ALIVE資料:海外の動物保護法
チンパンジーの健康改善・扶養および保護法
(アメリカ合衆国上院提出法案)
Chimpanzee Health Improvement, Maintenance, and Protection Act
(Introduced in the Senate)
アメリカ合衆国第106議会 第2期
2000年11月 成立
公衆衛生局が実施または助成した研究、およびその他の目的のために、もはや必要ないと決定されたチンパンジーのためのサンクチュアリ制度をつくるための法案
召集議会において、アメリカ合衆国上院および下院によって立法されるものとする。
第1条 略称
本法は「チンパンジーの健康改善・扶養および保護法」と呼ぶことができる。
第2条 連邦の所有もしくは助成下にあって、もはや研究に必要ないチンパンジーのための国立サンクチュアリ制度の設立
(a)全般-長官は、本条にしたがって、国立衛生研究所、食品医薬品局、またはその他の連邦機関によって実施もしくは助成された研究に使用されたか、またはこれらが使用するために繁殖もしくは購入されたチンパンジーであって、前記の研究に必要がないと長官が判断したチンパンジー(本条で「余剰チンパンジー」と呼ぶもの)に関し、終生にわたるケアを提供する制度の設立と運営について規定を設けなければならない。
(b)サンクチュアリ制度の経営-長官は、(e)項にしたがい(サクチュアリ制度の運営に関して)請負契約を交わす非営利民間主体の理事会との協議のもとに、(d)項による規則の制定を含め、本条を実施しなければならない。
(c)制度へのチンパンジーの受け入れ-連邦政府所有の余剰チンパンジーは、すべてサンクチュアリ制度に受け入れなければならない。連邦政府所有ではないチンパンジーについては、(d)(3)による基準にしたがい、その所有者が、そのチンパンジーに対するサンクチュアリ制度としての資格を備える[transfers
to the sanctuary system title to the chimpanzee]場合には、すべて受け入れなければならない。
(d)余剰チンパンジーの恒久引退に関する基準
(1)全般-長官は、本法の施行日から180日以内に、余剰チンパンジーの恒久引退のためのサンクチュアリ制度の運営にかかわる基準を、規則によって設定しなければならない。
長官は、基準の設定に際し、(e)項により請負契約を交わす非営利民間主体の理事会の勧告、および米国研究会議[National Research Council]が1997年発行の「研究におけるチンパンジー-その倫理的ケア、管理、および使用のための戦略」と題される報告書で述べている、余剰チンパンジーに適用される勧告を考慮に入れなければならない。
(2)制度に受け入れるチンパンジー-(1)節による基準には、サンクチュアリに受け入れるチンパンジーに関し、以下の事項を盛り込まなければならない:
(A)前記のチンパンジーを研究に使用することの禁止。本項は、非侵襲的な行動研究、もしくは、通常の獣医学的ケアの過程においてチンパンジーの利益のために行われる医学研究を禁止するものではない。
(B)チンパンジーの収容に関する条項。
(C)チンパンジーの行動の安寧に関する条項。
(D)チンパンジーのケアを動物福祉法にしたがって行う義務。
(E)チンパンジーの繁殖を防ぐ義務。
(F)チンパンジーの健康と研究使用に関する完全な記録を保持する義務。
(G)チンパンジーが、公衆衛生や他のチンパンジーの健康を脅かすおそれのある何らかの状態にある場合、それを迅速に発見するためにチンパンジーをモニターする義務。
(H)前記のおそれがあるチンパンジーを、疾病対策・予防センター[the Centers for Disease Control and Prevention]の所長が行う適当な勧告にしたがって、封じ込める義務。
(I)そのチンパンジーの利益を最大限考慮した上で、制度および担当獣医師が判断を下した場合を除き、チンパンジーを安楽死処分することの禁止。
(J)チンパンジーを制度から放出することの禁止。
(K)長官が、長官の裁量において、余剰チンパンジー以外のチンパンジーも制度に受け入れることを認める条項。
(L)その他、長官が妥当と判断する基準。
(3)制度への受け入れを申し込まれた非連邦チンパンジー
(1)節による基準には、連邦政府所有ではないが、サンクチュアリ制度への受け入れ申込みがあったチンパンジーに関し、以下の事項を盛り込まなければならない:
(A)以下の場合を除き、前記のチンパンジーの制度受け入れに対して、長官が料金を賦課することを認める条項:
(i)(e)項による契約を交わした非営利民間主体、または、(e)(1)による下請もしくは助成を受ける個々の認定サンクチュアリ施設が、本法の施行日前に所有していたチンパンジーについては、受け入れに際し、前記の料金を賦課してはならない。
