動物取扱業が遵守しなければならないその取り扱う動物の管理の方法等に関する基準についての要望
動物福祉の５つの原則の明示
本基準の制定に当たっては、広く国際的に認知されている動物福祉の概念「５つの自由」を採用されるように求めます。
１，給餌給水の確保（飢え、渇きからの自由）
（動物が、それぞれの種の生理・習性・生態にかなった適切な給餌給水が行われることにより、飢え、渇きに苦しめられることのないようにすること。）
・餌料と水は衛生的な状態で保管、用意、供給すること。
・餌料はその動物の生理的欲求に適い、かつ必要な栄養を満たせるものとすること。
・餌料は動物が本来摂食する方法や回数に近い形で与えられること。
・餌料は群れの全ての動物が十分に摂取できるように、数カ所に用意されること。
・動物が常に新鮮な水が飲めるように、給水場を定期的に清掃すること。
・飼育舎内の全ての動物が水を飲めるように、十分な数の給水場を設置すること。
２，適切な飼育環境（身体的な不快・痛みからの自由）
（動物が、日照りや風雨などから身をよけることができ、汚物、糞尿などが適切に処理されることにより、不快な状態にさいなまれることのないようにすること。）
・気温、通風、明るさ、湿気、静穏等が、適度に、常に保たれていること。
・動物が雨、日射から身を防ぐ十分なシェルターが飼育舎内に設置されていること。
・床の状態は衛生的であること。
・動物を密室に閉じこめることなく、常に外部の世界とふれあえるようにしておくこと。
・飼育舎の構造、障壁が動物を傷つけないようにすること。
・飼育舎は、動物がお互いに身を避けることができるように設計すること。
・飼育舎で必要な場所には一日に一回清掃を行い、衛生を保つようにすること。
・飼育舎内の排泄物は、定期的に除去すること。
・飼育舎は、効率的に過剰な水分を除去し乾燥を保つようにすること。
３，けがや病気への対処（傷害や病気からの自由）
（動物が、事故やけが、病気に対して適切な治療や世話を受けられ、痛み、傷害、病気のまま放置されることのないようにすること。）
・飼養者は毎日十分な時間を取って、動物の身体的状態と行動を観察し、動物の健康について日常的に注意すること。
・十分な能力を持つ獣医師が、定期的に動物の健康診断を行なうようにすること。
・動物の行動、摂食、排泄に何らかの変化が見られた場合や、獣医師のケアを受けた場合、また飼育舎の状態や餌に変更が加えられた場合には記録に取ること。
・動物に負傷や病気が観察された場合には、直ちに獣医師の治療を可能とすること。
４，心身の苦痛への配慮（恐怖や苦悶からの自由）
（移送や殺処分等において恐怖や苦悶に脅かされることのないようにすること。）
・ 新規導入動物には必要十分な休息を与え、飼養環境への順化順応を図ること。
・動物を殴打したりむち打つなどして苦痛と恐怖を与えないこと。
・動物を輸送する際は、積み荷から積み降ろしまでの過程で、動物を過度に脅かさないように努めること。
・動物を殺処分する場合はできる限り苦痛と恐怖を与えないようにすること。
５，生理、習性、生態に適した飼育（通常行動への自由）
（動物が、それぞれの種の生理・習性・生態にかない、本来の正常な行動を発現できるように、十分なスペースと設備があること。）
・動物が日常的な動作を行うことができ、かつその種特有の行動を発現できるために必要十分なスペースを設けること。
・動物の種によっては行動の欲求が満たされるように複雑で立体的な設備を設けること。
・群れの全ての動物が使用できる十分な休息エリア、止まり木等が与えられていること。
・群れ社会を構成する動物は、社会的グループで飼育すること。
・授乳や社会化が必要な幼弱の子を早期に母親から隔離しないこと。
６，繁殖及び繁殖制限
・施設の飼育能力を越える過剰な繁殖をさせないこと。
・近親交配、遺伝的疾患をもたらす繁殖を行わないようにすること。
・意図的に異種または亜種の動物を交雑させないようにすること。
７，処分
・繁殖等の用途が終わっても飼い主としての責任をもって終生飼育するようにつとめること。
・閉鎖・閉園等で動物を飼養することがどうしても不可能となった場合は、責任をもって新たな飼養者を探すこと。
・治癒の見込みのない疾病にかかるなど飼養を続けることが著しく困難である場合は、獣医師による安楽死措置をとること。
８，記録
・保有する動物の個体識別を明らかにし、その種、数、雌雄の別、及び、取得、出生、譲渡、死亡、逸出についての記録を取り、自治体行政からの照会に対して速やかに応答できるようにすること。
・顧客が動物の身体的状態、由来、飼育方法等について問い合わせてきた場合は、適切に応じられるように表示し、また記録等を整備しておくこと。
９，関係法令の遵守
・管理者は、ワシントン条約、種の保存法、鳥獣保護法、外来種対策法その他関連法令を遵守すること。
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