動物愛護管理推進計画パブリックコメント
各都道府県が策定する動物愛護管理推進計画の改定案に意見を! ALIVEの指摘ポイントと意見提出先一覧
今般の動物愛護管理法の改正に即し、昨年「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(基本指針)」の一部見直しが行われました。
この基本指針は、行政の基本的な方向性及び中長期的な目標を明確化する重要なものであり、昨年行われたパブリックコメントの際には、動物愛護管理法の実効性確保を主眼に置いた取組み施策と問題本質に対応した普及啓発事業への転換が図られるよう当会からも意見を提出しています。
動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の一部を
改正する件等の公布及び意見募集(パブリックコメント)の結果について(お知らせ)
基本指針に対して多くの意見が寄せられましたが、僅かな修文がなされたのみで、特に「動物との触れ合い事業の推進に当たっては…」という文言が突如として盛込まれた背景に大きな疑問を残しつつ、環境省は基本指針の最終改正を告示しました。
これを受けて、都道府県では地域の実情に合わせた今後10年間の動物の愛護及び管理に関する施策を推進するための「動物愛護管理推進計画」の修正作業に入りました。早いところでは、昨年末から改定案が公開され、今年に入ってからは更に多くの都道府県で意見募集(パブリックコメント)が行われています。
ALIVEでは、毎年実施している全国動物行政アンケートの分析結果はもとより、必要に応じて事情精通者にヒアリングを行うなどして、これまでに複数の都道府県に意見を提出してまいりました。
実現困難な理想論を押付けるのではなく、予防原則の観点から所有者責務(所有者明示、逸走防止)と適正飼養の知識習得(習性理解、しつけ、繁殖制限等)など、問題の本質に対応した普及啓発事業の取り組みを提案し、時には「飼わない選択」についても伝えるべきとしています。
また、動物愛護センター・保健所に捕獲・持ち込まれた所有者不明犬の半数近くは迷子の犬であり、中には年間500頭以上の迷子犬の一時収容を余儀なくされている地方公共団体があります。これらの迷子頭数を着実に減らしていく取組みや普及啓発に力を入れることで収容動物の生活の質(QOL)向上にも寄与し、行政職員の業務量(現場捕獲、保健所・警察署からの引取り、飼養管理、返還対応等)も軽減すれば、動物取扱業者への定期的な立入りも不可能ではなく、改正動愛法の実効性確保にもつながっていくものと考えます。(申請・更新時以外の立入りを行っておらず、5年に1回の行政もあります。)
また、基本指針において施策別の取組課題となっている実験動物・産業動物について、多くの都道府県では飼養保管基準の周知のみしか触れられていませんが、ALIVEでは一歩進んだ飼養環境等の実態把握を進めていくことを求めています。
これまでに公開された改定案における取組施策全体にみられる傾向として、幼い子どもを対象とした小動物ふれあい出張教室等、ともするとペットの飼育意向層を広げるだけになりかねない施策に注力されていることが見受けられます。しかし、その内容と実施対象層からみて動物愛護精神の高揚や飼い主の資質向上に結び付いているとは言い難く、他項目とのバランスも欠いていると言わざるを得ません。
さらに、社会福祉施設等に向けた動物介在活動事業の推進を打ち出して関係業界・団体等と連携を図っている動物愛護管理行政もありますが、今般の動物愛護管理法の一部改正に伴う政省令項目の改正作業過程において行政職員の業務過多を懸念する声があったことも関係して、犬猫以外の動物を護る規制強化が見送られてきた経緯を鑑みると、取り組みの優先順位として適切であるのかという疑問も生じます。
