EU（欧州連合）動物園指令

　２００２年４月より、EUで動物園法が施行されました。この法は、英国の動物園免許法と同じように欧州連合内の動物園を許可制としたもので、要件として、生物多様性の確保、種の保存、研究教育、飼育施設の環境エンリッチメントなどを加盟国に義務付けました。遵守義務に対する査察が行われ、改善されない場合には閉鎖措置が取られることも、英国の法律と同様です。以下もご参照ください。

『ALIVE資料集　海外の動物保護法No.2　英国動物園免許法』

1999年3月29日付
動物園での野生動物飼育に関する理事会指令 1999/22/EC

［COUNCIL DIRECTIVE 1999/22/EC of 29 March 1999 relating to the keeping of wild animals in zoos］

官報［Official Journal］ L 094 , 09/04/1999 P. 0024 - 0026

欧州理事会は、

欧州共同体を設立する条約、とりわけその第130条s（注1）を考慮し、

欧州委員会からの要請を考慮し、

経済社会委員会（注1）の意見を考慮し、

前記条約の第189条c（注2）に規定する手続きにのっとって行動し、

野生動植物種の保護に関する1996年12月9日付の理事会規則（EEC）No 338/97が、取引規制により（注3）、欧州共同体への輸入許可に先だち、多数の種の生きた標本を収容しケアするための適切な施設の存在証明を求めており；

前記規則が、教育、研究または繁殖目的のために個別に除外が認められた場合を除き、その付属書A記載種の標本を商業目的で公衆に展示することを禁止しており；

野生鳥類の保全に関する1979年4月2日付の理事会指令79/409/EEC（注4）、および、自然生息地と野生動植物の保全に関する1992年5月21日付の理事会指令

92/43/EEC（注5）が、教育、研究、個体数回復、再導入および繁殖等の個別の理由について除外が認められた場合を除き、多数の種にわたり捕獲、飼育および商取引を禁止しており;

野生動物の保全に関する既存および将来の欧州共同体法の適正な施行、および、動物園による種の保存、公教育および／または科学研究における重要な役割が適切に遂行されるよう保証する必要性とに照らして、動物園の認可および査察、動物園における動物飼育、職員訓練および一般来園者教育に関して加盟国の国内法に共通の基礎を設けることが必要であり；

生物多様性条約の第9条により、欧州共同体には生息地外保全のための対策を採択する義務があり、そこから、共同体全域の動物園を生物多様性保全に貢献させるため共同体レベルでの行動が求められているゆえに、

欧州動物園水族館協会をはじめとする多くの組織が、妥当な限りにおいて国内基準の作成と採択に役立てられる動物園の動物のケアおよび収容のためのガイドラインを設けているゆえに；

本指令を採択した：

第1条　目的

　本指令の目的は、欧州共同体内の動物園の認可および査察のための加盟国による措置を採択することにより、野生動物の保護および生物多様性の保全をはかり、よって生物多様性の保全における動物園の役割を強化することである。

第2条　定義

　本指令の目的において、「動物園」とは、野生種の動物が公衆への展示のために年7日間以上飼育されているすべての恒久的施設をいうが、ただしサーカス、ペットショップ、および、公衆に展示される動物の個体または種は相当な数にのぼらないため除外しても本指令の目的が妨げられないことを理由に加盟国が本指令の要件を免除した施設は、これを除外する。

第3条　動物園に適用される要件

　加盟国は、すべての動物園が以下にあげる保全のための措置を確実に実施するよう、第4、5、6および7条に規定する措置を講じるものとする：

　− その種にとって保全上の利益が見込める研究への参加、および／または関連する保全のための技術訓練、および／または種の保全に関する情報交換、および／または妥当な限りにおいて飼育繁殖、種の個体数回復または野生への再導入、

　− とくに展示する種とそれらの自然生息地に関する情報提供を通じた、生物多様性の保全に関連する公教育および啓発、

　− 種ごとの生物学的および保全的な要件を、とりわけ各動物の飼育舎に種特有のエンリッチメントを施すことによって充足させた条件下での動物の収容；および、予防・治療両面の獣医学的ケアと栄養のために開発されたプログラムを備えた高水準の飼育管理の維持、

