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会報『ALIVE』の発行

動物・環境にやさしいライフスタイルの提案、活動に関する呼びかけや情報提供を行うために、ALIVEでは、会員の皆様に年2回、会報『ALIVE』をおとどけしています。
 
会報「ALIVE」 117号の概要と要約


以下は記事の要約です。記事の全文をお読みになりたい場合は、オンラインショップにて本会報誌をお買い求め下さいますようお願い申し上げます。バックナンバーもお買いお求めいただけます。

※会報「ALIVE」の定期購読をご希望の皆様の当会へのご入会を心よりお願い申し上げます。




会報「ALIVE」 117号 (2016.04.01発行)


「もしも」から動物を守る準備と体制を


■ コンテンツ


【Topics Now】
巻頭言


【動物保護法】
・ニホンイシガメの野生個体、8センチ以上は輸出禁止へ!


【実験動物】
・問題の多い実験計画書(奈良女子大学)


【家庭動物】
・~翼のある長生きな家族へ―TSUBASAの取り組み~
 わたしよりも長生きするかもしれないあなた


・高齢化社会の中に渦巻く動物問題 ―「心に寄り添った」動物行政を―


【学校飼育】
・学校飼育を取り巻く動向と施策③
 地方議会で取り上げられた「学校動物の寒暑対策」


【実験動物】
・「『動物実験を考える』を読み解く」勉強会 報告

・『犬猫だけが動物じゃない』in 大阪セミナー(第2弾)報告

・代替法学会ポスター発表報告


【動物取扱業】
・~動物愛護管理法においても8週齢規制の早期実施を~
 札幌市動物愛護管理条例案の『幼い犬猫守る条項』を応援する院内集会が開催されました!



【畜産動物】
・「北海道・農業と動物福祉の研究会」活動レポート
 牛と共に生きていくとは ~アニマルウェルフェアについて考えた2日間 in北海道八雲町~



【ルポタージュ】
・善福寺生き物語り①  野鳥への餌やりは…!?


【海外ニュース】


【全国ネット活動】


【ライフスタイル】
・心を癒す花療法
・森の生活67
・読む・見る・聞く
・ライフスタイル見直しKnow How


【事務局便り】


【お知らせ】




【Topics Now/巻頭言】

巻頭言

 オオタカは国内希少動植物種に指定されているが、環境省はその解除を行う予定である。
 東京電力福一原発事故後、日本各地で再生可能エネルギーの建設計画が目白押しとなっている。例えば秋田県は1000基の風車を建てるとしているし、福島でも阿武隈風力として200基、沿岸部風力として150基の計画が進められている。自然エネルギーといえば聞こえは良いが、本誌で小林桂子さんが太陽光の問題点を指摘してくださっているように環境負荷は極めて高い。特に風力発電は建設地を開発するだけでなく搬入路でも大規模な環境破壊を行い、さらに建設後は低周波によって多くの生物が姿を消すという。こうした建設に対して地域住民からは反対運動が起るのだが、その際、推進派としてはオオタカのような指定希少種が生息していれば建設計画に支障が出るということだろう。
 自然エネルギーの推進と騒ぐ前に、私たちはエネルギーを大量に浪費する社会を見直すべきではないか。貴重な野生動植物の生息環境を奪ってまでこれ以上のエネルギーが必要なのだろうか。華美で贅沢な生活は満たされない心の裏返しにすぎない。人間にとっても動物にとっても幸福な生き方とはどういうことかをもっと考えていきたい。


⇒ ◆ALIVEの巻頭言



【動物保護法】

ニホンイシガメの野生個体、8センチ以上は輸出禁止へ!


 平成25年8月~平成27年9月の間に輸出されたニホンイシガメの数は、2万8千匹にものぼります。会報「ALIVE」115号でもお伝えしましたが、イシガメの輸出先は殆どが中国であり、多くが食用に供されています。環境省は、2015年10月にニホンイシガメの輸出に係る助言に関するパブリックコメントを実施、当会からも意見を提出しました。

◎ 詳細はこちらのページをご覧ください。






【動物実験】

問題の多い実験計画書(奈良女子大学)


国立大学法人奈良女子大学が、実験計画書に「実験方法」を記述させていないことがわかり、質問状を出しました。また、墨塗りだらけの開示結果を受けて、異議申立を行いました。

本件について詳しくは以下を参照してください。
http://www.alive-net.net/animal-experiments/youbou/2016/nara-w-uni/experimental-plan.html
http://www.alive-net.net/animal-experiments/youbou/2016/nara-w-uni/opposition.html


■ 実験計画書に実験方法の記述がない!?

 当会が一昨年に開示請求を行った大学の中で、国立大学法人奈良女子大学が、動物実験計画書の中で最も重要な項目である「実験方法」を記述させていないことがわかりました。
 当会はこれを3R担保などの観点から問題と考え、奈良女子大学へ質問状(去年6月)を送りました。
 生きた動物を科学上の実験に使用する行為は、倫理的に大きな責任を伴う行為であり、その責任を全うするための最も重要な手続きの1つである実験計画の審査をおざなりに済ますことは許されません。
 当会では引き続き、奈良女子大学に対して速やかな書式変更を求めるとともに、他の大学でも同様なケースがないかどうか、注意を払っていくつもりです。


■ 実験の目的や内容がすべて墨塗り!?

 奈良女子大学にはもう1つ別の問題があります。開示された計画書の主要部分のほとんどが墨塗りになっていることです。
 当会では事態を重く見て、一昨年の11月に奈良女子大学に対して異議申立を提出しました。現在、内閣府情報公開・個人情報保護審査会で審査中です。





【家庭動物】

~翼のある長生きな家族へ―TSUBASAの取り組み~
わたしよりも長生きするかもしれないあなた


 いっしょに暮らしてきた家族の一員である動物を手放さなくてはならない事情。そこには多様な背景があり、さらに色々な動物種がいます。中には、数十年と生きる種も含まれます。今回は、長生きであるだけではなく、社会性に富みコミュニケーションが重要とされるインコやオウムにスポットを当ててみました。長年、「人・鳥・社会の幸せのために」活動を続けている認定NPO法人TSUBASAが運営する「とり村」を訪ね、さまざまなエピソードや理念・信念を伺うことができました。

