実験動物福祉に関する国際動向（過去５年間）

1999.10

　ニュージーランド「動物福祉法」改正。「その種にとって利益がある」と認められない限り、人間以外の大型類人猿（チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オラウータン：４種とも国際保護動物）を研究、実験、教育での使用を禁止。

2000.11

　アメリカ合衆国、「実験用チンパンジーの保護法」成立。公衆衛生局が実施または助成した研究、およびその他の目的のために、もはや必要ないと決定されたチンパンジーのためのサンクチュアリ制度を創設。

2001.4

　経済協力開発機構（OECD）、一部毒性試験の廃止。急性経口毒性試験用LD50（実験動物の半数が死ぬ量を調べて科学薬品などの毒性を評価する実験）の廃止を決定。

2002.6

　ドイツ連邦共和国基本法（憲法）第20a条改正、「国は、将来の世代に対する責任から、生活の自然基盤と＜動物＞を保護する」と記述、動物の保護を国の責務とした。政府は、動物実験の代替法研究に対する助成金の増加を検討。

2002.12

　ヨーロッパ議会で、2009年までにＥＵ域内における化粧品の動物実験のほとんどを禁止、また世界のどの国であれ動物実験が行われた化粧品をＥＵ内で販売することを禁止する法案通過。3種類の実験に関しては代替法が開発されるまでの猶予期間が与えられ、2013年までは継続可とする。

2003.6

　スウェーデン農業省と実験動物管理局が、動物実験についての新法を決定。大型類人猿及びテナガザル９種への侵襲的実験を禁止、非侵襲的な行動学上の研究のみを許可。

2003.8

　イタリアのエミリア・ロマーニャ州で動物実験法成立。法の目的は、生きた動物の使用にたよらない革新的実験方法の普及を通じて、実験目的や他の科学的及び教育目的の使用から動物を保護する。犬と猫の実験を禁止。教育目的の実験も禁止。

2004.5　

　国際経済開発機構OECD）が動物実験代替法を採用。動物を使用しない4つの毒性試験方法をOECDテストガイドラインプログラムに採用することを決定。

2004.6

　イギリスが国立動物実験代替法センターを設立。実験動物の置き換え、苦痛の軽減、使用数の削減のための研究を促進。

2004.7

　アメリカ、マサチューセッツ州議会が、教育における動物の解剖実習選択権法を可決。現在９州が同様の州法を制定。

※類似の法律として、イタリアで1993年に動物実験に対する良心的拒否に関する法律制定。世界人権宣言、人権と基本的自由の保護のための国際協定、及び、市民権と参政権に関する国際協定によって、思想と良心と宗教の自由が認められており、その権利の行使において、良心に従ってあらゆる生物への暴力に反対する者は、動物実験に結びついたあらゆる行為に対して自己の良心的拒否を表明することができる。

国際標準化機構（ＩＳＯ）が、　ISO 10993-2:1992 規格名称　医療用器具の生物学的側面からの評価の中で、動物福祉への配慮。
Part 2: Animal welfare requirements

畜産動物福祉に関する国際動向（過去５年間）

1999.7

　欧州共同体（ＥＵ）が、採卵鶏の保護のための最低基準を定める理事会指令を制定し、鶏のケージ飼いの段階的廃止を決定。

2000.6

　欧州共同体（ＥＵ）が、世界貿易機関（WTO）農業委員会特別会合で動物福祉問題を提起。

2001.4

　国連農業食糧機関（ＦＡＯ）が、畜産動物の人道的取扱い、輸送並びに屠殺に関するガイドラインを発表。

2001.7

　コーデックス委員会（ＦＡＯ／ＷＨＯ合同の国際食品規格委員会）が、第24回総会で、有機畜産物における動物福祉のガイドラインを採択。有機認証を行う場合、各国政府はこれを採用する責務を負う。

2003.8

　イギリス政府が、動物福祉の「将来の展望」を公表。環境食糧農村事業省（DEFRA）の報告書では、2002年立ち入り調査を行った農場の28パーセントが動物福祉法の規定に違反。環境食糧相は、将来的には畜産動物を飼養するための免許制導入の可能性を示唆。

2003.11

　欧州評議会が、国際輸送における輸送中の動物の保護に関する欧州協定を制定。

2004.6

　国際獣疫事務局（OIE）が、パリで開かれた年次総会で、動物福祉の原則を採択し、ガイドラインを公表。この中で、畜産動物の福祉に関する「５つの自由」、動物実験における「３Ｒの原則」を明示。