折しも平成26年2月、異業種交流による新たなペットビジネスチャンス創出に注力する大規模ペットイベントが開催したビジネスフォーラムでは、少子高齢化社会がもたらすペット飼養世帯減少を懸念する各業界のブレーンが様々な戦略を打ち出していました。政治・行政方面へのはたらきかけをはじめ、幼い子どもがいるご家庭、高齢者にペットを飼わせるために様々な効用を謳った販売促進の提案がなされていましたが、私達が動物愛護管理推進計画の改定案にしっかりと目を通し、利害関係者・法人等の意向を強く反映していると思われるような中立公平性を欠いた施策に対しては、修正を求めていく必要があります。きちんと見ている人がいるのだと伝える意味においても、ぜひ皆様からも意見をお送りください。(ALIVEの指摘ポイントには全項目について細かく解説していますが、特に気になる項目、要点だけでもかまいません)
● ALIVEの指摘ポイント ●
【普及啓発 ①動物愛護週間行事】動物フェスティバルに「ふれあい広場」企画は不適切
動物愛護管理法第4条において、動物愛護週間の趣旨は「ひろく国民の間に命あるものである動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるようにするため、動物愛護週間を設ける」と定められています。さらに第3項には、「国及び地方公共団体は、動物愛護週間には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるように努めなければならない」と明記されています。
しかし、移動動物園業者などを手配して「動物ふれあい広場」等、法の趣旨にそぐわない企画を実施している場合も少なくなくありません。昨年当会が行った現地調査では、複数の行事で移動動物園業者が使われており、なかには地方獣医師会からの強い要請があったとして無登録業者が出展していたフェスティバルもあり、いずれも不適切な動物の取り扱いが見受けられました。
ウサギやモルモット、ヒヨコなどの触れ合いに不向きな動物を対不特定多数に触らせ、移動(振動・騒音等)によるストレスに晒すことは動物福祉の観点からも問題であり、普及啓発の場としても適切とはいえないため、動物愛護管理法が定める動物愛護週間の趣旨に相応しい催しを企画してもらえるよう伝えていく必要があります。
【普及啓発 ②動物ふれあい事業】動物ふれあい教室よりも問題の本質に対応した普及啓発を
複数の都道府県において、幼稚園・小学校低学年の幼い子ども達を対象にうさぎやモルモットなどを抱かせる「動物ふれあい教室事業」の拡充検討が記載されています。移動ストレスに弱い動物を連れて学校訪問し、怯えて不動状態に陥っている動物を触らせるような内容を動物愛護教育とするのでは、その種に対する間違った理解や関係性を教えてしまうことになったり、動物に対する配慮が欠けてしまうおそれがあります。
これらの実施目的には、「動物愛護思想を育む」「動物との触れ合いを通じて、その温かさや命の大切さを学ぶ」等が謳われていますが、ともに暮らしてきた犬や猫を様々な理由で行政に持ち込んでいるのは「動物との触れ合いを通じて、その温かさ」を知っていたはずの飼い主であり、犬の習性や行動ニーズ等に対する理解不足、猫の繁殖制限措置、高齢者の飼育困難といった問題が置き去りになっているともいえます。
大人においても、可愛い、温かい、と感じて動物を好きになったり飼ったりすることと「動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境確保を行い、終生適切に飼養すること」が一致していない現状がある中で、飼育本も読めない年齢の子どもに「適正飼養」「終生飼育」を学んでもらうことが困難であるのは発達段階を踏まえても明らかであり、動物愛護管理推進計画について定めた動物愛護管理法第6条第3項、「動物の愛護と管理に関する普及啓発に関する事項」に即した普及啓発活動となるよう見直しを求める必要があります。
また、殆どの動物愛護センターは犬猫以外の再飼養支援は行っていないため、うさぎやモルモット等を触れ合いに供しても収容動物の譲渡推進には結び付かず、むしろ薄利多売型のペットショップ等からの生体購入動機につながるおそれがあることからやめていくべきであり、このような効果検証が困難な普及啓発事業に充てる人的資源と予算があるのであれば、地域猫活動への理解・啓発事業も可能であるはずです。