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 「イギリスのチャーチル元首相の飼っていたインコが、まだ生存している」。そんな驚きのニュースが2004年に話題となった。チャーリーと名づけられたこのコンゴウインコは、1965年チャーチルが亡くなった後、ペットショップ経営者に引き取られ、今なお「FUCK! Hitler!」と、ヒトラーの悪口を言っているというのだ。当時で104歳と紹介されていた。この報道の真偽は定かではないが、大型のインコは長生きであることを改めて考えさせられる機会だった。
 「65歳のタイハクオウムもいましたよ。今、うちの最高齢はキエリボウシインコのオールドで、52歳です」と、にこやかに話されるのは、認定NPO法人TSUBASAの代表・松本 壯志さん。TSUBASAの正式名称は「The Society for Unity with Birds-Adoption and Sanctuary in Asia(鳥と調和のとれる社会ーアジアの里親とサンクチュアリ)」。「人・鳥・社会の幸せのために」を理念に掲げ、鳥の適正飼育の啓発活動やレスキュー活動を行っている団体である。TSUBASAの運営する「とり村」を訪ね、新しい飼い主を待つ鳥たちと面会しながら、松本さんにお話を伺った。


■ 現在約130羽の鳥たちが保護されている「とり村」

 埼玉県新座市にある「とり村」は、 飼い主のいない鳥たち(インコ・オウム・フィンチ)が暮らすサンクチュアリ。愛鳥を連れて遊ぶことができるバードランも併設し、さらに厳選した鳥のフードやグッズ等の販売も行っている。
 バードランは、鳥たちが安心して遊べるように、感染症対策のために徹底した消毒・清掃が行われる他、入場する際の注意事項を細かく掲げている。鳥たちの条件としては、1歳以上、クラミジア検査陰性であり且つ1年以内に健康診断を受けていることが必須。人間サイドは、他のペットショップや動物飼養施設に立ち寄ってから来ることは禁止。社会性が高いインコたちにとって、バードランで他の鳥や人と出会い交流することはとてもいい経験になることが多いそうだ。ガラスに衝突しないような工夫がされたり、手作りの遊び道具が高所にたくさん用意されている。鳥への細やかな愛情が伝わってくる空間である。
 「では、上にいきましょうか」。松本さんの案内で、いよいよ鳥のサンクチュアリへ。
 なんと広くて明るいスペース!「ここは鳥たちの運動場ですね。時間ごとに、相性のいい子たちを出して遊ばせます」。吹き抜けのような空間には、さまざまなインコ・オウムたちがゆったりと止まり木に鎮座したり、スタッフと遊んだり、他の仲間の鳥と毛づくろいをしたりしている。頸をかしげてこちらの様子を観察していたり、後ろからそうっとちょっかいを出してくるインコもいる。地面をちょこちょこと歩いて近づいてくる好奇心旺盛なオウムも。ほとんどの鳥たちが、さまざまな事情でここにたどり着いた子ばかりだ。
 「いま、全部で130羽ぐらいいます。このうち8割以上が、飼い主さんの事情等で飼えなくなって引き取った子たちです」。いったいどんな物語がこの鳥たちにあるのだろうか。


■ 鳥たちのヒストリー&ストーリー

 とり村で暮らすインコ・オウムの年齢は、10歳を超えている子が多い。「このモモちゃん(モモイロインコ)はもう20歳を超えています」。嬉しそうに松本さんの腕に乗るご機嫌なモモちゃん。「飼い主さんが飼えなくなって手放すケースが殆どですが、一番多いのは高齢者の方が飼われていた鳥です」。

飼い主さんの死後に発見されたオデカケちゃん
 2015年1月。都内の水道業者から相談があった。高齢の独居女性が亡くなり、その部屋を仕事で訪れたところインコを発見したという。寒い時期なので、ケージが布団でくるまれていた。女性が
亡くなってから2―3週間経過していた。
 緊急でレスキューしたのはキビタイボウシインコ。保護した当時は、心を閉ざしていた。ところが、あるスタッフにだけは反応を示す。声や外見が、亡くなった飼い主さんに似ていたのではないかと推測されるが、ちいさな声で「おでかけ、こんばんは」と話したそうだ。このインコはオデカケちゃんと名づけられ、同年7月に新しい里親さんの元での新生活を始めた。今はウワちゃんと名づけられ、鳩ぽっぽの歌を一緒に歌う(調子ハズレらしいが)など、本当に可愛がられて幸せな日々を送っている。

病気でアパートを出なくてはいけなかった高齢男性
 2015年2月。都内で一人暮らしをしていた高齢男性が、アパートを退去となり施設に移ることに。市役所や民生員等が関わったが、TSUBASAにレスキュー依頼があった。ワカケホンセイインコ2羽とコザクラインコ1羽。とても可愛がっていたようであるが、病気で身体的不自由があり、十分にお世話ができなかった様子。この男性は、このインコたちを飼えなくなった知人から引き取り、一緒に暮らしていたらしい。インコたちは「とり村」での検疫を済ませて、新しい家族と出会う準備をしている。

「こわくないよ」とささやくヨウム
 40代の男性からの相談。ヨウムが 飼えなくなったので、引取りをお願いできないかという丁寧なメールだったという。男性は難病を発症し、このヨウムとの生活ができなくなった。さらに身寄りがなかった。非常に冷静でしっかりとした文面だったそうだ。京都駅まで、松本さんがヨウムを迎えに行った。「忘れられないです。あんなに冷静にやりとりをしてきた男性が、京都駅の人ごみのなかで号泣されたんですよ」と松本さん。愛鳥とのお別れが本当につらかったのだろう。さらに、このヨウムは、とり村の検疫室でずっと「こわくないよ、こわくないよ」とつぶやいていたそうだ。「飼い主さんが、きっとヨウムに話しかけていたんでしょうね」。地震のときにもこのヨウムは「こわくないよ」と囁いたらしい。怖いかもしれない状況をきちんと認識してこの言葉をつぶやいているのか。新しい家庭に巣立っていってからは、もう「こわくないよ」をあまり言わなくなったそうだ。


