと思っているため、クマ牧場の経営者は、クマを闘わせようとして過密な囲いの中に押し込めている。

 一方、来園者の方も、クマが闘うのを見たいと思っているため、何もないコンクリートの囲いの中でぼんやりと座っているクマには退屈してしまう。また、クマがサーカスの道化を演じるのを見たいと思ったり、子グマ触ってみたいと願ってみたりするので、こういう来園者に迎合するために、クマ牧場はクマの本当の姿を見せたり、クマの福祉を犠牲にしても、来園者の欲求を満たして入場料を増やそうと考える。

 クマ牧場を訪れる日本人がほとんど、飼育下のクマの福祉を考えていないのは驚くべきことである。ストレスからくる攻撃行動によって重傷を負うクマが多くいて、その様子が明らかに分かっても、こうしたクマの怪我や異常行動を問題視したり、クマの施設の改善や福祉の向上を働きかけようとする人はほとんどいないようである。

 日本のクマ牧場おけるクマの状況を要約すれば、「素晴らしい野生動物がコンクリートの牢獄に閉じこめられている」いると表現できる。日本にはまだ野生のクマが生息している。日本人はクマを日本の自然資源の一つとして尊重し、クマは見世物の余興ではなく、国民の貴重な財産として取り扱うべきである。

 経済先進国を自負している日本が、これほど貧困で劣悪な状態でクマを飼育していることは驚くべきことである。クマ牧場の劣悪な飼育環境および旧態依然とした見世物や曲芸は、第三世界の資金のない貧弱な動物園と同列に見える。

 しかし、いくつかのクマ牧場は改善のための資金がないわけではない。数百万ドルもの収入を得ている牧場もある。改善する資金もない牧場のいくつかは閉鎖して、クマをよりましな施設に移すべきである。資金力のある牧場はクマの数を減らし、クマのために自然森のサンクチュアリー(保護区)を作るべきである。サンクチュアリーはクマによりよい生活を提供し、うまく運営されれば人々にとってもよりよい教育施設とすることができる。

◆施設の改善に関する勧告

・ 囲いはクマが自然な行動を取れるよう設計されるべきである。

・ クマを過密状態に置くべきではない。

・ 夜間用の穴はクマが攻撃的な行動を取らないよう十分な広さに改善すべきである。

・ クマがいつでも囲いの外や夜間用の穴に入れるようにするべきである。

・ クマを小さな檻に入れてはいけない。

・ クマを飼う施設には獣医が必要であり、獣医がクマのケアができる施設が必要。

・ 雄と雌を隔離し、自由に繁殖させてならない。

・ 不妊措置をほどこさない限り、雄と雌を一緒にすべきではない。

・ クマには適切な食事を与えるべきである。

・ すべてのクマが新鮮な水をいつでも十分に利用できるようにするべきである。

・ クマに芸を仕込んだり、芸をさせたりしてはならない。

・ クマ肉やクマ製品の牧場での販売は禁止すべきである。

・ 来園者にクマについての教育資料を提供するべきである。

・ 来園者に、クマに食べ物を与えさせてはいけない。

・ クマの出生、死亡、獣医による治療、食事などについての記録は一般に公開すべきである。

 


 
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