■ コンテンツ

巻頭言　　

　人間と関わる動物たちの置かれた状況を調べ不適切な飼育があれば是正させる、あるいは、貴重な野生種の生息地を保全し生物の多様性を保持しようといった主張は多くの方の理解、賛同を得ることができます。
しかし、こうした支持を受けた主張が受け入れられて、現在の日本社会がよりよい方向に改善されているのかといえば、必ずしも答えはイエスではありません。
　それは、一度社会の構造や組織が出来上がり動き出してしまうと、その流れの方向を変えたりさらには止めたりするのが極めて難しくなるからです。腐敗した利権構造が批判の的になることはよくありますが、一向に改善される兆しが見えないことは端的な例でしょう。
　市民運動が効率的に成果を上げるために、効果的な活動方針を常に検討していくことが求められます。
　今回の号では、動物実験は単に医療現場に限るものではなく、多岐の分野に渡って私たちの生活に深く浸透していることが示されています。それは、私たち市民、消費者の選択が多くの動物たちの置かれた環境の改善を実現できるということです。それが一つの社会の変革につながる布石になることを期待しています。これからも当会は人間にも動物にも優しい社会の実現に向けて活動します。ご支援のほどお願い申し上げます。

鳥獣保護法は「保護」ではなく「捕獲・管理」へ転換！？
　〜「殺す」ことに傾いた、改正鳥獣保護法の行方いは？〜 

　「改正鳥獣保護法」が、５月の参議院で可決され、成立しました。今回は、特にシカによる農林業・生態系被害が大きく取り上げられ、その対策として「捕獲」を促す内容への転換が図られました。殺処分ゼロが国民的に支持されるようになった犬猫とは逆に、シカやイノシシ等の野生動物は「どんどん殺す」方向での検討がなされています。

■ 今回の鳥獣保護法改正？で何が変わるのか

�@鳥獣保護法の名称が変わります
�A捕獲専門業者の認定制度が新設されます
�B夜間の銃猟を限定的に認めることが検討されます
�Cわな猟と網猟の免許取得年齢を、２０歳から１８歳に引き下げます
�Dその他

■ 鳥獣保護法は、本来なら特措法のブレーキになるべきなのに・・・

　市町村の策定する被害防止計画に基づき、科学的調査や裏づけもないまま、無計画な捕獲を行い、「気づいたら捕りすぎていた」という過去の失敗を繰り返さぬよう、鳥獣保護法は特措法の一部暴走ともとれる事態を抑制する位置にあってほしい、と願っていましたが、残念ながら今回の法改正は、真逆ともとれるような結果となりました。今後、各自治体でどのような動きを見せるのか、市民として監視していくことが重要となります。
　なお、悪いニュースばかりではなく、このたびの改正に伴う附帯決議案の中に、「とらばさみ及びくくりわなの一層の制限について検討を行うこと」が入りましたことを、付記しておきます。
　日本では、これから高齢化や過疎、離農等様々な問題が生じてきます。そのなかで、どのように野生動物と付き合うのか、もっと多くの議論が必要ではないかと思っています。

都道府県の動物愛護管理推進計画〜各県独自の取組み紹介〜 

　国が策定した基本指針の改定にあわせて各都道府県が定める動物愛護管理推進計画の改正が行われており、改定案の公開が順次行われています。今回は公開が始まった改定案の中から、各都道府県の独自・先進的な取り組みをご紹介します。　　　

■ 各都道府県の取り組み紹介

―家庭動物―
　＜東京都＞
　　多頭飼育者への精神的ケア…外部・内部との連携体制の構築

―実験動物―
＜静岡県＞
実験動物の取扱いの徹底…動物実験施設に対する実態把握

＜兵庫県＞
実験動物飼養施設の実態把握…条例に基づいた届出制や立入調査

―産業動物―
＜東京都＞
産業動物の適正な取扱い…「5つの自由」に配慮した取扱いの必要性明記

―野生動物―
＜長崎県＞
野生動物の保護…絶滅危惧種ツシマヤマネコを含めた野生動物保護の取り組み

―災害対策―
＜東京都＞
被災動物はペットだけではない…災害対策の対象に産業動物・実験動物を含めた災害対策の記載

―動物虐待―
＜兵庫県＞
警察との連携…行政と警察の横断的な連携強化

■ 運用が始まります

　多くの都道府県の改正推進計画が出揃いはじめ、これから施策展開が行われます。運用が正しく行われるように、私たちが注視していく必要があります。

【家庭動物】

＜続報＞　捨てた者勝ち？殺した者勝ち？�A
〜兵庫県西宮市・尼崎市で起きた犬の遺棄事件と西宮市で起きた猫の虐殺〜 

犬の遺棄や猫の虐殺が発生した兵庫県西宮市の某公園。その後も調査を続けましたが、猫の虐殺が止まることはありませんでした。そのためＡＬＩＶＥは環境省に意見書を提出し、松野頼久衆議院議員に対して陳情を行い、猫の虐殺について告発状を提出し、5月28日に受理されました。　