どうしても動物を用いたふれあいを実施するという場合は、こうした活動にストレスを受けにくい性質の犬など(ストレスを受けた場合もその兆候が行動学的に見極めやすい動物種)に限定すべきですが、命の大切さを学ぶことが目的であるならば動物を使わずとも可能です。幼い子どもを対象とした場当たり的な動物ふれあいよりも、高学年を対象とした動物愛護教育(殺処分の現状や適正飼養の知識習得)、模範飼い主を育成する「しつけ方教室」の拡充を図るほうが殺処分を減らす取り組みとしても有効であり、かつ法の趣旨にもかなっています。
なお、残虐な動物虐待事件などを理由に「動物とのふれあい教室」を取組施策にあげている動物行政もありますが、事件を起こした当事者は精神的な問題を根底に抱えているケースが多いと言われており、単に動物が嫌いであるとか動物への思いやりが欠けているといった問題だけではないことから、あたかも動物とのふれあいによって虐待問題を解決できるかのような文言を改定案中に記載している場合は問題の見極めを誤らせるもとになると指摘していく必要があります。
【普及啓発 ③学校飼育動物の現状と課題】管理者に改正動物愛護管理法・関係法令の周知を
① 動物愛護管理法ならびに「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」に適合していない、不適切な環境で動物を飼養している学校に対しては、法的権限がない獣医師会にその対応を委ねるのではなく、地域を所管する動物愛護管理行政が訪問するなどして指導すべきです。
② 災害時における飼養及び保管上の配慮に関する規定等が追加されたことについて、学校長等の管理者に周知徹底を図ることを明記すべきです。
③ 学校等の教育施設ではうさぎ等の疾病兆候が見逃されやすいことから、オスだけでなくメスも不妊去勢措置が必要である旨周知していくべきです。
十分な飼育予算がない、空調管理が不可能、日々の世話(通院・介護等)を行う人材の確保が容易ではないといった現状を鑑みれば、学校において動物の快適性を維持し終生適切に飼養保管することは極めて困難であり、動物の生理学的適温領域や習性等が子ども達に理解されず間違った認識が広がっている可能性が高いといえます。連携獣医師がいても小型哺乳類の治療を不得手とする場合も多く、獣医師会等が教職員等を対象とした研修会を定期的に開催してはいても、「動物とのふれあいを通じて子供たちの動物愛護精心を育てる」というような抜本的改善にならない方針をとっているために飼育動物の福祉は置き去りにされており、防寒・暑熱対策がとられていない小学校等で飼い殺しにされている飼育動物が後を絶たないのが現状となっています。
学校が動物を飼育しなくなることを懸念して動物愛護管理法の周知を行っていない場合も少なくなく、改正動物愛護管理法の周知、特に災害時の飼養及び保管上の配慮に関する規定等が追加されたことについて学校長等管理者に周知を図ると改定案に記載しているのは現在たった1県しかないため、指摘していく必要があります。
【家庭動物 ①行政収容動物】 動物収容施設の福祉向上・殺処分方法等、動物の苦痛への配慮を
改定案に殺処分数の削減目標を掲げている都道府県は複数ありますが、それに伴い収容動物への福祉的配慮(収容施設の福祉向上と苦痛の少ない致死処分方法)が求められています。
① 動物に優しい施設への転換を
行政の動物収容施設の多くは収容動物の健康と安全に配慮し生かすことを目的として設置されたものではないことから、空調設備もない、防寒・暑熱対策も施されていない旧態依然とした施設が散見され、収容中に死亡してしまう犬猫が少なくないことがわかっています。
今後、各都道府県が掲げる殺処分数削減目標や返還・譲渡の推進に伴い、所有者不明の犬猫をこれまでより長い期間、動物収容施設に保管していくことも考えられますが、単に生かしておくだけならば不快や苦痛を感じる期間が延びるだけになりかねません。
殺処分数を減らし、真に「人と動物の共生する社会」を目指していくためには、市民への普及啓発の拠点となる収容施設における動物の生活の質(QOL)にも目を向けていくべきであり、防寒暑熱対策をはじめ、動物福祉に配慮した施設へと転換することで、収容中死亡数を減らす取組が必要です。
② 麻酔薬投与等による苦痛のない致死処分を
動物の殺処分方法として、多くの地方公共団体において事前麻酔なしのガス室という方法が採用されています。しかし、炭酸ガスでの殺処分は、動物が覚醒下で低酸素状態に陥るか、または麻酔効果が現れたとしても安楽な麻酔状態ではないという研究結果が存在していますので、この処分方法を今後再検討し、動物の恐怖や苦痛に配慮した麻酔薬投与等による致死処分への転換が求められています。
