長年の間、当会を含め全国の動物保護に関わる団体やグループ、個人がその改正に取り組んできた動物愛護法は施行後5年目となり、いよいよ来年の国会で再改正が行われるみこみです。
この再改正は、1999年改正法の附則で5年後の見直しが定められ、また国会の附帯決議で検討課題があげられていることなどによりますが、何にもまして動物を巡る社会的な問題への取り組みが急がれることや、一般の意識の変化が大きな背景となっています。
1973年の法律の制定、および1999年の再改正は議員立法で行われましたが、環境省は今年の2月に「動物の愛護管理のあり方検討会」を設け、現行法の問題点の洗い出し、論点の整理などに取り組んでいます。
「動物愛護管理のあり方検討会」
この検討会では、動愛法の検討事項を総ざらえするものであること、そこにおいてはバランスを重視し、(1)動物を守る立場と、動物から被る迷惑の防止のバランス、(2)家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物、その他の動物を全体的にバランスをとってみていくこと、が示されました。法改正の直後は、ペット法という片寄った言い方がなされていたことを考えると、ようやく軌道修正がなされて飼育動物全体をカバーする本来の動物保護法制へ近づきつつあるという印象を受けます。
「動物の愛護管理のあり方検討会」 検討事項と検討スケジュール
第1回 資料説明など
第2回 動物愛護と飼い主責任
・個体登録措置、虐待・遺棄防止規制
・繁殖制限措置、対象種の範囲、等
第3回 周辺環境の保全措置
・近隣への迷惑防止
・危険動物の飼養許可
・災害対策等
第4回 動物取扱業
・取扱業規制
第5回
・動物取扱業の範囲等
・犬猫の引取り・殺処分など
第6回 実験動物・産業動物の福祉
第7回 地方公共団体の取り組み、NGO等との連携等
第8回 検討結果の中間整理、今後の検討の進め方
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特に、今回は、法的保護の制度がほとんど何もない状態の実験動物、産業動物について、取り組むべきときがきていると思います。前回の改正では、動物業者は届け出制にとどまり、動物実験は何も行われず、畜産動物に至っては議論にさえされない状態でした。
けれどもこの数年でさえ、動物保護を求める人々の声はより広がり、また実験動物や産業動物の福祉の制度は、EU(ヨーロッパ連合)、OECD(経済協力開発機構)、FAO(国連食糧農業機構)、OIE(国際獣疫事務局)、ISO(国際標準化機構)など、多くの国際的な取り決めにおいても導入されつつあります。
鳥インフルエンザ、牛のBSE、豚の口蹄疫など、日本でも次々と発生する動物の病気は、何よりも畜産動物の健康と福祉への配慮が欠落していることが大きな原因の一つです。
動物実験についても、遺伝子組み替えなどが密室の中で行われる結果、環境や生命への悪影響が懸念されるにもかかわらず市民はその実態を把握することもできません。
無数の野生動物がペットとして輸入、販売されることにも規制がほとんどなく、生態系に悪影響を与える外来種問題が広がってもいます。
このような国内外の動きをふまえ、家庭動物のみならず、実験動物、畜産動物、外来種においても飼育者責任の強化がなされるべきでしょう。さらに、すでに他の制度でも広がっている、外部からのチェック制度を導入することが必要不可欠です。
何よりも動物保護の法律を求めているのはいま虐待され、ひどい取り扱いを受けている動物たちであり、それに心を痛めている一般市民であり、動物の代弁者である動物保護団体・グループです。ただ悲惨な現実を嘆いているだけで、その対処を他人任せ、行政任せにしているだけでは、何も事態は変わりません。前回の法改正では、草の根の市民活動で40万人もの署名が集まりました。このような一人一人の市民の声こそが、動物を守る世論として最も大きな原動力となっていきます。