この4月より、国会で外来種対策の新しい法律案が審議され、5月末に成立しました。今後、基本方針の策定や特定外来種の種の指定などが行われ、2005年の4月から施行される予定です。
外来種問題は、水際(輸入)、遺棄・逸出(飼育規制)、被害対策(防除)の3つの面で取り組まなければなりません。動物が野生化してからではほとんど手遅れで、何よりも水際でくい止めることが費用も犠牲も少なくてすみます。
それでは、この法律によって、野放しにされてきた海外からの野生動物の輸入にどれほど歯止めをかけることができるのでしょうか。いくつかの点でその実効性に大きな疑問があげられます。
◆水際規制◆
特定外来種に指定された種は、原則輸入が禁止されます。ペットについては、逃げ出して野生化し、生態系等に大きな悪影響を与えることが立証されない限り、これまで通り輸入が可能です。ごく限られた種しか指定されない可能性が高く、海外の生息地における自然破壊や種の絶滅、あるいは捕獲や輸送、飼育における不適正飼育による損傷や死亡については何の規制もありません。
◆飼育規制◆
特定動物に指定された種は、逃がさないことを条件として飼育が許可制になります。違法に輸入するなどした法人は罰金が1億円と、たいへん高額です。これほど厳しい規制をかけるためには、ごく限られた少数の生物種しか規制できないということの裏返しになります。
◆被害対策◆
すでに国内に逸出、あるいは野生化した種についての捕獲については、以下のような新たな問題があげられます。
・鳥獣保護法が適用除外される
特定外来種の駆除については、鳥獣保護法がすべて適用除外されるとしています。すなわち、鳥獣保護区、銃猟禁止区域などの区域の制限、銃器、わな、毒薬などの猟具・猟法の制限、狩猟免許や狩猟登録、有害捕獲従事者票などの人の制限、といった捕獲規制がすべて外されてしまうわけです。特に外来種の駆除に使用される罠の規制を適用除外することは、混獲・違法捕獲を助長させることになり、在来種を守るといいながら実は在来種をいたずらに殺傷するだけの法律になりかねません。
・わなの規制緩和
鳥獣保護法では、有害鳥獣捕獲の許可の条件として、捕獲の方法、捕獲後の処理の方法、安全と静穏の確保、周辺環境への配慮、猟具への標識の装着等を定めています。わなについては、錯誤捕獲や混獲が問題となったために、設置個数が30個に限定され、1日に1回は見回りをすることが義務付けられました。このわなの規制が外され、山野に何百と仕掛けられた場合、在来の野生鳥獣を無差別に捕獲・殺傷するおそれがきわめて大きくなります。、
・混獲・違法捕獲への対処が不明
わなは本質的に無差別捕獲の道具です。混獲された在来種は、水や餌がないことにより餓死、脱水死してしまいます。この対策が担保されていないことが大きな不安要因です。在来種の鳥獣が捕獲された場合、速やかに放獣する体制にすること、また、その鳥獣が負傷、衰弱していた場合、鳥獣保護センターへの一時保護や獣医師の治療等を定めるべきです。
【運用の実効性について】
・捕獲後の処置について
鳥獣保護法の基本指針では、わなによって生きたまま捕獲された個体を致死させる場合には、できる限り苦痛のない方法をとるように定めています。ただでさえ一般には、「駆除はかわいそうだ」という声があるのに、これに対する処置が明らかではありません。現実には、餓死、撲殺、溺死などの手法が取られており、動物愛護の観点からも問題です。
動物愛護法では、人の占有下にある動物(ほ乳類、鳥類、爬虫類)の虐待禁止を定めています。また、ペットの場合はできる限り生存の機会を与えるように努めるとともに、やむを得ず殺処分しなければならない場合は「動物の処分に関する指針」に従うように定めています。わなで捕獲された動物は、人の占有下に入ることから、動物愛護法が適用されるべきでしょう。
・動物の遺棄の防止について
動物愛護法では、ペットや家畜動物などの遺棄を禁止しています。外来種対策法の施行により、飼育規制が強化されるため、一時的に遺棄が増大するおそれがあります。都道府県の動物愛護センターや鳥獣保護センターなどに協力を求め、一時的保護収容の措置をとるべきと考えます。
・ペット販売業者の規制について
動物愛護法では、動物取扱業者を届け出制にしています。しかし、施設を持たないインターネット販売、通信販売には届け出義務が無く、実態が把握できません。野生動物などを大量に輸入販売している販売店の責任は大きい。海外から輸入される動物の販売、流通実態を把握できるようにするべきではないでしょうか。また、違法な販売行為に歯止めを加え、良質な業者を育成するために、動物取扱業を許可制にすべきと考えます。
【担当部署】環境省自然環境局野生生物課
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