地球生物会議ALIVE ＥＵの統計にみる動物実験～日本でもＥＵに倣い、動物実験の情報収集・公開を！～

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ＥＵの統計にみる動物実験
～日本でもＥＵに倣い、動物実験の情報収集・公開を！～

※会報「ＡＬＩＶＥ」１１５号より

2013年にＥＵが最新版の動物実験統計（2011年の調査データ）を公表しました（※１）。本記事ではＥＵのレポートから主なデータを抜粋しつつ、統計から垣間見える動物実験の実態についてまとめてみました。

■ 統計の概要

　本調査統計は実験動物保護に関する旧ＥＵ指令（86/609/EEC）第26条に基づく統計で、１９９１年、１９９６年に第１回、第２回の調査（ＥＵが各加盟国のデータを収集し統計）が行われて以降、３年ごとに調査されています。
　１９９９／２００２年は15加盟国を対象とした調査でしたが、２００５年に25カ国、２００８／２０１１1年は27カ国を対象としています。今回（２０１１年）が７回目の調査です。

■ 使用動物の種類と数（表１）

　 ２０１１年の実験動物使用数はＥＵ27か国全体で約１１５０万匹となりました。これは前回２００８年と比べると約50万匹（４％）の減少です。
　動物種別の内訳では、げっ歯類とウサギが合わせて全体の80％を占め、特にマウス（61％）とラット（14％）が突出しています。冷血動物（爬虫類、両生類、魚類）が12％、鳥類が６％、霊長類（ＥＵでは２０１３年から人の健康や生命を脅かす病気の診断や予防、治療を目的とするものに限り、かつ他の種では目的を達成できない場合等を除き使用禁止）は0.05％、大型類人猿（ＥＵでは2013年から原則使用禁止）は１９９９年から使用されていません。
　なお、国別の使用数では、フランス（約２２０万匹）、ドイツ（約２０７万匹）、イギリス（約２０５万匹）の順番となっており、この３国で27カ国全体の半数以上を使用しています。

■ 実験の目的（図１）

　最も大きい割合を占めるのは生物学における基礎研究で、全体の半数近くを占めています。基礎研究というのは、未知の分野の知識を増やすために行われるもので、すぐに、あるいは必ずしも社会的な利益に直結しないような研究を指します。次に大きい割合を占めるのが、医療・獣医療・歯科医療の研究・開発で19％。医薬品・獣医薬品の生産14％、毒性・安全性評価９％がこれに続きます。

■ 毒性・安全性評価の内訳（図２）

　２０１１年に毒性・安全性の評価に使われた動物は約１００万匹（総使用数の９％）で、このうち最も大きい割合を占めたのは医薬品・獣医薬品の製品・原料または医療機器で40％。環境汚染の研究が９％、農薬、工業薬品の製品・原料がそれぞれ８％でした。人の食品添加物と動物の飼料添加物の製品・原料は合わせて０・７％、家庭用品の製品・原料は０・１％でした。化粧品・トイレタリーの実験に使用された動物は２００８年の１９６０匹（０・２％）から２０１１年には90匹（０・０１％）に減りました（※２）。ＥＵでは化粧品の製品及び原料の動物実験が２００９年から禁止された（※３）ことが背景にあります。

■ 病気の研究の内訳（図３）

　約６６０万匹（総使用数の57％）の動物がヒト及び動物の病気の研究に使用（９割が人の病気の研究）されました。精神・神経系の障害に関する研究が20％、癌研究が17％、心疾患に関する研究が８％でした。

■ 日本もＥＵに倣い、動物実験の情報収集・公開を！

　以上のように、ＥＵでは加盟各国に動物実験に関する情報の収集が義務付けられており、ＥＵはそれらを収集し、公開することになっています。収集される情報は限定されてはいますが、それでも動物実験の現実の一端を示すものとして大変貴重なものです。ＥＵの傾向は概ね日本とも一致すると考えられ、日本の動物実験を考える上でも貴重な情報です。
　日本では情報収集の前提となる動物実験施設の届出制すらないため（ＥＵ加盟国は許認可制）、行政ですらどこにどんな動物実験施設があるかを把握できていない状況です（※４）。これでは動物実験が何のためにどのくらい行われ、どんな動物がどれだけ使われているかも把握できず、市民が自分たちの生活にも関連する実験動物の犠牲について正しく認識し、評価や見直し、議論を行うことができません。
　現状を変えるにはまず知ることです。そのためには情報が収集・公開されなければならず、動物実験施設の届出制はそのために最低限必要な制度です。環境省、文部科学省、厚生労働省等の所管省庁に、ＥＵに倣って動物実験施設の届出・登録制と動物実験の情報収集・公開を訴えていきましょう。

（※１）Seventh Report on the Statistics on the Number of Animals used for Experimental and other Scientific Purposes in the Member States of the European Union
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52013SC0497

（※２）なお、化粧品・トイレタリーの毒性・安全性評価における割合は１９９９年のデータでも０・４％であり、この分野の動物実験が他の分野に比べて元々少なかったことがうかがえる。

（※３）ＥＵの化粧品の動物実験禁止については、他の名目や規制の枠組みを使って、実際には実験が行われているとの指摘もある。

（※４）日本における最近の動物実験に関する統計では、（公社）日本実験動物協会による販売数調査（２０１３年哺乳類合計で約５４０万匹）があるが、加盟企業以外からの購入、輸入、研究機関での自家繁殖等を加えると使用数は販売数を大きく上回ると推察される。（業界関係団体の情報によれば、研究機関内での繁殖分を勘案すると、マウスだけで約１０００万匹が使用されているとの推定値もある。
http://www. renkyo.or.jp/faq.htm　仮にこの情報が正しいとして、マウスの総使用数に対する割合がＥＵと同じと仮定すると、日本では年間１６００万匹以上の動物が実験に使われていることになる。この数値は人口１人あたりで見たときにＥＵ全体やフランス、ドイツ、イギリスの約４倍～５倍であり、日本が動物実験大国であることを示している。）

　
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