■ 犬の遺棄と猫の虐殺、その後

　　前号（会報「ＡＬＩＶＥ」110号）にてお伝えした後、現地の状況を調査しつつ、環境省・松野頼久衆議院議員に対して働きかけを行いました。そして、猫の虐殺について当会から告発状を提出いたしました。

■ 環境省へ意見書を提出

　　犬を捨てた事案が動物遺棄罪として扱われないのは、愛護動物を捨てただけでは遺棄には当たらないとする解釈があるからです。そのため、環境省に対して「遺棄」の定義変更に重点を置いた意見書を提出しました。

-意見書内容-

● 愛護動物を捨てることが「遺棄」であると定義すべきです。
　　・愛護動物にとっては、全てが「危険な場所」です。
　　・定義の変更がなければ、所有者不明の引取りが減少しません。
　　・生活環境・生態系に及ぼす影響を勘案すべきです。

● 警察とより密接な連携を行うべきです。
　　・「遺棄」の疑いがあるものは、警察の生活安全課に報告するよう周知することを求めます。
　　・行政と警察の連携に加えて、警察の積極的な捜査を求めていく必要があります。
　

■ 松野議員への陳情

　環境省へ意見書を提出しましたが、長年の議論の上に出来上がった「遺棄」の定義を突き崩すことが困難な状況であり、猫の虐殺については行政機関である環境省に警察との連携を求めることしかできません。そこでご多忙を極めるなか、これまで動物愛護について熱心に取り組んでこられた松野頼久衆議院議員にご協力をお願いしました。松野議員事務所は事態を重く受け止めてくださり、関係各所へ働きかけてくれることを約束してくださいました。

■ ようやく動き始める警察、そして告発状を提出

　松野議員や地元の方の説得により、甲子園警察署はようやく重い腰をあげました。しかし、事態は悪化の一途をたどり、新たな猫の犠牲もでてしまいました。猫の殺傷や地域の治安悪化に歯止めをかけるため、当会から猫の虐殺について告発状を提出しました。5月28日に告発状は受理されましたが、いまだ犯人の逮捕には至っていません。

■ 法律の存在意義

　犬の遺棄、猫の虐殺は動物愛護管理法第44条1項（動物殺傷罪）と同条3項（動物遺棄罪）に該当する行為です。しかし、警察・行政において一体となった対応はできていません。このような運用で法律の実効性は担保されていると言えるのでしょうか。

【畜産動物】

アニマルウェルフェアに適った畜産を提案しよう ─北海道内の有志が研究会を設立─ 

　　日本の乳牛の５割強、肉用牛の２割が飼養されている「酪農・畜産王国」の北海道で、アニマルウェルフェア（家畜福祉）に適った畜産のあり方について考え、課題の解決に向けた提案もしていこう−。５月10日、そんな思いを抱く道内の酪農家や研究者、獣医師、消費者グループ・動物保護団体のメンバーら10数人が「北海道・農業と動物福祉の研究会」を設立した。

■ 「家畜福祉」の認知度を高めたい

　ＯＩＥ（世界動物保健機関）による世界家畜福祉基準の作成、国内でも農林水産省が「アニマルウェルフェアの考え方に対応する飼養管理指針」の策定等の動きがあるが、アニマルウェルフェアや家畜福祉といった言葉の認知度はきわめて低く、関係者以外には国内外の基準づくりの動きも伝わっていない。そんな状況に一石を投じ、生産農家や加工、流通、販売、消費者などが一体となって課題の解決に向けて学ぶなかで、今後の方向性について提案していくことを目的に、有志による研究会を立ち上げた。活動の手始めとして「アニマルウェルフェア畜産の可能性を探る」をテーマに札幌市内で開催した設立記念のフォーラムには、９０人あまりが参加し盛況だった。

■ 畜産動物に心を寄り添わせて生理や習性に適う飼養方法を

酪農学園大学教授（農業経済学）の荒木和秋さん
・畜産物を工業製品として捉え、消費者も『安ければいい』と考えてきた結果、ＢＳＥ（狂牛病）や口蹄疫、鳥インフルエンザ、豚流行性下痢などが発生し、工業的な畜産が課題に直面している。
・乳牛の能力を調べる機関のレポートによると、30万頭の検定対象牛の３分の１が毎年淘汰される。

帯広畜産大学講師で当研究会共同代表の瀬尾哲也さん
・自分の心を家畜に寄り添わせていくことがアニマルウェルフェアの根本
・動物の生理や習性に適った飼育方法の大切さ
・道内の屠畜場では、多くの家畜が屠殺前日に搬入されるが、飲用水設備はほとんど整備されていない。飲水の欲求を満たすことが必要。

