動物愛護管理法の改正、議員立法で検討中
今季通常国会で改正の見込み
ALIVE NEWS 2012.2.27
動物愛護管理法の施行後５年を経て、法改正作業が進んでいます。
これまでの経過を簡単にお知らせいたします。
■環境省「動物愛護管理のあり方検討小委員会」での議論
2010年8月に、環境省中央環境審議会動物愛護部会の中に、「動物愛護管理のあり方検討小委員会」が設置され、2011年12月までに25回に及ぶ委員会が開催されました。その議事録は発言者の氏名も発言内容もすべて公開されていますので、どのようなことが議論されてきたか、ご覧下さい。
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http://www.env.go.jp/council/14animal/yoshi14-03.html
25回の委員会のうち、16回までは動物取扱業の規制に関する議論で、本改正の大きなテーマの一つとなっていました。2011年7月から8月にかけて、動物取扱業の規制に関するパブリックコメントが行われ、全国から12万件に及ぶ意見が寄せられ、大きな社会的関心事であることが明らかとなりました。
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http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-23.html
その後、動物虐待、多頭飼育、特定動物、実験動物、産業動物、自治体の犬猫の引取り、収容施設、災害時の動物救護対策等のさまざまな課題についての議論が行われ、11月から12月にかけて、２回目のパブリックコメントが実施されました。
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http://www.env.go.jp/council/14animal/y143-25.html
そして12月21日に、これらの議論を取りまとめた小委員会報告書「動物愛護管理のあり方検討報告書 」が出されました。
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http://www.env.go.jp/council/14animal/r143-01.pdf
■法改正は議員立法となる
上記のように環境省の審議会で検討する方法は、内閣提案の法律（閣法）ですが、小委員会でその議論が分かれ、合意できなかった事項がいくつかありました。
その大きなものが、幼齢個体の販売規制（生後８週齢を経なければ親兄弟から引き離してはならない）です。ペットの小売業界は、幼くてかわいいうちに売らないと業界が大きな不利益を被ると主張しています。これに対して動物福祉側は、８週齢未満では心身の健全な発達が望めず、飼い主が悩まされることになる、諸外国ではすべて法令で８週齢以上と定めている等と主張しています。
もう一つが、実験動物の福祉に関する事項で、動物実験者側は、動物愛護法で動物実験を規制すると医学の進歩が阻害され難病の患者が苦しむなどと、とんでもなく飛躍した三段論法を主張。これに対して動物福祉側は、動物愛護法は動物実験という行為を規制するものではなく、実験動物の福祉を確保するものであって、実験動物福祉は国際社会の普遍的基準であり、諸外国と比べていかなる法規制もない日本の現状は異常だ等と主張。議論はかみ合いませんでした。
このように委員会で合意形成ができなかったことから、選挙で選ばれた国会議員の政治的判断に委ねられることとなり、法改正は議員立法で行われることとなりました。
■各党の動き
議員立法は、最終的に超党派で協議し成立するものですので、現在、各党が法改正の課題について検討を行っているところです。
与党民主党は、環境部門・動物愛護対策ワーキングチーム（ＷＴ）を設置し、２月から毎週ヒアリングを開催して、関係各方面の意見を聴取しています。
自民党では、動物愛護議員連盟の中でヒアリングや検討を重ねており、提言が党の環境部会に提出される見込みです。
公明党でも環境部会・動物愛護管理推進委員会でヒアリングや検討を重ねているところです。
おそらく与党民主党では、今月中にヒアリング等を終え、３月からは法案の骨子や、法令事項、政省令事項等への切り分けなどの細かい検討作業が行われるものと思われます。
■闇の中の実験動物に光はさすか
２月15日に行われた民主党WTでは、実験動物関係と動物愛護法全般に関するヒアリングが行われ、実験に関しては以下の４名が意見を述べました。
研究者の方々は、日本は米国の制度にならって完全に「自主規制」しているので何の問題もないと主張し、米国の制度と称するものを資料として提出しました。しかし、その資料は完全な誤解か意図的なすり替えで作られたものでした。実際には、米国連邦動物福祉法では動物実験施設は登録制であり、外部からの監視制度があります。そして、その監視は年々強化
されています。違反事例は国のホームページで公開されています。
実験者たちの主張は、これが科学者の思考方法かと疑問を感じさせるものです。普段から、動物実験の結果を大げさに｢自己評価」している習性のなせるわざかもしれません。
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サル死亡でハーバード研究所を捜査
2012.2.3 05:00 Sankei.biz
昨年１０月に研究所でサルが死亡した件について、ハーバード大学 医学部ニューイングランド霊長類研究所（ＮＥＰＲＣ）が米農務省の取り調べを受けている。この事件には、研究機関における霊長類の使用
拡大と動物保護法の強化を目指す政府当局の取り組みの双方が反映されている。
農務省の広報担当、アリン・キール氏は、大学の研究室からサーカス団や犬のブリーダーまで、動物の飼い主に対して同省が昨年行った法令違反の調査が８３９件に上ったと述べた。さらに、毎年多数の動物が事故や実験、自然死により研究室で死亡しているという。
昨年７月には製薬会社ブリストル・マイヤーズ・スクイブの研究室でサルが洗浄機の中で死亡しているのが見つかり、その後、農務省の調査が強化された。
２００９年にはサルの死亡に関してワシントン大学の霊長類研究所が１万８９３ドル（約８３万円）の罰金を科されている。
１月に発表された農務省１１年１２月の報告書によると、ＮＥＰＲＣの事件は画像検査前にケージから脱走したサルを手持ち網で捕獲し、画像検査を行ったところ、検査後にサルが死亡したというもの。報告書に死因は記されていない。
ハーバード大学医学部の広報担当、デイビッド・キャメロン氏はブルームバーグ・ニュースの取材に対し「農務省の調査結果を深刻に受け止め、このような事態を招いたことを大変遺憾に思う」と述べた。
米動物保護法は「精神的外傷」や興奮、身体的危害、「行動ストレスまたは無用な不快感」を避けるため、研究動物を可能な限り「慎重に」扱うことを研究室に義務付けている。同法施行のため、米農務省は毎年国内約１１００カ所の大学や民間研究所に対し、調査を行っている。
(略）
農務省によると、動物保護法違反が確定した場合、ＮＥＰＲＣには最大で１万ドルの罰金が科される恐れがあるという。
（ブルームバーグ Ｐａｔｒｉｃｋ Ｃｏｌｅ）
【米国】動物福祉法・実験動物条項・要旨
1966年制定 アメリカ合衆国・連邦法
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http://www.alive-net.net/law/kaigai/wlaw-USA-J.html
地球生物会議ALIVEでは、海外の動物保護法を翻訳していますので、全文を読むことができます。
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http://www.alive-net.net/material/materialbook/index.html
なお、動物実験の法制度改善を求めるネットワークのサイトにも詳細が掲載されています。
日米の法規制比較表と条文比較表
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http://homepage2.nifty.com/jikken-houseido/nichibei-hikaku.htm
今回の改正で、実験動物施設の登録制、３Ｒの義務化が実現しなければ、実験動物の世界は闇のままにまたもや放置されたままとなるでしょう。
日本人の良心が問われる問題の一つです。
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