日本の皆さん今日は。本日はオレゴン州動物愛護協会(OHS)の警察活動を巡査補のムアーと、彼の巡回に同行した高橋研修生がご案内します。
OHSは、1868年に創設された全米でも最も古い動物愛護協会の一つです。当初は馬などの使役動物が中心でしたが、すぐに子供や動物全体の保護にかかわるようになりました。会の名称を直訳すると「人道協会」なのですが、1881年から1933年まで、人間の福祉も扱っていたのです。
現在OHSは、80名の職員と600名以上のボランティアで、年間18,000の恵まれない動物を収容し、里親斡旋率100%をモットーにしています。実際、本部の動物センターは、家族の憩いの場になるような美しく充実した施設です。OHSは、里親探しのほか、動物保護立法への働きかけ、動物愛護教育、動物虐待捜査、そして地域啓蒙活動を通じて、温かい社会の構築を目指しています。
さて、私、ムアーの所属するOHS捜査部は、3名の職員が年間1000件以上の動物虐待、ネグレクトの事件を扱っています。OHSは民間NGOですが、捜査部員のうち2名は、州知事から動物福祉法事件に関する特別警察職員に任命されています。
職員の一日は、前日中に留守番電話に吹きこまれた通報と継続事件を検討し、一日の巡回行程作成から始まります。大多数の通報は、隣人の動物が十分なケアを受けていないのでは、という声です。通報には必ず出向き、給餌、給水、飼育施設、健康状態など、法律で定められた最低限のケアがなされているかを判断します。対象動物は、犬猫、うさぎ、ねずみ、亀、あひる、牛馬、豚など、さまざまです。このほか、動物虐待、遺棄、ペット窃盗、闘鶏、闘犬などの犯罪行為の捜査にも携わりますし、洪水などの災害時には、動物のレスキューも行います。先週には、大木に登って子猫を助けました。ただし、日本の保健所の扱うような動物行政は、郡の管轄です。
動物が故意に虐待やネグレクトを受けている事実は、大変、悲しいことですが、OHSのほとんどの事件は教育で解決されていることは救いです。捜査部の第一目標は、動物に対して知識が不足している飼い主に正しい情報を与えることで、動物の苦しみを除くことにあります。そのためには、飼主に会い、動物が必要とするものや、好ましい動物との関係作りなどを教育します。昼間働きの出ている人が多いため、今日の巡回でも7軒中4軒は不在でしたが、必ず飼主に会えるまで訪問します。
教育内容はさまざまですが、獣医に連れて行くこと、犬小屋、衛生、グルーミング、動物の気持ち汲み取り、ともに時間をすごすように教えます。今日は、メキシコからの移民家族に、冬場はインコを屋内に入れるように指導もしましたね。したがって、
善勧告が遵守されているか、フォローアップも大切です。飼主が、動物たちの尊厳に目覚め、家族同様の必要なケアと愛情を注ぐようになることが私たちの望みです。
しかし、ことが教育で解決できない場合には、我々は法律によって与えられた権限を行使し、捜査、被害動物の押収、逮捕、そして被疑者の送検を行います。今日は1軒、多頭飼育の疑いのある家がありましたね、匂いでわかります。居留守を使っているようなので、後日、張り込みをかけ、最終的には被害動物を押収することになるかもしれません。
動物の虐待、遺棄は犯罪です。違反者は摘発され、司直の手に委ねられることになります。しかし、いかに人口が少なくとも、日本とほぼ同じ面積のオレゴン州をOHSの3名でカバーするのは不可能です。OHSの所在するポートランド(州最大の都会)以外においては、所轄の警察に期待するしかありません。そのため、OHSでは、警察官が携帯できる動物愛護事件の手引書を配布するなど、普及活動にも力を入れています。
動物事件は、実際には教育で解決されるものがほとんどですが、動物虐待は犯罪という認識があるのとないのでは、大きく違うので、日本においても効果的な警察活動が展開できるように工夫が必要でしょう。
デュルー・ムアー(Drew Moore):
オレゴン州動物愛護協会巡査補、Lewis & Clark ロースクール学生
Oregon Humane Society: http://www.oregonhumane.org/