■ 「アニマルウェルフェア評価法」の条件をクリアした牛乳も誕生

　家畜福祉をめぐる「５つの自由」の原則をはじめ、鶏のケージ飼いや（出産後を除く）豚の分娩ストールの禁止などＥＵ（欧州連合）の家畜福祉事情も紹介。独自のラベルを貼ってアニマルウェルフェア畜産製品を認証する欧米の状況に言及した。
　「“持続性”をキーワードに、健康的にやさしく、長く飼ってあげる。環境にもあまり負担をかけず、家畜も地域も健全に、みんなに愛される畜産のあり方を問い直していきたい」と瀬尾さん。

■ ストレスのない環境で営む小規模酪農と乳製品づくり

　現場報告では、旭川市内の「クリーマリー農夢」代表の佐竹秀樹さんが「ストレスのない環境で牛を飼う」をテーマに体験談を語った。
　「以前は『アニマルウェルフェア』の言葉を知らなかったけれど、『ウェルフェア＝心地よい状態』と分かり、これまで自分がめざしてきた酪農と理解できました」「家畜を粗末に扱わないことの大切さを消費者の皆さんにも知ってほしい」と佐竹さん。

■ ２０１４年度の活動予定

・公開学習会「欧州のアニマルウェルフェア製品認証システムに学ぶ」
　〔講師：日本獣医生命科学大学教授の植木（永松）美希さん〕（８月１日）
・同「屠畜場におけるアニマルウェルフェア」
　〔講師：北海道帯広食肉衛生検査所専門員の奥野尚志さん〕（９月）
・米村牧場〔酪農＆チーズ製造＋放牧養豚・江別市〕見学会（１０月）
・第２回フォーラム（１５年１月）

【展示動物】

阿仁熊牧場のツキノワグマの飼養環境に関する要望書を提出

　今年の３月下旬から４月にかけて、秋田県の阿仁熊牧場で、ツキノワグマ26頭が相次いで死亡していたことが、４月12日に新聞で報じられました。多数のツキノワグマが謎の死を遂げたことは大きな問題ですが、それ以上に今回の報道で驚いたことは、毎年のように複数頭のツキノワグマが、闘争等で死亡していることであり、これは非常に深刻な問題と言えます。これを受けて、当会は４月15日付で秋田県及び北秋田市に対して以下の要望書を提出しました。

■ 阿仁熊牧場におけるツキノワグマの飼養環境に関する要望書（見出し）
１．ツキノワグマの自然減による飼養頭数の削減方針を打ち出すことが必要です。
２．ツキノワグマの繁殖制限措置を講じることが必要です。
３．クマたちの福祉向上のための実践・情報発信の場として位置づけることが重要です。

【動物実験】

日用品動物実験アンケート（中間報告）  

　日用品動物実験アンケートの中間報告結果をまとめました。 アンケートの設問と選択肢、企業名を含めた結果の概要はＡＬＩＶＥホームページに掲載していますのでご覧ください。

　今回調査の対象としたのは、一般のスーパーやドラッグストア等で入手できる日用／家庭用品を製造または販売（卸売りや輸出入等）している企業です。

■ 調査の目的

　調査の目的は、日用品の動物実験の実態を調査し、幅広い分野で動物実験が行われていることに対し、消費者に注意を促すこと、企業に動物の犠牲を減らす意識を持ってもらうこと、企業の動物実験に対する姿勢を消費者に知らせ、その消費に際しての参考にしてもらうことです。

■ 対象企業（分野）

　調査の対象にした企業（製品）は、飲料品、文具、玩具、洗剤、家庭用医療機器・健康器具、衛生用品を製造または販売する企業です。
　対象企業は、インターネット検索をベースにして、店頭調査も参考にしながら、各分野において一般消費者が日常的に接する可能性が高い企業を網羅しています。（注１）

■ 回答率と調査期間

　発送総数は１３６１、回答総数は２３８（回答率１７％）、調査期間は２０１３年５月〜２０１４年２月です。（表１参照）

■ 分野別の傾向、特徴

　飲料品分野で動物実験を行っていると回答したのは乳製品の企業が最も多く、他に酒造企業やミネラルウォーターの企業もありました。動物実験の目的は保健効果等の確認が最多でした。動物実験を行っている製品の種類は、通常の飲食品が最も多く、次いで特定保健用食品（トクホ）でした。
　家庭用医療機器・衛生用品分野で動物実験を行っていると回答したのは、絆創膏やマスク、ガーゼ等を製造しているヘルスケア／メディカル／衛生用品、眼鏡・コンタクトレンズメーカーでした。動物実験の目的は薬事法対応と安全性の確認でした。動物実験を行っている製品の種類は、薬事法上の医療機器が最も多く、次いで医薬品、医薬部外品となりました。
　文具用品分野で動物実験を行っていると回答したのは、接着剤やトナー、インキその他の主に工業用薬品を製造している企業でした。動物実験の目的は化審法（注２）対応と安全性の確認でした。動物実験を行っている製品の種類は、化審法規制物質（大量に製造されて各種製品の原料になる物質）とその他が多く、化粧品原料や衣料用薬品、工業用の接着材、プリンターに使用するトナーという回答がありました。
　玩具と洗剤の分野で動物実験を行っていると回答した企業はありませんでした（大手の玩具メーカーで過去に動物実験を行っていたとする企業が１社あり）。

