関連リンク
名古屋市の東山動物園へのアジアゾウ導入計画に関して、ALIVEが送付した質問書に名古屋市長からの回答が寄せられました。
平成23年11月28日
東山動物園へのアジアゾウの導入計画に関する回答について
日頃から、名古屋市東山動物園にご理解とご関心をお持ちいただきますこと、厚く御礼申し上げます。ご質問いただきました件につきましては、以下のとおりお答えさせていただきます。
1.アジアゾウの飼育設備について (1) アジアゾウゾーンは、東山の森を借景として「スリランカの森」の中でゾウとの出会いを体験してもらうことにより、生息地の現状の理解や戦後東山動物園を舞台におこなわれた「ゾウ列車」の記憶を後代につなげることを基本コンセプトとした展示を計画しています。 ここでは単に景観のみに目を向けているのではなく、最新のゾウの知見をもとにゾウが生活していく上で必要とするさまざまな要素を飼育空間に配する設計になっています。同時にこれは、観覧者に対し生き生きとしたゾウの生活を見せることにつながり、またより正しいゾウの理解を促すことができるものと考えています。 具体的な工夫としては、たとえば2頭程度は同時に入れることを想定したプール、十分横臥することができるサイズを取った砂場や泥場があります。しかしながら、今後出されるであろう最新の知見に対応し新たな工夫も加えていく必要があると認識しています。 獣舎の設計は、約4年前の飼育担当者を含む動物園内部で検討において基本的な部分は終了しています。しかし、現在東山動物園が取り得る最善の工夫を盛り込んだ設計をしたと認識しており、上述のように不十分な点は今後の課題としていくことを考えています。 (2) 居住スペースは1区画59〜 87uあり、これは近年国内で建設されたアジアゾウ舎の中ではもっとも広いものとなっています。また主にメスが使用できる居住スペースは4区画(4個体分)あり、夜間の収容時においてゲートをすべて開放することにより群れで過ごすことができるようになっています。海外に目を向ければより広い獣舎を整備している動物園も多々ありますが、動物園での飼育を考えた場合いくら広くした所で野生状態にまですることができないという制限がある以上、広くすることは必要なことではないと否定しないまでも単純に広くすれば十分な飼育施設ができ上がることにはならないと考えています。 むしろ、環境エンリッチメントによるゾウが必要とする環境の機能を高める工夫が必要かつ重要と考えています。現時点での屋内獣舎の設計においては、ゾウが操作できるミスト状の温水シャワーの設置が予定されていますが、その他の環境エンリッチメントの装置等も必要に応じ取り付ける等、ゾウの身体調節に対応できる工夫を検討していきたいと考えています。また、ゾウは適切な採食機会の提示によってより活発に動きまわるということを考えるならば、採食に関するエンリッチメントの工夫も屋外・屋内共に必要と考えています。しかし、採食エンリッチメントは必ずしも施設面(ハード)の整備を必要とするものではなく、飼育管理上の対応(ソフト)でもかなりの部分は対応可能と考えております。 (3)新アジアゾウ舎を設計するに当たり基本的な部分は飼育員も含めた東山動物園内部で平成17年度から進めてまいりました。この後、平成20年度にはオーストラリアからメルボルン動物園等のアジアゾーンの建設に携わった専門家を招聘する等、外部からの助言等もいただいてきました。また、野生ゾウの生態や使役ゾウとしての飼育管理面に関して等の情報も、インドの研究者から得るなどもしてきました。しかし1.(1)で述べたように今後は新しい工夫も必要と考えており、今回の建築をゴールとして位置づけるのではなく、得られた情報や更に最新の知見等も含めより良い飼育環境や展示環境について検討していきます。 2.種の保全について (1)新しいアジアゾウ展示においては5頭の群れ飼育を計画しています。すなわち、2頭の追加導入を予定していますが、現時点ではまだ具体的なことは決まっていません。 (2)種の保全に対する動物園の寄与としては、いくつかの方策があると考えています。第一にご指摘のように当該動物種を繁殖し、野生復帰させる方法があります。あるいは、「野生への窓口」として、動物園にくる来園者に対して当該動物種についてや野生状況の情報を提供したりすることにより、生息環境破壊に関与する消費活動を抑制するといつた間接的行動を促すという教育的な方法もあります。また、当該動物種に対する来園者の思いを強くすることによって、保護募金といったような形で直接的行動を促すという方法も考えられます。 東山動物園としては、アジアゾウをより健全な状態で飼育しかつ博物館的な情報提供も含め魅力的な展示をすることにより、こうした方法の内実現可能なものから始めることで、野生保全に寄与していきたいと考えています。すなわち、繁殖のみが種の保全への寄与とは考えておりません。したがって、繁殖を成功させる努力をすることはもとより、それ以外の方法も適切に利用し、種の保全に寄与できるよう努力していくようにすることを考えています。 (3)飼育下で繁殖に成功できたとしても、それ自体のみで野生復帰をさせることは、これまでの多くの事例からも報告されているように非常に問題の大きい、すなわち高い生存率を保持できるものではありません。まず復帰させる当該個体を、野生環境に順化させる作業が必要となります。また、そもそも当該動物種が野生化で減少した原因を取り除き、野生化で生存していくのに適した自然環境を復元ないしは改善していかなければなりません。