2000年10月19日に米国で「大型類人猿保全法（2000）」が成立しました。大型類人猿は、チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、オランウータン、テナガザルの５種で、人類に最も近い霊長類です。国内外を問わず絶滅のおそれのあるこれらの種を守る活動に広く財政的支援を行うという、画期的な法律です。抜粋して紹介いたします。
［名称］
大型類人猿の生息域内にある諸国における保全プログラム、ならびに、大型類人猿保全に関する専門知識をもつことが証明されている人物によるプロジェクトに対する、支援および財源の提供を通じて、大型類人猿の保全を援助する法律。略称「大型類人猿保全法（2000）」。
第2条 所見および目的
（a）議会の所見－
（1）大型類人猿の個体群減少は、野生における長期的な種の生存が深刻に脅かされる地点に達している。
（2）チンパンジー、ゴリラ、ボノボ、オランウータン、テナガザルは、「絶滅のおそれのある種法（1973）」第4条のもとで、また「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」（CITES）の付属書Iにおいて、絶滅のおそれのある種に指定されている。
（3）今日まで利用可能であった資源は、人間の侵入と伐採による生息地の持続的減少と、その帰結としての大型類人猿の個体群減少に対処するには不十分である。
（4）大型類人猿は、彼らのすむ熱帯林生息地の旗艦種［flagsip species］であり、大型類人猿を保全することは、他の多くの絶滅のおそれのある種を含めた多数の野生動物種にとっても利益をもたらす。
（5）大型類人猿にとっての脅威は、生息地の減少以外に、個体群の分断、野生動物肉取引のための狩猟、生体の捕獲、および新たに発生したり持ち込まれた疾病への暴露がある。
（6）大型類人猿は、彼らが生息する生態系の重要要素であり、その野生個体群の研究からは重要な生物学的洞察がもたらされてきた。
（7）熱帯林の動物は、長い間、人間の生存のための持続的レベルでの狩猟の対象にされてきたが、熱帯林にすむ種の商業取引が急増したことから、これらの種の将来は脅かされている。
（8）野生大型類人猿の個体群の長期的生存能力への脅威に対し、その削減、除去、その他有効な方策をとるためには、大型類人猿の生息域が国境内にある諸国と、合衆国ならびにその他の国々、および民間部門との間での協同的な関与と努力が必要である。
（b）法の目的－
（1）野生大型類人猿の生存能力ある個体群を維持すること、
（2）大型類人猿の個体群が生息している諸国における大型類人猿保全プログラムへの支援、ならびにCITES事務局に対する支援を通して、大型類人猿の保全および保護を援助する。
第3条 定義
（2）保全［CONSERVATION］とは、
（A）ある種の生存可能な個体群の消滅を防ぎ、維持するために必要な方法ならびに手続きの使用、
（B）野生動物の管理にかかわる、以下にあげるようなあらゆる活動を含めたもの、をいう：
（i）生息地の保全、保護、回復、取得および管理。
（ii）個体群ならびに生息地の現地における調査およびモニタリング。
（iii）管理生息区域の管理計画の開発、実施および改善に対する援助。
（iv）CITESの執行および履行。
（v）資源管理に関する国内法の執行および履行。
（vi）違法取引から救出された生きた動物個体のためのサンクチュアリの開発と運営。
（vii）大型類人猿の違法な殺しを禁じ、阻止するための地元の法執行官の訓練。
（viii）野生動物の個体に対するリハビリテーション、ならびに、既存の野生生物の個体群を追い出したり、持ち込んだ疾病でこれらを脅かすことのない方法による、これらの個体を野生に復帰させるためのプログラム。
（ix）紛争解決のためのイニシアチブ。
（x）コミュニティ内での援助および教育。
（xi）コミュニティによる保全プログラム実施能力の強化。
●資金援助－長官は、申請を承認した大型類人猿保全プロジェクトに対し、基金が利用可能な限り、財政的支援を行う。
●情報公開－節に定める報告書、および、本法のもとで財政的援助を受けるプロジェクトのその他の関連文書は、一般公衆に公開しなければならない。
●飼育繁殖の制限－
（1）野生復帰のための飼育繁殖を除いて、大型類人猿の飼育繁殖に使用してはならない。
（2）飼育繁殖のための使用は、その種にとってそれ以外に生物学的に実施可能な保全方法がない場合に限定する。
●専門部会－長官は2年ごとに専門部会を召集する。
●予算承認－2001から2005会計年度までの間、毎年500万ドルを当基金に拠出する予算を承認する。
地球生物会議（ALIVE)資料集 海外の動物保護法【米国編】
ALIVEの紹介 