■ アンケート項目毎の傾向と特徴

　動物実験の実施の有無では、回答のあった企業のうち約１割の企業が動物実験を行っていると回答し、その他に過去に動物実験を行っていたと回答した企業も５％ありました。また、動物実験を行っていると回答した企業のうち、「自社で行っている」が２％に対して、「外部機関等へ委託して行っている」が７％、「大学や他社との共同研究・開発」も４％にのぼりました。
　動物実験を行っている目的（理由）については、安全性を確認するため（５７％）、効能や効果等を確認するため（３９％）、法律で義務付けられているから（２６％）の順となりました。
　「以前は動物実験を行っていた分野で、代替法に切り替えたものはありますか？」の問いでは、７割以上が「ない」、「ある」は１割という結果になりました。 （注３）

■ 化学物質についての考え方

　企業が行う動物実験の主なものは商品開発において新規化学物質の有効性や安全性を評価するために行われます。
　現代社会では、化学物質は、保健、栄養、洗浄、保存、着色、加工、防除等々様々な目的で、文具、玩具、食器、衣類、家具、電化製品、飲食料等々、身の回りのほとんどの製品で使用されていると言っても過言ではありません。化学物質はその利便性から目に見えないところで私たちの生活を支えています。
しかし、ここで考えなければいけないのは、これまでの人類の経験及び動物実験、臨床試験によって既に多くの化学物質の有効性や安全性が確認されてきているということです。（注４）
　今以上の利便性の追求と動物の犠牲を天秤にかけたとき、果たしてこれ以上の新規化学物質を使う新製品が必要あるのか、特に一般家庭用品、日用品の分野でそこまでして利便性を追求する必要があるかということは、先進国に住む全ての人たちが立ち止まって考えるべき重要な問題だと思います。

■ 動物実験代替法について

　動物実験代替法は、残念ながらまだ一部の分野の動物実験にしか対応していませんが、皮膚刺激性試験や眼刺激性試験ではかなり代替法が進んでおり、国内の動物実験受託企業でも代替法に対応している企業が多くあります。ＯＥＣＤガイドライン（注５）でも、in vitro試験（注６）を含めた「すべての利用可能なデータが評価されるまで動物実験は行われるべきでない」（注７）とされていますので、この分野で動物実験を行っている企業に対しては代替法の採用を強く訴えてみるといいでしょう。（動物実験代替法について詳しくはＡＬＩＶＥ会報１０７号の記事をご覧ください。）

（注１）省略

（注２）省略

（注３）省略

（注４）今日、全世界で登録されている化学物質数は約1,700万種に及び、商業目的で生産されているものだけでも約10万種に上ると言われる。我が国においても生産、使用されている既存の化学物質は約48,000種を越える。（平成８年版環境白書より）

（注５）ＯＥＣＤ（経済協力開発機構）の化学物質テストガイドライン。国際間で化学物質の安全性試験等に関する方法を共通化し、製品の輸出入を円滑化することを目的として作られた国際標準試験法ガイドライン。

（注６）動物を使った生体内試験をin vivo試験と呼ぶのに対して、ヒトや動物の組織や培養細胞等を使った試験管内（シャーレ等含む）試験をin vitro試験と呼ぶ。動物実験代替の代表的な試験法。

（注７）皮膚刺激性試験と眼刺激性試験のＯＥＣＤガイドライン(TG404/TG405)より。

【野生動物】

鳥獣保護法における「ノイヌ・ノネコ」を考える�B

　　動物愛護法では「愛護動物」である一方、鳥獣保護法では「狩猟鳥獣」に指定されている犬・猫。「ノイヌ・ノネコ」の明確な定義づけもないまま、年間３５０頭を超える数の犬猫が、狩猟や有害駆除で殺されています。
　ノイヌ・ノネコについては、鳥獣保護法・動物愛護法双方にかかる問題であり、長期的には省庁の関連部署における解決、法律の見直し等が必要となります。しかし、今すぐにできることは、まず地方自治体への要望であると考え、以下のような概要でまとめました。

