文部科学省が近く指針改正案をまとめる見込み
文部科学省と関係委員へ意見を！！
〜 動物性集合胚規制緩和問題 〜

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ALIVE会報119号でもお知らせしましたが、文部科学省が動物性集合胚（ヒトの細胞を混ぜ合わせた動物胚）の取扱いの規制緩和（動物胎内への移植や個体産生の解禁等）を検討しており、最近の報道によれば、（総合科学技術会議と合わせて約６年の検討の末に）いよいよ年内に報告書をまとめ、今年度中に指針改正案を示すと言われています。

文部科学省は8月と10月に特定胚等研究専門委員会（科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会）で「動物性集合胚の取扱いに係る総合的検討について（たたき台）」という取りまとめ資料を示していますが、科学的根拠がほとんどない結論ありきの内容になっています。

これを受けて当会から文部科学省へ、今年４月に続き２通目の要望書を提出しました。（記事末要望書参照）

関連する部会や委員会のこれまでの議論では、委員からは特段の反対意見や実質的な議論もなく、文部科学省が提示する論点を何となく追認してきているという状況です。

また、現在進行中の特定胚等研究専門委員会では、数名程度しかいない倫理を専門とする委員のうち、1名が7回連続で欠席、1名が5回連続で欠席のまま回が進むなど、倫理的な議論がおざなりにされています。

規制が緩和されれば、動物実験における生命操作の領域が広がり、未知の生物や健康上のリスクを負った生物がこれまでにも増して多く生み出されることが予想されます。また今後、動物を使った他の生命操作にも扉を開き、歯止めが効かなくなる恐れがあります。これを阻止するため、ぜひ文部科学省と関係委員へ皆様の意見を届けてください。また、お知り合いへも本件を広めてください。

※意見を送る際は感情的にならずに冷静な文章でお願いします。

○例文１：（あくまで参考例です）

○例文２：（あくまで参考例です）

（※）動物性集合胚など特定胚の作成を規制している「特定胚の取扱いに関する指針」の根拠になっている「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」では、規制の理由として「人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える」ことを挙げている。

〇意見提出先
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
(郵便)〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号
(E-mail)ethics@mext.go.jp

以下、関連委員会・部会の主要な委員です。こちらへも出してください。
（注意書きのないものは全てメールアドレス。「★」を”@”に直してください。）

特定胚等研究専門委員会　主査
��坂 新一 （国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所 名誉所長）
kohsaka★ncnp.go.jp

特定胚等研究専門委員会　委員
浅井 篤 （東北大学大学院医学系研究科医療倫理学分野・教授）
aasai★med.tohoku.ac.jp

特定胚等研究専門委員会　委員
永水 裕子 （桃山学院大学法学部教授　生命倫理／医療倫理）
nagamizu★andrew.ac.jp

特定胚等研究専門委員会　委員
奈良 雅俊 （慶應義塾大学文学部教授　倫理学）
nara★flet.keio.ac.jp

科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会　部会長
福井 次矢 （聖路加国際病院院長）
（郵便のみ）〒104-8560 東京都中央区明石町9-1聖路加国際病院

科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会　副部会長
甲斐 克則 （早稲田大学大学院法務研究科教授）
https://www.waseda.jp/folaw/gwls/contact/
（大学の問い合わせフォームのため、宛名を書いてください。）

科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会　副部会長
宮浦 千里 （東京農工大学副学長）
miyaura★cc.tuat.ac.jp

科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会　委員
霜田　求（京都女子大学現代社会学部教授）
shimoda★kyoto-wu.ac.jp
（キメラ作成研究の倫理問題に関する以下の論文がある。
http://www.eth.med.osaka-u.ac.jp/OJ_files/OJ6/shimoda.pdf
http://ethpol.org/OJ_files/OJ7/11shimoda.pdf）


＜参考リンク＞
動物性集合胚の取扱いに係る総合的検討について（たたき台）
http://www.lifescience.mext.go.jp/2017/10/101291024.html

特定胚等研究専門委員会（各回の配布資料と議事録）
http://www.lifescience.mext.go.jp/council/council008.html