(ii)霊長類センターの運営主体が所有し、かつ、米国研究資源センター[National Center for Research Resources]が実施する、霊長類研究のための地域センター向けプログラムにもとづき、その霊長類センターに収容されているチンパンジーについては、前記の料金を賦課してはならない。
長官は、本項により徴収される全料金を制度運営費に当てることができる。その他、チンパンジーの長期的ケアのために長官が受領した全料金(前記の目的で徴収され、かつ第3条による報告書で確認される、連邦からの賦課料金すべてを含め)についても、それら料金の使用が認められた他の諸目的に加え、制度運営に当てることができる。
(B)制度の物理的収容能力;制度の財源;専門職員数を含む制度の従業員数;職員および一般公衆にとっての安全確保の必要性;受け入れたチンパンジーを(1)節による基準にしたがいケアする必要性;その他の妥当と思われる要因を考慮した場合、制度にそのチンパンジーの受け入れ能力がない場合には、長官が、前記のチンパンジーの受け入れを拒否することを認める条項。
(C)そのチンパンジーの健康および研究使用に関する完全な記録を長官が得られない場合、長官が、前記のチンパンーの受け入れを拒否することを認める条項。
(D)その他、長官が妥当と判断する基準。
(e)制度運営の請負契約
(1)全般-長官は、(g)項による資金の利用可能性に応じて、サンクチュアリ制度を運営(および妥当なら設置)し、(d)項による基準に適合する個々の有資格サンクチュアリ施設を下請けとしたり、もしくはこれらに助成することを、非営利民間主体の責任において行わせる契約を、非営利民間主体と交わさなければならない。
(2)要件-長官は、(1)節による契約を、以下の要件を満たす非営利民間主体に限り、交わすことができる:
(A)前記の主体が、(3)節にしたがって構成および指名され、長官が満足できる理事会によって統括されていること。
(B)前記の理事会の理事の任期が、(3)節にしたがっていること。
(C)理事会の理事は無報酬であること。理事は、理事会の職務を果たすために支出した旅費、食費、その他必要経費の償還を受けられるものとする。
(D)その主体が、長官が妥当と判断する要件を満たす常任理事会を開くこと。
(E)その主体が、(4)節が求める協定(非連邦拠出金に関する)を結ぶこと。
(F)その主体が、(d)項による基準の遵守に同意すること。
(G)その主体が、サンクチュアリ制度のチンパンジーについて検屍報告書を作成し、それを、生物医学または行動研究を実施する人物に、連邦職員または連邦政府から資金援助を受けている人物を優先させつつ、妥当な条件で公開することに同意すること。
(H)その他、長官が妥当と判断する要件。
(3)理事会-(2)節(A)(B)にいうところの:
(A)関係する非営利民間主体を統括する理事会は、以下の条件が満たされた場合、本節にしたがって構成および指名されたものとする。
(i)前記の理事会は、13名以内の投票権をもつ理事で構成される。
(ii)前記の理事の中に、飼育下にあるチンパンジーの管理学(霊長類の獣医学的ケアを含む)に関する専門的知識および経験をもち、前記の分野の人々を代表する組織が推薦する人物の中から指名された者が含まれる。
(iii)前記の理事の中に、動物保護の分野における専門的知識および経験をもち、前記の分野の人々を代表する組織が推薦する人物の中から指名された者が含まれる。
(iv)前記の理事の中に、動物学(行動霊長類学を含む分野における専門的知識および経験をもち、前記の分野の人々を代表する組織が推薦する人物の中から指名された者が含まれる。
(v)前記の理事の中に、非営利組織の経営管理の分野における専門的知識および経験をもち、前記の分野の人々を代表する組織が推薦する人物の中から指名された者が含まれる。
(vi)前記の理事の中に、実験動物医学の分野における認定を実施する主体の代表が含まれる。
(vii)前記の理事の中に、バイオハザード封じ込めの分野における専門的知識および経験をもつ者が含まれる。
(viii)前記の理事の中に、(ii)、(iii)、(iv)、もしくは(v)のために推薦された人物の中から指名を受け、理事長を務める理事1名が含まれる。
(ix)理事会のいずれの理事も、動物福祉法への何らかの違反を理由として、罰金を課されたり、または同意判決[和解]の文書を交付されたことがない。
(B)理事会の理事の任期は、以下の条件を満たしている場合に、本節にしたがったものとする。
(i)理事長の任期は3年とする。
(ii)最初の理事会の理事は、任意な[random]方法により、(A)に特定された6つの分野から、任期2年の理事を1名ずつ、および前記の分野から、任期3年の理事理事長以外の)を1名ずつ選ぶ。
(iii)(ii)による最初の任期の終了後に、指名された理事会の理事(理事長以外の)は任期2年とする。
(iv)任期が満了する人物を、理事に再指名することができる。
(v)理事会の理事に欠員があった場合は、最初の指名で用いられた方法によって補充する。
(vi)理事会の理事が任期を満了しなかった場合、欠員補充のため指名された人物は前任者が残した任期をその任期とする。
