ALIVE:「動物園を問う」3
動物園をチェックしよう
●動物園は何のためにあるのか?
動物園は何のために存在するのでしょう。公式的には、以下のような社会的役割があるとされています。
(1)娯楽(レジャーの場)
(2)教育(動物の知識の普及や理解)
(3)研究(動物の生態などの研究)
(4)自然保護(絶滅種の保存など)
しかし、日本のほとんどすべての動物園は娯楽目的の施設であるといってもいいすぎではないでしょう。
●日本の動物園の経営者
日本の動物園の経営は、主に、3つの形態にわけられます。
(1)自治体または自治体出資の法人が運営しているもの(主に税金で運営)、
(2)会社(鉄道会社・観光会社が多い)が経営しているもの、
(3)個人業者または家族経営によるもの(劣悪施設が多い)

個人業者が飼育するカバ。
カバは水中にもぐってくらす動物ですが、ここには水がありません。コンクリートのしきりの中で、炎天下、飲み水さえ与えられていませんでした。カバの形はわかっても、ほんらいどんなところで生きているのか、どんな習性があるのかなどは、なにも知ることはできません。
日本には、欧米諸国と異なり、動物園に関する法律はありません。誰でもが勝手に「動物園」と名乗って営業することができます。
また、「動物園学」といった学問はなく、動物園動物の行動を研究する分野もありません。一般に動物園は、子供用の娯楽施設でしかなく、ただ「生きている動物標本」を並べただけという展示の方法をとっています。
●劣悪な飼育環境
施設の構造も、動物を管理しやすいようにしか設計されず、檻の中で一生をすごさなければならない動物の住まいへの配慮はまったくなおざりにされています。

短い鎖でつながれた子供のゾウ。
炎天下、日よけもなく水もない施設。
子供の好奇心を満たすような遊び道具さえ、なにひとつありません。
まだ子供なのに、もう頭を振り続けたり、足を踏み鳴らすといった「常同行動」がみられました。
たとえば、床はすべてコンクリートで、周囲に木陰さえなく、夏の炎天下では焼け付くようです。
また、自然の草も木もない殺風景な狭い檻の中には、動物が観客から見られるストレスを避けるための隠れ場所もなく、退屈をまぎらすための道具もなに一つ置かれてはいません。
●動物たちの「異常行動」
このような牢獄ともいうべき施設の中では、自然界ではみられない動物たちの「異常行動」が現れています。
・頭を振り子のように左右や上下にふる。
・足を交互左右に踏みならす。
・檻の中をぐるぐる回る。
・檻をなめる。檻を噛む。
・自分の体を傷つける。
・果てしなく同じ動作を繰り返す。

あまりに狭いホッキョクグマ舎!
ホッキョクグマは1日に数十キロメートルも歩く動物です。それなのに、数歩も歩けば鉄格子にぶつかるこのスペースで、一生を過ごさなければなりません。
クマはまるで頭が変になったように、ぐるぐる同じところを歩き回っています。
これらはすべて、動物園に監禁された動物たちのストレスや心が病んでいることを表現する、異常な行動なのです。(野生では決して起こりません)
●ズーコシス
英国の動物園監視団体は、動物園の動物たちのこのような振る舞いをズーコシスと呼び、次のような指摘をしています。
◆ズーコシスは、
・野生から捕獲された動物でも動物園生まれの動物でも関係なく発生する。
・動物の年齢や性別にも関係なく発生する。
・幅広い種で発生する−ゾウ、クマ、霊長類、キリン、山猫、サイ、鳥類でさえも。
◆その原因は、
・自然の生息環境から引き離されたこと。
・何も為す術もない、強要された怠惰。
・人間による管理。
・社会集団での生活の喪失。
・薬品と医療による生殖能力の操作。
・檻。完全に異質な環境・人工的な空間、照明、人工飼料、騒音、馴染みのない色、不自然な異種や人間との接近など。
●動物園をチェックしよう
檻の中に閉じこめられた動物たちが、どのように居心地が悪いのか、その結果としてどのように心身が病んでしまうのか、どうしたらこの状態を変えることができるのか、私たちは事実を正しく把握し、動物たちの悲惨な状況を少しでも変えたいと願っています。
移動用の檻に入れられたままのヒョウ。
動物園で増えすぎたり、いらなくなった動物は「余剰動物」として、業者の施設でこのように「保管」されています。
次の行き先が決まるまでは、何日も、何ケ月も、ひょっとしたら何年も、このような檻の中に入れられたままです。それでも行き先がなければ、このまま水も餌も与えられず死ぬこともありえます。
動物園は、広く一般に公開されている施設です。(もちろん、隠されている闇の部分もたくさんありますが)
観客を呼び寄せ入場料を取っている動物園は、人気や評判が落ちれば、即経営にひびきます。事実、多くの人々が動物園に魅力を感じなくなっているせいか、入場者数が減少し、この数年、いくつもの動物園が規模を縮小させたり、閉園も相次いでいます。
動物園に行きましょう。楽しむためではなく、動物たちの状況を変えるために。
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