文部科学省へ意見を！〜 4/12 文部科学省へ要望書を提出　動物性集合胚規制緩和問題 〜
http://www.alive-net.net/animal-experiments/youbou/2017/animal-human-chimeric-embryo.html

臓器工場、異種移植、異種間キメラ動物・・・生命操作はどこまで許されるか？
〜動物性集合胚の規制緩和を問う 〜
http://www.alive-net.net/animal-experiments/animal-human-chimeric-embryo_alive119/index.html

以下、4月に続き当会が提出した2通目の要望書です。

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2017年11月16日

文部科学省研究振興局ライフサイエンス課
生命倫理・安全対策室　御中

特定非営利活動法人 地球生物会議（ＡＬＩＶＥ）
〒160-0008　東京都新宿区三栄町6　オグラビル203号室
TEL：03-5315-4247／FAX：03-5315-4248
E-mail：alive-office@alive-net.net

動物性集合胚の規制緩和に反対する要望書（２）

　貴省の科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会において検討されている動物性集合胚の取扱いの見直しについて、今年4月に要望書を提出させていただきましたが、報道によれば、年内に報告書をまとめ、今年度中に指針改正案を示すと言われています。要望書提出以降、当会が指摘した問題を含め、特段の議論もないままに、このような拙速な議論を進めておられることは大変遺憾なことです。8月（第100回）と10月（第101回）に特定胚等研究専門委員会で出された「動物性集合胚の取扱いに係る総合的検討について（たたき台）」（以下、10月に出された見え消し修正版の方を「総合的検討について」と呼ぶ。）については、既に総合的検討のまとめ作業に入っておられるようですが、この内容については、以下のような多くの疑義がありますので、あらためて動物性集合胚の取扱いの規制緩和（動物胎内への移植解禁等）を行わないように要望いたします。


○総合的検討についての　「３．人と動物との境界が曖昧となる個体について」　より

該当箇所：
「以上のとおり、動物性集合胚から産生される個体は、細胞など部分的にヒトの特徴を持つ可能性はあるものの、ヒトの手足や顔の一部など体の構造単位でヒトの特徴が混ざった生物が生じる可能性は極めて低い。」

意見：
　「体の構造単位でヒトの特徴が混ざった生物が生じる可能性は極めて低い。」とのことですが、そもそも動物性集合胚の研究目的の一つである動物胎内でのヒト臓器作成は「体の構造単位でヒトの特徴が混ざった生物」ではないのでしょうか？「細胞など部分的にヒトの特徴を持つ可能性はある」以上、場合によってはヒトに外見もしくは機能上大変近い生物ができる可能性も否定できないということではないでしょうか？
　また、マウス―ラット間のキメラ作出実験の結果から、「近縁種であっても、異なる種の細胞は共存するが、体のサイズや形状については受精胚の種及び移植先の動物に依存することが明らかとなっている。」とのことですが、「体のサイズや形状については受精胚の種及び移植先の動物に依存する」からと言って、「体の構造単位でヒトの特徴が混ざった生物が生じる可能性は極めて低い。」とは言えないと考えます。
　なお、ヒト多能性幹細胞をブタ胚に混ぜた動物性集合胚からは、「ブタ胎仔に存在したヒト細胞は一部のみであった」とのことですが、このような研究はわずかしか行われておらず、このような少数の研究例をもって、「可能性は極めて低い」などということはできないと考えます。


該当箇所：
「大脳皮質の容量及び機能等がヒトと大きく異なるほか、体の構造も大きく異なるため、脳にヒト細胞由来の脳神経細胞が多く混在したとしても、ヒトの言語を話すなど、ヒトのような認知機能を持つ可能性は極めて低い。」

