第２１回動物の愛護管理のあり方検討小委員会
「実験動物の福祉」についてのヒアリング

実験関係者へのヒアリングとアンケート結果

---

　
■鍵山氏の意見の要旨

　　・３R原則の実効は、2006年体制の遵守と実験動物・動物実験の自主管理で着実に向上している。
　　・法規制の強化により、科学技術、生命科学研究、先端医療が大幅に遅延の懸念がある。
　　・届出・登録制は、関連府省の協議を経て構築された自主管理の仕組みを反故にする。

　　⇒これに関するALIVEのコメントはこちら

■祖父江氏の意見の要旨

　　・動物実験によって基礎医学の研究がおこなわれる。
　　・難病の治療の開発のために動物実験は必要。規制は好ましくないという印象。

　　【動物実験に関する小委員会】　　委員長：名古屋大学　祖父江元　医学部長
　　http://www.chnmsj.jp/syouiinkai%20katudoujoukyou.html

H21.8.7	委員会開催（動物実験センターの必要性、動物実験に関する施設整備の方向性について他）
H22.1.15	動物実験施設及び動物実験に関する教育研究設備の整備・改修に関する要望書を提出
H22.8.27	委員会開催（動物愛護法改正に関する要望書について）
H22.10.29	動物の愛護及び管理に関する法律の見直しに関する要望書を提出

 

 

 

■文部科学省による動物実験施設の調査結果の報告

　文部科学省は、所轄の大学、研究機関等にアンケートを実施し、その結果を「研究機関等における動物実験に係る体制整備の状況等に関する調査結果について」として報告しました。これは文科省のサイトにも掲載されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/09/1311589.htm

⇒文科省のアンケート調査結果の内容はこちら

■資料：環境省による動物実験施設の調査結果の報告

　環境省は、製薬会社、化粧品会社などについて、アンケートを実施し、その結果を公表しています。
環境省実施「実験動物の適切な取扱」アンケート調査概要
http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-21/mat01-7.pdf

⇒環境省のアンケート調査結果の内容はこちら

---

�@３R原則の実効は、2006年体制の遵守と実験動物・動物実験の自主管理で着実に向上している。
�A法規制の強化により、科学技術、生命科学研究、先端医療が大幅に遅延の懸念がある。
�B届出・登録制は、関連府省の協議を経て構築された自主管理の仕組みを反故（ほご）にする。

　要するに、実験動物の繁殖販売と動物実験の実施は、「自主管理」でやりたい、行政や市民には情報は公開する必要はなく、関与されたくもない、ということです。

　しかし、�@の「2006年体制」とは、そもそも何でしょうか。1999年の動物愛護法の改正の際に、40万人を超える署名が国会に提出されましたが、その中には動物実験の法規制と第三者による監視制度の設立を求める条項が含まれていました。1999年の改正では、動物虐待の対策強化を主として、動物実験については次の法改正で再度議論されることになりました。その後、2005年の再改正において、国際的にみても先進国で動物実験にいかなる法規制もない日本の状況を変える必要があることを多くの議員が認識し、その結果として３Ｒの概念が明記されました。また、実験動物施設の届出制も検討されていましたが、鍵山さんたち実験者（利害関係者）の反対により、また次の５年後の法改正で議論することになったわけです。
　従って「2006年体制」とは、実験動物の福祉や３Ｒを求める世論によって、実験者たちが自己防衛のために作った体制です。そもそもは、動愛法改正の動きがなければ、このような体制さえ作られなかったわけですから、きちんとした自主管理ができてきたとすれば、法改正にむしろ感謝すべきことでしょう。
　動物実験を自主管理していることは、それはそれで結構ですが、残念ながらそれを広く市民に証明できないという問題は、いつまでも解決できません。

　�A 次の「法規制の強化により、科学技術、生命科学研究、先端医療が大幅に遅延」とは、あまりに突拍子もない意見です。そもそも環境省が所管する動物愛護法は、動物実験を規制する法律ではなく、実験動物の福祉を所管する法律だという考え方が国から示されており、その縦割りが続く限り動物愛護法で動物実験を規制することはできないのです。
　実験動物の福祉を法的に向上させると、「科学技術、生命科学研究、先端医療が大幅に遅延」というのであれば、実験動物の福祉を法律で定めている欧米諸国の研究はみな著しく停滞しているはずです。しかし、現実には実験動物の福祉なくして、適正な動物実験は不可能というのが国際的な合意であり、それ故に各国はそれを法律に明記しています。
　科学研究はグローバルなものであり、普遍的なものです。あまりに非論理的な意見は、かえって科学研究の信用性を失墜させるものとなります。