(4)見合い基金の要件-(2)(E)節が非営利民間主体に求める協定((1)節による契約の認定に関する)とは、サンクチュアリ制度の設立および運営のため、その主体が支出するべき費用に関し、少なくとも以下の金額の非連邦拠出金を(直接、または一般もしくは民間主体からの寄付を通じて)、現金もしくは現物の形で、妥当な限り、前記の支出に当てるというものである:
(A)サンクチュアリ制度の設立に伴う支出(長官の判断による)については、前記の費用の10パーセント((1)節による契約にもとづいて供与される連邦資金9ドルにつき1ドル)。
(B)サンクチュアリ制度の運営に伴う支出(長官の判断による)については、前記の費用の25パーセント(前記の契約にもとづいて供与される連邦資金3ドルにつき1ドル)。
(5)契約主体の設立-長官が、(2)節の要件を満たす主体が存在しないと判断した場合は、長官は、チンパンジーの健康改善・扶養および保護法の施行日から60日以内に、(1)
節に述べる目的で前記の主体を設立させるため、いずれか一つの州の法律にもとづき、前記の主体を法人化させる費用の支払いを含む、助成を行わなければならない。
(f)定義-本条において:
(1)恒久引退[permanent retirement]とは、サンクチュアリ制度に受け入れたチンパンジーに関し、(a)項により、チンパンジーに終生のケアを提供する制度、(d)項(2)により、チンパンジーの研究利用や安楽死を認めない((d)項(2)(I)の規定を除き)制度、前記の項により、チンパンジーを制度外に放出しない制度、および、前記の項により、それら以外の方法によりチンパンジーのケアを行う制度のことをいう。
(2)サンクチュアリ制度[sanctuary system]とは、(a)項に述べた制度をいう。
(3)長官[Secretary]とは、保健・社会福祉省の長官をいう。
(4)余剰チンパンジー[surplus chimpanzees]とは、この用語について(a)項で説明したものを意味する。
(g)資金の確保
(1)全般-長官は、本法による2001年およびそれ以降の会計年度ごとの予算額の一部を、(2)節にしたがい、サンクチュアリ制度を運営(および、妥当ならその設置)する目的、および、(3)節の目的で、積み立てなければならないが、ただし、長官は、前記の会計年度にわたりこのように積み立てた資金の総額が3,000万ドルに達した後は、それ以上の資金を前記の目的で積み立ててはならない。前文により積み立てた資金は、サンクチュアリ制度のための施設の建設ならびに修繕を含む支出に当てることができる。
(2)制限-ある会計年度の本法による予算額が、本法による1999会計年度の予算額と同じか、あるいはこれを上回らない限り、前記の年度は(1)節による資金の積み立てを行ってはならないものとする。
(3)その他の基準適合施設のための資金の利用-ある会計年度に、(1)節により積み立てた金額に関し、長官は、(e)項(2)の要件を満たす主体の認定にもとづき、(d)節(2)による規則にしたがうサンクチュアリ制度に適用されるのと同じ基準にしたがって、チンパンジーを引退させる施設を運営する公共または民間の主体に、助成したり、もしくは下請けをさせるため、前記の額の一部を用いることができる。前記による付与は、当該施設の運営費に当てることができる。
第3条 チンパンジーの頭数、および、チンパンジーのケアにかかる資金の確保に関する、議会への報告書
保健・社会福祉省長官は、本法の施行日から365日以内に、国立衛生研究所、食品医薬品局、その他の連邦政府機関が実施するか、または助成する研究に使用されたことがあるか、もしくは、これらの研究のために繁殖もしくは購入されたチンパンジーに関して、以下の情報を盛り込んだ報告書を議会に提出しなければならない:
(1)合衆国内で、連邦政府、州、民間主体のいずれかが所有ないし保有している前記のチンパンジーの頭数。
(2)非連邦主体による研究に、前記のチンパンジーを使用する条件として、連邦政府が課す要件の確認--
(A)その主体は、チンパンジーにケアを提供するための料金を(長期的ケアにかかる料金を含め)、連邦政府に対して支払うこと。
(B)その主体は、チンパンジーにケア提供を目的とする基本金その他の金融勘定のための資金を(長期的ケアのために提供される資金を含め)、州、地方行政体、または民間主体に対し提供すること。
(3)1999年および2000年の両会計年度に、(2)節(A)および(B)に述べた要件にしたがい、非連邦主体が支払った料金および提供した資金の全額についての会計決算。
(4)前記の料金に関し、その料金は、年度ごとの歳出予算案[annual appropriations Acts]もしくは恒常予算[permanent appropriations]にしたがって、長官(もしくは他の連邦官)が利用することが可能であったかどうかの詳記。
地球生物会議(ALIVE)資料集 海外の動物保護法【米国編】
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