【家庭動物 ②地域猫対策】所有者のいない猫への対策強化を
全国的に所有者不明の猫が産む子猫の収容数・殺処分数の多さが問題となっていますが、各都道府県において所有者不明の猫の引取り頭数を減らしていくためには、地域猫活動(TNR活動含む)の推進・支援体制の構築が必要です。行政が地域猫活動等の推進・支援体制を敷いていくことで、活動者の資質向上、現場の実態把握、地域住民への理解も進み、「所有者不明の猫をなくしていく活動」という共通理解が得られるなど協働がスムーズになるという声もあります。
さらに、今現在多くの地域猫活動者が自己負担で猫の不妊去勢手術を行い、多大なる経済的・時間的・精神的負担の中で活動を行われている実情に鑑み、行政が適切な地域猫活動を行おうとする個人・団体等に不妊去勢手術への助成金等の具体的支援策を講じていくことも必要です。
【家庭動物 ③多頭崩壊対策】多頭飼育世帯の実態把握(届出制)と飼い主への精神的ケアを
全国各地で犬や猫の多頭飼育崩壊が頻繁に発生しています。対応を余儀なくされた動物愛護団体や個人のボランティア等が苦慮しながら対応を行っている事態が続いていますが、多頭飼育において適切な管理を少しでも怠ることは、周囲への迷惑行為や生活環境への悪影響、動物虐待につながることとなり、実態を把握する手段のない地方公共団体においては、常に後手に回る対策しか取れません。
多頭飼育届出制はこうした受動的にしか動けない体制を一新し、多頭飼育にかかる諸問題に対して行政が能動的な対策を講じて動物の福祉を確保することで多頭飼育に起因する人や生活環境、動物による迷惑等の問題を防止することにつながる制度です。さらに震災等の災害時には、多頭飼育の所在地や犬猫の頭数が明確である場合、救護についても的確で効率的な対策を行うことができると考えられます。
ひとたび多頭飼育崩壊が起こるとその解決のために多くの労力・費用・時間が割かれることになり、予防が大変重要であることから、2012年の動物愛護法改正では、地方公共団体の措置について規定した第9条に「条例で定めるところにより、・・・多数の動物の飼養及び保管に係る届出をさせることその他の必要な措置を講ずることができる」という文言が盛り込まれました。これらのことに鑑み、多頭飼育の実態把握は前向きに検討していくべき課題といえます。
また、多頭飼育者の中には、往々にして多頭飼養者自身の飼養管理能力と経済状況を顧みずに動物の保護を繰り返し、手放すことを極端に嫌い、その数を見境なく増やしてしまう当事者が存在し、海外で行われた調査によると、多頭飼育崩壊者の多くはその根底に精神的な問題を抱えていることが多いという結果が出ています。劣悪な環境にいる多くの動物を保護しようとしても、その対応や所有権の問題に追われ、動物の保護が進まない現状があり、多頭飼育に係る問題を的確かつ迅速に解決するには、ボランティア・動物愛護管理行政からの対応だけではなく、精神保健福祉に関わる専門家の力を借りた人の精神的ケアからのアプローチも必要です。多頭飼育届出制を設けることにあわせて、飼い主への対策として、人の精神的なケアを行う精神保健関連部署との連携を図るべきあるといえます。
※ただし、地域猫活動及び飼い主のいない猫の不妊去勢手術や譲渡を行う活動の過程で一時的に保護する猫については当然ながら「飼養」とは異なり、多頭飼育届出制の趣旨・目的から外れるため除外することを同時に求めます。
※条例で多頭飼育届出制を設けている都道府県
茨城県:犬10頭以上
山梨県・長野県・滋賀県:犬猫合わせて10頭以上
佐賀県:犬猫合わせて6頭以上
【実験動物】実験動物飼養施設に対し、実態把握と定期的な立入調査を
ほとんどの都道府県において実験動物飼養施設の実態把握がなされていない現状において、多くの改定案では実験動物に関して飼養保管基準の普及啓発のみを行っていくことが記載されています。しかし、公衆衛生や災害対策、動物福祉の観点から、飼養保管基準の普及啓発に加えて、実験動物飼養施設の実態把握・立入調査が必要です。
① 災害対策のために