■ そして、松本さんのヒストリー 「生体販売やめました」

 TSUBASAの歴史は、松本さんの歴史でもある。松本さんは、学生時代に移動動物園のアルバイトを
し、その流れでテレビ番組でも週一回の出演をするなど、展示動物業界に関わっていた。しかし、華やかに見える裏での動物の扱いに疑問を覚えるようになり、業界を去り1985年に半導体関連の会社を立ち上げる。会社が軌道に乗ってから、1996年に「CAP!(コンパニオンアニマルパーク)」というペットショップを開業した。幼い動物ほど「かわいいから」売れるということで、生後1ヶ月ぐらいの子犬や子猫がワクチン接種もないまま売られていた時代だ。そのなかで、CAP!は、生後2ヶ月・3ヵ月時に2回ワクチンを打ってから新しい飼い主さんに渡すことを先取りしていた。動物の健康状態等を大事にし、福祉に配慮したものの、当時は「大きくなりすぎている」という理由で、売れなくなる。松本さんは、大好きな鳥もショップで扱っていた。しかし、転機が訪れる。
 トキちゃん。白いオオバタンである。毛引き症(自分の羽を自らむしったり皮膚を傷つけたりするような自傷行為。寄生虫や隠れた病気で行うこともあるが、精神的ストレスも大きいといわれている)を発症し、ぼろぼろになって、数箇所のペットショップをたらい回しにされていた。オークション会場でも誰も見向きもしなかったトキちゃんを、松本さんは引き取った。
 そして、2000年にアメリカで開催された鳥の保護シンポジウムに参加。世界中から800名もの参加者があったそうだ。3日間のレクチャーやワークショップを体験し、帰国後TSUBASAを立ち上げる。生体販売は、もう考えられなくなった。
 「アメリカでのシンポジウムも大きかったですが、でもやっぱり自分が生体販売をやめる決断を促してくれたのは、トキちゃんなんです」「トキちゃんに会ってみませんか」。
 松本さんの案内で、大きなステンレスケージに近づく。「ギャー!」とものすごい大音量の叫び声。「トキちゃん、大丈夫だよ、お友達だからね」松本さんが話しかけると、トキちゃんは叫ぶのをやめて、ゆっくりと器用にくちばしと足を使いながら、ケージをつたって、こちらにやってきた。賢そうな真っ黒い瞳。今はスタッフや松本さんのたっぷりの愛情をもらって、幸せそう。毛引きも改善されてきている。
 生体販売・繁殖をしていた時代のインコたちも、TSUBASAでのんびり暮らしている。オカメインコのお部屋もその一つ。「繁殖用に譲って欲しいという声もありますが、渡しません」。大事なTSUBASAの一員たちだ。


■ 「人が鳥を選ぶのではない、鳥が人を選ぶ」

 つらい経験、過去がある長生きな鳥たちだからこそ、TSUBASAは里親探しについて非常に慎重な姿勢・体制をとっている。「里親さんに出す件数は、引き取りする件数を大幅に下回ります」「長生きする生き物ですし、お金もかかります。いろんな条件をクリアしないと渡すことはできない。さらに大事なことは、『鳥が人を選ぶ』こと」と松本さんは話す。
 1年間に、新しい家庭のもとに譲渡されるのは、20~30羽。二度と、保護鳥たちが不幸にならないように、厳格な決め事がここにある。
 TSUBASAは、毎月「Meet The Bird(略してMTB)」という里親会を実施している。鳥たちの里親になるには、まずこのMTBに参加することから始まる。MTBでは、45分間の説明会が行われ、個々の鳥たちとの面会、相性などを確認する。その後、かなり具体的なヒアリングが行われる。生き物への思いはもちろん、住宅事情、家族構成、経済状況などかなりプライベートなことも聞く。また、他の飼養動物のこと、さらには近隣の環境等も。「インコの声は、特に大型の子の声は近隣苦情にもつながることがあるので」。ちなみに、TSUBASAでは、騒音計でコンゴウインコの絶叫を計ったそうだが、94デシベル。これは、騒々しい工場内等のレベルであり、電話が聞こえないレベルの80デシベルを大きく上回る。インコを迎えるために防音室を作ったご家庭もあるそうだ。鳥の福祉だけでなく、社会的なことにもきちんと目を向けて対応・尽力している。
 ヒアリングが終わり仮登録が終わったあとは、里親希望者の同居家族全員による二次面会が行われる。さらに、最低1週間のホームステイ期間も設けられる。期間中は毎日の日報の提出が必要であり、それに対しスタッフがアドバイスを行う。「鳥と里親希望者のマッチングは非常に大事。人がその鳥を欲しいと思っても、鳥がイヤだと思うこともありますから」。
 里親になるまでに、最低3回は足を運び「自分がこの鳥の飼い主としてふさわしいかどうか」を、精通したスタッフ、さらに鳥自らに判断してもらわなければならない。TSUBASAの里親制度の厳しさには、「絶対に幸せになってほしい」という鳥への熱い思いが込められている。


■ 「鳥と私と貴方と社会が幸せになるために」~バードライフアドバイザー認定講座

 「10年かかりましたが、ようやく開設できることになりました」。鳥たちの窮状に心を痛め、さまざまな無責任な飼い主やブリーダーに向かい合ってきた松本さん。TSUBASAは、2015年1月から「バードライフアドバイザー(BLA)」認定講座をスタートした。まずは3級。コンセプトは「鳥と私が幸せになる」。1年間9都道府県、12回の講座はすべて満員だったという。BLA3級取得者は、現在514名。
 ちなみに、これから、2級、1級の講座が始まるが、2級は「鳥と私と貴方が幸せになる」、1級は「鳥と私と貴方と社会が幸せになる」という役割や目標があるのだそうだ。
 「TSUBASAは小さな組織です。でも、鳥たちを不幸にしてしまう大きな組織や存在があることを見過ごすことはできません。一人でも多くの仲間がいたら、『大きくて強い者』に立ち向かい、1羽でも多くの鳥を救うことになるかもしれないです」と松本さん談。
 TSUBASAは、毎日、たくさんのメールや電話に対応している。飼育相談もあれば、引き取りのお願いもあるだろう。さらには、100羽を超える鳥たちの世話もあり、3名のスタッフ、毎日数名のボランティアさんたちが奮闘している。
 BLA制度はすでに稼動している。2015年秋、この講座のオフ会で、インコやフィンチを数十羽飼養しているブリーダー志望者の飼い主に関する相談があった。愛知県だった。多頭飼育崩壊は、鳥でも起こっている。とり村から離れた地域ではあったが、可能な限り早期に鳥たちを保護できたことは、まさにアドバイザーさん、会員さんたちの尽力があったからと松本さんは語る。
 ここで思ったのは、全国自治体で実施されている「動物愛護推進員」制度である。さまざまな犬猫のボランティアさんやトレーナーさん、獣医師等が各自治体で推進員になっているが、実際に保護が必要だったり飼い主への啓発が求められたりするのは、犬猫だけとは限らない。まさに、鳥類や爬虫類等も路頭に迷うことがあるのだ。鳥のアドバイザーさんや、爬虫類に詳しい方も、全国の自治体の愛護推進員に就任してほしいと強く願う。


