地球生物会議ALIVE

にわとりは、今では庭で見かけることはできません。

かつては、ニワトリは農家の庭先で放し飼いにされ、地面の虫や草をついばんでいました。けれども、今ではそんな風景はどこでも見られません。

この数十年、卵や鶏肉の消費量はかつての何十倍も増大しているのに、ニワトリの生きた姿が見えないのはなぜでしょうか。

今、ニワトリたちは、人家から少し離れた場所に隔離され、何千、何万羽となく、狭い鶏舎に閉じこめらているのです。


	ニワトリのケージはきわめて狭く、A４サイズ（雑誌大）のスペースの仕切に、２羽も入れられています。羽根をのばして羽ばたきどころか、向きを変えることさえできない状態です。
日本の採卵用の養鶏農家は、１戸平均２～３万羽ものニワトリを飼育しています。	Photo：CIWF

　　一生、身動きもままならない金網のケージに入れられたままなので、首や足が絡まり変形してしまうこともあります。

　あまりにひどい過密飼育のせいで、トリたちのストレスはほとんど極限状態です。


向きを変えることもできない狭いケージで一生を過ごさなければならない	爪が変形して金網のケージにからまる。

　野の鳥は、母鳥が巣で抱いて暖めることのできる数しか産卵しないのですが、ニワトリは、毎日、毎日、卵を産むたびに取られてしまうので、１年中、生み続けなければなりません。

　母鳥は、年間に３００個以上も卵を産み続け、生命力を使い果たして、わずか２年くらいで「廃鶏」とされてしまいます。

１個１０円の卵は、安すぎないでしょうか？

　数十年もの間、卵は「物価の優等生」と言われてきました。けれども、そのような安価な卵の背後には、これほど多くのニワトリたちの犠牲があるのです。

　肉用のブロイラーも、同じように狭い鶏舎の中に一生の間閉じこめられています。

　ニワトリはなわばりを作る習性をもっています。超過密飼育のせいで、激しいつつき合いが起こるため、ひなの時にくちばしや蹴爪が焼き切られます。


ひなは、蹴爪を切断される	くちばしを焼き切られるひな	不揃いに切断されたため、えさをうまくついばめない

動物は苦しみ、人の健康も害される

　ニワトリのエサは、もう地面の草や虫ではありません。海外から輸入されるトウモロコシや、「狂牛病」でよく知られるようになった肉骨粉など、高カロリーではあっても、健康と安全、環境保全の観点からは問題のある不自然な飼料が大量に与えられているのです。


生きたまま、箱詰めされて出荷される。押しつぶされて圧死するものも多い	生きたまま箱詰めされて、食鳥処理場へトラックで運ばれていく。

　超過密の鶏舎では、ニワトリたちの免疫力が低下してしまい、ひとたび病原菌が入ってくると、あっというまに広がってしまいます。そのため、短時間で一気に出荷しで鶏舎を空っぽにするという方法がとられます。

　短時間で出荷するため、ニワトリたちは片端から乱暴に箱に投げ込まれ、トラックに積み荷されて処理場まで運ばれます。

　空っぽにされた鶏舎では強力な消毒薬を散布して、また新たにひなを大量に入れるのです。

10年以上の寿命があるのに、ブロイラーの生命はわずか40日。
生きたまま折り重なるように箱詰めされ、苦しい短い一生を終えます。

超過密の飼育状態１羽残らず運び出されて、空っぽになった鶏舎

　このように、動物の生理や習性を無視した飼育方法は、動物に間断なく大きなストレスを与え続けています。そのため、肝臓病や癌、肺炎など内発的な病気にかかるばかりでなく、抵抗力がなくなり、さまざまな感染症がまんえんすることになります。

　その対策として、ケージから出してやり、広いスペースを与え、本来の健康を取り戻してやろうと（動物の福祉を）考える養鶏農家はほとんどいません。症状をおさえるための医薬品を大量に投与してその場をしのごうとするのです。
　これが、いつまでも「安い卵、安い鶏肉」を生産し続けるために求められていることです。

ストレスと病気に苦しみ薬漬けにされているニワトリたち。

その肉や卵は、「安全」で「おいしい」と言えるでしょうか？

健康によいといえるでしょうか？

これが本当に消費者の望んでいることでしょうか？

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鶏 (採卵鶏・ブロイラー）