■ 都道府県の鳥獣保護管理担当部署へ向けて

（１）ノイヌ・ノネコの捕獲申請（有害駆除）があった場合、速やかに動物愛護担当部署に報告と相談をし、対策を講じて下さい。

（２）狩猟期の前に、狩猟登録を行う者に対し、犬・猫を狩猟対象とすることに注意喚起を
行って下さい。

（３）犬・猫が錯誤捕獲された場合には、必ず動物愛護担当部署へ連絡をし、その場で処理をしないことを、狩猟者、駆除申請者に周知徹底してください。

■ 都道府県の動物愛護担当部署へ向けて

（１）狩猟或いは有害駆除で殺されている犬・猫の実態を調査してください。

（２）ノイヌ・ノネコの駆除申請があった場合については、鳥獣保護管理部署からの連絡を必ず受けるような体制を整えてください。また、犬・猫を狩猟対象とすることについて、同部署と連携し、狩猟登録者に注意喚起を行って下さい。

（３）飼い主不明の犬・猫を、狩猟や有害駆除で殺すことを容認しないでください。

　以上の内容に基づく要望書については、当会より全国の都道府県の担当部署に送付いたします。ノイヌ・ノネコ問題については、法改正を待つよりも、まず地元の自治体に働きかけることが優先です。お住まいの都道府県の動物愛護担当部署・鳥獣保護管理担当部署に向けて声を届けてください。

【海外事情】

ファクトリーファーミング・イン・アメリカ（工場式畜産）の脅威 

　アメリカでは、毎年１００億以上の動物が食用のために屠殺され、そのうちの９５％が工場式畜産由来です。アメリカの工場式畜産の現状はどのようになっているのでしょうか。

■ ファクトリーファーミング・イン・アメリカ（工場式畜産）

　アメリカの一般の人はそれまで、肉がどこから来たのかも考えず、最初から切り身で、スーパーがパッキングしているものだと信じ育っています。しかし最近、アメリカ人は自分たちの食べ物に関心を持ち始めています。食品表示を向上するため声を挙げ、国内のスーパーで売られる食肉には新しく原産国の表示が必要となりました。

■ ＣＡＦＯ（キャフォ）

　アメリカの家畜はファクトリーファーミング（工場式畜産）という経済性を重視する生産スタイルの中、短命で悲痛な一生を遂げます。英語ではファクトリーファーミング、またはＣＡＦＯ (キャフォ：Concentrated Animal Feeding Operation)と呼ばれている経営生産システムです。広大な土地を占拠するＣＡＦＯは、田舎の平和的な風景を害し、糞尿の酷い悪臭等、周辺住民に限らずアメリカ国民に甚大な悪影響を与えています。

■ 環境保護庁（ＥＰＡ）の定義

　アメリカ合衆国環境保護庁（ＥＰＡ）は、ＣＡＦＯを大量の家畜を１年間に最低45日間、環境エンリッチメントのない狭いスペースに収容している施設、と定義しています。この定義の範疇に入らない小規模農場でも、環境に影響を及ぼすと判断された場合、ＣＡＦＯとみなされることもあります。
　ＣＡＦＯは最小の投資(そして規制)で、最大の利益を生むようにデザインされていて、家畜にホルモン剤を与え成長促進をし、治療外目的や病気予防対策に抗生物質を与えます。また、無駄な筋肉成長とカロリー温存のために家畜の動きは厳しく制限されています。
　このような環境で育った家畜は、乳腺炎(施設内の不衛生が一因)、胴体の変形(品種改良、過密飼育などが一因)、異常行動、凶暴化(過密飼育、不適切な給餌が一因)、感情障害(早期離乳が親と子に支障)などの問題のホスト(宿主)となってしまいます。家畜の寿命はブロイラー鶏は６?７週間（通常は15年程度の寿命）、乳牛は３年程度（通常は20年程度）、強制換羽がされていないと採卵鶏は１年程度(通常は10年程度)です。

■ 抗生物質頻用の問題

　アメリカ国内での抗生物質の使用の80％は家畜に用いられています。生産性を高めるためのホルモン剤やステロイド剤は牛乳や乳製品を介して人体に入ってきます。人体への影響も問題ですが、水の枯渇、農業用水、汚染物質、悪臭、大気汚染など、環境への影響も深刻です。また、家畜の排泄物をみると、毎年ＣＡＦＯは50億トン以上の排泄物を排出しており、病原体、重金属、抗生物質、ホルモン剤が含まれているにも関わらず、その90％が作物肥料に使われているのです。

■ アメリカ人の知識

　アメリカでは毎年１００億以上の動物が食用に屠殺されていますが、そのうちの95％がＣＡＦＯの生産量で、鶏がその90％を占めています。
　アメリカ人は食に関心が高まっていると前述しましたが、平均的なアメリカ人でさえ抗生物質の頻用、除草剤や殺虫剤、ホルモン剤の家畜への使用は将来の脅威と考えています。最近の国連食糧農業機関（ＦＡＯ）の報告では、世界中の交通から排出される量を上回り、家畜農業が温室効果ガス（ＧＨＧ）の要因の14.5％を占めると発表しました。