日本は地震大国と呼ばれ、常に巨大地震に襲われる可能性に晒されています。こうした中、実験動物飼養施設でも確実な災害対策がなされなければ、大きな事故が発生する可能性があります。災害時に大きな事故が発生した場合に備えて、危機管理の観点から平時より実験動物飼養施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが重要です。
去年改正された動物愛護管理法では、動物愛護管理推進計画に定める事項に「災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策に関する事項」が追加されました。実験動物が例外であるとはされておらず、実験動物の災害時対策のためには施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが不可欠です。また、環境省告示の実験動物飼養保管基準では、(実験動物の)「管理者は、関係行政機関との連携の下、地域防災計画等との整合を図りつつ、地震、火災等の緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するもの」とされており、各施設の防災計画がきちんと作成されているか、準備がされているかを確認する必要もあります。
② 公衆衛生のために
動物実験施設では細菌・ウイルス感染実験や遺伝子組み換え実験、放射線や放射性物質を使用した実験がたくさん行われています。特に大学の医学部では遺伝子組み換え動物を使用した実験が全体の半数近くにも上ります(2013年ALIVE調査より)。これらは厚労省や文科省の法律で規制されていますが、実際には動物実験施設のカルタヘナ法違反が後を絶たず、現場の意識が十分であるとは言えず、前述のような災害等でひとたびこれらの拡散が生じれば、取り返しのつかない事態に陥る危険性があります。そのようなことを未然に防ぐためにも公衆衛生の観点から、平時より施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことは有効であると考えます。
さらに、静岡県に対する開示請求から、動物実験施設で狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射がされてないケースが多々あることがうかがえ、各都道府県内でも同じ状況にあることが推察されます。動物実験施設も狂犬病予防法の例外ではなく、このような施設に適切な指導が行えることも立入検査のメリットになると考えます。
③ 動物福祉のために
環境省告示の実験動物飼養保管基準では、施設の構造や飼養及び保管の方法についての基準を設けています。また、実験実施者及び飼養者への教育訓練、委員会の設置や指針の策定等も義務付けています。これらが適切に行われているかどうかを定期的に検査票や立入検査時の目視や聞き取りで確認しておくことは動物福祉上の意義があることと考えます。
※参考事例:兵庫県、静岡県の例
・ 兵庫県では平成5年(1993年)から実験動物飼養施設(動物実験施設及び実験動物生産・販売業者含 む)に対する届出制を運用しており、県内69機関(平成24年度末時点)に対し、届出受理時や届出変更 受理時等に立入調査を行っている。
・ 静岡県では昭和62年(1987年)頃から主に動物実験施設(46施設:平成24年度末時点)に対する調査 票の回収、立入調査を年に1回行っている。
【産業動物】 飼養保管基準の普及啓発と、関連部署との動物愛護担当部署間の連携、そして飼養環境の実態把握、農水省「アニマルウェルフェア指針」の周知と普及啓発並びにその効果についてモニタリング調査を
各都道府県内には数多の産業動物が飼養されていますが、当会の平成23年度の調査によると、畜産動物施設の所在を把握している地方公共団体の動物愛護担当部署は全体の僅か21%に留まっています。このような状況の中で産業動物の福祉を保障していくために、飼養保管基準の普及啓発と動物愛護担当部署と畜産関係部署間でのデータ共有等の連携、飼養環境の実態把握、農林水産省の「アニマルウェルフェア指針」の普及啓発やモニタリング調査が求められます。
