動管法改正　−これからの課題

有効な運用のために市民からの積極的な意見を！

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　昨年12月に、動物の保護および管理に関する法律が「動物の愛護及び管理に関する法律」として改正されました。法改正の直後、高知県で子犬たちの足が切断された事件、東京の谷中霊園での相次ぐ猫の変死事件などが起こっています。また、京都市の小学生殺害事件の犯人が、猫などへの虐待を繰り返していたことも報じられています。これらの動物虐待をどのように防いでいくか、また虐待が起こらないようにするにはどのようにしたらいいか、これから私たちが取り組まなければならない課題は、山積みです。

規準作りに意見を出そう

　改正法で新たに定められた事項として、(1)動物取扱業の規制、(2)危険動物の飼育規制があります。これについては近いうちに政令で動物取扱業者の届出事項や、危険動物の規準を定めることになっています。
　オランウータン等の密輸、ベンガルトラの薬殺など、相変わらず動物取扱業や危険動物に関する事件は頻発しており、より厳しく、また実効力のある規準が定められるべきでしょう。
　動管法に基づく動物の飼養及び保管の規準には、犬及びねこ（昭和50年）、展示動物（昭和51年）、実験動物（昭和53年）、産業動物（昭和62年）の４つの規準が政令で定められており、平成７年には動物の処分方法に関する規準が出ています。これらの規準も時代に即し、動物の福祉を考慮した新しいものに改訂されなければなりません。
　国の規準作りに関しては広く国民の意見を聞く制度（パブリックコメント）が設けられるようになっています。前記の規準は近い内に、インターネットなどを通じて素案が公開されるはずですので、私たちも積極的な提言や意見参加をしていきましょう。

都道府県条例の制定・改正を求めよう

　東京都では動物の保護管理条例の改正を都の動物保護審議会に諮り、昨年３月に答申が出ています。都では、今年度中（３月末まで）に条例を改正させたいとしています。また、神奈川県でも改正に取り組んでおり、北海道のように新たに条例を制定しようとしている自治体もあります。具体的に日々動物の問題に対処するのは地域の住民であり自治体の行政です。地元の行政や県会議員に働きかけ、地域に密着した実効力のある条例ができるように求めていきましょう。

有効な運用のために

　今回の法改正でも、動物虐待の定義はなされませんでした。虐待は、故意の暴力ばかりではなく劣悪飼育のケースが非常に多いのです。この種の虐待については、行政も警察も実態をほとんど知りません。今後、私たちは動物の習性や生態に反する劣悪飼育の実態や事例を集め、警察や裁判所にこれが虐待であることを理解してもらえるように働きかけていく必要があります。劣悪飼育の発見や、ペットショップチェックやズーチェックなどに、ぜひご協力下さい。

５年後の法改正に向けて

　残念ながら今回の改正では、最も数多く人間社会の犠牲となっている実験動物や畜産動物に関してはいかなる保護措置も配慮されませんでした。動物実験は　密室の中で故意に動物を傷つけたり毒物を飲ませたり種々のストレスを与える行為であるが故に最も保護と監視の体制が必要な分野です。せめて欧米諸国並の規制を導入しなければ国際社会に通用しません。５年後の見直しに向けてより一層の活動を進めていきましょう。

「動物愛護法」の限界

　会報29号に書いたように、動管法はあくまで人間中心の法律です。そして「愛護法」に名称変更したことによってさらにそのことが鮮明になりました。２月５日に開催した連絡会のシンポジウムで、法改正を担当した環境庁の担当官がいみじくも述べていましたが、「この法律は、動物愛護法であって、動物福祉法でもなく、動物の権利の法律でもない。動物を慈しむという人間の情操の涵養に主目的がある」のです。このことは裏返せば、人間の慈しみの対象とされない動物・実験動物や畜産動物は、愛護の対象ではないので、いかなる保護も与えられないということになりかねません。

　動物保護法から動物愛護法に名称変更されたことは、法理念の後退であることを、私たちは銘記しなければなりません。すでに、欧米諸国では、動物の福祉法、権利法へ推移しつつある中で、このような情緒的な名称になったことを残念に思わずにはいられません。

「動物の法律を考える連絡会」は解散

　1997年の10月に発足した「動物の法律を考える連絡会」は、会の規約で法律改正が実現を以て解散することを定めています。会の理念や活動の方針が異なる他団体との共同行動は制約も多く、なかなか難しいものがありましたが、ともかく法改正が実現しましたので、2月5日に連絡会の総会を開き、活動報告、会計報告等の後に解散となりましたことをお知らせ致します。