意見：
　大脳皮質の容量や機能、体の構造がヒトと動物で異なるのは当然ですが、しかしなぜたったそれだけのことから、「ヒトの言語を話すなど、ヒトのような認知機能を持つ可能性は極めて低い。」などと言えるのでしょうか？全く科学的な根拠が示されておらず、論理が飛躍しています。動物とヒトの尊厳を考える上でこれほど重要な問題（懸念）を、こんな結論ありきの非科学的説明で認めてよいとは思えません。
　なお、「胎仔期のげっ歯類の脳にヒト神経前駆細胞を移植する研究等が実施されているが、ヒトのような認知機能等を持つげっ歯類が生じたとの報告はない。」とのことですが、動物性集合胚の研究例ではないことに加え、限られた研究目的の例であり、今のところ「報告はない」ことをもって、今後もあり得ないことにはならないと考えます。
　また、特定胚等研究専門委員会（第100回議事録より）では委員の一人から、「実際は、例えば霊長類なんかの場合に、ヒトの細胞を入れたときに認知機能を持たないかどうかというような点は、実は検証できないのですね。（中略）特に認知機能だとか精神活動というのは非常に、我々は、判断しづらいというか、その研究手段を持たないというのが現状なのですね。」と指摘されていることから、実際にヒトのような認知機能を持った動物が生まれたとしても容易に判定できず、万一そのような動物が生まれても見過ごしてしまう可能性（危険性）があると考えます。


○総合的検討についての　「４．動物性集合胚の取扱期間、胎内移植について」　より

該当箇所：
「また、胎内移植を行う場合にあっては、胎仔及び母体等の経時的な観察を行うことで、胎仔及び母体への影響がないことや、念のためヒトと動物の境界が曖昧な個体の産生がないことを確認しつつ研究を実施することが必要である。」

意見：
　「胎仔及び母体への影響がない」というのは動物の異常や健康面のことを指していると思われますが、新たに作り出した生物種の健康や苦痛について、必ずしも外見から判断できる保証はないと考えます。また、「念のためヒトと動物の境界が曖昧な個体の産生がないことを確認しつつ」とのことですが、そのような個体の産生をどのように判定すればいいのでしょうか？また、万一生まれてしまった場合にはどのように処置すればいいのでしょうか？リスク管理の基本的な事柄について、あまりにも不明なことだらけです。


○総合的検討についての　「＜今後、検討が必要な事項＞」　より

該当箇所：
「○脳神経細胞・生殖細胞の作成を目的とする場合
○霊長類等の取扱い」

意見：
　文部科学省は議論の当初からこれらのことのみを問題にしようとしており、結論ありきと言わざるを得ません。


○その他

意見：
　全ての論点にわたり、部会や委員会の委員からは特段の反対意見や実質的な議論もないままに回が進んでおり、委員の人選や議論の進め方に疑問を覚えずにいられません。また、数少ない倫理を専門とする委員のうち、法学・生命倫理を専門とする委員が7回連続で欠席、医療倫理を専門とする委員が5回連続で欠席（ともに特定胚等研究専門委員会）のまま議論が進んでいるなど、倫理的な観点での議論がおざなりにされています。
　異なる視点から問題点や懸念をきちんと指摘できる委員を入れたり、そのような有識者／あるいは市民団体等をヒアリングに招くなどして、実質的な議論を行うことが最低限、必要でしょう。

以上

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＜参考補足＞

１．内閣府生命倫理専門調査会の取りまとめ文書「動物性集合胚を用いた研究の取扱いについて」では、「動物性集合胚は、動物胚の性質を有するものであるが、その動物への胎内移植により、人の尊厳の保持等に影響を与えるおそれが皆無でない。」という見解が出されている。
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/kenkai/kenkai.pdf　（Ｐ８）

２．動物性集合胚の取扱いに関する作業部会（文部科学省）の議論では、
「胚に注入された細胞が成長した後、全身にどのように散らばるのかといった観点からのデータはないのではないか。」
「現在の研究は、高い分化能を有する細胞を作成している段階であり、分化を制御する方向まで進んではいないのではないか。」
などの意見が出されている。
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1348_05.pdf　（Ｐ６）

３．英国医学アカデミー「ヒトの物質を含有する動物」プロジェクトの一環として英国で実施した意識調査の考察では、「ヒトの細胞を霊長類に移植することで、英国では実験使用が禁止されている大型類人猿の能力を獲得する可能性もある。」とされている。
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1975_01r2.pdf　（Ｐ７）

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