■ 長生きな鳥たちと暮らす、人の責任とは

 「動物園では、70歳クラスのインコとも出会ったことがあります」と松本さん。健康状態や環境がよければ、彼等は人間よりも長生きすることが稀ではない。その現実を踏まえて、自分よりも長生きする可能性のある鳥たちを飼養するにあたっての心がけを松本さんにご教示いただいた。

① 鳥たちの社会性を考慮し、できるだけ他の人とも接するように努める
 飼い主だけと接する環境にある鳥は、事情があって新しい環境に移行するときに苦労することが多い。オンリーワンの飼養環境は、何かあったときに鳥には過酷なことになりかねない。可能な限り、鳥に社会性を持たせるように努めることも重要。知らない人との接触も大事。環境変化が鳥にストレスにならないように、日頃から心がけること。

② 食餌に気をつけて~!
 飼い主さんが死亡されたり行方が分からなくなったりした場合に、その鳥の履歴がわからなくなってしまう。問題になるのは「食餌」。なかには、とても偏食で人間の食べ物に馴らされた子がいて、「何をあげたら食べるのか」ということでも苦労することがある。栄養バランスのいい鳥用のフードをあげても食べないケースもある。人間用の食べ物や、偏食を助長するような食生活を続けているのはよくない。栄養上でも問題がある。鳥の健康のためにも、鳥のフードをきちんとあげるべき。

③ もしもの時に備えること
 遺言やペット信託等を、事前に準備しておくことが望ましい。家族や親戚、友人等に話しておくことはもちろん重要。人は、いつ何が起きるかわからない。健康な若い人でも急な事態で、飼えなくなることがある。高齢の方は、特に注意していただきたい。

 生きている以上は、年を重ね老いていく。人も、動物もみんな一緒だ。ゴール(死)は全員に平等に訪れるが、それまでの「生きている時間」のなかでできることはやっておかなくては。ヒトは、動物を飼養する以上、その責任があるのだと改めて思った。
 動物を販売するショップにも責任があるだろう。「この動物種は××年以上生きるんですよ、あなたは最期まで責任を持てますか?」と、きちんと説明できる業者はどのぐらいいるのだろう。動物が売れればいいという旧態依然とした業者も相変わらず存在していることを、松本さんは憂いていた。
 「オールド(52歳のインコ)はね、朝になると『めでためでた~の~』(花笠音頭)を声高らかに歌うんですよ。ほんとうに高らかに」。松本さんが笑った。オールドさんやオデカケちゃんやトキちゃんたちのように「救われる」鳥たちは、幸せな事例だろう。全国では、救出されることなく悲しいゴールを迎える鳥たちも少なくないと思う。でも、TSUBASAやバードライフアドバイザーさんたちの真摯な取り組みや活動がきっと実を結び、飼い主を失って悲しい末路をたどる鳥がゼロになっていくことを心から祈る。
 「こわくないよ」。ヨウムのささやきが、心のなかに何度も響く。




【動物実験】

「『動物実験を考える』を読み解く」勉強会 報告


2015年11月7日に「『動物実験を考える』を読み解く」勉強会を行いました。ここでは当日の講演の概要をご紹介します。

当日のプレゼン資料は以下をご参照ください。
http://alive-net.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/alive-5fdd.html


■「動物実験を考える」について

 「(新・)動物実験を考える」はALIVEの野上ふさ子前代表が著された本で、学問としての実験動物学などの専門書は多く出ていますが、批判的な見地から、あるいは市民の側から動物実験をとりあげた本は日本ではこの本以外にはほとんど見かけません。しかも海外の思想や情報などに依拠したものではなく、エコロジーを基調とした独自の視点・哲学から、日本のデータや実例も交えて動物実験を批判している点で、優れたオリジナリティーを持った書籍だと思います。
 今回、私たちが動物実験に向かい合う際に原点として踏まえておくべき書籍として、この本をテーマにした勉強会を行いました。


■ 動物実験の何が問題か?

○ 残酷性

 動物実験の問題にはまず残酷性という問題があります。医学研究における疾患モデルの作成、新規化学物質における毒性試験などでは動物に大きな苦痛を与えるものが多くあり、また、ストレスの実験などを行う心理学の分野でも残酷なものがあります。

○ 無意味性(意味がある?)

 肥満症には歩くことがいいかどうか?、飼育室の温度が学習・記憶機能に及ぼす悪影響など、日頃私たちが直感的、経験的になんとなく分かっていることを数値化・客観化するために、動物を使って検証するということがよく行われています。中には社会的な意義があるのかどうか、首をかしげたくなるものも多くあります。

○ ヒトや現実世界への適用性

 動物実験では、動物での実験結果をヒトに適用(外挿)する場合に、種の違い(種差)が常に問題になります。動物とヒトでは身体の構造や生理条件に共通点はあるものの、差異も無視できず、ヒトと動物で正反対の結果が出ることも少なくありません。
 これらの違いが、動物実験がヒトや現実世界に適用できない(誤った結果をもたらす)原因になります。

○ 安全性がわかる?