また、東日本大震災では混乱の中に数多くの家畜が取り残され、悲惨な最期を遂げました。この事態を受けて、動物物愛護管理法の改正時の附帯決議の第十に「被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること」や、基本指針にも産業動物の適正な取り扱いの推進として講ずべき施策に「災害時における産業動物の取扱いについても、情報共有を図りつつ、関係省庁が協力して検討すること」という規定が盛り込まれました。こうした災害対策を考えるにあたっても、動物愛護担当部署と畜産動物関連部署とが連携し、産業動物飼養施設の所在地、責任者等のリスト、各飼養頭羽数等の最低限度の情報を共有、把握しておくことが求められています。
【特定動物】特定動物飼養施設への定期的な立入調査と個体識別率の向上を
特定動物はその危険性をはじめ、適正飼養が容易ではないこと等から「もともと飼養すべきではない」動物です。しかしながら、許可さえあれば誰でも飼養可能であり、特定動物種の生理、生態及び習性に配慮された飼養保管及び展示を行い、終生適切に飼養しているとは限らないのが現状となっています。こうした状況で、特定動物から人の生命・身体及び財産への危害を防止し、動物の健康や安全を保持するためには、特定動物飼養施設への定期的な立入検査を行い、指導・監督していくことが必要不可欠です。
また、特定動物の意図的・非意図的な逸走を防止、責任の所在を明確にするために、個体識別率を上げるように取組んでいくことも必要です。
さらに、特定動物が逸走した際に一番早く対応を行うのは逸走地の市町村や、市民からの通報を受けた警察であることから、特定動物飼養施設の所在地、動物種、頭数等の情報を、県等と特定動物飼養施設の存在する市町村・警察機関との間で共有することが求められます。
特定動物飼養者は、犬や猫等の特定動物以外の飼い主よりも、高度な飼養保管・管理や法令遵守が求められており、確実な法令の遵守や適正な飼養・保管を行っているか監視していくためには上記のような施策が必要です。
【動物取扱業者】 定期的な立入調査と移動販売・展示業者への立入調査強化を
① 定期的かつ抜き打ちによる立入調査を
第一種動物取扱業に対しては様々な管理・規制体制が敷かれていますが、依然として飼養保管基準を守っているとは言い難い業者が多く存在しています。このような業者を発見し、指導を行い、動物が劣悪な環境に置かれることを防ぐためには、新規登録や登録更新時のみの立入調査だけではなく、定期的な立入調査が必要です。
さらに第一種動物取扱業者に対して立入検査を行う際、多くの行政担当者が数日前から当事者に連絡することによって、違反事項がもみ消されるケースが散見されます。証拠隠滅や改竄を防止するために、事前連絡なしの抜き打ちの立入調査を行っていくべきです。また、県民等からの苦情・相談で動物虐待が疑われる業者への立入検査の際には、虐待罪を見過ごす結果とならないよう、場合によっては警察官と同行した立入検査を行っていく体制が必要ではないでしょうか。
② 移動販売・展示業者に対する立入検査の強化を
第一種動物取扱業の中でも、特に移動販売・展示業者は、2日以上の営業でなければ登録が必要ないことから、全国的に実際の展示状況の立入検査が疎かになっており、展示動物の飼養保管基準や動物愛護管理法を守らず、輸送や狭小な仮設飼養施設等により動物に著しく負担をかけているのが現状です。当会の調査でも移動販売・展示業者において、無登録営業であったり、動物を玩具のように扱うという極めて不適切な取り扱いがあることが判明していることから、監視体制の強化を求めていく必要があります。
【関係機関との連携】 警察機関との連携を
動物愛護施策の展開において、様々な団体や動物愛護団体、ボランティア、個人、民間企業等の連携が必要であり、現に多くの推進計画中に関係機関との連携が記されています。しかしながら、警察機関との連携を打ち出している都道府県は少ないのが現状です。
警察関係機関は虐待・遺棄罪の捜査を担う機関として、また拾得動物として動物が持ち込まれた際に対応を行う機関として、動物愛護行政と関連性が高いものです。こうした性質に加え、法改正によって虐待罪の定義が明確化し罰則が強化されたことで、より摘発が容易になったこと、犯罪を見過ごさないためにも、動物愛護担当部局と警察関係機関との情報共有や連携は必須となります。