　�B 最後の「届出・登録制は、関連府省の協議を経て構築された自主管理の仕組みを反故にする」とは、これも科学者らしからぬ論理の飛躍です。いわゆる自主管理は、実験者たちが法規制を回避するために内輪で評価しあう第三者認証制度の構築等を中心に行ってきたもので、その実態は一般社会からは何も見えません。
　 日本の現状は、動物実験の規制云々以前に、動物実験の実態把握さえできない、全くの放任状態であることが問題なのです。動物実験を法規制するかしないかといった本質的な議論以前に、まずはクリアしなければならない問題を論じているのです。

　このようにあまりに論理が飛躍した、突拍子もない意見に、実験研究者たちが賛同しているのだとすると、彼らは本当に科学者と言えるのか疑問を覚えます。動物実験のデータを作るときも、勝手にこじつけて、好き勝手な結論を導き出しているのではないか、それが実験研究者たちの習性となっているのではないか、と疑わざるを得ません。

■文科省実施「研究機関等における動物実験に係る体制整備の状況等に関する調査結果」の内容

　アンケート結果
　http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/09/1311589.htm

　本調査のためのアンケートの送付先は、国公私立大学長、国公私立短期大学長、国公私立短期大学部長、大学共同利用機関法人機構長、国公私立高等専門学校長、国立教育政策研究所長、科学技術政策研究所長、文部科学省所管の独立行政法人の長、関係の特例民法法人の長で、合計1,656機関、回収率は100％でした。
　この中で、実際に動物実験を行っていたのは、426機関（全体の約26％）でした。（複数の実験施設があっても１機関としている）
　文部科学省では今回初めて動物実験をしている機関数について調査をしたことになります。

　アンケートの結果は、
　　�@ 基本指針に基づき、機関内規定を策定している機関　92％
　　�A基本指針に基づき、動物実験委員会を設置している機関　91％
　　�B基本指針に基づき、研究機関等の長による動物実験計画の承認又は却下を実施している
　　　 機関　89％

　これについて、実際に文科省の指針に対応していない機関は、この１０月末までに対応すること、それまでは動物実験をしてはならない、と通知しています。

■環境省実施「実験動物の適正な取扱 アンケート調査結果」の内容

　アンケート結果
　http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-21/mat01-7.pdf

　環境省は、製薬会社、化粧品会社等にアンケートを行いました。アンケートの送付先は、実験施設を有する団体（約3,807 団体）で、内訳は、国立・公立研究所（5）、独立行政法人研究所（17）、公益法人研究所（22）、製薬関係会社（123）、医療機器関係会社（73）、化粧品関係会社（420）、食品・食品添加物関係会社（213）、動物生産関係会社（11）、検査・分析等関係会社（27）、その他（72）、不明（9）。
有効回答数は、わずか992 件（26％）にすぎませんでした。

　注目すべきは、化粧品関係会社で、420社中「自らの施設で動物実験等を実施しているは1.7％、「外部発注にて動物実験等を実施している」は4.5％、「動物実験をしていない」は93.8％、という数字です。これによると自社及び外部委託で動物実験をしている化粧品会社は、26社です。

　一方、製薬関係会社は、123社しか回答していません。製薬関係会社がわずか123社ということはありえず、少なくともこの数倍はあると推定されます。
　回答してきた123社中、自社及び外部委託で動物実験をしているのは73社です。
　ちなみに、医薬品の流通販売には厚生労働大臣による製造販売承認が必要であり、また薬局など販売の場所については都道府県知事の許可が必要とされていますが、医薬品の開発にあたる動物実験施設などについては何の規制もありません。そのため、製薬会社の実験動物施設についてはいくつあるのか誰も知らないという状態になっています。
　製薬会社は、社会に対してもっと情報公開を行う必要があるでしょうし、制度的には届出制ないし登録制を設けることで、その根拠ができることになるでしょう。