 医薬品や化粧品、農薬、工業薬品などの化学物質では安全性(毒性)試験が行われますが、たかだか10項目前後の試験をパスしたからといって、本当に安全性が証明されたことになるのでしょうか?また、複数の化学物質の相互作用や、マウス・ラットの寿命を超える長期の安全性(毒性)については試験されていません。薬害や公害の例に象徴されるように、動物実験が化学物質開発の免罪符となり、かえって社会の安全性を損ねているのかもしれません。

○ 生命倫理問題

 動物実験では、外部から特定の遺伝子を導入した遺伝子導入動物(トランスジェニック動物)や、特定の遺伝子を欠損させた遺伝子ノックアウト動物などが多く使われます。ヒト遺伝子導入動物なども作成され、疾患モデルの作成や再生医療、動物工場の研究などに利用されています。生命倫理上の問題が懸念されていますが、主に問題になるのは(動物のではなく)ヒトの尊厳が冒されるという観点です。
 昨今ではブタの体内でヒト移植用の臓器を作るための研究が行われており、そのためにヒトの細胞を組み込んだ動物(キメラ動物)の研究規制を緩和しようという動き(文科省)も出ています。

○ 密室性

 動物実験の実態はほとんどマスコミでとりあげられず、情報がほとんど公開されていないという問題もあります。一般市民が得ることができる情報源(入手手段)は、科学論文、実験計画書の開示請求、医薬品などの承認審査資料などですが、動物の取扱いが不明確、専門用語の問題、手続きの煩雑さなどの問題があります。なお、昨今では大学などがHPなどで情報公開をしていますが、動物実験の内容までは触れられていないのが一般的です。

○ 近代医学・実験医学への疑問

 19世紀以降急速に発展してきたとみられている医学、医療ですが、近年では、薬の副作用や医療事故、院内感染に代表される「医原病」の問題や、抗生物質乱用による耐性菌の増加などが指摘されるようになっています。また、「薬漬け」による医療費の高騰、「病気を見て患者を見ず」の言葉に象徴される哲学や倫理、人生観の欠如なども指摘されています。


■ 動物実験への反省の動き

 欧米では動物実験の歴史が長いこともあり、様々な動きが出ています。倫理の分野では動物解放論や動物権利論、エコロジー思想や環境倫理など、また、動物の生理・生態を理解し、客観的・科学的な観点から動物の生活の質の向上を図ろうとする「動物福祉」や、3R(代替法、数の削減、苦痛軽減)などの考え方も出てきています。さらに、動物福祉や3Rの考えにもとづき、日本以外の先進諸国では、施設の許可(登録)、実験者の免許、実験計画の許可、行政による施設の査察などの法規制が動物実験に対して行われています。


■ 私たちにできること

 動物の犠牲のない商品を購入する、マスコミや企業へ手紙を書く、小中高等学校の生体解剖や大学での実習に代替法の導入を求める、研究論文を読んで疑問に思ったら研究者本人や機関の長・動物実験委員会へ手紙を出す、法律や条例の改正を求める、などが私たちにできることとして挙げられます。


■ ライフスタイル/社会制度の変革を

 近代以降の実験医学では、生命機械論、生命分割の考え方にもとづき、膨大な動物実験が行われます。昨今では「代替法」なども開発されてきてはいますが、全体からみれば、まだごくわずかな分野にしか適用されません。
 予防医学や疫学・臨床研究の重視、化学物質の開発規制、食生活や公衆衛生の改善、エシカル消費やスロー/エコロジカルライフなどにもとづく「広義の代替法」による社会制度の変革が求められます。


■ 野上前代表が遺したもの

 野上前代表が本や活動を通して伝えたかったことには以下のようなものが挙げられると思います。

・世の中で暗黙のうちに見過ごされて当然のように思われていることでも、おかしいと思ったら声をあげなければいけないこと。

・「専門性」や「社会システム」の影で犠牲になっている社会的弱者に目を向けなければいけないこと。

・科学や医学を無条件に信仰したり関知しない態度をとるのではなく、「常識的な感覚」を拠り所として、市民が主体的・積極的に(方向性の決定に)関与していかなければならないこと。

 私たちは、ともすれば専門性の前に怖気づいたり、社会システムに対して無力感を抱きがちですが、そういう気持ちに負けずに、勇気をもって相対することが大切ということです。また、そのために情報の公開を求めることが大切であること、一般市民が民主主義社会を構成する一員としての自覚を持つべきだということも繰り返し主張されていました。
 私たちは野上前代表の遺志を引き継ぎ、大事な原点を忘れずに活動していきたいと思います。





【動物実験】

『犬猫だけが動物じゃない』in 大阪セミナー(第2弾)報告


昨年12月6日にALIVE大阪主催のセミナー「『犬猫だけが動物じゃない』セミナー 第2弾」に参加しました。

当日のプレゼン資料については以下をご参照ください。
http://alive-net.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/in-2015126-ea7a.html


■ 講演

 約40名が参加したセミナーでは、私を含め3人の講師がそれぞれ、畜産、イルカ問題、動物実験について話をしました。
 アニマルライツセンターの佐藤さんからは屠畜場における動物の不適切な扱いに関する報告と国際基準についての説明などがありました。イルカ&クジラ・アクション・ネットワークの倉澤さんからは、太地町のイルカ補殺法の問題と鯨類保護の国内・国際法に関する解説などがありました。私からは「動物実験の実情と課題」と題して話しました。


■ 質疑応答

 講演の後には活発な質疑応答が行われ、「手紙を書くことは効果があるのか?」、「無関心層に働きかけるにはどうしたらよいか?」などの素朴な質問が多く出されました。講師や主催者からは、地方のメディアも活用する、学会や業界関係へも意見を出す、市民団体間でネットワークをつくり協力をする、などの意見が出されました。





【動物実験】

代替法学会ポスター発表報告


昨年12月10日~12日に横浜で開催された日本動物実験代替法学会第28 回大会でポスター発表を行いました。

詳しい内容については以下をご覧ください。
http://www.alive-net.net/animal-experiments/2015JSAAE/index.html


■ 応募・採用・準備

 動物実験代替法学会は、「動物実験の適切な施行の国際原則である3Rsの推進と普及を目的とし、研究、開発、教育、調査等を行う学術団体」(学会のHPより)で、年1回行われる大会には、医薬品や化粧品、化学品メーカーなどの関係者が多く参加します。
 このたび、業界関係者に向けて動物福祉に関しての訴えを行うため、この大会の一般演題(ポスター発表)に応募しました。


■ ポスター発表

 ポスターは10日の夕方から12日の昼まで掲示され、11日には1時間の口頭発表時間もありました。11日の発表時間を含め、学会会期中に、医薬品、化粧品、化学品、医療機器メーカの方々とそれぞれ説明しながらゆっくりお話をすることができました。どの方も代替法や動物福祉に関心が高いらしく熱心に話を聞いていただけました。
 普段ほとんど接点のない、動物実験関係者と直に動物福祉について話し合えるこのような機会は本当に貴重と感じました。今後も機会を見つけてこのような活動を続けていきたいと思います。





【動物取扱業】

~動物愛護管理法においても8週齢規制の早期実施を~
札幌市動物愛護管理条例案の『幼い犬猫守る条項』を応援する院内集会が開催されました!