遺棄・虐待罪や拾得動物への対応が警察署や警察官によって千差万別であり、場合によっては動物にもたらされる結果が180度変わってしまう現状があることから、地方公共団体と警察が連携していくかという一貫した方針が必要であることを伝えていく必要があります。
【感染症対策】 狂犬病予防注射・登録の普及啓発は、実験動物飼養施設及び多頭飼育者を重点的に
狂犬病の登録や予防注射は人の飼養する全ての犬に課せられていますが、当会が静岡県へ行った情報開示では、動物実験施設で狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射がされてないケースが多々あることが推察される結果となり、他の都道府県でも同じような状況にあると予測されます。また、過去の多頭飼育崩壊事例をみると、往々にして狂犬病の注射や犬の登録を怠っている飼い主が多いことが伺われます。
こうした状況の中で、もし仮に登録を行っていない犬が多数存在すると推定される実験動物飼養施設や多頭飼育施設で狂犬病が発生した場合、発覚にも時間がかかり、多くの感染犬・人を出すこととなりかねません。実験動物飼養施設や多頭飼育施設に対して、重点的に指導と普及啓発を図っていくことを伝える必要があります。
【災害対策】全ての動物のことを考えた災害対策を
各都道府県の策定する推進計画や地域防災計画の中に、被災動物への対応が記載されているところが多くなってきました。ペットと一緒に同行避難できるような体制や、被災動物の救護体制が整えられていくことはとても喜ばしいことです。しかしながら、ペットとして飼養される家庭動物以外の動物への対応はまだ進んでいません。
① 災害対策の対象に、産業動物や実験動物を
東日本大震災では多くの産業動物や学校飼育動物が混乱の中に取り残され、餓死といった凄惨な最期を遂げました。さらに、災害時の危機管理を考えるならば、有害な病原体に汚染された動物や遺伝子組換え動物の逸走が起こりえる実験動物飼養施設についても着目すべきであり、人の身体・財産等への危害防止の観点から、災害時の特定動物対応についても十分な対策を講じることが必要です。
今後、日本各地で発生すると予測される大規模地震や台風・大雨等に的確・迅速に対応し、危機管理や動物保護を行っていくためには、産業動物や実験動物に対する救護体制についても検討がなされるべきであることを指摘していく必要があります。
② 災害対策を考えて、実験動物飼養施設の実態把握のために定期的な立入調査を
動物実験施設では公衆衛生上重大な問題のある、細菌・ウイルス感染実験や遺伝子組み換え実験、放射線や放射性物質を使用した実験がたくさん行われています。実験動物の箇所でも述べましたが、大規模災害時にこれらの拡散を防ぐためには、施設の所在や飼養保管状況を把握しておくことが不可欠です。しかしながら、国の調査ではこのどちらも把握されていません。
各都道府県内に大学等の実験動物飼養施設が点在しており、万一の場合に備えて、普段から施設の所在や飼養保管状況を把握するため、実験動物飼養施設への定期的な立入検査が必要です。
③ 産業動物においては、災害対策のために関連部署と情報の共有を
産業動物について、東日本大震災では産業動物への対応を所管する官庁が環境省なのか、あるいは農水省なのかという混乱が生じ、対応の遅れが発生しました。さらに、動物愛護管理法の改正時の附帯決議の第十に「被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。」や、基本指針にも産業動物の適正な取扱いの推進として講ずべき施策に「ウ 災害時における産業動物の取扱いについても、情報共有を図りつつ、関係省庁が協力して検討すること。」という規定が盛り込まれました。
迅速かつ適切な対応が求められる災害時において、混乱を避け、上記付帯決議や基本指針に沿った対応を行うためには、動物保護に必要な指導だけではなく、あらかじめ動物愛護行政も産業動物飼養施設について把握する必要があり、動物愛護管理部署において管轄内の全農家リスト、少なくとも各飼養頭羽数データを共有しておくことが求められます。
④災害対策のために特定動物飼養施設の定期的な保守点検、災害対応マニュアルの作成、