■ 農業権法（Right to Farm law）

　周辺住民の団体や協会は一丸となり、ＣＡＦＯに立ち向かっています。過去に、騒音、有害物質、悪臭を発する家畜農業に対する訴訟がありましたが、ＣＡＦＯを規制外にするための猛烈なロビー活動の結果、各州で「農業権法（Right to Farm law）」が制定されました。農業権法は、郊外に拡大する都市開発から、農家が農業する権利を守るために作られたのですが、実はこの農業権法がＣＡＦＯに正当性を与えることになってしまいました。もちろん、ＣＡＦＯの拡大の進行を遅らせた例もありますが、残念ながらそういった勝利は珍しく、アメリカ国民がＣＡＦＯの規制を政策者に働きかけない限りＣＡＦＯは増え続け、付随する問題も終わることはありません。

【家庭動物】

「迷子札ホルダー配布」の色んなカタチ 

　　平成24年度、日本全国で約5.7万頭の迷子・放浪犬が各自治体によって捕獲・収容されました。そのうち、飼い主に返還された犬は約１・７万頭。残りの約４万頭のほとんどは、悲しい運命をたどっています（ＡＬＩＶＥ調査「全国動物行政アンケート」平成24年度版より）。
　一頭でも多くの迷子犬が飼い主の元に帰れるように―との想いと共に始まった「帰そうプロジェクト」は今年で発足５年目を迎えます。自治体やボランティアの協力により、その地域に合った方法で「ホルダー配布」が広がってきています。

■ 行政への見本送付からのスタート

　「帰そうプロジェクト」は平成21年８月に立ち上げられました。最初の働きかけとして、迷子札ホルダーセット１万個を制作し、「動物愛護週間」のタイミングに併せて全国の行政機関に見本を送付、賛同いただいた愛護団体様には各地のイベントにて配布をお願いしました。その結果、翌年（平成22年）には20箇所を越える自治体様等による総計７万セットのご発注・配布を実現することができました。そして今年「帰そうプロジェクト」は発足から５年目を迎えます。

■ 色んな場所で、色んな方法で

　当初「安心だワン！ホルダー」は、例年４〜６月に行われる「狂犬病予防集合注射」の会場で「注射済票」と併せて配布する用途で自治体からの発注が集中していました。しかし最近は、愛護センターや全国の愛護団体・ボランティアが譲渡会に使っていただけるケースも増え、配布場所としても動物病院様などにも置いていただけるようになりました。
　「安心だワン！ホルダー」の配布は、プロジェクトにご賛同いただける自治体やボランティアのご協力により徐々に広がり、その導入方法も多様になってきました。「ホルダー配布」にはこれと言った決まりはなく、各団体が無理のないよう、かつ楽しく工夫され、配布を通して「飼い主明示の必要性」をアピールしていただくことが当プロジェクトの願いです。

■ ボランティアの努力が築いた行政との「良い関係」

　例えば今回、取材をさせていただいた、関東の某センターを中心に広く活動されているボランティアグループ「ココニャン一家の縁結び」様によるホルダー配布も、そのような活動のひとつでした（配布したホルダーは全て、ココニャン一家の縁結び様が集めた寄付金により準備されたものとのこと）。啓発用のチラシとともに、愛護センターと警察署の電話番号が記載された名刺大のマグネットシートを配布していました。犬が迷子になった時、まず飼い主さんにしていただきたいのは関係各所への電話連絡です。その動機付けと連絡先の周知としてマグネットシートを活用する等、工夫を凝らしてご活動されていました。
　今回の配布が実施されたＣ市ではのべ15日間の予防集合注射の実施日が設定されていましたが、ホルダーの配布が行われたのはボランティアの皆さんの都合のつく土曜・日曜の５日間のみでした。この配布にあたり、「土日会場でしか配布実施が行われないこと」で市民から公平ではないとのクレームが出るのではないかとの危惧があったそうです。実際、これまで取材を重ねてきた中ではこのようなケースの場合「見送り」になることが多かったのですが、「できる範囲」での配布が実現していたのは、Ｃ市の行政と地域のボランティアとの間に確かな信頼関係があることの証だと感じました。

■ 「継続すること」の大切さ

　茨城県の牛久市は、プロジェクト当初より継続してご協力をいただいている地域の一つです。注射済票と一緒に「安心だワン！ホルダー」セットを配布していただくのも、本年ですでに５回目となりました。
「４年間継続した配布の結果、迷子犬が少なくなってきている実感があります」と職員の方に言っていただきました。また、地元のボランティアさんからも「犬の散歩中に、ホルダーをつけたワンちゃんをよく見るんですよ」との嬉しいお声もいただきました。
　牛久市では、市の条例として「迷い犬（猫）の一時保護や里親捜しなどの規定」を制定し（地元ボランティアさんの強い要望の上に成立）、市庁舎の建物を使っての譲渡会も開催、市ホームページ上でも迷子犬情報の発信もされており、市としての返還率は確実にあがっているとのことでした。