 2016年2月19日(金)衆議院議員第二議員会館にて開催されたこの院内集会は、8週(56日)齢規制実施の見通しが立っていない中で札幌市が全国で初めて動物愛護管理条例に飼い主の努力義務として8週齢規制案を盛り込んだことを受けて、国会議員や有識者、動物愛護団体関係者などが条例制定を応援するために集いましたので以下、ご報告致します。(ALIVEはこの緊急院内集会に賛同団体として参画、ご尽力下さった方々のもと、微力ながらスタッフ数名でお手伝いさせて頂きました。)


■ 朝日新聞社「Sippo」も報道

多くの有識者、国会議員、動物愛護団体関係者が集まった院内集会では、獣医師や法律の専門家から8週齢規制を早期に実現すべきだという根拠、今回の札幌市の動物愛護条例案に関する見解についての発言などが「Sippo」にて報道されました。

札幌市の「8週齢規制」条例案を応援 国会議員、有識者ら140人が集会
http://sippolife.jp/article/2016022200008.html


■ 動物愛護活動者が強くうたったえ

 動物愛護法改正に長くかかわってきた保護団体代表からは、「この8週齢という問題に、あまりにも多くの時間とリソースを割かれてきている、こんなにも大変なのか、科学だけではなく政策の問題ではないか」と問題本質を突いた指摘があったほか、他団体からも、この条項は動物愛護法と全国の条例の先駆けとなるとして評価しつつ、「愛護条例にはふさわしくない、既存の畜犬取り締まり及び野犬掃討の条例が引き継がれているなど問題点も多々あり、修正の必要があるということも否めない」といった説明がなされました。 (平成27年10月26日より1か月間行われた「札幌市動物の愛護及び管理に関する条例・同条例施行規則(案)」パブリックコメントでは当会からも様々な意見を送って修正をもとめています。)
 そして動物保護の現場からは、「既にボランティアは血を吐くような思いをして、本当に生活を削って全精力を傾けて、保護譲渡をしている。蛇口を締めないで保護譲渡だけしていても、ボランティアがつぶれていくだけで、全く解決にはならない。」と強くうったえておられました。
 また、現在、環境省が行っている、子犬を親から引き離す時期の科学的知見を蓄えるための調査について、「ペットショップで売られた犬猫のみ」がサンプルにされている場合は結果が偏るおそれもあると示唆された方も。これは当会も強く懸念している点であり、今後も注視していく必要があると考えています。


■ 緊急院内集会の発言録 (2018.01.12アップ) → こちらのページ

 当会も賛同団体として微力ながら協力させて頂いた、「幼い犬猫を守る『札幌市の動物愛護条例』を応援する緊急院内集会~動物福祉向上のために、この取り組みを全国へ~(2016年2月19日開催)」の際の発言録を、TOKYO ZEROキャンペーン様がとりまとめて下さいましたので、当会のウェブサイトにもアップさせて頂きました。
 今年行われる動物愛護管理法の改正では、動物を取り巻く様々な問題を改善するための重要課題が複数あるかと思いますが、「8週齢(生後56日)規制が動愛法の本則通り導入されるかどうか」も大きな焦点となります。その意味で、この緊急院内集会の内容はたいへん意義深いものとなっています。長文となりますが、一人でも多くの方に共有いただきたいと思いますのでぜひご一読ください。





【畜産動物】

「北海道・農業と動物福祉の研究会」活動レポート
牛と共に生きていくとは
~アニマルウェルフェアについて考えた2日間 in北海道八雲町~


< 寄稿 : 喜多村美花 (帯広畜産大学畜産学部4年)>

 2015年8月29、30日、道南の八雲町で開催された「北海道・農業と動物福祉の研究会」が主催する動物福祉セミナーに参加した。1日目に松木洋一教授をお迎えして欧米の家畜福祉認証制度についてのご講演、そして八雲町の酪農家の小栗格さんと獣医師の末永龍太さんとの対談が組まれていた。2日目には自給飼料100%の粗飼料で肉牛生産を行っている八雲牧場と小栗さんの牧場の見学を行った。

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■ 海外から学ぶ日本の市場のあり方

 農業経済学者として活躍されている松木教授は、EUの事例としてオランダの家畜福祉の認証活動の一つである「Beter Leven」についてご講演くださった。
Beter LevenはNGOオランダ動物保護協会によって作られた家畜福祉の認証マークであり、農場の家畜福祉レベルが基準によって段階付けされ、3つ星でそのレベルが示されている。2007年から始まったこの認証制度は現在に至るまでに多くの生産者だけでなく、スーパーなどの大手小売店も携わっており、認証開始から5年間で約7倍の売り上げを出しているという。オランダはBeter Levenを通じて、生産者も販売者も消費者も共に家畜福祉を認識していったからこそ、市場でここまで成長してきたのではないかと考える。
 日本の現状はどうだろうと考えたときに、まず浮かんだのが当たり前のように日々安く売られている肉や卵、乳製品の光景であった。いかに安い価格で売るかを強いてきた日本の市場の裏側で家畜たちがどんな環境で命を削っているかも知らぬまま、その安売りされた製品を消費者は当たり前のように買っていく。今の日本畜産の現状は生産者と消費者が完全に分断されている。私は、この分断された両者を繋いでいき、そこに販売者がどう携わってくるかが、これからの日本の家畜福祉を取り入れた畜産生産物市場発展のための大きな課題だと考える。その架け橋の一つとして、日本にも認証制度、認証マークの表示と普及が必要となってくるはずだ。ただし、生産者が行う教育ファームやこだわりの原材料からの製品化(六次産業化)による生産現場の情報発信、販売者からの認証製品の積極的な取り入れや販売、消費者の家畜福祉製品の販売要求や価格のみで商品を選択しない意思など、消費者、生産者、販売者のそれぞれの立場から意思を行動に移すことによって、刺激を与え合うからこそ、この認証の効力は発揮されていくと考える。誰かがやってくれるではなく、みんなが動いてこそ家畜が少しでも快適に過ごせる時はやってくるはずだと感じた。


