【委員に送付したALIVE作成資料集】
１、 全国自治体の動物愛護管理推進計画における実験動物福祉への取り組み
環境省の動物愛護管理基本指針に基づき、都道府県の動物愛護管理推進計画では、３Ｒの推進や実験動物の飼養保管基準の周知を図ることが求められている。そのためにはどこにどのような施設があるか実態を把握しなければならないが、現状では施設の登録制がないためアンケート等で把握に努めるしかないという状況にある。
阪神大震災に続き、東日本大震災でも、実験施設が損壊したり、停電や断水等により死んだり、適正な管理ができなくなったりした実験動物も多数あると推定されるが、そのような状況を自治体が把握する術がないのが大きな問題である。
本資料集では、各自治体における計画の中で実験動物福祉がどのように記述されているかを調査した。
２、 行政による実験動物施設の実態把握－静岡県を例として
静岡県では長年、実験動物施設を行政が訪問して、３Ｒの実施状況、施設の規準の遵守状況、危害防止、緊急時の対策、人と動物の共通感染症の対策、記録管理の保持、殺処分の方法等、動物愛護法に基づく動物の適正管理に関する状況を調査している。
動愛法の遵守及び地域住民の安全等の観点から、自治体がやるべきことを実施している例である。
３、 条例に基づく実験動物施設の実態把握の例－兵庫県を実例として
兵庫県では、平成６年に条例で実験動物施設を届出制とした。これは自治体から多数の犬猫が実験用に払い下げられていたことから、行政として払い下げ先を監視する必要があり、届出制にしたと言われている。動物愛護法改正の前の条例であるので、３Ｒの実施状況などについては、届出の対象に含まれていない。しかし、実際に実験動物施設を把握し、その情報が公開されるとういう意味で、先駆的な実例である。
４、 動物実験に関するインターネット上での情報開示度調査
平成18年に文部科学省、厚生労働省、農林水産省が、動物実験指針を制定し、その中で情報公開を行うことを定めた。
文部科学省の指針では、開示すべき情報の例として、機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等が挙げられている。指針の制定後５年を経て一般社会への情報公開がどのていど行われているか、調査したものである。
動物愛護法で定めている３Ｒのうち、「苦痛の軽減措置」は実験者の義務であるにもかかわらず、大部分の大学がこれを公開していない。その他、多くの観点で、情報公開がなされているとは言い難い状況である。
いわゆる自主管理では、実験施設の社会的責任を果たせていない、と言うことができる。
【委員会に提出した資料】
１、 国内の動物実験施設において動物福祉・管理上の問題があった例
動物実験施設で起こっている問題については、ほとんど外部に知られることがないが、その一端がメディアで報じられる。また、遺伝子組み動物の取扱いについては法規制があるために、しばしば違反行為が発覚し、所轄官庁から厳重注意を受けている。しかし、それはあくまでもカルタヘナ法上の問題として扱われているのであって、現行法では動物福祉上の問題として対処することができない。また、表に出る例は氷山の一角とみられる。
２、 京都大学霊長類研究所におけるニホンザルの大量感染症死亡についての記事
実験動物はマウスやラットばかりでなく、野生由来のニホンザルも使用される。霊長類研究所で未知の感染症が発生して多数のサルが死亡していたが、当会による情報開示請求が行われるまで、この事実は明らかにされていなかった。外部からのチェックがなければ、大きな問題も隠されたままである。
３、 動物実験の法規制：日本と諸外国との比較
諸外国では、動物実験について法規制が行われているが、世界の先進国と自称する日本のみはいかなる法規制も存在しない。ガイドラインや自主規制は法規制とは異なる。
４、 ＥＵにおける実験動物使用数
ＥＵでは、動物実験施設は認可または登録制で、実験の目的や動物の使用数は報告義務があり、公開される。使用数が把握できることにより、初めて３Ｒの中の「使用数の削減」が意味を持つことになる。
５、 主要国における動物実験の法規制
文科省が2006年に動物実験指針を策定する際に、諸外国の費う規制の状況を調査したときの資料。
６、 ＥＵの改正実験動物福祉法2010
2010年に大改正されたＥＵの実験動物福祉法（指令）の要旨を翻訳した資料。指令には、各国政府が国内法を制定するべき法的拘束力がある。
７、アメリカ動物福祉法における実験動物規制
アメリカ連邦動物福祉法は、実験動物施設を登録制とし、年に１度の査察を行うことを定めている。その登録の状況、及び実際の査察がどのように行われているか、また、未登録の施設のチェックや違法行為の発見等についての状況が米国農務省のホームページに公開されているので、それを紹介したもの。
８、ＯＩＥ陸生動物コード「研究及び教育における動物の利用」
ＯＩＥは国境を超える動物感染症などの対策を取る国際機関で、動物の健康と福祉を確保する飼育管理の規約を定めている。2010年に研究と教育における動物使用について国際規約を定めた。加盟国はこれを遵守するか、国内法を定めることが求められている。
実験動物施設の登録制や施設の査察は、当然の前提として要求されている。
日本はＯＩＥのアジア地区代表国であり、他国の遅れを引き上げていくべき立場にあるが、動物実験については何の法規制もない。韓国では登録制も外部査察もすでに法制化されている。
９、「研究及び教育における動物の利用」（仮訳）
農水省のＨＰにも掲載されている。
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