市町村との特定動物飼養施設等の情報共有を。
人に危害を与える恐れのある特定動物が災害時に逃げ出した場合、逸走地の混乱や危険性は計り知れません。災害時において人の生命・身体及び財産や動物自身の安全を守るためにも、飼い主への逸走防止措置の徹底だけではなく、定期的な飼養施設への立入調査等の監視体制の構築や、災害時に特定動物の確実な管理を行うための災害対応マニュアル等の作成を行っていくことが必要です。また、災害時に逸走が起こった際、最初に対応を行うのは逸走地の市町村であることから、平時より市町村と特定動物飼養施設の所在地、動物種、頭数等の情報を共有しておくことが求められています。
● ALIVEがこれまでに意見提出を行った都道府県一覧 ●
ALIVEとして、今まで下記の改定案に対して意見を提出しましたので、ご報告いたします。
平成25年12月12日 【東京】「東京都における今後の動物愛護管理行政のあり方について
(答申素案)」への意見 提出
平成25年12月20日 【岡山】「岡山県動物愛護管理推進計画改定案」への意見 提出
平成25年12月26日 【川崎】「川崎市における動物行政の方向性と動物愛護センターのあり方についての 策定について」への意見 提出
平成25年12月27日 【宮城】「宮城県動物愛護管理推進計画(改訂案)」への意見 提出
平成26年1月6日 【群馬】「群馬県動物愛護管理推進計画(第2次)(案)」への意見 提出
平成26年1月15日 【愛知】「愛知県動物愛護管理推進計画改定案」への意見 提出
平成26年1月24日 【栃木】「栃木県動物愛護管理推進計画案」への意見 提出
平成26年1月27日 【愛媛】「愛媛県動物愛護管理推進計画(改正案)」への意見 提出
平成26年2月3日 【静岡】「静岡県動物愛護管理推進計画(2014)」への意見 提出
平成26年2月5日 【大分】「大分県動物愛護管理推進計画(第2次)(改定案)」への意見 提出
【山口】「山口県動物愛護管理推進計画(改定版)骨子案」への意見 提出
平成26年2月7日 【岐阜】「岐阜県動物愛護推進計画」への意見 提出
【熊本】「第二次熊本県動物愛護・管理推進計画」への意見 提出
平成26年2月18日 【三重】「第2次三重県動物愛護管理推進計画(中間案)」への意見 提出
【富山】「富山県動物愛護管理推進計画(変更案)」への意見 提出
平成26年2月19日 【宮崎】「宮崎県動物愛護管理推進計画(改定案)」への意見 提出
平成26年2月21日 【青森】「青森県動物愛護管理推進計画(改正案)」への意見 提出
平成26年2月27日 【香川】「香川県動物愛護管理推進計画改正素案」への意見 提出
平成26年2月28日 【鹿児島】「鹿児島県動物愛護管理推進計画(案)」への意見 提出
【高知】「第2次高知県動物愛護管理推進計画(案)」への意見 提出
【佐賀】「第2次佐賀県動物愛護管理推進計画(案)」への意見 提出
【鳥取】「鳥取県動物愛護管理推進計画(第2次)(案)」への意見 提出
【広島】「広島県動物愛護管理推進計画(案)」への意見 提出
平成26年3月5日 【兵庫】「兵庫県動物愛護管理推進計画の改定(案)」への意見 提出
平成26年3月13日 【大阪】「大阪府動物愛護管理推進計画改定素案」」への意見 提出
【山口】「山口県動物愛護管理推進計画(素案)」」への意見 提出
【東京】「東京都動物愛護管理推進計画(改定案)」」への意見 提出
平成26年3月14日 【島根】「島根県動物愛護管理推進計画改定」」への意見 提出
平成26年3月17日 【福島】「福島県動物愛護管理推進計画(改定案)」への意見 提出
【福井】「第2次福井県動物愛護管理推進計画(案)」への意見 提出
平成26年3月27日 【沖縄】
「沖縄県動物愛護管理推進計画(改訂素案)」への意見 提出
平成26年4月24日 【新潟】新潟県動物愛護管理計画 一部改訂案 提出
平成26年5月26日 【千葉】 「千葉県動物愛護管理推進計画」の変更案への意見 提出
平成27年8月01日 【茨城】 「茨城県動物愛護管理推進計画(改定案)」への意見 提出
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