■ 一つ、また一つと積み重ね、模索を繰り返し―。

　「安心だワン！ホルダー」は「殺処分��０�＝vへの起死回生の一手ではありません。返還率が劇的に向上するものでもありません。しかし、その全てのことが少しずつ、少しずつ積み重なって、やはり少しずつ、少しずつ良い方向へ向かっていくのだと感じます。
　全国のボランティアの皆様と自治体が力を合わせ、その地域に合ったやり方・進め方を考え、全ての迷子の犬たちが、無事に元気に飼い主の元に帰れることを、願ってやみません。

【家庭動物】

動物が幸せな場所を探して〜篠山インターナショナルアニマルウェルフェアセンターを見学！〜 

　５月、ＡＬＩＶＥの故・野上ふさ子前代表と以前より親交のあった、アニマルレフュージ関西（ＡＲＫ）代表理事エリザベス・オリバーさんより、新犬舎完成パーティへのご招待があり、動物福祉に特化した施設のなかで幸せに過ごす動物たちを見てきました。

■ ＡＲＫに新しい施設が完成

　ＡＬＩＶＥとかねてより交遊のあるＡＲＫ代表理事エリザベス・オリバーさんより兵庫県篠山市に新しい犬舎が建設されたという嬉しいお手紙をいただきました。今回完成した犬舎は、オリバーさんの「日本にこれまでにない動物福祉施設を建設する」という想いから始まり、約5年もの歳月をかけ完成したものです。

■ 「これまでにない動物福祉施設を」

　新しくできた犬舎は犬が快適に過ごせるかどうかを徹底的に考えたものとなっており、ストレスから解放された環境のなかで犬たちが穏やかに過ごしていました。犬舎のなかを一通り見学し、犬たちの様子を見るとオリバーさんの言葉通り、動物福祉に配慮された施設であと実感しました。動物の幸せを考えたこのような施設が日本に増えることを祈るばかりです。

【全国ネット活動】

動物問題の放置が生み出す他への影響　（ＡＬＩＶＥ茨城） 

　高齢福祉の分野から老齢飼い主の認知症や死亡を原因とする犬猫の相談が数多く寄せられる。相談に対応しながら動物行政の高齢社会対策への不備を実感する。地元役所や協力獣医師との連携で地域の殺処分数削減のために動く我々だが、そこに県の関与はない。それどころか県へ引き渡せば殺処分しかないという選択肢の乏しさが我々の負担を重たくする。解決能力の無さを武器に高みの見物は勘弁してほしい。県の問題放置と対策不備は他部署への実害やボランティアの心理的物理的経済的負担を増やしレスキューからこぼれた動物の死をもって清算される。厳しい高齢社会を構成する一員（因）として県は命に向き合う人々や自治体の施策をサポートするしくみを講ずる必要がある。

■ 老人とペット

　「飼いたい人が飼える人ではない」こんな啓発文句はさびしさに耐える老人の耳には届かない。飼い主が呆けたから、死んだから、と遺品整理のようにセンター送致を言い渡される残された動物たち。親族が飼養を引継いだ事例に私はまだ出会っていない。

■ 高齢の繁殖業者

　市の社会福祉協議会からの相談で、ある独居老女宅への訪問に同行した。ゴミと糞尿で埋め尽くされた家の中で、認知症を発症した老女は約30頭の小型犬と暮らしていた。犬たちは不衛生な環境で適切なケアを受けられず、皮膚炎だらけで栄養状態は最悪。この老女は無登録で商売する繁殖業者だった。茨城県はこの存在を把握していたが、指導に出向いた事は無かった。
　病識の欠如。自業自得という言葉をぶつけるには、この老女は放置されすぎた。犬も老女も被害者ではないか。法律は飾り物か。悪行を止めてもらえなかった老女が人として受けられるはずの権利を脅かされ、社協が現場対応に苦労する事態を招いたのは、動物愛護行政の曖昧な対応と、ボラまかせ以外に動物の救命手段を持たないという県の欠陥施策にも原因があるだろう。

■ 行政はやるべきことをやって！

　どんな場合であれ、それが違法行為ならば行政は速やかにその行いをストップさせるべきである。そして、誰でもが動物を入手できる社会が変わらないのなら、動物の安全を確保できる救命の為の策と器と資金の準備は絶対だ。引取り拒否で収容頭数を減らしても、それが本当の成果でない事を我々は知っている。