　− 固有種への生態学的な脅威を未然に防ぐための動物の逸走防止、および外部から有害な動物や昆虫の侵入防止、

　− 動物園の保有動物についての種に応じた方法による最新記録の保持。

第4条　認可および査察

　1. 加盟国は、第3条の要件が確実に充足されるように、既設および新設の動物園の認可および査察のための措置を採択するものとする。

　2. 各々の動物園は、本指令の発効後4年以内、または新設の動物園の場合には公衆に公開される前に認可を受けるものとする。

　3. 各々の認可には、第3条の要件を実施するための条件が含まれるものとする。これらの条件の遵守はとりわけ定期の査察によってモニターされるものとし、かつ、かかる遵守を確実にするための適切な手段が講じられるものとする。

　4. 認可の付与、却下、期間の延長、または大きな修正を行う場合は、これらに先だち、認可条件または申請された認可条件が充足されているかどうかの判定のため、加盟国の主務当局による査察が行われるものとする。

　5. 本指令にしたがって認可を受けていないか、または認可条件を充足していない動物園ないしその一部は:

　（a）主務当局によって公衆への公開を中止させるか；および／または

　（b）認可条件が確実に充足されるために主務当局が付与する適切な要件を遵守するものとする。

　２年をこえない範囲で主務当局が定める適切な期間内にこれらの要件への遵守がなされない場合、主務当局は認可を取消しまたは変更するとともに、かかる動物園ないしその一部を閉鎖させるものとする。

第5条

　第4条に述べた認可の要件は、ある加盟国が、第1条に述べた本指令の目的および第3条に述べた動物園に適用される要件は、何らかの制度または規則および登録という手段によって充足されており、かつそれが持続できるものであることを欧州委員会が納得するよう証明できる場合には適用されないものとする。かかる制度は、とりわけ査察および動物園の閉鎖に関する第4条（4）および（5）と同等の条項を備えているべきである。

第6条　動物園の閉鎖

　動物園ないしその一部が閉鎖される場合、主務当局は、これにかかわる動物たちが、当該加盟国が適切かつ本指令の目的および条項に合致しているとみなした条件で取り扱われるか、または処分されることを保証するものとする。

第7条　主務当局

　加盟国は、本指令の目的のために主務当局を指定するものとする。

第8条　罰則

　加盟国は、本指令に基づいて採択された国内条項への違反に適用される罰則を定めるものとする。罰則は効果的で、均整がとれかつ抑止的なものとする。

第9条　施行

　1. 加盟国は、本指令の遵守に必要な法律、規則および行政規定を2002年4月9日までに発効させるものとする。加盟国は、それについてただちに欧州委員会に通知するものとする。

　加盟国がこれらの措置を採択する場合は、それらの中で本指令に言及するか、もしくは公報に際してかかる言及を行うものとする。かかる言及の方式は加盟国が定めるものとする。

　2. 加盟国は、本指令の対象とする分野において採択した国内法の主要条項を欧州委員会に連絡するものとする。

第10条 発効

　本指令は、欧州共同体公報に掲載された日付をもって発効するものとする。

第11条

　本指令は、加盟国に向けられたものである。

1999年3月29日、ブリュッセルにて採択

欧州理事会のために
議長
F. ミュンテフェリング

注：

(1) OJ C 204, 15.7.1996, p. 63.

(2) Opinion of the European Parliament of 29 January 1998. (OJ C 56, 23.2.1998, p. 34), Council Common Position of 20 July 1998 (OJ C 364, 25.11.1998, p. 9), and Decision of the European Parliament of 10 February 1999 (not yet published in the Official Journal).

(3) OJ L 61, 3.3.1997, p. 1. Regulation as last amended by Commission Regulation (EC) No 2307/97 (OJ L 325, 27.11.1997, p. 1).

(4) OJ L 103, 25.4.1979, p. 1. Directive as last amended by Directive 97/49/EC (OJ L 223,. 13.8.1997, p. 9).

(5) OJ L 206, 22.7.1992, p. 7. Directive as last amended by Commission Directive 97/62/EC (OJ L 305, 8.11.1997, p. 42).

地球生物会議（ALIVE)資料集　　海外の動物保護法【EU編】