■ 牛と歩幅を合わせて生きること

 私は農家さんから直接話される言葉だからこそ伝わるものがあるということをこのセミナーで一番感じた。誰よりも家畜と共に生きている農家さんだからこそ私たち消費者に改めて酪農のあり方、牛と人の幸せについて考える機会を与えられた対談だった。
 「家畜福祉(アニマルウェルフェア)」という言葉を、私自身いろいろな農家さんに知っているか尋ねてみたところ、多くの人から知らないという答えが返って来る。今回対談してくださった酪農家の小栗さんも、対談相手である末永さんに尋ねられた時、最近知ったと答えたそうだ。それに加えて、「昔はそんな概念はあったのだろうか。昔は小規模であったから大事に飼わなきゃではなく、無意識に大事に飼っていたのではないか。今が大事に飼われていないから、その考えが言われ始めたのではないか。」とも。
 私はこの小栗さんの言葉にすごく考えさせられた。昔はどの家庭にも小頭数の家畜がいて、財産であり家族のような存在であったはずである。しかし低コスト大量生産から規模拡大が進行し、もはや命あるものとして扱われなくなった現状が出てきたからこそ、それを見直すためにアニマルウェルフェアという考え方が出てきたのかもしれない。残酷な現場が出てきたからこそ生まれた考え方と思えば悲しいが、家畜をモノではなく命として立ち止まって考え直せたからこそ生まれた考え方だとすれば、より一層大切にしていかなくてはならないと感じた。


■ すべてが Made in Japan の牛肉

 近年、畜産農家や酪農家の離農の増加が問題となっており、その原因の一つとして飼料価格の高騰が挙げられている。日本の畜産や酪農の多くは輸入飼料に頼りきっているため個々の農家へのその打撃は大きく、特に大規模化を進めたところでは生産費に含まれる飼料代は規模と比例するように大きくなっていく。この警鐘から日本全体として今までの体制のままではいけないことに気付き、行動しなければならない状況になっている。
 私たちは今回、こうした日本の現状から見直した飼い方を実践している北里大学八雲牧場を見学した。八雲牧場はもともと普通の肥育牧場であったが、輸入飼料高騰から草で牛を育てることに着目し、日本初の取り組みとなる自給粗飼料100%で約250頭の肉牛飼養を行っている。そこで飼養された牛は北里八雲有機牛としてブランド化され、牛にも環境にも優しい飼い方からできた安全安心の生産物であるため、これを取り扱っている東都生協の消費者から高い人気があるという。有機JASも取得するほど自給飼料である牧草にもこだわっているが、その分害虫のイナゴの大発生や雑草の対策に頭を悩まされるなど、自然の中で行う畜産から離れてしまった現代の私たちにとって、自然と共生しながら生きていくことがいかに大変なのかを改めて考えさせられた。
 一番の喜びは自分で作ったものをおいしいと言ってもらえることだと、農家さんはよく語って下さる。そうやって消費者の声が農家さんに伝わり、農家さんの頑張りを消費者が知れるような関係がたくさん築けていければ、この酪農畜産分野はもっともっとおもしろくなってくるのではないかと思う。こうしたたくさんの個々の農家の飼い方へのこだわりや努力が一般流通でもみ消されず、消費者にアピールできれば、もっと多くの消費者が肉などの製品としてではなく牛として、また牧場としても興味を持ってもらえると確信している。
 私はアニマルウェルフェアという考え方がもっとたくさんの人に知れ渡り、愛情込めて育てられた家畜と、そんな家畜を育てる農家の姿が当たり前になるような畜産をしていきたい。





【ルポタージュ】

善福寺生き物語り①
野鳥への餌やりは…!?

< 寄稿 : 須磨 章 (ジャーナリスト)>

「STOPエサやり 東京都」
と書かれた幟(のぼり)が、2015年12月のある週末に、善福寺公園に掲げられた。周りでは揃いのグリーンのジャンパーを着た中年男性たちが、チラシを配ったり、公園を訪ずれた一般の人たちに、「餌やり防止」の必要性を説いている。この男性たちは、東京都から任用されている「鳥獣保護管理員」だ。この週末は、公園や東京都環境局をあげての、野鳥への餌やり防止の キャンペーン"だったのだ。"

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 私は永年、NHKでドキュメンタリー番組を制作してきた。ひょんなことから生き物と人間社会との関係 にも首を突込みはじめ、今回から"ALIVE"に原稿を寄せることになった。
 都内の公園の中では、自然環境が残り、渡り鳥もやってくる"善福寺公園"は、自宅から歩いて3分。こ こを舞台に身近な生き物たちの物語 を綴っていきたいと思う。

 隣の駅に住む"斉城信夫さん"は、60歳で仕事を辞め、もともと大好きだった野鳥たちに関わりたい と、東京都の「鳥獣保護管理員」に 応募した。既に9年間も活動を続けている、鳥獣保護のベテランだ。
 毎朝のように袋いっぱいの餌をバラまく男性に、斉城さんはある日声をかけた。すると男性からは「自分 は川で怪我をしていた鳥2羽を救い、 善福寺の池に放した。その2羽が俺 を待っているのだ。沢山の鳥に餌や りをしているつもりはない」という 答えが返ってきた。
 そうはいっても渡り鳥の「オナガガモ」は人になつき易く、陸地に上ってきて餌をついばんでいる。斉城 さんは「この鳥たちは、シベリアに 帰ったら誰も餌をやらない。あなたがついて行くわけにはいかないで しょう」とさとしたがいっこうにやめる気配がない。
 斉城さんによると、餌をもらいに人間に近づいてくる鳥たちは、渡りの途中で鉄砲にうたれてしまうケー スもあるという。また自分で餌を捕 まえる習慣を失った野鳥は、渡りさ えやめてしまう可能性もある。そん なことを説明しても耳をかさないの で、「あなたがまいた餌によって、池 の水質も汚染されてしまう」と説得 した。相手はいつの間にか稗(ひえ)をまくようになり、「これは自然のもので無 害だ」と主張しているという。一種 の闘いの様相を呈しているようだ。
 斉城さんは「一般の住民の方たちは、ほとんど理解しているのですよ。"餌やり常習の人をどう止めたら いいか"とよく聞かれるのですが、『冷たい眼で見て抗議の意思を伝えて下さい』とだけ言うのですよ。いつも 餌をやっている人たちは、そう簡単に考えを変えてはくれませんからね」と、斉城さんは持久戦の構えだ。
 私も、池の鯉に餌をやっている40歳台位の男性に、見廻りをしていた 公園の職員数人が声をかけたところ に出くわした。男性は「この池は栄養が少ない。自分が餌をやらなきゃ可哀相だ」と言い張る。職員は「いやいや木の実などの栄養が豊富で、それで栄養は十分だ」と説得するが「そんなわけないでしょう」と押し問答が続くだけだ。
 確かに、私たちには「生き物に食べ物を与えることは、人間の優しさだ」という観念が根づいている。現 代でも、たとえば奈良の"鹿せんべい"のように、観光地で動物たちの餌を売っているケースを見かける 。 子供たちが満面笑顔で餌を与えている光景にも出会う。「どうして餌をやっちゃいけないの…?」という素朴な疑問に対して、心の中にまで浸透するような答えを返すのは、そう簡単なことではない。