【全国ネット活動】

「神戸市立須磨海浜水族園」訪問レポート　（ＡＬＩＶＥ兵庫） 

　英国では、すでにイルカの飼育は廃止されていますが、昨年、インドでもイルカの飼育禁止が決定したと報じられました。そこで、神戸市立須磨海浜水族園（通称スマスイ）園長宛てに、イルカショー廃止を要望する手紙を出しましたところ、「一度来ませんか」を言っていただき、１２月１日にＡＬＩＶＥメンバー６名で訪問しました。園長室で２時間、海洋哺乳類の飼育を中心にお話を伺いました。

以下、前もって送付した質問状の一部です。

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私たちは「５つの自由」に反する動物の展示、曲芸、娯楽としてのスポーツでの使用に反対します。高度の社会性を持ち、広い海を移動するイルカを狭い人工施設で飼育し、エサのために曲芸をさせられるイルカショーについても廃止を願っています。イルカの曲芸は、サーカスの動物の曲芸と同じく、自然界ではあり得ない珍芸の披露に他ならず、「人間は弱い立場の生きものに対して何をしても良い」という反面教師、教育効果をもたらします。水族館は、博物館相当施設として社会教育の役割を担うべき所とされていますが、現実には日本の多くの水族館は、見世物的娯楽産業となっているのではないでしょうか。動物園、水族館は種の保全のための研究を行うとしていますが、野生から捕獲され、狭い人工施設で人工飼育が行われることは、生きものに与える激しいストレス、高い死亡率、多額の飼育コスト面からみてもリスクの多い手法です。

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　前園長は、海洋生物学の学者としての御仕事と園長職を同時にされており、このことに関して私たちより豊富な知識がおありです。以下、前園長のイルカ飼育等についての見解です。

・イルカの飼育、ショーについて

　「動物園や水族館は、人類の動物観、自然観の発達に貢献してきた。我々は現場で常に動物たちの幸福を考えている。動物愛護団体は、イルカの飼育はイルカに対して苦痛を与えているとして水族館を非難しているが、水族館のイルカの幸福度が自然界での生活と比べて高いか低いかという議論は決着がつかないでしょう。我々がイルカを飼育して自信を持って言えることが２つある。１つは、飼育されているイルカは我々に懐き、親しくすり寄ってくること。これは、水族館での生活がイルカにとって不快でないことを示している。さらに重要なことは、イルカを見て喜ぶ子どもがたくさんいること。大人には子供の心を健全に発達させる義務がある。」ということでした。また、話し合いの間何度も「イルカは曲芸をやりたがる」とおっしゃっていました。

・遊泳圏は数千キロに及び、超音波で交信、採食をするイルカをたかだか20〜30ｍのコンクリートの水槽に一生閉じ込めて見世物にすること、ストレスからイルカの寿命は野生の３分の１にも満たないことが多いという意見について

　「確かに日本の水族館の飼育施設は狭い。スマスイも例外ではない。音響に関しても気になっている。機会があれば改善していきたい。哺乳類については、血液中のコルチゾールを測定してストレスの定量化を試みている。」とのことでした。
昨年６月〜７月、地域振興とイルカのストレス軽減を図るとして、社会実験「須磨ドルフィンコーストプロジェクト」が実施されました。須磨海岸海域に面積９６００�u（飼育プールの40倍）、最深部10ｍ〜浅瀬までを綱などで仕切り、イルカ２頭を49日間遊泳させました。地域活性化では成果があり、「イルカは海で楽しそうに泳いでいた」そうで、来年度以降の実現可能性を探っているとのことです。期間限定ではなく、飼育プールを廃止して、イルカが常時海で暮らせないか尋ねましたが、台風などの悪天候、漂流ゴミ誤飲等への対応、漁業権の問題（億単位の金額）などと課題が多く、難しいとのことでした。また、高度な映像技術が発達した現代、生態を使用しないバーチャル展示を提案しましたが、「本物に触れることこそ意義がある」という認識は、いままでにもしばしば動物園関係者から聞いたものと同じでした。

・イルカセラピー、イルカタッチ、スイミング等について

　「スマスイではふれあいをやさしさの強化と位置付け、積極的に実施している。やさしさの表れとして、子どもは動物に触れたがり、餌を与えたがる。ふれあいはやさしさ教育につながる。飼育しているバンドウイルカは人に触れられるのが大好きであり、トレーナーたちはそう信じている」ということでした。

　その他、スマスイのイルカについて、具体的な質問もしました。

　日本に１００を超えるという水族館、儲け優先の商業施設ではどうなのでしょうか。先頃、別府の水族館「うみたまご」のセイウチショーの体験記を新聞で読みましたが、ショーが「おもしろく」書かれていました。絶滅に瀕した海洋哺乳類を「学術研究」の名目で捕獲し、見世物ショーの道具として消費する水族館が多いのではと危惧します。

【ライフスタイル】

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