こうしたことは東山動物園単独でおこなえる範疇を超えるものであり、動物園間の国際的な協力や、日本や現地国の政府・企業・国民との連携した作業が必要となります。 東山動物園としては、種保全に積極的に関与している国内外の動物園やその他の組織と密接な連携を築くことから始めて、将来的に野生復帰を実現できるようにすることを目指していきたいと考えています。 3.繁殖プログラムについて 従来の飼育において雌雄を飼育しても繁殖が成功しなかった原因の重要な要因の1つとして、メスの頭数が少ない、すなわち群れ飼育になっていなかったということが指摘されています。これは単に繁殖を成功させるためのみならず、メスの心理的ストレスを減ずる上でも重要であることが報告されています。群 れ飼育をすることは、ゾウの心身の健全性を維持する上で重要であり、その先に繁殖の可能性が高まると考え、まずは群れ飼育することを目指します。しかし、群れ飼育をすれば繁殖が成功するということにならず、当然導入時点で繁殖に適した個体の選択が必要であり、また飼育場面において繁殖に適した生理 的状態を維持するような工夫も不可欠だと考えています。そうした状態をモニタリングするために、定期的にホルモンアッセイをおこなうことを現時点で既に開始しています。 また運動場や居室に上述のようなゾウの生活に合わせた構造を取り入れることで、個体の健康のみならず、群れとしての健全さも高める工夫を設けています。さらに、交尾行動時におけるゾウ間の危険回避を可能とするような構造としており、よリー層繁殖に適した環境づくりを目指しています。 自然繁殖が困難な場合に必要となる人工繁殖に関しては、設備として獣舎内で作業スペースを設ける計画です。ただし、人工繁殖に関する技術は現在十分とは言えない状況にありますので、積極的に技術の獲得を目指していきたいと考えています。また、人工繁殖に必要な措置を動物が安全に受け入れられるような訓練も進めていきたいと考えています。 以上のように、自然繁殖を基本として進められるよう群れづくり、施設づくりを進め、さらに補助的に人工繁殖が可能になるよう技術向上や必要とされる動物の馴致訓練等を始められるよう検討していきます。 4..再生プランに関して 平成19年度に基本計画が策定されました。その後新たな視点として、@現存する歴史的文化施設や樹木、景観に配慮する、A市民によリー層楽しんでいただくということを加えて、平成22年5月に新基本計画を策定しました。東山再生プラン「楽しみと賑わいの創出」ワーキングは、この2つの視点を焦点として、来園者によリー層の楽しみと賑わいをもたらす方策について議論をすることを目的としたものです。 一方、動植物のあり方に関しては、1.(3)で述べたように飼育担当者も含めた動物園内部において専門家のヒアリング等も参考にして議論を進めてきており、現在も続けています。 5.費用に関して (1)ゾウ舎の建設費としては、工事請負費として今年度535,730千円、債務負担行為として平成24年度に1,004,000千円が予算化されています。なお、その他のゾウの購入費用等につきましては、現時点では導入方法自体が検討中です。今後、関係者との調整の中で具体化されていくものであるため、現時点でお示しすることはできません。 (2)公益性に関してですが、まず第1に獣舎の老朽化による危険性の改善があります。東山動物園は開園から既に70有余年を経過しており、老朽化の激しい施設もいくつかあり、アジアゾウ舎もその中の1つです。この計画に従い、ゾウ舎は手始めに改修をおこないますが、他の施設に関しても順次更新をおこなっていく計画です。 アジアゾウ舎に限るならば、「ゾウ列車」の話があるように、東山動物園としては開園当時からいるアジアゾウはシンボル的な存在と位置づけることができます。来園者アンケートによる人気動物においても常に上位を占める動物として、市民からも親しまれています。そこで第2の理由として、単にゾウの姿を見てもらうことを超えた、感動を与えることが出来る施設として整備していくことを計画しており、これも市民へのサービス向上の1つとして捉えています。すなわち、「ゾウ列車」の歴史を後代に語り継ぐことによって、動物の素晴らしさのみならず平和な社会の重要性を学ぶ場を提供できるものと考えています。また、博物館的な展示も充実させることにより、アジアゾウと人の関わりや生息地環境の様子などを伝え、環境教育の場としても働き得るものと考えています。 また、獣舎の設計理念としても説明させていただきましたが、アジアゾウのより本来の生活に近づけるために群れ飼育をおこない、環境エンリッチメントによリアジアゾウが必要とする環境の機能を高めることにより、動物福祉や繁殖の成功度の向上を図っていきたいと考えています。このことに関しては、繰り返しになりますが、現状をゴールとして位置づけているわけではなく、適宜よリー層良いものにしていく努力を払うつもりでいます。 こうした観点はいずれも、動物園として果たすべき公益性の向上に結びついているものと捉えています。
以上
⇒ 東山動物園へのアジアゾウ導入計画に関する質問書と回答
HOME ALIVEの紹介 野生動物 ズー・チェック 家庭動物 畜産動物 動物実験 生命倫理 ライフスタイル 動物保護法 海外ニュース 資料集 ビデオ 会報「ALIVE」 取り扱い図書 参考図書紹介 リンク お問い合わせ 資料請求
Copyright © 1996-2010 NPO法人 地球生物会議 ALIVE All rights reserved 文章、資料および写真等の無断使用は禁止されています。