 その点、善福寺公園では、新しいトライアルがはじまっている。
 都立高校で公園業務に関心のある生徒を5日間受け入れ、巡回、ゴミ拾いに始まり、木の剪定や、ブラン コ等の遊具の点検などを経験してもらっている。その中で生徒たちは「野鳥への餌やりが何故いけないのか」 というテーマにも取り組む。この試 みは「インターンシップ」と呼ばれ、一種の職業体験でもある。
 これに参加した杉並工業高校の生徒たちが作った横断幕が公園に掲げられている。
 「エサをあげても、喜ぶのは自分だけ」
 なかなかシャープな言葉選びだ。さらに高校生だけではなく、中学生 も月一回の土曜日授業を活用して、 公園の落ち葉拾いや清掃を体験し、餌やり問題も学んでいる。そして、井草中学の生徒たちが作った横断幕が、またふるっている。「非餌やり三 原則やらない、させない、持ち込まない」。
 これは恐らく授業で習った「非核三原則」を「餌やり」に当てはめた もので、気が利いている。こんな若 い世代から突きつけられた標語は、 大人たちには大きなインパクトを与えるのではないだろうか。
 善福寺公園サービスセンターの" 清水哲哉センター長"は…
 「私も子供の時は、よく鳩たちに餌をあげていましたよ。それが悪影響を及ぼすなんて全く思ってもいま せんでした。でもこの公園で体験し た子供たちは、少しは野鳥への餌やりに問題があると気づいてくれるのじゃないでしょうか」と期待している。
 確かにそうだ。若い時から「餌やりはヒトの優しい心から生まれるものでも、それが野生をスポイルして しまうこともあるのだ」という感覚 をもつことは、とっても有意義なことだ。最近転勤してきた清水センター 長は、他の地域と比べて「善福寺 公 園 はとても地域との繋がりが強 い」という感想をもっている。それ は、風致地区に指定され豊かな自然と静けさが残っているこの地を、住民たちが大切にしているからではないだろうか。

 私は数年前にこの公園で、桁はずれに大胆な"餌やりおじさん"に出くわした。昭和を想い出させるよう な、真黒な旧型自転車を引いてきて、大きな荷台には食パンがぎっしりと 積まれている。そのパンをちぎっては投げちぎっては投げ、まるで花咲 か爺さんのようだった。周囲に気を 配る様子は全くない。まるで自分が 野鳥たちの救世主のような振舞いに、私を含めみんな呆気にとられていた。
 ところがこれは、売れ残ったパンを捨てに来ていただけだったのだ。 本来は有料で処分しなければならな い「事業用のゴミの不当投棄」ということで摘発され、今では全く見な くなった。人間が食べるパンには、 かなりの脂分が含まれており、野鳥たちへの悪影響だけでなく池の水質をも悪化させてしまうという。

 もうひとつ、鳥獣保護管理員の斉城さんから、驚くべき餌付けが横行していると聞いた。善福寺とは別の 近隣の公園で「"カワセミ"をカメラに収める為に、餌付けをしている。池の中に丸い生簀(いけす)を設置し、そこに小魚を入れておく。そして近くに頃 合いのいい木の枝を埋め込み、そこで小魚をくわえているカワセミを撮 影するという仕掛けだ」。自然な鳥の姿をカメラに収めるのではなく、これではヒトがモデルを頼んで、ポーズをつけてもらうのとほぼ同じでは ないか…?
 斉城さんが「カワセミ等野鳥への餌付け撮影の実態と問題点」と題して、鳥獣保護管理員の研修会で報告した小冊子には、その現場の写真が 生々しく掲載されている。望遠レンズをつけた大型カメラを構える人々が、およそ20~30名、ズラーと遊歩道の手すりに並んでいる。ブルーとえんじ色の美しいカワセミが小魚をくわえ木の枝にとまっている。「野鳥を静かに観察してシャッターチャンスを待つ」といった風情は全くな い。何かの発表会に、多勢のカメラマンが集まっている広告写真の現場のようだ。この報告書を見て「人間 の欲望はとどまることを知らないのだなー」と唖然としてしまった。
 ところが、この問題には複雑な事情がからんでいる。
 公園のサービスセンターでは、目撃数が減少しているカワセミを保護し、公園に呼び戻そうと、ボランティアグループと協力して"給餌"や 繁殖を行っているのだ。この公園のサービスセンター長は「餌付け撮影 は好ましくないが、公園ボランティアグループには、カメラ愛好家も含 まれているので、対応が難しい」と 言っているという。
 イヤー、この問題でも世の中はそう単純ではないことを思い知らされ てしまった。

 近頃、私が善福寺公園を散歩しての楽しみは、オナガガモなどの水鳥 たちが水中に頭から突込み、後ろ足 を水面に出している姿に出会うこと だ。一生懸命に水底の食べ物を探しているのだろうが、何とも微笑ましい。嘴(くちばし)を水面にすべらせ、何か腹のたしになりそうなものをすくいとっている様子も愛らしい。美しく可愛 い水鳥たちを、できるだけ身近に寄 せたいという気持ちは、私にだってある。
 しかし静かに、彼らの自然の営みをボンヤリと眺めている方が、暖かな気持ちになり、心が安まるものだ。




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